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    しおり
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    しおり
    悔恨、それから

    「そこで何をしている。」
    佐和山城への登城の道中、石田三成はその巨躯を認めて呼び止める。燦々とした朝日に照らされた黒鉄は背から蒸気を吐き出しながら振り返る。
    聞き慣れない軋んだ高音が耳に届く。普段の様子からすると本多忠勝はこの音によって会話を成立させているようだが、生憎付き合いの短い三成には一切分からなかった。
    三成は辺りを見回す。これが居るとなればその主である徳川家康も当然居るはずだが、何故か周囲には居なかった。三成の知る限り家康は人の中に居ることを好む男であったので、恐らくは城主である自分の許可を取ることなくまたも勝手に本丸へ入り込んでいるのだろう。そして家康よりはるかにまともである本多は勝手に城主不在の本丸へ入る訳にはいかないと、自分が通るであろう道の端で待機していたと三成は推測し、思わず顔を顰めた。
    何なんだあの男は。豊臣の傘下に入ってまだ数月も経っていないというのに既に三度用も無く佐和山城へ訪れている家康を思い、険しい顔のまま深く溜息をつく。すると目の前の巨躯は何かに気付いたように下降気味の物音を発し、巨大な背を丸める。本多の動作により顔に影が差した三成はふと、黒の中に僅かながらの白があることに気付いた。
    視線を違和感の方へ向けると、鉄で出来た掌の上に見覚えのある白があった。三成が顔を覗き込ませると、本多は戸惑ったように背を起こす。急に差し込んだ東日が眩しく三成は思わず目をしばたたかせるが、同時にああと声を漏らした。
    本多の手の中にあったのは蝶だった。羽の頭が直線状になっているくすんだ白の大蝶は、三成の副官である大谷吉継の兜の後立のそれによく似ていた。通りで見覚えがある筈だと三成は覗き込んだ体勢のまま本多の顔を見上げる。
    三成から見ると左手側にある瞳がちかちかと点滅している。逆の目はそんなこともなく真っ直ぐ三成を見ている。顔のおおよそが金属に覆われているせいで表情は分からなかったが、元より他者の感情を気にしない三成にとってはどうでもいいことだった。
    「これがどうした。」
    「―――…………。」
    本多の言が分からない三成はもう一度蝶を見る。人の手に乗っているというのに逃げもせず、ただその大仰な羽を息苦しく緩慢に震えさせている様を見る限り、死が間近であることは戦以外の知識に疎い三成にも分かった。
    常であれば虫如き捨て置けと答えていた三成であったが、自らの副官として著しく優秀である吉継のことが頭を過ぎってしまった故かどうしてもその一言を吐き出せない。しばらく逡巡した後に三成はすれ違いざまに「付いて来い」と短く告げ、そのまま本多が背にしていた林の中へ割り入っていった。

    陽光が微かにしか届かずひんやりと冷たい木々の間を数歩ほど進んだところで、三成は立ち止まり座り込んだ。黄や紅に色を変えた枝葉をあまり折らないように慎重を期して三成の後を追った本多はその数歩後ろに佇む。
    三成は文字通り肌見離さずに持っている長刀を傍らに置き、代わりに木の枝を握っていた。その肩越しを本多が覗き込むのと三成が振り向いたのは同時だった。
    貸せ、と三成は両手を繋げて広くして、本多へ手の中の蝶を移すように伝える。人の数倍はある本多の片手ですら目立つ程の大きさだったそれが三成の両手に移動すれば、当然の事ながら羽の全てで掌全体が覆われてしまう。ところが三成は特に驚く様子もなく、むしろ慈しみすら感じさせる態度で受け取ると、ゆっくりと枝先で掘ったばかりの小さな穴に蝶を横たわらせた。
    本多は林の静寂を乱さないように静かに蒸気を上げる。三成はそれに気付かないまま、穴の周りの土を白と薄茶の羽に被せていった。
    「これはもう死ぬ。寿命だ。」
    僅かばかりの抵抗とばかりに蝶は悶えるが、やがて土の重みに身を任せていく。本多は何も言わず三成が土を掛け続ける様を見つめていた。
    ざくりざくりと三成は蝶の墓穴周りに枝を突き立て泥を寄せる。澄み切った朝露の隙間から俄に土の湿度が匂い立つ。
    「刑部や半兵衛様ならば生かし方が分かるかも知れない。だがこの城には今私しか居ない。私は蝶の生かし方など知らない。」
    その内に三成の手が止まる。蝶の羽は既に大半が地面に埋められ、左翅の頂点だけが幾らか最後の呼吸を惜しんでいるように揺らめく。三成は目を伏せながら小さく呟いた。

    「私は葬る事しか知らない。」

    煌めく陽光が降り注いで尚影差すその横顔に表情は無く、そして言葉にも感情は無い。自らの言葉を持たぬことを是とする忠勝は、何も言わずに生身の左目を細めた。


    § § §


    領民は領主に似るのか、はたまた領主が領民に似るのか。お前はどちらだと思う、忠勝?
    いや、何となくだが……ふと不思議に思ってな
    三成が佐和山の領主になってからまだ半年らしいが、佐和山の人々は三成によく似ているなと感じてな
    ああ。外者そとものには些か厳し過ぎるきらいはあるが、一度胸襟を広げてくれると昔からそこに居たかのように自然に接してくれる……武田とも前田とも元親の所とも違うが、良い場所だ
    勿論三河や駿河や駿府も良いぞ! ああ、そうだ、この日の本は領主が領民を想い、領民が領主を慕う良い国ばかりだ……なのに何故争いの芽は絶えないのか……
    いや、理解はしているつもりなんだ。領地を広げ、民を増やし、石高を上げることで国は発展し、栄えていく……現状維持では何かがあった場合の損害が大き過ぎる……発展し続けなければ自らの身だけでなく、守るべき民をも失ってしまう……
    だがその為に戦をしていては本末転倒だ。守るべき民を殺し、実りを齎す土地を踏み躙る……時として武士もののふが名の為に民を犠牲とする戦いすら起こるこの世が決して良いものだとは言えない
    ……力を以って天下を統べるという秀吉公の考えは理解出来るが受け入れ難い。しかしながらそれもこの混乱をいち早く終わらせる為にはそうした強引な手段も取らざるを得ない。理解している。分かっている。が、ただ……

    ……なあ、忠勝。三成はあんな奴だが決して悪い奴ではないんだ。いやむしろこの時代においては珍しい奴だとも思う
    あいつは嘘をつかない。冗談も言わなければ、世辞も言わない。物事を潤滑に進ませる為に口先だけでどうにかすることを好まない。実際の行動が全てだとして、食事も睡眠もまともに摂らず戦い続け働き続け指示を下す……領主領民の関係もあるだろうが、あの佐和山の人々でさえ三成を心配するぐらいだからな。ワシの知らないところでもあいつは秀吉公の御為にと走り回っているんだろうな
    ……佐和山は良い城だ。遊びは無いが無駄が無く、かと言って切り詰めた様子も無い。質実剛健たる三成らしい居所だ。
    過不足や不正が無いだけではない。怪我や病で田畑や山にることが出来ない者にも等しく仕事を与え、等しく禄を与える……どんな者であっても分け隔てなく接し、でなくこうの為に尽くせと説く……意識することなく互いが互いを支え合い補っていく国……

    ……もし三成が―――もし三成が執るまつりごとこそが秀吉公の……豊臣が目指す道であるならば、ワシは喜んでその覇道の為に力を尽くそう。だが―――
    ……いや、先のことを考え過ぎるのは杞憂というものだ。
    天は落ちず、地は割れず……そうであることをワシは願うことしか出来ない……。



    紫紺の閃光が瞬き、容赦の無い斬撃が多重に襲いかかる。後ろへ一歩飛び退りながら胸の装甲でそれを受け止めれば、最早周囲に生命反応は無くなっていた。
    キィンと納刀の音が谷底の岩壁に反響する。忠勝の右目にはこの場唯一の熱反応が映し出されていた。

