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    【BSR】昔の主がミニスカで現れた。どうする?(コマンド▼) 昼食をとりながらスマートフォンをいじっている佐助を、行儀が悪い、と小十郎が上目に見たのと、佐助が勢い良く噴出したのはほぼ同時であった。
     どうせツイッターのタイムラインにネタ画像が流れてきたのだろう、と小十郎は気にも留めず黙々と箸を動かしていたが、「ちょっ片倉の旦那ッ! これッ!?」と常になく動揺している佐助に軽く片眉を上げる。
     ガタタッ、と椅子を鳴らして立ち上がり、わざわざ小十郎と肩を並べてきた佐助の示す画面を見れば、そこにはリツイートされてきた写真が表示されていた。だが、それは小十郎が予想したネタ画像ではなく、女の子がふたり並んで写っているだけの写真である。
     これがどうした、と言いたげに隣の佐助を見やれば、「よく見てよ」と微かに口許を引きつらせた顔で、とんとん、と画面を叩かれた。
     アカウント名から判断するに、どうやらどこぞのカフェの公式アカウントのようだ。改めて写真を見ればなるほど、ふたりはフリル付きエプロンを着用しておりメイドとウェイトレスの中間のような姿だ。
     続いて140文字の情報に目を通し、小十郎の動きが止まった。
     改めて写真に目をやり、文章を読む。
     そして、もう一度写真を見た。
     わかりやすく二度見をした小十郎の隣では佐助が笑いたいのか泣きたいのか、非常に微妙な表情で「やっぱ……だよね」と漏らす。
     この時代に生まれ落ち、現在は学生としてつつがなく日々を送っているが、佐助も小十郎も戦国の世の記憶はばっちり持っている。当然のことながらかつての主とまみえることが出来れば僥倖であると思っていたが、ふたり同時に「これはない」と絶望感から頭を振った。

    『次の日曜日は月に一度の戦国day☆ゆっきーとムネたん揃って皆様の出陣をお待ちしてまーす☆』

     かつての主が女装カフェで働いているという現実に従者ふたりは、赤と蒼というシンボルカラーは今生でも健在か、とそれぞれのワンピースの色に泣きたくなったのだった。

    ◇ ◇ ◇

     待ち合わせの時間より十分ほど早くついた小十郎だが、その場所には既に佐助の姿があった。
    「おはよー旦那」
    「早いな」
     もしかして時間を間違えたか、と小十郎が軽く眉根を寄せたのを「大丈夫、大丈夫」と佐助は軽く手を振って否定し、「はいこれ、旦那の分」と名刺大の紙を、ぺろん、と差し出してきた。
    「なんだこれ」
    「整理券。いやー、念のため公式サイト行ったり呟き拾ったりと情報集めたら、なんか戦国dayは毎回毎回、整理券配布するほど盛況らしくってね。さすがの俺様もこいつは予想外だった」
    『完全入れ替え制』と印字されており、続けて有効時間が記されている。基本的に一人一時間半だが、途中入場でも終了時間は変わらないということだ。
    「一人で二枚まで整理券もらえるってなってたから俺様だけで行ってきたけど、いやー……なんというか、足軽の皆さん超必死でさながら戦場のようだったわ」
     なんでも整理券配布方法は毎回違っているらしく、今回はスタッフVS足軽全員の一斉ジャンケン大会であった。勝者が規定数に達するまで繰り返され、早く勝ち抜けた者ほど希望の時間帯をゲットできる仕組みだ。
     ちなみに討ち死にした足軽には『残念スタンプ』が用意されており、これを一定数集めると割引券や景品などと交換できるため、それを目当てにやってくる者も少なからず居るらしい。整理券配布が先着順ではなくても不満が出ないのはこういうことのようだ。
    「俺様、一抜けしたから悠々と見物してたけど、漏れ聞こえてくる会話から察するに『ゆっきー』と『ムネたん』目当てが多くてどんな顔していいかわからなかったわ」
     ははは、と遠い目で虚ろな笑いを漏らす佐助に小十郎は目頭を押さえながら「すまねぇ」と漏らし、その場に自分は居なくて心底良かった、と戦利品を有り難く受け取ったのだった。

