父親を目の前で殺された幼子は、以降、刀鍛冶だった父が愛した刀鍛冶の名「×(バツ)」の本名とされる「辰之進」を名乗る。
辰之進は叉藏の奥地、治安の悪い地域に住んでいた。
自分に斬りかかってくるものは全て斬って歩む。
まるでその者が「存在していない」かのように視線すら動かさず何事もなく進む様は鬼のようであった。
【大人になって】
ある日、独りで昔住んでいた地域へ足を運んだ。
何者かにつけられている。
親友ロストの娘、ギルト(ロートス)だった。
ギルトは伝説の剣のトリガーとなっており、惨劇を見ると剣を覚醒させてしまうという。
辰之進は仕方なく誰も殺さずに道を急いだ。
通りの奥の平地には一本の桜がある。そこではどれだけの荒くれ者でも不思議と争わない。
桜の下、ギルトと語らう。
ロストにも知らせていない自分の名前をギルトにだけ話す。
「桜花」
抜け落ちた名前。