    「何故貴様が私の道行きを遮る!!」

    憎悪と嫌悪を両の眼に宿した《彼》―――石田三成が目の前に立っている。忠勝は機甲槍を構えたまま、間合いを測った。
    鋼と鉄で織り上げられた重厚な体は三成が放つ瞬殺の居合に反応する事が出来ない。しかしながら距離を取って砲撃体勢に移ろうものなら、超人的なその脚力で以って間合いを支配され一方的な斬撃を受けることになる。対人用に練り上げられた独自の抜刀術は忠勝の重装甲からすれば些か威力が足りなかったが、それでも明確に関節や動力関係を狙われると一気に窮地に陥り得る。主君である家康の後ろから三成の戦法を見つめ続けていた忠勝はそう判断し、敢えて槍一つを手に取っていた。
    ぎりぎりと音が聞こえそうなほどに食い縛った歯の隙間からまるで呪詛の様な言葉が吐き出される。《彼》の憎しみと【彼】の苦しみに言葉が持てない自分を忠勝は恨んだ。
    「許さない……何故貴様達は家康に付く……奴の犯した罪を何故誰も咎めない……!!」
    忠勝の視界から一瞬にして三成の姿が消える。咄嗟に槍で前身を庇うと、人中線に沿って正確無比な痛打が一気に駆け上がる。刃と穂先が強く打ち付けあったところでようやく鍔迫り合いを挑む三成の般若面が忠勝の眼前に現れた。
    忠勝は真正面から三成を見る。目の奥にある空洞を見る。かつて【彼】は《彼》のことを『美しくて、哀しい』と評していたが、忠勝はそうは思わなかった。それが自分が【彼】のように血肉を持ち五感豊かに生きていないから分からないのだとばかり受け止め、己の不明を恥じたものだが、それでもやはりと忠勝は考えた。
    主君を失った《彼》、唯一である主を亡くした《彼》、最もの忠臣と謳われながら何も出来ないまま突然世界の全てが終わった《彼》。皮肉だと忠勝は思った。この世で一番生きることから掛け離れた存在である自分が、目の前で必死に生きようと藻掻いている《彼》のことが理解できることが、忠勝にとっては何より残酷な皮肉にしか思えなかった。
    忠勝は穂先を払い、予想していた通りとばかりに空中で身を反らせ追撃を与える三成を紙一重で避ける。後の為に電撃盾の楔石を背の大印籠から放つがこちらも素気無く斬り落とされる。《彼》の刃に迷いは無い。《彼》のまなこに曇りは無い。何故ならば―――

    「貴様のその目、許さない! 死しても家康を守ろうとする目だ……!!」

    ―――《私》がそうであるからだ。
    鉄の血を巡らせ鋼の肉を纏って尚家康の為に『生きる』男は、少しだけ険しい表情を見せてから、強く槍の柄を握り込んだ。


    § § §


    目の前に転がる骸は、【彼】が何もかもを投げ打ってまで必死に求めた世界が、【彼】に与えた答えだった。
    持たない筈の声が叫ぶ。【彼】の名を呼ぼうと叫ぶ。悲嘆と慟哭が目に映る全てのものを歪ませていく。それでも忠勝は叫ぶ声を持てず、泣く事すら出来なかった。
    戦の為に生きてきた男にはそれらの不要な機関が存在しない。人が人として生きる為の装置が無い。だがそれでも忠勝は人であったし、人であり続けたいと願っていた。
    忠勝は膝を折り、主君の傍らに跪く。仰向けになった【彼】の表情は穏やかで、まるで優しい陽光を浴びて眠っているかのようだった。志半ばの無念の死であっても【彼】は決して《彼》のこと憎まないであろう。だからこそ自分は【彼】を守り慈しみ、【彼】の為に生きてきたのだ。
    家康様。声にならない言葉は体中の軋みとなって現れる。涙にならない感情は認識出来ない程の熱となって手足の全てを震えさせる。家康様、家康様。繰り返し繰り返し呼びかける度に何処かの回路が焼け爆ぜ、視界に黒が混ざり出す。
    【彼】はこの為に生まれてきたのですか。【彼】はこの為に『生きて』きたのですか。だとするならば何故、【彼】はここまでの、傷を。解を導き出せない問ばかりが頭を巡り、体内温度は限界点を迎える。
    やがて忠勝の右目の裏で錯綜した記録が流れ始める。森の日の事、海の事、平原の事、雨の事、桜の事。幼いながらも国主として精一杯生き抜いた【彼】の事、微笑みに全てを隠す覚悟を決めて生き続けた【彼】の事。【彼】が生き、己が生きた、この世界の事。
    徐々に機能を停止する己を自覚しながらも、忠勝はまた自らに『死』が訪れないことも理解していた。例え世界の全てであった主君が死んだとしても、自分も同じように死ぬ事は出来ない。人の血肉を持たぬ体では生に藻掻く事すら許されない。
    『貴……そ…目…許さな……死し…………を守…うとす…目……』。遮断された視覚の底から声が響く。《彼》は自分が死ねない体であることを知らない。死した【彼】をも守ろうとしていることを知らない。《彼》の憎しみと【彼】の苦しみを重ねてしまった自分を、遠退く意識の果てで忠勝は詫びた。



    次に目覚めた時、整備部の静止も聞かず体を宙に浮かせた。外は呆れる程の晴天だった。
    取り替えられた飛行用推進剤の燃料管は数度詰まったが無理矢理押し流した。血管代わりに全身くまなく張り巡らされた回路は一部機能が停止したままになっているが、処理を分散負荷させることで思考には特に問題は無いと判断する。流石に戦場に投入されるには心許無い動作反応しか取れないが、今から行うことを考えれば手足が動けば充分だった。
    竜の形をした日の本を見下ろし、目的地の座標を設置する。目指すは大坂城。あの戦から幾日経とうとも《彼》はそこに居ると忠勝は確信していた。何故ならば自分であればそうするであろうと考えていたからだった。

    《彼》の主君に合わせて造られた豪壮かつ巨大な天守閣は、不気味な程に静まり返っていた。敵方の主要戦力である己が本丸に到着しても音一つない。不審に思いながらも忠勝は巨躯の主の為に設けられた入口から中に入る。全ての戸口が閉ざされた城内は点々と配された蝋燭の裏侘しい光しか無く、澱んだ深い闇の中に沈んでいた。
    床を踏み砕かぬよう稼働熱から排される蒸気を利用して足裏を滑らせるように移動する。右目で襖の向こうの生体反応を確認すると、各階下にそれぞれ何人かが寄り集まっているが、その誰もが口を噤み息を潜めていた。僅かな布ずれや呼吸だけが絢爛な襖絵に星月夜の如き影をく。生者が死者として座するこの城は正に伏魔殿の如くであり、紛れも無く《彼》が天下を取った証左ですらあった。

    【彼】の生前、一度だけ入室が許可された大広間へ登り付く。この階の生体反応は一つしかなく、故にこの場所に居るのは《彼》のみだということが知れた。
    《彼》にはもう誰も居ない。自らを守り慈しんでくれる主も、その空洞を焼き尽くす為に燃やした仇も、地獄の果てまでも共にあらんとする友も、最早彼には何一つ残されていなかった。
    忠勝は大広間の下座に横たわる白を見つけた。片目の視界が自動で切り替わり、対象の急激な体温低下を訴える。蝶だ、と初めに忠勝は思い、それから《彼》だと認識を修正した。
    こちらへ背を向けるように折られていた体を開けば、夥しい血液がその真白の衣を一色に染め上げている。横一閃に削がれた首筋と腹は尚もだくだくと血を吐き出し続け、その向こうには篝火に照らされた赫刃かくじんがぬたぬたと持ち主の血潮を浴びて放り投げ出されていた。
    自刃。主君の仇討ちを済ませた今世に未練など何も無いのだろう。いっそ清々しいまでに正しい御仁だと忠勝は解するが、その正しさこそが【彼】を死なせたのだと思えば、納得はしかねた。
    忠勝は躊躇することなく《彼》を持ち上げ、一番近くにあった炎の中に右手を入れた。そしてその中の焚木を握り締めて強引に熱を得ると、そのまま《彼》の首を締めた。
    皮膚の焼ける匂いがする。肌を焦がす音がする。血が燃え尽きて灰になる。戦場ですら曝け出していた不健康な首はすぐにでも落ちてしまいそうで、この時ばかりは出力不足の己の手を有り難いと忠勝は思った。
    強引に差し込まれた熱のせいか、赤い視覚の中の生体反応は錯綜する。まるで殺しているようだと忠勝は感じた。熱した鉄の指が《彼》の首に巻き付いたまま離れない。殺しながらに生かしている矛盾が、《彼》と自分の共通点なのだと心の何処かで理解する。
    もう一度右手を熱し、広げた襟口から腹部も抑える。血塗れの衣では何にもならぬと剥ぎ捨て、代わりに上段の間を遮っていた絹を千切り、《彼》の体に巻き付ける。漆黒の帳の向こうには在りし日の覇王と軍師が手にしていた籠手と関節剣が恭しく奉られているだけで、その他には何も無かった。