    ◇ ◇ ◇

     時間だ、と戦人の面持ちで他の足軽の面々と出陣を果たしたふたりは、席に着くやメニューを顔の前に立て、その影に隠れて店内の様子を窺う。九割九分九厘『ゆっきー』と『ムネたん』はかつての主で確定だと思っているが、違うかもしれない、という儚い希望を抱いているのも事実だ。
     だが、儚い希望は所詮、儚い希望でしかなかったと痛感することとなる。
     スタッフ一押し☆と記されたメニューに連なる文字に佐助は顔を覆い、小十郎はその肩を慰めるように、ぽん、と叩いた。
    「頼んでみるか……?『天覇絶槍パフェ』」
    「無理、さすがの俺様もそれは無理」
     ふるふる、と力無く首を振る佐助を知ってか知らずか、折しもふたつ向こうのテーブルでそれが所望されていたらしく、赤い鉢巻きを締めた『武将』が颯爽と現れた。
     さすがに腹出しはしていないが、腰回りの甲冑は嫌と言うほど見覚えがあり、佐助の喉奥からは低い呻きが漏れ出る。
     続いて響き渡った「天・覇・絶槍!」の言葉に合わせて両の手にしたポッキーを高々と上げ、下ろし、決めポーズを披露した後、「真田幸村見参ッ!!」の名乗りと共に、ぶっすり、と盛られたアイスにポッキー二本を突き立てたのだった。
     最早疑いようもない事実に佐助はテーブルに突っ伏し、小十郎は小十郎で他のテーブルのオーダーを取っている蒼い『武将』を渋面で盗み見ている。
    「今日は特別に報奨をくれてやる。欲しいモンはなんだ? 言ってみろ」
     客相手にそれでいいのか!? と喉元まで突っ込みが迫り上がるも、そういうキャラづけなのか足軽達は迷いも躊躇いも一切無く、揃ってテーブルに両手をつき平伏すると次々と『所望の品』を述べていく。
     それらを手早くハンディに入力し終えた『武将』は、ちら、と横目にだが確かに小十郎達のテーブルを見やり、一瞬、口角を吊り上げたのだった。
     周りのテーブルから聞こえてくる「ゆっきーマジ天使」だの「ムネたん今日も超Cool」だのといった、足軽からすれば褒め言葉なのだが従者ふたりには拷問に等しいそれらにもダメージを喰らいつつ、改めて主達の『戦装束』に額を押さえる。
     幸村は赤のショートジャケットと下半身の装具はおなじみのあれを模した物だが、中身は白のワンピース(フレアミニ)だ。唯一の救いと言えば黒のレギンスを着用しており、生足をさらしていないことだろう。
     対して政宗は魅惑の生足さらけ出しで、すね毛の処理も余念が無く見事なまでにツルッツルであった。これでピンヒールなど履いていたらさすがの小十郎も先ほどの佐助のようにテーブルに突っ伏したであろうが、不幸中の幸いとでも言おうか動きやすさ重視の踵の低いショートブーツを履いていた。
     それを確認して、あぁ良かったまともだ、と思った後、そうじゃねぇだろ! と小十郎は感覚が麻痺しかかっている己にセルフツッコミをかます。
     生足を見せている以外は政宗もおなじみの蒼い陣羽織を身に纏い、中身は黒のワンピース(こちらもフレアミニ)だ。
    「独眼竜はタイトスカートの方が似合いそうだけどねぇ」
     佐助も感覚が麻痺しかかっているのかどうでもいい感想を漏らした後、とりあえずなにか頼もう、と疲れ切った顔で店内を一瞥した。
     赤と蒼以外の『武将』にお願いしようと片手を上げかけるも、その動きは中途半端なところで、ぴたり、と止まる。どうした、と小十郎が相手の顔を覗き込むように首を傾げれば、佐助は正面を向いたまま「ごめん、旦那。目が合っちゃった……」と絶望一色に染まったか細い声で告げたのだった。
     誰と、とは明確にしていないがこの場で佐助が固まるとなれば、自ずと相手は知れるという物で。
     ギギギ、と軋み音が聞こえそうなほどのぎこちない動きで小十郎も佐助の視線の先に顔を向ければ、その昔に嫌と言うほど目にしたドヤ顔がそこにはあった。
     あ、ヤバイ、と理屈ではなく本能が警鐘を鳴らしたのと、政宗が一歩踏み出したのは同時であった。反射的に腰を浮かし掛けるもまさか逃げ出すわけにも行かず、気力と根性でどうにかその場にとどまる。
     だが、小十郎達のテーブルに到達する前に手前のテーブルから声が掛かり、政宗は拍子抜けするほどあっさりと方向転換すると先と同じ調子でオーダーを取り始めた。その間に佐助は抜かりなく別の『武将』を呼び止め、ろくすっぽメニューも見ずに、これとこれと、あとこれね、と勢いだけで注文を済ませ、小十郎も同様に自分がナニを頼んだのか把握しないまま復唱された物も右から左であった。
     よくわからんがなんかヤバイ、と二人揃って焦燥感に駆られ、とにかく食べるモン食べたら即離脱だ、と目と目で通じ合い、こくり、と小さく頷きあった。
     これが普通のカフェであったのなら憚ることなく素直に声も掛けられたというのに、と落胆で肩を落とす従者ふたりを余所に、「いざ参る!」と幸村は無駄に元気だ。
