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    第3話 最終回何が悪いねん?3
    お舐め
    モトコは「ヒロはアホやな」で片づけた。しかし、アホに罪はないやろ?アホって言葉は関東の馬鹿とはニュアンスが違う。もっと愛情のこもった言葉だ。丁度、「男はつらいよ」のおいちゃんだった森川信の「ばっかだねえー全く」に近いものがある。そういう訳でモトコも少しはヒロへの愛情があるのかもしれない。
    ところで結局誰が悪いねん?
    まず取り上げられるべきは不倫したかしてないかだ。
    でもな、ミコみたいに旦那に構って貰われないから不倫するのはそれなりの理由とは言えないか?じゃあなんで構ってもらえないのか?奥さんを愛してないのか?他に不倫してるのか?
    でもモトコは不倫相手ではないな。
    しかも、ミコは旦那に相手にされて無いように言いながら、ちゃんと旦那とセックスしてるじゃないか。おかしいな。セックスの仕方が気に入らないのか?
    もしかして、単に家で一人でいるのが嫌なだけじゃないのか?
    ほんならパートでもしたらええのに。

    ヒロはモトコに段々魅かれてきた。やっぱり頭を足で踏まれるのが快感なのだ。
    ヒ「日曜日、暇か?」
    モ「うん、まあな。あんたそれより、急にホテルから出て行って何やってるの?」
    ヒ「うーん笑、ちょっと考え事しててな。それも含めてモトちゃんと話したい。ホテル北夙川でも行かんか?」
    モ「わざわざホテル取って、また途中で出ていく気やないの?」
    ヒ「いや、この頃の色んなことをちょっと話したくてな。」
    モ「まあええわ。」
    ホテル北夙川って山の方にあって鳥の声とか聞こえる長閑な場所だ。こんなとこでセックスする奴の気が知れん。「ああああ」って喘ぎ声だしたらめっちゃ目立つやんけ。
    ということは、この二人は別にセックスしなくてもいいのだ。
    兎に角まあ静かな部屋に入った。
    モ「何すんの?また頭踏みプレイでもすんのん?」
    ヒ「いやははは、そんなんあとでええねん。何か音楽聴こうや。ビートルズは如何?」
    モ「ええやん。『ノルウェーの森』がええで。」
    ヒ「あ、それもええけどな。『アナザーガール』を聴きたいな。
    『そうよ、おいらにゃ他の女の子がおんねん、
    僕には君しかいないんだって言わせてろよ。でも今日からは新しい子がいるんだ。
    僕は馬鹿じゃないから、要らないものは要らないんだ』
    って歌詞だ。な、つまり、今のおいらの新しい女の子はモトコちゃん、君や!」
    モ「アホ!勝手に決めるな!」
    ヒ「まあそう言うなや。君かておいらの頭踏みつけるん好きやろ?な、そういう面でも相性ええねんよ。」
    モ「そんなんが相性になるの?」
    ヒ「いやあな、俺らの周りって既婚者ばかりで、各々が他と不倫してるやないの。私ら別にただ、その間を行ったり来たりしてるだけよ。モトコもそうやろ?」
    モ「大川さんはな、奥さんと同僚やってん。浜辺営業所1部だったんよ。あんたはまだ子供の頃から知り合いやから、言い訳できるけど、他所の旦那と夜9時に喋ってたって知られると、変なとこで勘ぐられるからなあ。」
    ヒ「ほれやったら、ミコの旦那、いや小泉さんと一緒におらんでも、先に帰るなりなんなりして、二人きりでいなくてもいいはずやろ?何か無防備やでモトコちゃんよ。」
    モ「それがな、なんか話をのせてきて、ぐいぐいと帰宅できないと駄目みたいになったのよ。」
    ヒ「という事は誘惑してきたんか?」
    モ「ある意味ではそうやね。」
    ヒ「もうちょっと自分、気を付けた方がええで。誤解されるぞ!それに俺に聴かれて慌てふためくのも却って危ない。なんでそんなことに気が付かへんねん?」
    モ「うーーん、なんかやけくそやねん。岡村孝子の『いっそやけくーそにーいきーてーやるーわー♫』の心境よ。何か面白くないねん。浜辺営業所から同じことずっとやってるだけやし、好きな男の人とデートできないし、これまでそんないい人一人もいなかった。。。」
    ヒ「嘘―!こんなええ女ほっとくわけない。ありえんことや。」