    § § §


    空の果てと海の果てが繋がる水平線を、四国の主・長曾我部元親は岸壁の上から見つめている。
    三角巾で吊るされた右腕と腹部に巻かれた包帯は真新しい。いつも元親と共に海に眺めていたはずの碇槍は、自らと領国を陥れた元凶である毛利元就を討った際に、最高傑作であった巨大戦艦富嶽と共に海に沈めてしまった。自分という過去と、秋晴れの空という現在と、何処までも続く海という未来が交わるこの場所で、元親は何を考える訳でもなくただ立ち尽くしていた。
    家康、と亡き友の名を呟けど、空と海は何も変わりはしない。自国の警戒を怠ったことで失った民は戻りはしない、謀略にかかり戦に向かったことで失った兵は戻りはしない。
    自分らしくなく後悔している自覚は元親にもあった。しかしながら今回ばかりは失ったものが大き過ぎた。そしてどれもこれもが自らの隙の甘さに起因するものであることが元親には耐え難かった。
    天下分け目の戦で勝利した西軍の客将かつ中国八国をも手中に収めた元親の元には合戦直後からひっきりなしに支援の申し出が殺到したが、そのどれもを吟味する程の余裕が持てず先延ばしにしていた。唯一同軍として馴染みのあった島津の来訪だけは許可したものの、船旅とあって来るまでにはまだ数日掛かる予定だった。
    何とかそれまでにゃ戻しとかねぇとなとは思いつつも、腱が切れたのかろくに動かない右手と少し動いただけで容赦なく開く腹傷では復興作業に没頭することも出来ず、朝夕に普請の指示を出す以外にはこうして無為に過ごす事しか出来ない。自らの不甲斐の無さにほとほと呆れ果てた元親は先の支援の申し出を検討しようと立ち上がった、その瞬間だった。
    遠くで騒ぐ声が聞こえ、元親が見える訳でもない声の元を見ようと首を起こす。すると目に飛び込んできたのは青空を割くようにして伸びる白煙だった。元親は煙の先にある黒点へ目を凝らして、それが何であるかを直ぐ様に理解した。

    ―――本多忠勝。亡き友の最高の忠臣にして、最大の戦力。粗方友を名乗りながら敵になった自分へ仇討ちにでも来たのだろうと自嘲を込めて口元を歪めた元親は立ち止まったまま本多の姿を見つめる。
    すると本多も気付いたらしく、最高速度のまま下降してくる。距離を置いて対峙した元親はその人としては大き過ぎる手に乗せられているものを見て、目を疑った。
    ―――石田三成。騙されたとはいえ、共に手を組み戦った西軍の総大将。よくよく見れば元からただでさえ白かった顔は最早死人と変わらない程に青褪めており、血の不快な匂いが潮の香りに混ざっている。
    「石田……? おい石田しっかりしろ! 一体何があったんだ!?」
    思わず元親は駆け寄り叫ぶ。首を一周するかのように焼き爛れた皮膚は僅かに上下しているが、あまりにも弱々しい。元親は本多を見るが、絡繰の動作音だけでは意思疎通が出来ない。クソ、と誰へでも無い悪態を吐き捨て深呼吸をして、今出来る最善をどうにかして捻り出す。もう先走って後悔することはしたくない、それが結論だった。
    「……石田の手当が先だ! 本多、砦に行け!!」
    本多の機動力を考えると走っても間に合わない。元親がその場で跳び上がると即座に理解した本多は左肩を下げてその上に着地させる。そして膝を曲げて安定させると、両足を地につけたまま背面の発火筒を起動させる。高速で過ぎ去る景色に注意を払いながら、元親は落ち着けと口の中で呟いた。



    「凶王三成も身内にやられちゃ世話ねぇな。」
    手酌で猪口に入れた燗を一口で干すと、奥州筆頭・伊達政宗は向かいに居る本多へそう呼び掛けた。本多は幾分かの逡巡の後に、思わせぶりな物音を発した。
    「西が勝ったってのに目附すら寄越さずに帰ったかと思えば、大坂城で刀傷沙汰やらかした挙句に四国で療養たぁな……天下人様ってのは随分お気楽なモンだ。」
    へっと悪態をつきながら政宗は酒を注ぐ。用心の為に閉め切った室には本多と政宗が座している場所それぞれに一つの油皿しかなく、夕日を濃く溶かしたような灯りだけが深い影を落としていた。
    敗軍の将ながらも隣接する羽州と越後が家康によって休戦状態に持ち込まれていた為、関ケ原で決して少なくは無い損害を負いつつも無事に奥州へ戻り虎視眈々と機を窺っている政宗の意図は、そうした理に疎い本多にも分かっていた。
    政宗はもう一度杯を空けると、じっと本多を見つめる。視線を受ける本多はその中にある意図を見返す。

    「本多、アンタはこれからどうするつもりだ。」

    政宗の声色が低い。問われていると理解した本多は口を結んだまま回答条件の増加を待つ。
    「オレは石田ともう一度やり合って決着をつけなきゃならねぇと思ってる。これはオレのPrideの問題だが……先の戦のこともアンタの主君のことも混じってないとは言い切れない。」
    ふと政宗が視線を外す。本多はその瞳の動きが、昼に家康の墓所を訪ねた時のものと同じであると判断した。
    対等な立場での同盟を結んでいながらも、敵方の真田幸村に完全に足止めされた形で、西軍を裏切った小早川秀秋の援護も本多の制止を振り切って家康を討った石田三成の征討も果たせなかった無念は未だに政宗の中で昇華できずに燻り続けていた。手の内を知り尽くしていた筈の真田軍の動きが常のそれでなく、全てを見切った上での狡猾さが含まれていることに気付くのが遅れたことは政宗にとっては悔やむに悔やみ切れない誤算だった。
    後々に振り返ってみれば、ある意味で政宗は家康を信じている自分自身に気が付いていなかった。天下泰平の為に、万民の為に、ありとあらゆる戦を無くすために戦っている男が死ぬ訳が無い。農民達の生活をよく知る政宗にとっては家康が目指していた世界は己も求めんとするものであり、自分が死ぬことはあれどまさか家康が死ぬとは何故か思ってもみなかったことを、家康の死を告げた伝令で初めて自覚したのであった。
    真田との戦いが常のものであると見違みたがえてしまった自分。家康が死ぬ筈がないとは思いたがってしまった自分。一つしか無い眼ですらろくに見えなければ、こうした結果を招くことは分かりきっていた。
    後悔、郷愁、無念。政宗は手の内にある猪口を割らんばかりに握り締める。
    「オレは石田が憎かった。この竜の身を地の底に叩き落としたアイツが憎かった。だがその憎しみが、巡り巡って家康を殺しちまったのかも知れねぇ。知らず知らずの内にオレは、オレ自身の手で自分の目を曇らせてしまっていた……。」
    政宗は杯を膳台に戻し、虚空を見上げて息を吐く。それから居を正すと、真正面から本多の瞳を見つめた。その左眼は油皿の火を灯し、ゆらゆらと揺れていた。
    「……本多。お前が石田を討ちたいってんなら、オレは東軍同盟の相手として……お前の主君を信じた一人としてSupportする。
     先駆けさしてくれりゃあ御の字だが、そこまでは言わねぇ。それはアンタの戦だからな。ただ、」
    中途半端に言葉を切った政宗は瞼を細める。本多が促すように問い掛けに似た音を発すると、覚悟を決めたように息を吐き、それから目を閉じた。

    「……皮肉な話だが、あれ以降デカい戦は起こっちゃいねえ。もし仇討ちするなら、晴れて俺たちが乱世へ逆戻りさせる元凶って訳だ。」


    § § §


    水平線の向こうから昇る朝日が水面に金糸を紡ぐ。その漣を乱さないように高度を保ちながら、忠勝は四国の縁を沿うように移動していた。
    やがて元親へ三成を引き渡した崖の上が見えてくる。過去外海からの警戒網を形成する為に木々が伐採されたそこは忠勝が降り立てるほどには開けており、人が座るには丁度良い高さと広さの岩が二、三残されていた。忠勝はそこに揺らめく銀糸の存在を目視する。
    空中で飛行態勢を解除し、徐々に地面との距離を近付けていく。多少には生じる衝撃を膝で受け止め、体内機関に異常が無いことを確認すると忠勝は海に向かって歩き始めた。
    忠勝が歩む度に地は揺れるが、銀糸の髪の持ち主は振り返らない。忠勝の足で二歩分距離を空けて立ち止まると、足元に柔らかく叩きつけられる波の音だけが澄んだ朝の空気に満ちた。