    「なんだありゃ」
     随分と勇ましいことで、と小十郎が声のした方に顔を向ければ、なにか白い物を手にした幸村が足軽と対峙しているところであった。
    「あー、これだね。『ゆでたまご(オプション付き)』」
     メニューに記載された『オプション』の文字に小十郎が首を傾げれば、佐助は半眼で自分の額を指さし、
    「客のココで、こつん、とやって、その後に絆創膏と『痛いの痛いの飛んでけー』的なおまじないまでが1setってのじゃないの?」
     ビアガーデンでバドガールがやってたの見たことある、との呆れの多分に含まれた説明が言い終わるか終わらないかのうちに、幸村は手抜き一切無しの全力で足軽の額にゆでたまごを叩きつけていた。
    「……あーあ」
    「……ありなのか、あれは」
     掌底までサービスはやりすぎだろう、とどんどん生気の無くなっていくふたりの目の前に「Hey.待たせたな」とのCoolな台詞と共に、ことり、ことり、と皿が置かれていく。
     幸村に気を取られ政宗の接近に気がつかなかった従者達は一様に言葉を失い、目の前に置かれた皿を凝視するしかない。
    「さて、と。じゃあ一発気合いを入れて書いてやるから待ってろ」
     黄色くてふんわりまぁるいそれはなんの変哲もないオムライスだ。だが、こういった店でのオムライスにはお約束事がある。
     政宗の手にしているケチャップのボトルを小十郎は恐る恐る見上げ、そのまま視線を上へと徐々に持っていけば、これ以上はないと言わんばかりに喜色満面な政宗がかつての右目を見下ろしていた。
     それが客観的に見て可愛らしいと表現できる物ならまだ良かった。残念なことにそれは骨の髄まで喰らい尽くす類の好戦的な物で、ある意味とても見慣れた戦場に相応しい類の物であった。
     ぽん、と軽い音を立ててキャップが外され、ぐっ、と政宗の手に力が籠もる。途端、ぼひゅっ、と空気を含んだどこか間の抜けた音と共に狙いの外れたケチャップが、避ける間もなく小十郎の服に飛び散った。
    「おっと、Sorry.このままじゃシミになっちまうな」
     さして慌てた様子もなく政宗は小十郎の腕を掴むと、有無を言わせず、ぐい、と強く引いた。突然のことに抗うという選択肢は現れなかった小十郎は引かれるがままに足を進め、関係者以外立ち入り禁止の扉の向こうへ連行されていったのだった。
     片倉の旦那ファイト、とひとり残された佐助は苦笑いと共にオムライスを口に運ぶ。染み抜きだけで済むといいんだけどねぇ、と無駄にアグレッシブな竜を今の小十郎が巧く窘められるとは到底思えず、心の中で手を合わせる。
     五分経ち、十分経っても戻る気配のないふたりに、ほんとご愁傷様、と佐助がご馳走様と共に掌を合わせたその時、すぐ傍に赤が立った。
    「お食事中に申し訳ござらぬが、政宗殿はどうされ……」
     身を屈め声を潜めて問うてきた『武将』は言葉の途中で何かに気がついたか、はっ、と口を噤み、まじまじ、と佐助の顔を見やる。
     ぽくぽくぽくチーン、といった効果音が聞こえそうな間と幸村の表情の変化をいち早く察した佐助は、相手の口が大きく開かれ「さ」の字を音にする前にからあげを、えい、と押し込んだ。
    「さふぐっ!?」
     目を白黒させつつも、もぐもぐ、と口中の物を噛み砕いている幸村を見上げ、あーこの子気がついてなかったんだ、と佐助は喜ぶべきか哀しむべきか非常に微妙な面持ちになる。
    「竜の旦那なら片倉の旦那連れて奥だよ。ケチャップ飛ばしちゃったから染み抜きしてんじゃないの」
    「なんと、片倉殿も来ておられるのか。いやしかし今はそれどころでは……」
     困ったように店内を見回す幸村にならって佐助も、ぐるり、顔を巡らせれば、途中入場の足軽が何組か来たのか先よりも店内が賑わっている。
     単純に手が足りないのだな、と佐助が状況を把握したのとほぼ同時に幸村は鼻先がつくほどに、ずい、と身を乗り出すと「力を貸してくれ、佐助」と無駄に真っ直ぐで力強い眼差しを向けてきた。
    「は? いや、そんなこと言われても」
    「佐助なら大丈夫だ!」
     根拠のない自信で言い切られ、先の小十郎同様、ぐい、と有無を言わせず腕を強く引かれる。ちょっとちょっと! と抗議の声を上げる佐助を引き摺り、幸村も関係者以外立ち入り禁止の扉をくぐった。
    「いくら非常事態だからって部外者引っ張り込んじゃマズイでしょ」
    「店長には俺から説明する。大丈夫だ」
    「だからその根拠のない自信はどこから来てるの!」
     あーもー! と頭を抱えた佐助だが、用度品やらが仕舞われている資材置き場の前を通りかかった際、微かに漏れ聞こえた物音と声に一瞬にして真顔になるや『片倉の旦那、イキロ』と見えない涙を拭ったのだった。

