ゆうべはおたのしみでしたねローラ姫をやっとの思いで救出した。もちろん、姫を届けに城に向かうはずが、どうしても宿に泊まりたいと言う。
もしやモンスターどもに蹂躙されたのだとしたら、その汚れを落としたいのだろうか?俺は姫の申し出をのみ、騎士らしく部屋は別にとったが、案の定、姫は俺のしとねに潜り込んできた。
「おやめなさい。ロトの勇者の末裔なんて俺の親が勝手に名乗っていただけです。素性の知れない男の血など、宿したらあなたが困る」
怜悧に俺は返したが、結局は姫を抱いてしまった。姫、と呼ばれる女はもっと素性の知れない、ローラ姫と瓜二つというだけの下女だった。人質は替え玉だったのだ。元々、現ラダトーム王は庶子で、ローラ姫は前王の娘だった。本物は、モンスターではなく人間に殺されていたのだ。
和平の為に差し出された、偽ローラを、竜王は見抜いていた。
「私を助けてくれると、竜王様は言いました。あなたも、モンスターを平らげた化け物です。ラダトーム王も誰も手出し出来ないわ」
腹には竜王の子を宿していた。ロトの末裔を訝しむ人の世を、俺も恨んでいた。
「出鱈目なものなんでしょうな、人の世の歴史なんて」
俺はもう一度、ローラと呼ばれる女を抱きしめ、鼻で笑った。