    『何の、用だ。』
    三成は海を見つめたまま口を開く。しかしながらその言葉はそれぞれ最初の音だけを残して空気に変わる。数秒遅れてから問われたことを察した忠勝は改めて三成の隣に並び、唇の動きから言葉を確かめる。
    『何の、用だと、聞いている。』
    声の代わりにひゅうひゅうと高い息が吐き出される。忠勝には思い当たる節があった。喉に外傷を受けると発話に支障が出る。致命傷ながらも助かったとは言え、痛々しいものだと忠勝は三成の首に巻かれている包帯を見た。
    私の首でも取りに来たか、と続き、ようやく三成は忠勝を見た。忠勝はようやく自覚されたその空洞を見る。中身が無く煌めく鶸色の瞳はまるで玻璃の器のようだった。器は残っているのだなと忠勝は感じた。
    忠勝は揃えた膝の上に乗せられていた三成の左手を取る。そして手の平に人差し指の先で一文字ずつ書き伝える。
    【フクシュウ】。復讐、と言葉にならない声で繰り返し、三成の瞳が笑みに歪む。復讐、復讐か、確かに貴様にはその資格がある。音なく開閉を繰り返す唇がそう動くのを忠勝は見つめていた。
    私は家康を殺した、貴様の主を殺した、ならば貴様が私を殺すのも当然のことだ。三成は笑っていた。本来用いられるべき用途とは違う表情であるそれは人間らしい感情の発露だと忠勝は思った。忠勝は続きの文字を綴った。

    【生キナサイ】

    三成の笑みが止まる。理解出来ないというような意を含んだ表情と視線が忠勝に届く。それを無視して【生キテ 世ヲ 統ベヨ】と書けば、声を持たない三成が絶句した。忠勝はそれを見ると、数少ない生身である左眼を細めてみせた。
    三成の唇が震え、切り出す言葉が見つからない様に視線が右往左往する。何故だ、と吐き出した言葉はやはり最初の音しか聞こえなかった。
    何故だ、何故私を生かす、何故皆が私を生かす、私は、私こそが、この世で最も罪深い咎人だというのに、何故だ、何故私は死ねない、私は、私は……。最早誰にも伝えるものではない言葉を絡繰仕掛けの右眼で拾い上げると、忠勝はもう一度手の平に言葉を紡いだ。
    【ワタシハ アナタヲ 生カシマス】
    【アナタガ 統ベル 世ヲ ササエマショウ】
    【ソレガ ワタシノ フクシュウ】
    そして忠勝が手を離すと、三成は膝から崩れ落ちた。紺碧に白が混じった紬が土に汚れ、玻璃の器から流れ落ちる清水きよみずがいつまでもいつまでも岸壁を濡らしていく。
    三成は嗚咽に苦しむ。自ら切り開いた喉に喘鳴と不足した酸素が入り乱れて苦しんでいる。地面に両腕と両膝を突いて蹲り、絶え間ない咳と悲鳴のような呼吸を繰り返すその様に、忠勝はいつか三成が埋めた蝶のことを思い出した。
    あのように、死が間近にあるものへ墓を掘り介錯を務めるのは紛れもない慈悲である。徒に命を永らえさせるのは苛酷な行為であり、武士もののふとしては選ぶべきではない道である。だが、と忠勝は思っていた。
    【彼】ならばこの道を選ぶ。どんなに苦しみのたうち回ることになっても、自分ではなく《彼》を選んだ世界に対して求めるのは、この道だろう。それが正しいかどうか尋ねようにも【彼】はもう居ない。【彼】という言葉と思考を失った忠勝は、かつて【彼】が語った言葉からこれからの答えを推測していくことしか出来ない。これらは自己中心的な発想であり忠義を芯とする忠勝には耐え難い行為ではあったが、その苦しみが最期まで【彼】を守り切れなかった自分への罰だとして受け止めていた。
    朝日が昇り切る。身を起こし声無き声で慟哭する《彼》が自らの首に指を掛ける。折れた白刃は陽光を浴び、己の不要を求めぬ世界を悲嘆していた。



    私の目の前に蝶が飛んでいた。白い、大きな蝶だ
    私はそれに導かれるように歩み続けていた
    だが途中私はすれ違う御二人の姿を見た。秀吉様と半兵衛様だ
    私は蝶から視線を外し、御二方の背を追おうとした。だが御二方は振り返らずに進み続けていた。だから私は御二人の名を呼んだ。だが御二人はそれでもこちらを振り返っては下さらなかった
    ……私は当然だと気付いた。私は御二方の為と嘯きながら家康を殺した。私は私が生きる為に家康を仇として、さも御二方の御霊を慰藉せんと有りもしない大義を掲げて無用な戦を始めたのだ
    その結果が、どうだ。刑部は私の為にこの四国を壊滅させ、貴様を憎しみで以って西軍に下らせた。統一間近だった日の本は二つに割れ、未だに埋められない溝渠が存在している
    ……私は走った。例え追いつかぬとしても、せめて懺悔をと走り続けた。御二方の背にありったけの言葉を叫んだ
    それが一里二里三里と続いただろうか。もっと続いたかも知れない。ただひたすらに私は走り続け、叫び続け、御二方の背を追い続けた。足がもつれ何度も転びそうになりながらも、喉が擦り切れ血反吐が言葉を遮りながらも、私はただひたすらに懺悔の為に走り続け叫び続けた
    その時突然立ちはだかるように蝶が現れた。血よりも鮮明な鉄の匂いが立った、焦がすような熱を感じた。私は眼前で見て初めてその蝶が蝶ではないことに気が付いた
    私はその絡繰の蝶に怒鳴った。だが蝶は決して私にその先を行かせなかった。私は動けないまま血まみれの体で悲鳴のように御二方の名前を呼んだ
    すると半兵衛様だけが私に振り向いて下さった。秀吉様は振り向かれなかった。生前通りの微笑みを湛えたままの半兵衛様は秀吉様に何かを話されると、私へ三度手を振ってまた前を向かれてしまった。遠ざかる御二人の背中を見つめていると、私は膝の力が入らなくなってその場に座り込んでしまった
    そうすると今度は目の前には骸が広がった。家康の、刑部の、貴様の、毛利の、真田の、忍の、島津の、立花の、金吾の、その他東軍西軍問わずありとあらゆる兵の、将の骸が、荒れ地を満たすようにそこら中に転がっていた。私だけが、生きていた
    ……私は、私の軽挙を悔悟した。私は救いを求めることが出来る身では無かった。懺悔などただの自己満足でしかなく、ましてや死に逃避するなど初めから許される訳が無かった。秀吉様方はそれを御存知だった。私が愚劣な咎人であると、御二方は知っていたのだ
    私は死ぬべき人間だった、他の誰よりも死ぬべき人間であることは明らかだった。だが自らの為に己の目を眩ませた私は、刑部を死地に追いやり家康を殺し、生き残った。葬ることしか出来ない私だけが生き残った。それが無意味であることを知らないまま、私は、生きてしまった

    ……三日前、本多が私の元へやってきた。奴は私を生かすことが私への復讐だと語った。生きて世を統べよと言った
    貴様は贖罪の為に生きろと言った。刑部の罪を自らのものとするならば刑部が殺した者たちだけでなく、刑部の分まで生きろと私に言った
    私は私が死ぬべき人間だと自覚し、首と腹を切った。だが貴様達は死に逃げず生き続けろと私を救った。秀吉様半兵衛様亡きこの世は私にとって地獄に等しい。だがそれでも、貴様達は生きろと言う

    私の贖罪がこの生に、この地獄を天下人として生き抜くことにあるとするならば、私はそれを甘んじて受ける
    それこそが私への罰であるとするならば、私は不惜身命の一念で以って贖い続けなければならない。いや、私の今世だけで贖い切れる筈がない。それでも私は、死の間際まで、いや、例え死したとしてもその為だけには生き続けねばならない
    ……長曾我部、私は明日にでも大坂に戻る。無為に過ごしたこの一月を一刻も早く埋めなければならない。
    貴様が私に求めたこと、施したことは決して忘れない。必ず報いる。だから後少しだけ、私の身勝手に付き合ってくれ。