    ◇ ◇ ◇

    「ゆっきーにお仕えしてる忍の『さす子(仮)』でーす。よろしくねー」
     見習いだから優しくしてネ☆と空いた皿を下げつつアピールし、なんだかんだでそつなくこなす器用貧乏な元忍は、見事、主の期待に応えたのだった。
     消えたムネたんの代わりにさす子(仮)が奮闘するその裏では、やはりというかなんというか小十郎が期待を裏切らぬ不幸ぶりを発揮していた。
     棚と棚の間の狭い空間に追いやられた挙げ句、中途半端な位置に尻をついてしまい肩胛骨で背を支える体勢となり満足に動けない小十郎の前には、肉食獣もかくやと言った今にも舌なめずりをしそうな政宗の姿がある。
     明かり取りの窓すらなく、室内をぼんやりと照らすのは非常口を示すパネルのみだ。光源を背負った政宗の左目が、ぎらり、と鋭い光を発したように思え、僅かにだが小十郎の肩が跳ねた。
    「ま、政宗、さま……?」
     この期に及んでまだ信じたくないのか確認するように名を呼べば、形の良い唇を吊り上げ政宗は「Yes, You're right」と肯定の言葉を発した。
     それを聞いた瞬間の絶望に満ちた小十郎の表情に、当然のことながら政宗は片眉を跳ね上げ「なんだそのツラァ!? ここは再会に感動して涙ぐんだり抱きついたり、感極まってDeepなKissを寄越すところだろうがよぉッ!?」と隠すことなく不満をぶちまけてくる。
     確かにその物言いはかつての主であり、更に近すぎて政宗の全身が視界に収まらないことが幸いしたか、はっ、と気を取り直した小十郎は負けじと声を張った。
    「阿呆ですか! アンタ阿呆ですかッ!? どこの世界にスカート履いた主をスルーして何事もなく会話を成立させられる従者がいるんですかッ!? ご乱心召されたか!? 小十郎はわけがわかりませぬッッ!!」
     まずはとりあえずどけ、とのし掛かるように迫ってくる政宗の肩を、ぐいぐい、と押し返すが、足の間に割り込んでいる身体は揺らぐことなくその位置をキープし続け、小十郎を見下ろしている。
     さすがに分が悪い、と小十郎が舌打ちをすれば、先ほどまでの不満顔はどこへやら。政宗は愉快そうに目を細めると肩を押している小十郎の手を優しい手付きで掬い上げ、流れるような動作でそれを唇へと運ぶと、ちゅっ、と軽い音を立てて指先に口づけた。
    「体勢の不利だけじゃなさそうだな」
     中指の先に吸い付いたと思いきや、軽く歯を立て、にぃ、と笑う。小十郎はかろうじて情けない悲鳴は飲み込んだが、昔とは違い今の政宗と己には体格差がさほど無いことに気づき愕然となる。
     十年という壁は大きかったのだと今更ながらに実感し、これは本格的にヤバイ、と表情には出さず内心で焦る小十郎の心中などお見通しであるか、政宗は殊更見せつけるかのように赤い舌を出し、ねっとり、と小十郎の指を舐りだす。わざと湿った音を立て口淫の真似事をする政宗の瞳は飢えた獣のように、ギラギラ、としており、知らず小十郎の喉が、ひくり、と痙攣する。
    「今なら力負けはねぇな」
    「けっ、ケダモノですか、アンタッ!」
     会って即コレってどうなんだ! と小十郎が至極尤もなことを訴えれば、政宗はナニか考えるように小首を傾げ、Hum……、と小さく漏らした。動きの止まった主に、ほっ、と息をついたのも束の間、これ以上はないほどに口角を吊り上げた政宗の発した言葉に、小十郎は絶望の淵へと叩き落とされた。
    「生憎と据え膳は頂く主義だ。You see?」
     こうなった政宗を止める術は最早ない、と諦めの極致に達した小十郎は、がっくり、と項垂れる。刹那、主の身につけているスカートの前面部分が不自然に盛り上がっていることに気づき、「あぁ、タイトスカートじゃ大変なことになるからフレアスカートなのか」と思考は早々に現実逃避を始めたのだった。

