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  • whiteapplesan Link Message Mute
    2018/03/19 22:45:16

    「私はドーナツの穴が食べたいの」
    そう言って僕を振った彼女は、その二週間後にこの世を去った。
    事故だった。
    お葬式で彼女の最後を見た僕は涙を流せなかった。ただただ彼女の最後の言葉だけが反響していた。

    「それ、どういう意味?ドーナツならいくらでも一緒に食べるよ。食べようよ。」
    「それもいいかもしれないね。」
    「じゃあ、、」
    「ごめんね。それも間違ってはないんだと思う。けど、私はそれが正解にはしたくないの。」

    通夜後、泣きじゃくる彼女の妹を見る。泣けない自分をうらめしく思う。
    「ていよく振られただけだったのかなぁ。」

    「なぁ、ミサキちゃん。あいつドーナツ好きだったっけ?」
    「え、さぁ?嫌いじゃなかったとは思うけど。」
    「そうだよなぁ。甘い物好きってわけでもなかったよなぁ。」
    「?」

    待合室に設けられた茶菓子。安っぽい個包装のドーナツを眺める。
    「そもそも穴は食べられるのか?」
     でも食べられなかったら、穴だけが残るんだろうか」
     穴が残るなら、世界は今頃ドーナツの穴だらけだなぁ。」

    「ちょっと待って。これも一緒にお願いします。」
     一緒に燃される彼女の撮った写真。
     彼女は誰かに認められたかったのか?
     それとも哲学的な話をしたかっただけなのかな?

    「ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。ごめんなさい。私はドーナツの穴が食べたいんだよ。」
    数日後、お墓に向かう途中、バスの中で泣きじゃくる彼女の夢を見る。
    聞いた時は冷静な感じだったけれど、本当はこんなに泣いていたんだろうか。泣きたかったんだろうか。
    、、、ホントに事故だったのか?

    墓の前。彼女の妹と出会う。
    「お兄ちゃんはさ、泣かないんだね。」
    「、、、うん。涙、出ないんだ。」
    「うらやましい。」
    「え?」
    「私なんて、もうたくさん泣いて枯れちゃったのに、お兄ちゃんはお葬式の時のまま。まるでこれから涙を流すっていう一歩手前でずっと止まってちゃっているみたいだ。」
    「実はあいつが死ぬちょっと前に告白しててさ。まぁばっさり振られたわけだけど、その時の僕を振る文句が気になっててさ。」
    「なんて言ってたのか聞いていい?」
    「私はドーナツの穴が食べたいの、って言ってた。意味わかる?」
    「わかんない。」

    「あいつは何かに悩んでいたんだろうか?」
     もし、この言葉があいつなりの助けてって意味だったらなにかしてやれてたのかな」
     まぁ、でもやっぱりていよく振られただけなんかもしれないけど。」
     今となってはもう、何もわからないや。」
     でもこれがわからないと僕はいつまで経ってもこいつがいなくなったことを認められないんだろうなぁ。」

     心ににドーナツ型の穴が空く。

    /////////////////////////////////
    ※最近本気で悩んでるのですが、悩みを人に相談するということができないというか、相談したいことがなんなのかすらわからないので、抽象概念のまま作品化しました。
    ドーナツの穴を一緒に食べてくれる人がいたら結婚してください。

    more...
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