    § § §


    その喉元に深々と刻まれた大火傷の痕を認めると、政宗はぴくりと眉を動かした。だが当の本人はそれを気に止めることも無く、口を開いた。
    三成が向かっている書机の前に畳横一枚分を空けて置かれた円座に座りながら、政宗は言葉を聞いたつもりだった。が、耳に届いたのは途切れ途切れのいろはとその間に挟まった空気の音のみであったので思わず反射的に「What?」と聞き返す。政宗様、と背後に控える右腕が示すように名を呼んだことでようやく政宗は三成が声を失っていることを悟った。
    自分の声が聞こえないと理解した三成はさっさと立ち上がると、飾り気の一切無い黒の矢立と何枚かの紙を持って政宗の前に座る。無論三成の下には円座も座布団も無く、上座ではあるが随分と作法の無い行為に政宗は無性に苛付いた。
    三成はさらさらと何事かをしたため、政宗に手渡す。それを受け取って読んだ政宗の背に明らかな怒りが発したのを見て、抑えるようにと小十郎が名前を呼ぶ。政宗は振り返りもせずに背後へ紙を押し出す。今度は小十郎が眉間に皺を寄せる番だった。
    【引き続き奥州を治めよ 但し度量衡は豊臣で使用していたものとする】。端的ながらも、天下二分の大戦で敗軍の将となった政宗を逆上させるには充分な内容だった。
    石田、と地を這う低音で政宗は三成の名を呼ぶ。声が聞こえないことに慣れていない三成は『何だ』と口を動かす。政宗はその胸倉を掴み、表情の変わらない三成を眼前に引き寄せた。
    「アンタは一体何度オレをコケにするつもりだ……!?」
    小田原で負け、関ヶ原で負け、屈辱に耐えて沙汰を受ければ、これまでと何も変わらず生きよと下され。本多との密談で一度は下げた溜飲が再び胃の底から湧き上がる。怒りで震える政宗の手を目だけで見て、鬱陶しそうな表情になった三成は口を開こうとして声が出ないことを思い出したのか面倒そうに閉じた矢立の蓋を再び開けた。
    【何が不満だ】。真新しい楮紙の端にそう書いてみせた三成に、政宗は怒りを通り越して呆れ果てた。
    「いいか石田、オレはアンタに二度も負けた。二度も負けておきながらここまでおめおめと生き残っちまった。だからオレは今日ここに死ぬ覚悟で来てんだ、それがどういう意味かアンタでも分かんだろ……!?」
    【分からない 何も変わらぬのであれば越したことはない】
    「テメェ……!!」
    政宗は両手で襟元を掴み直す。若干の焦燥を滲ませながら名を呼ぶ小十郎の存在が政宗の衝動を既の所で留めていた。

    政宗の怒りを怪訝そうに見ていた三成はふと掴まれている両手を持ち、下ろさせる。そして座したまま後ろに退くと、ごく自然な動作で畳に両手の先を並べると深々とこうべを下げた。
    仮にも天下人である三成が、敵対し敗北した自分に額付けてまで、これまでと何も変わらぬように振る舞えと命じる。三成の行動も思考も何もかも理解出来ない政宗は驚愕と共に絶句する。動揺する政宗を尻目に頭を上げた三成は再び紙に筆を滑らせる。
    【国家の安定には諸国が安定する必要がある 不満があるならば私が都度応じる】。そこまで書いたところで手が止まり、三成は何かを必死に思い出そうと書に伏せた目を頻りに左右に動かす。そしてようやく記憶から探していた言葉が見つかると、それまでの円滑さが嘘のようなぎこちなさで文字を綴った。
    【私に力を貸してくれ】。政宗と共にその文を読んだ小十郎は、些か投げやりな気持ちで主へ首を横に振り、諌めてみせる他無かった。


    クソ、と廊下をどかどかと歩く政宗を諌めることも諦めた小十郎は深く溜息をつく。新調した白装束が汚れなかったことは幸いだったが、主はある意味死以上に残酷な結果を招いてしまったかも知れない。
    贔屓目も勿論あるだろうが、政宗は紛れもない名君だと小十郎は考えていた。多少強引すぎるきらいはあるが、それを補って余りあるほどの情勢を見抜く目と自らの目的を果たす意志の強さはこの天下に二人として居ない。それだけに小十郎は、自らとはまるで違う形の『君子』である三成の思考が理解できない政宗の心情をよくよく把握していた。
    用意された控室に戻り、苛々と脱ぎ捨てられる白の衣を回収しながら小十郎は政宗に声を掛けた。
    「政宗様。」
    「何だ小十郎。オレは今冷静じゃねぇ、小言なら後にしてくれ。」
    「石田は何も変わっておりませぬ。」
    「……What?」
    手を止めた政宗が振り返る。小十郎は手の中の衣を畳むと、鎧櫃を手元に引き寄せ一つずつ取り出していく。
    「あれは仕える主が変わったのでそれに合わせた立ち振る舞いになっているだけのこと。あの男の本質は何も変わっておりませぬ。」
    「『仕える主』だぁ? 大猿が死んで家康が死んで、晴れて日の本の天辺取った奴が何に従ってんだ。」
    「『たみ』かと。」
    政宗の纏う空気が明らかに困惑へ変わる。やはりかと内心で小十郎は呟く。恐らくこの思考は政宗やあの徳川にとって理解しかねる類のものであろう。何故徳川が豊臣共々石田を討たなかったのかについてを今更ながらに解した小十郎は、藍染の小袖を政宗の背に被せながら続ける。
    「石田は主君に盲目で付き従う男です。関ヶ原ののち、何があったかは分かりませんが、石田はこの日の本の民全体を主君として掲げることを決めたのでしょう。」
    「……家康と何が違うんだ?」
    分からないと言外に示すように政宗が声を潜める。次に着る袴を準備しながら小十郎は答えた。
    「徳川も貴方様も民を導き行く御方。しかしながら石田は民を導くつもりは恐らくありません。ただそこにある営みを守る……もしくはそれをより良くすることにしか発想が至らないでしょう。」
    「何が言いてぇんだ。まさか石田の補佐に回れってんじゃねぇだろうな?」
    「補佐、ではありませんが助言役にはなれますかと。」
    きっと政宗が小十郎を睨む。その視線を受け慣れている小十郎は政宗に袴を履かせ、装着順に具足を用意する。
    「Ha、あれがオレの話なんて聞くタマに見えるか?」
    「噂では石田の腹心であった大谷が色々と吹き込んでいたと聞きます。故にあそこまでの大戦になったのでしょうが、石田は初めから徳川の首しか言及しておりませぬ。恐らく石田は信用する者の言葉を重視しやすいのでしょう。」
    「小十郎……何でそこまでアイツの肩を持つ? お前がそれだけ考える程の相手か?」
    政宗が感じたままの言葉を吐き出すと、それまで淡々と作業をしていた小十郎が手を止める。その手の中にある兜の弦月を見つめながら、小十郎は言葉を探す。
    「……あれは豊臣が『作った』少々特殊な人間です。」
    敢えて引っ掛かりのある言葉を選んだ小十郎を政宗は見る。その眼差しに迷いや淀みは一切見当たらなかったが、多少の苦悩は存在していた。
    「これはあくまで私が感じたことですが、恐らく石田には『』というものが無い……もしくは限りなく希薄です。
    貴方様のように野望に燃えることも、徳川のように他の笑みを己の幸せとすることもありません。無欲といえば聞こえはいいですが、欲の無い人間は生きる目標が定められない以上、死んでいるようなものです。
    ただその代わり、公と私の間で苦しむこともありません。例え公と私の間で矛盾があったとしても、何も考えることなく公を優先させ、更にそれを当然だとする男です。だからこそ徳川は謀反の際に同じ戦場に居た石田を討たなかった……討てなかったのでしょう。」
    まともな人間ではありませんが、と付け足してから小十郎は蓋を閉じた鎧櫃の上に兜を置く。これまでの話で小十郎が言いたいことを察した政宗は一度鼻で笑い飛ばしてから、結びかけていた袴の紐を改めて強く締め直した。
    「要するに、石田に入れ知恵してこっちの利になるように振る舞えってことか……面倒だがまあ出来ねぇことはねぇな。」
    「そこまでは言っておりませんが、石田は勘定方としての評価が特に高かったと聞きますのでさしもの政宗様でも手を焼くかと。」
    「Ha、Who are you talking to! 奥州筆頭伊達政宗が戦だけじゃねぇってところ見せてやるよ……!」
    ようやく吹っ切れた様子の政宗に安堵の息を吐きつつ、小十郎は足元に跪いて脛当てを着ける。この作業も後何回出来ることかと考えると少し物悲しい気分にならないことも無かったが、それこそが『私』なのだろうと自覚している小十郎は何も言わず粛々と紐を結び続けた。