    ◇ ◇ ◇

     休憩室のソファに転がり皆に背を向けて丸くなっている小十郎を、ちら、と横目に見やり、佐助はどこか、ツヤツヤ、と満ち足りた顔をしている政宗を前に「ホントご愁傷様」と小十郎に対して内心で手を合わせる。
    「まぁ、大方の予想はついてるけど、説明してちょうだいよ?」
    「政宗殿の作戦でござる!」
    「あーうん、それはわかってるから」
     ふんふん、と鼻息荒く興奮気味に口を開いた幸村を軽くいなし、佐助は敢えて衣装チェンジの理由は聞かず着替え終わった政宗の返答を待つ。
    「目立つことすりゃすぐにツイッターで拡散されるからな」
     それを利用しない手はねぇ、とドヤ顔で答える政宗に「えぇえぇ、おかげさまで一発でわかりましたよ」と佐助は、げんなり、とした様子を隠しもせず言葉を返し、くるり、と手中のボールペンを回した。
     幸村の無茶振りで政宗の穴を埋めた為、臨時雇用契約書を作成しているのだ。まさかこんな無茶が通るとは、と頭を抱えた佐助だが、店長が誰かを知って道理が引っ込んだことを納得するしかなかった。
    「なんだったら正式契約するかい? キミのような優秀な人材が増えるのは大歓迎だよ」と今生でもその美貌は健在である豊臣の軍師殿のお誘いは丁重にお断りしたのだが。
    「確認したいんだけど、趣味でやってるわけじゃないんだね?」
     あくまで作戦なんだよね? と念には念を入れて確認してくる佐助に、幸村は力一杯頷き「無論! おなごの装束を纏おうとも、某の心は常にもののふにござる!!」と雄叫びを上げた。
    「だが、仕事である以上、手は抜かぬ!」
    「あーうん、そうだね。えらいね旦那」
     幸村の全力投球っぷりを実際に目にした佐助は遠くを見つつ、はは、と虚ろな笑いを漏らす。
    「俺様達は独眼竜の作戦にまんまと釣られたわけだし、晴れて目的達成。ならもうこのバイト続ける理由はないよね?」
     お願いだから「Yes」って言って、と背を丸めたままの小十郎を気にしつつ佐助が政宗に問えば、問われた当の本人は「An?」と怪訝な声と共に片眉を上げ、「ナニ言ってやがる。辞める理由もねぇだろ」と言い切ったのだった。
     そうきたか、実は気に入ってやがるなこの野郎、と佐助が苦い顔をしたのと、今まで微動だにしなかった小十郎が身を起こしたのは同時であった。
    「政宗様……」
     地を這うほどの低い声に、すわ極殺モードか!? と全員が青冷めた刹那、
    「わかりました。ですが政宗様に何かあっては一大事。ならば小十郎が常にお側におり、政宗様に不貞を働く輩は責任もって排除いたしましょうぞ!」
     と、信じ難いことを口走った。資材置き場でイタされたことがよほどショックで、正常な状況判断ができなくなってるのかと佐助が青冷めたまま相手を窺い見れば、残念なことに小十郎は正気で大真面目だ。
     面倒臭い方面で忠義心発動キター! と頭を抱えた佐助の肩を、ぽん、と叩いたのは幸村で。労ってくれるのかと顔を上げた佐助だが、主は、キラキラ、と期待に満ちた眼差しで忍を見つめており、彼の言わんとすることがイヤでもわかってしまった優秀な忍は、
    「さす子(仮)もうお婿に行けない」
     と、顔を覆ったのだった。

    ::::::::::

    2012.06.12
    2012.06.13
    2012.06.18

    伊達セクシー主従と真田キュート主従できっとお店の売り上げアップ。
    ひどいオチですまない。
    茶田智吉 Link Message Mute
    2018/08/07 5:52:57

    【BSR】昔の主がミニスカで現れた。どうする?(コマンド▼)

    #戦国BASARA #伊達政宗 #片倉小十郎 #猿飛佐助 #真田幸村 #政小 #腐向け ##BASARA
    転生パラレル。
    政宗と幸村が女装カフェでバイトしてるいろいろとひどい話。
    (約8千字)

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