もうひとつの世界に住んでいる人へ
お久しぶりです。
そちらの空は相変わらず透き通った青さですか。
こちらでは、またひとつ産まれた命が、青いカーテンに橙色の暖かい燈として灯されました。
この燈があなたの世界でいう星ですね。
前回の手紙の内容は、忘れてしまったかもしれませんが、
こちらでは灯された燈の色で、産まれて来た子の個性が判るのです。
さっき灯された橙色の燈の子は、明るい元気な男の子のようです。
今度は燈が落ちてゆきました。
この頃、だんだんと灯される燈の数より落ちてゆく燈が、増えているのです。
あなたの世界に流れる流星は、あなたの立っている大地から
遠く遠く離れた場所に浮かんでいる、大きな岩の燃え残りで
隕石と呼ばれているのでしたよね。
でも、こっちでは違います。
この世を次々と発って逝かれる人々の、最も幸せだった頃の想い出なのです。
その人の寿命が来ると燈は固まり始め、綺麗な色のついた小さな石となって
固まった時の重みで落ちてゆきます。
落ちてゆく場所は、その人が一番愛していた人のところ…
先ほどの燈もきっと、愛する人の許へ向かったのでしょう。
この前、僕のところにもひとつ落ちてきました。
小さくて綺麗な碧色でした。あの人の瞳の色と同じ色をした透き通った石だった。
できればいつまでも、欲しくはなかったのですが…
これもしかたのないことなのですよね。
追伸
先程、桃色の小さな燈がふたつ、仲良く並んで灯りました。
優しい女の子の双子みたいです。
もうひとつの世界に住んでいる人間より