    お久しゅうございますと握られた手は常通り熱く、その瞳に涙は無かった。
    同盟相手の真田幸村の師・武田信玄が没したと聞いた三成は本多に背を押される形で密かに甲斐へ訪れていた。書もなく不躾な訪問ではあったが、幸村は数月振りの再会にも関わらず関ヶ原の頃と同じように三成に接する。気落ちした様子をまるで見せない幸村は、日も落ちようかという時間帯であるというのに三成の目には随分眩しく映った。
    『変わらない、ようで、何よりだ。』
    「石田殿も……と言いたいところですが、流石に某もその姿を見ると中々言えぬものです。」
    三成の大火傷の理由を知る幸村は困ったように笑う。本多から自らの自刃についての隠蔽工作の為に、真田軍に属する猿飛佐助の力も借りたと聞かされている三成は複雑そうに眉を顰めてみせた。
    『遺言は、聞けたか。』
    「はい、お陰様で。あと数日喪に服しましたらすぐに大坂に向かいます故、もうしばらくだけお待ちいただければ。」
    『そうか。』
    三成は握られていた手を離す。真っ直ぐ自分の目を見る幸村を見返す。あの戦場で見る薄茶の瞳はどうしようもなく自分を苛立たせたが、今思えばただの嫉妬だったように三成は思えてならなかった。
    しばらく無言で幸村の目を見ていた三成は、その形が丸く広がるのを見た。戦装束を脱ぎ、深い色の小袖と袴を着ている姿は見慣れないが、使う表情は変わらない。石田殿?と問いかける幸村に三成は目を細めて口を開く。

    『貴様は、強い。』
    「……と、申しますと?」
    『従うべき、主君を、失っても、尚、自分を、見失わない、貴様は、強い男だ。』
    三成からの思いもよらぬ称賛に幸村は豆鉄砲を食らった鳩のような顔になる。それからむむむと声を上げて言葉の意味を考えてから、また困ったように頬を掻いた。
    「そんなことはありませぬ。むしろようやく自分を取り戻した……というのが正しいかと。」
    幸村の言に今度は三成が首を傾げる。三成の中で幸村は一種不変に見えており、戦前に初めて相まみえた頃から現在に至るまで何も変わっていないと思っていただけに不思議で仕方が無かった。
    「御館様だけでなく、他の皆……佐助や騎馬隊の皆、甲斐の皆、言えば石田殿や奥州の伊達殿も含めた某の周りの人々によって、某は某として此処に在り、立っているのだと自覚したのです。」
    首に提げた六文銭を握り締めた幸村は三成にそう力強く伝える。三成は何かを尋ねたい気持ちが浮かんだが、それに対応する言葉が分からず視線を外す。広い屋敷のそのまた向こうにある高峰に沈む夕陽は暫し後に訪れる夜を予感させていた。

    『貴様に、とって、【自分】、とは、何、だ?』

    続かない呼吸の間から三成は幸村に問う。落ちる陽に視線を向けたままの三成に併せて庭の向こうを見つめながら、幸村は答える。
    「……積み重ねてきた月日、積み重ねてきた研鑽。そして積み重ねてきた縁こそが某が某たる所以と思うております。
    これまでの人生で交わった縁がどれか一つ欠けたとしても某は今こうして立っておらぬと……数多の出会いと別れを繰り返す中でこの身に積み重なったものこそが某自身であると言えましょう。」
    凛と響きながらも静かな声でそう話した幸村を三成は見た。夕日を眺める瞳には星が煌めく夜空が浮かんでいるように、いつか何処かで感じたものと同様の限りない深さと優しさに満ちていた。
    そうか、と三成は呟き、籠手越しに鎧の文字に触れる。大一大万大吉、思い出せる最初の『私』の感情を思い起こす。密やかに胸中に発した熱を確かめるように三成はそっと目を閉じると、口の中だけで在りし日の主の名を呼ぶ。
    声なき言葉は舌先に苦く残った。三成はそこで初めて、目の前の男を尚更眩しく感じている自分に気が付く。それから誰かが自分と幸村が似ていると指摘してきた記憶がふと蘇るが、それが正しいとはこれまでもこれからも思うことはないだろうと三成は感じていた。


    § § §


    家康は私に言った。私は私自身の為に生きろと。
    私は奴が何を言っているのか全く理解出来なかった。それは、秀吉様の為にこそ生きる私こそが私自身だと考えていたからだ。
    元より私は私の為に生きているのに、奴は違うと言った。私は奴がそう言った理由が分からない。貴様が家康の死を私に担わせるのであれば、私はその理由も知るべきだと考えている。
    だが、分からないままになるだろうことも予測している。私と奴は違う。違うからこそ袂を別ち、殺し合ったのだ。容易く理解できるものなら、疾うの昔に理解していたことだろう。

    刑部は私に問うた。私は貴様を信じるかと。
    疑う余地など無かった。刑部は私の為に尽力していることを知っていた。秀吉様方の為に献身する私の為に尽力しているということは即ち、刑部も秀吉様方へ献身していることと同義だ。だから私はこと軍略に於いて刑部の方策を拒否したことはない。
    だから長曾我部から四国壊滅についての真相を聞かされた時、私は動揺すべきでは無かったのだ。刑部が豊臣の為に行うべきだと、私に責を負わせるべきではないと判断したことなのだから、私は将として受け入れるべきだったのだ。
    だが私は受け入れられなかった。自らの手で滅ぼしておきながら、手を取れなど嘯くことなど私には出来なかった、出来ようもなかった。それこそ、私が最も忌み嫌う裏切りに他ならないからだ。
    刑部もそれを分かっていた筈だ。分かっていたからこそ、私に責が及ばぬよう秘密裏に動いていた。だが私が知らないということで刑部が行った行為が無くなる訳ではない。
    刑部は四国を壊滅させた。私はそれを知らずに長曾我部を結んだ。刑部は私に、自分を信じるかと繰り返し尋ねた。あれは自らが死しても尚、たった一人でも豊臣の将としてあれるかと問うていたのだ。
    私はそれを肯定した。疑う余地は無いと断定した。だからこそ私はたった一人でも豊臣の将であり続けなければならない。刑部の行為を受け入れられなかったという罪を贖う為にも、これ以上刑部が私に捧げてくれた全てを裏切らない為にも、私は豊臣の為に身を尽くし続けなければならない。

    半兵衛様は私に望まれた。私が秀吉様の一の臣であることを。
    秀吉様の為に生き、秀吉様の為に駆け、秀吉様の為に死ぬことを私に望まれていた。私は何も疑問には思わなかった。何故ならそれは半兵衛様自身の願いであると知っていたからだった。
    半兵衛様は秀吉様の為に生きられた。秀吉様が日の本を統一せしめたことを見届けられてから御逝去された。幸福の中で死を迎えられることなど早々に無い。不謹慎ながらもその時私は確かに半兵衛様を羨ましいと思ってしまったのだ。そしてその感情は、事もあろうに間違いでは無かったのだ。
    私は秀吉様の為に死ぬことが出来なかった。それどころか秀吉様の為に生きることも出来なかった。私は半兵衛様の望みを叶えることが出来なかった。この五体全てに於いての忠誠を宣誓しておきながら、果たすことが出来なかった。
    だがあの時、半兵衛様は私に微笑んでくださった。私の贖いがたき不忠を御存知でありながら笑まれていた。そして手までお振りくださった。
    半兵衛様は優しくも厳しい御方だった。私が望まれていた結果を出せなかった時に笑みを見せることなど無かった。しかし半兵衛様は微笑まれていた。私は半兵衛様の望まれた道を歩めなかったというのに、半兵衛様は笑みを見せてくださった。それがどういった意味を持つのかと浅薄ながら推察すれば、半兵衛様は私に秀吉様の一の臣であれと今尚望んでくださっているのではないかと思う他無いだろう。
    私が秀吉様の一の臣である道はこれまで半兵衛様が示されていた。私はその道をただ愚直にひた走れば良かった。だが別れのように手を振られた半兵衛様はもう恐らく私に道を示されることはない。私はこれから自分の道を自分自身で見出みいだし行かなければならない。

    秀吉様は私に与えてくださった。人として生きる為の力を、人として生きる為の場所を、人として生きる為の術を。私が今生きているこの身は全て秀吉様によって象られたものだ。それは疑いようの無い事実だ。
    私は秀吉様の御期待にお応えしたかった。秀吉様が私に与えてくださったものを、僅かばかりでもお返ししたかった。だからこそ私はこの旗印を掲げ、戦場を駆け抜けた。
    大一大万大吉。秀吉様の御偉業は全て民の為にこそある。ならば民もそれに応じ秀吉様に献身すべきである。与えられたものに返す、たったそれだけの極めて単純なことであるというのに、私はそれを叶えることが出来なかった。
    秀吉様はしいされてしまった。よりにも寄って私の側に居た家康によって。私は怒り狂った。刑部と共にその大罪を断ぜんとした。そして家康を討った。私は憎悪すべき裏切りをこの世から排除せしめたのだ。
    だが同時に私は秀吉様から与えられたものを失ってしまった。人として生きる為の目標を、人として生きる為の基点を、人として生きる為の友を。家康も刑部も半兵衛様も秀吉様も亡き世には最早私が生きる意味も理由も無かった。
    最後に私は秀吉様に家康の討伐を報告し、秀吉様から与えられた刀でもって自刃した。私はそこで死ぬ筈だった。
    だが何の因果か私は生き延びてしまった、生き残ってしまった。この首と腹の傷と引き換えに、私はこの何もない世に再び取り残されてしまった。
    ……あの時秀吉様は振り返られなかった。秀吉様は常と変わらず前だけを見て進まれていた。私は見放されたと感じ、必死になって追い駆けたが、私に気付かれた半兵衛様がそのことを秀吉様に伝えられても振り返ることは無かった。
    秀吉様は御優しい方だ。私が迷っている時や悩んでいる時には必ず私に目を向けてくださり、私が抱いてしまった愚かな迷妄を一閃の内に晴らしてくださった。その秀吉様が振り返られない理由を、私は必死に追い駆けながらも薄々理解していたのだ。
    目が覚めると私を助けた貴様も長曾我部も私に生きろと言った。それがどれだけ絶望に満ちたものであるのかを分かっていて、貴様らは私に生きろと告げた。確かに私にとってはこれまで以上に無い残酷な刑罰だった。
    私は民を殺した。兵を殺した。主君を死なせ、友を殺した。天下人などと呼ばれているようだが、私の罪は天に二つとないほどの重罪だ。葬り去ることしか知らない私に安息の日々など二度と訪れはしない、望みもしない。
    だが貴様達はその中でも二度目の生を私に与えた。かつて秀吉様が私に与えてくださったものと同じものを私に与えた。
    ならば私は答えねばならない。長曾我部が望んだ通り、刑部が手に掛けた者だけでなく刑部の分まで私が生きることで。貴様が望んだ通り、家康が統べるべきだった世を私が統べることで。そして半兵衛様が望まれた通り、私自らが進むべき道を見出し、秀吉様の為に有り続けることで、私は私の生にようやく応えることが出来る。貴様達が望んだ生に、報いることが出来ると、私は思っている。


    深緋こきひに染まる山々の上を、忠勝の手中にて移動する。まだ数える程ながら不思議と体に馴染んでいる手段に三成は身を任せ、刀と膝を抱え込むようにして目を閉じていた。
    三成の耳には忠勝の動作音とそれの周囲から発生する風切り音だけが届く。誰に聞かせる訳でも無い独白を終えた三成が目を開けると、夕陽は忠勝の黒鉄の周囲だけを照り返し、まるで日蝕の如き様相を呈していた。
    ふと三成は体を起こし、眼下を臨む。無数の木々は篝火を焚かれたように赤に燃え、地の全てを焼き尽くさんばかりに支配していた。甲斐への訪問後身じろぎ一つしなかった三成が突然動いたこともあり、忠勝は手の中を覗き込むようにして三成を見た。
    忠勝の目には三成の横顔が僅かに見える。焦土に似た日の本に目を伏せた三成の唇は、まるで地獄だと動いた。それを読んだ忠勝は何も言わず、三成が気付く前に視線を前に戻した。
    忠勝は、三成が地平を眼差している瞳が太陽の色をしていたことが救いだと感じていた。深い赤に瞬く黄はまるで在りし日の【彼】の瞳と同じ色をしていた。それが例え落ちる陽を映したものであったとしても、次いで昇る月こそが《彼》である。己が身は色の無い夜の光では治すこともままならない体ではあるが、寄り添うようなその柔らかい光によって人々は生きていけることだろう。
    海と空の間に日が落ちていく。熔けた陽の端から夜がやってくる。忠勝にも三成にも今見える景色の美しさは分からなかった。だがそれでも生きていくことを選んだ。風は全てを呑み込んで、二人の傍らを通り過ぎて行く。


    蓑虫@諸々準備中 Link Message Mute
    2018/11/20 2:10:26

    悔恨、それから

    ※3三成青ED後前提 ※欠損表現注意 ※推しのナレ死・展開キメラ注意 ※伊達がちょっと格好悪いかも知れない注意
    『三成と忠勝の話書きたいな〜』と思ってたら何か壮大な話になってしまったみが凄い ぶっちゃけ最初と最後が書きたかったってのは秘密やぞ
    書いてて思ったんですけど私が考える三成ちょっと薄情すぎやしないか……後なんか筆頭が被害者過ぎて申し訳無い……この後何だかんだ言って三成と距離保ちつつ良い仲になると思う……ラスパの逆版みたいな感じで……

    #戦国BASARA #石田三成 #本多忠勝 #長曾我部元親 #伊達政宗 #真田幸村 #片倉小十郎

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    • 逸るか添うか 幸か不幸か※4家康ドラマルート準拠 ※欠損他暴力描写 ※豊臣・徳川以外の滅亡 ※刑部の経歴捏造
      好きなルートに好きなものブチ込んだ結果です。達成感が凄い。家吉かと言われると難しいけど家吉です(いつもの)
      2/3追記:この話の小ネタとか書いてる最中のあれこれまとめ→https://privatter.net/p/4225799

      2/3(日)ComicCity福岡48に参加します。この話を含めたWeb再録3本+書き下ろしの小説本と学バサの突発コピー本です。詳しくは→https://galleria.emotionflow.com/69491/480839.html

      #戦国BASARA #家吉 #大谷吉継 #徳川家康 #石田三成 #島左近
      蓑虫@諸々準備中
    • 妬め、嫉め、滅に順え※病み権現 ※各種描写注意(主に暴力・流血・欠損) ※推しの不登場・ナレ死・展開キメラ注意
      家→吉(→)三で3軸関ヶ原 伊達・長曾我部もちょっと出ます

      3軸で『もし家康が元々刑部と仲良かったら』ってことで書き始めたんですけど、書いてる内に家→吉(→)三の片想いを拗らせすぎた感じになってしまいました マジゴメン家康
      裏テーマは地味に『信長・秀吉と同じことをする家康』です 俺の関ヶ原はこれや(火炎瓶を投げながら)

      #戦国BASARA  #BSR  #家吉  #徳川家康  #大谷吉継  #石田三成
      蓑虫@諸々準備中
    • 卯の花腐し※4小説・西凶丁半編ED後前提 ※家康がお化け ※CP未満の筈
      ネタバレして申し訳ないんですが、刑部が生きてて家康が死んでる展開を中々見なかったので感情のままに書き殴りました
      確か西凶丁半EDって秋ぐらいだったよな……と題名考えてる最中に読み直したら、島津のじっちゃまが『夏はまだ先』って言ってるし、そもそも関ヶ原やったと思ったらやってなかった(4で言うなら小牧長久手だった)ので「もしかして初夏ぐらい……??」となってこの題名になりました 「うのはなくたし」と読みます
      #戦国BASARA #BSR #大谷吉継 #徳川家康
      蓑虫@諸々準備中
    • 牽強付会学バサ:家(→)吉(→三)
      刑部が三成を好き(Like)な事を知ってて本人に警告する家康と、意味が全く分からない刑部の話。学バサの家康はサイコパスなんだかまともなんだか分かんないのヤバいっすね……今後この二人の絡みがあるかどうか分かりませんけど……無いな多分……。
      3か4話で刑部が家康にあっさり話し掛けたのと、伊達や真田には選挙活動するのに刑部にはやらなかったなっていうのが捻じ曲がった形でくっついた結果だったりします。
      #学園BASARA #家吉 #大谷吉継 #徳川家康 #学バサ #戦国BASARA #BSR
      蓑虫@諸々準備中
    • 或る秋の日BSR:CP未満の家吉
      これ本当は豊臣天下統一後の薄暗い家吉になる筈だったんですけど、咎狂(舞バサ咎狂わし絆)があまりにもしんどかったので普通に傘下期で仲良くしてる家康と刑部の話になりました。CP味は無いつもりだけど念の為タグ入れ。
      咎狂マジしんどい……しんどいけど家吉担的には超絶燃料なのでみんな見て……家康対刑部戦大体いつも私が言ってる家吉像を5000倍ヤバくした奴なんで是非見て……BSR君裾野広過ぎかよ……
      #戦国BASARA #BSR #家吉 #吉家 #徳川家康 #大谷吉継 #石田三成
      蓑虫@諸々準備中
    • 風下る いちしの花は いなのみのBSR:バトパ想定家+吉
      バトパ絵巻家康編で三成を『救いたかった』って言う家康は、じゃあ刑部に対してどうだったのかという想定に想定を重ねた謎話 一番難しかったのは題名(何故なのか)
      関ヶ原ストではまだ言ってない(言わない?)ので今後どうなるか楽しみです って言うか関ヶ原スト追加あんのかな……(現在イベ2戦目開催中)

      #戦国BASARA #大谷吉継 #徳川家康 #BSR
      蓑虫@諸々準備中
    • 小指を断つ/繋ぐ※損傷・欠損注意 家康が豊臣に帰順したばかりの時期かつ原作ではない世界線
      というか家康の小指が吹っ飛んだ世界線で刑部がどうだったかという題名そのままの話。ただの趣味です。
      ぶっちゃけ最後まで読んで頂けると分かるんですけど、これで家吉のつもりなんですよ私……エピローグ完全に三吉じゃんとは自分でも思います。でも家吉です(圧)
      何て言うんすか……刑部身内激甘男なんで滅茶苦茶優しい(完全無意識)のに、所詮豊臣の常識に過ぎない優しさだから家康が微塵も分かんない(どころか受け入れがたいぐらいに思われてる)みたいな感じなんすよ……半兵衛は家康が嫌いだから嫌がらせに甘やかしてると思ってて、三成は作中通り秀吉様の臣だからで片付けてる……刑部が家康に複雑怪奇な感情抱いてるのは公式だと思ってるんですが、家康が刑部に複雑な感情を抱いててもいいと思う……個人的な願望です……。

      #戦国BASARA #家吉 #大谷吉継 #徳川家康 #石田三成 #竹中半兵衛
      蓑虫@諸々準備中
    • 無明の黒点※黒権現(ゴリラ解釈)注意 ※相変わらずの殺傷沙汰注意
      新年あけましておめでとうございます。成長と共に完全に精神を摩耗しきって人々の幸せの為のシステムとしての生き方を自ら望むようになった家康と、そんな家康が齎す世の中を不幸だと理解して秘密裡に手伝うけど自分の三成への感情を知っているのでその辺だけは守ろうとする刑部の話です(一息)
      ちなみにこの後長曾我部緑展開です。書いてる本人はとても楽しかったです。今年もよろしくお願いします。
      #戦国BASARA #家吉 #徳川家康 #大谷吉継
      蓑虫@諸々準備中
    • 翹望※暴力注意
      幸村伝軸の家(→吉)+信之 タイトルの『翹望』は「首を長くして待つこと」 分かりにくいけど刑部に永遠に片想いし続ける家康の話(分かりにくいせやな)
      個人的に信之は家康自身を見てないことに家康も気付いてる奴が好きなのでその辺もブチ込んでます お前で言えば刑部のような者……

      #戦国BASARA #家吉 #徳川家康 #真田信之 #大谷吉継
      蓑虫@諸々準備中
    • 沼るな天津甕星※病み権現 ※各種描写注意(主に死亡・欠損・損壊) ※3軸関ヶ原家康勝利
      3軸(左近と信之が居ない)世界線でもし家康が刑部を慕っていたらな離反話と、関ヶ原後の家康の様子のダブルパック

      地味に以前書いた『妬め、嫉め、滅に順え』(https://galleria.emotionflow.com/69491/463325.html)の前日譚と後日談が一緒になった奴だったり 離反話のくだりは前作『帰すな熒惑』(https://galleria.emotionflow.com/69491/504839.html)の家康視点でもあります 前2作読んでなくても読めるようには書いたつもり……つもり……

      #戦国BASARA #家吉 #徳川家康 #大谷吉継 #雑賀孫市
      蓑虫@諸々準備中
    • 52019.2.3(日)ComicCity福岡48 お品書き2/3のCC福岡に参加します! スペースはO53bです!
      温度差の激しい家吉本と既刊のテニプリ8937中心本を持って行きます(無配ペーパーもある予定)
      小説本は4本中3本がWeb再録ですが加筆修正しまくったので大分話の輪郭が違うものもあるようなないような……暗さが増しただけかも知れない……

      以下サンプルページ
      [或る秋の日]https://galleria.emotionflow.com/69491/468426.html
      [落日]https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9941729
      [逸るか添うか 幸か不幸か]https://galleria.emotionflow.com/69491/480837.html

      #戦国BASARA #BSR #家吉 #大谷吉継 #徳川家康
      #テニスの王子様 #テニプリ #8937 #柳生真 #柳生比呂士 #真田弦一郎 #柳仁 #幸赤
      蓑虫@諸々準備中
    • 常の通り※4半兵衛D後豊臣天下統一 ※豊臣以外の滅亡 ※病み気味家康で家(→)吉
      かつて自分が欲しかったものを全部くれる刑部に人知れずずぶずぶと溺れていく家康と、それをせせら笑いながら都合が良いのでそのままにしてる刑部の話 メッチャ短いけど気に入ったので
      地味に[落日](https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=9941729)の前日譚イメージだったり

      #戦国BASARA #家吉 #徳川家康 #大谷吉継
      蓑虫@諸々準備中
    • ※幸村伝ベース史実ネタ入り ※損壊注意 ※現パロオチ
      刑部の持ってた短刀が某美術館にあると知り、色々確認したところ諸々の事情で私が爆発した結果の話 刑部が死んだ後に病む家康が好き過ぎないか私

      #戦国BASARA #家吉 #徳川家康 #大谷吉継
      蓑虫@諸々準備中
    • 帰すな熒惑BSR:家(→)吉 刑部視点
      もし家康が傘下期時代に刑部と仲良くなってたらな離反前話 ちなみに題名の読みは「きすなけいこく」です

      #戦国BASARA #大谷吉継 #徳川家康 #BSR
      蓑虫@諸々準備中
    • 一知半解BSR:4半兵衛D後家吉+三
      それぞれ少しずつ見てるものが違うことに気付かないまま無為を過ごす星月日の話 視差はいいぞ
      #戦国BASARA #家吉 #徳川家康 #大谷吉継 #石田三成
      蓑虫@諸々準備中
    • 無の目※咎狂後 ※余計な設定付加

      支部に上げた『有の目』(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=11059748)の家康・伊達間の好感度が高かった場合の話 原作3刑部第一みある話になってしまったのは私が家吉担だからです(謎アピ)
      というか書いてて思ったんですけど、咎狂家康にとって伊達ってワンチャン豊臣の系譜で言う友ポジ(自分の進むべき道を時に糺すことの出来る存在)に成り得るんじゃないかなって……まあ全部妄想なんですけど……
      途中まで暗かったんですけど伊達が最後ハッピーな形でまとめてくれたのでホンマ苦労かけるな……って感じでした 私は幸せな家康が見たいです(地獄に落としてるのお前定期)

      #戦国BASARA #政家 #伊達政宗 #徳川家康
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    • 蝶様借景※病み権現注意 ※4半兵衛D後家康豊臣帰参かつ豊臣天下統一の世界線

      刑部へある贈り物をする家康の話。書き始めた時はただのヤンデレ想定だったのに、何だかミステリーとかホラーみたいなことになってしまった……家康の歪みは乱世が終わってから分かるものだと面白いなという気持ちも無きにしもあらず

      #戦国BASARA #家吉 #大谷吉継 #徳川家康
      蓑虫@諸々準備中
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