    モ「あんたもやっぱり私の事わかってくれてないな。長身の女の子って煙たがられるねんよ。私より背が10cm低い女の子でも『ヒール履かないでください』て言われるんよ。だからね、ヒールは控えるようにしてるのに、それでも背が高いのを嫌がるのよ。だから、それこそ『いっそやけくそに』と思って、更に高いヒール履くねん。わかってよ、ヒロ君!」
    ヒ「わからんなあ。俺、長身女性の方が好きや。『のっぽのサリー』って歌あるやろ?あれは、サリーって言う長身の女がイカスっていう歌やがやな。そういえば、岡本太郎さんも小柄やったけど、パリで北欧の長身女と付き合ってたんやぞ。」
    モ「ほな、、あんたはどうなん?」
    ヒ「俺めっちゃ好きや。だって抱きごたえあるやんけ。京橋で会うた2人組のロシア女は結構背が高かったぞ。178㎝くらいあったんちゃうか。それから近所のホールの受付の子もそれ位やったわ。日本人やで。
    でもな、背が高いから好きになってくれへんて、それはハナから見込みないで。彼女の方が背が高く見られるのが嫌なら、シークレットブーツ履いたらええやん。+13~14cm背が高くなるから、モトちゃんより14cm小柄な男でも一緒にならんで歩けるやんか。」
    モ「ほな、あんたはどうなん?」
    ヒ「どうとは?」
    モ「あんたがもし長身の女の子と付き合うなら、躊躇せずに付き合う?」
    ヒ「そらもちろん。モトちゃんは理想の一人やで。」
    モ「ホンマ?」
    ヒ「やっぱりな、長身の長い足で頭撫でられるのが快感や。」
    モ「何や、やっぱりセックスが目的やん。」
    ヒ「まあそう言うな。男と女はそれで結びつくねんから、それを否定したら終わりやで。」
    モ「なんか二言目に性的な事言うのがいやや。」
    ヒ「ほな、黙ってやったらええねんな?」
    モ「足の裏なめてん」
    モトコは茶色のスリップオンシューズを脱ぎ、黒のストッキングを少しずつ脱いだ。
    ヒ「でもなんかおかしいなあ。結婚してる奴は早く身を固めて、独身の相手と不倫してるのに、独身者は結婚した奴らからおもちゃにされてる。モトちゃんもええように遊ばれてるように思うわ。」
    モ「(裸足を差し出して)ヒロ君もそうやん。小泉さんの奥さん(ミコ)の我が儘に引っ張り回されてるように思う。それにあんたが話してた歯医者のテンちゃんは、あんたが自分のステディ代りに玩ぼうとするつもりが、逆にままごと遊びに付き合わされてるわよ。それらの人らに全然愛を感じられへんわ。」
    ヒ「そういえばミコは、君にお茶奢るでって言ったら『そんなんでお金出してたらキリがないよ。』て言うたって伝えると『それはモトコさんには奢ってくれるようないい人がいるのよ』って言ってたな。(モトコの足の裏を愛撫)」
    モ「待ってー、なんで私が彼氏がいるって勝手に決め付けるのよー?」
    ヒ「そやんなー!結局遊び友達の俺を固定させておきたいだけや。そうやって考えたら悪い奴やな。」
    モ「いや、その旦那(小泉民男)もおかしい。あんな風に私と一緒になって9時過ぎまで会社でいる。早く帰って奥さんと一家団欒を過ごすべきだわ。」
    ヒ「そもそもな、新婚やったら会社も社員を帰らせるべきやろ?なんかだらだらと仕事してんのか、時間潰してるのか、日本の会社のありかたに疑問を抱くね。」
    モ「私も知らず知らずそのペースに流されてるもん。」
    ヒ「なあ、これから定時に俺と一緒に帰ろか?」
    モ「噂立てられるやん。」
    ヒ「ええやんけそんなもん。君は他に男おらへんのやろ?ほな俺と付き合って結婚したらええやん。」
    モ「それって私への性的欲求のため?」
    ヒ「おいおい、結婚=セックスではないぞ。それにな、俺たちが結婚する事によって、前述の既婚者のしがらみから解放されることだって大いにあり得る。不倫しながら善人面してる奴らからもおさらばできる。」
    モ「そういえばそうねえ。私もそれ賛成やわ。性的なものも大事だし。後継ぎができないとねえ。」
    二人とも脱いでハグし合った。
    ヒ「モトコ、愛してるぜ。俺たちだけで愛し合おうぜ。」
    モ「私も!結婚しよう。」
    こうしてこの二人は結婚する事になった。えらい簡単だが、年齢的にもピッタリのカップルだ。
    披露宴は会社の人員はなるべく減らし、上司2人程度に抑えた。別に大袈裟な披露宴をする必要はない。友達を何人か呼べばいい。もうバブル期のような大宴会は時代遅れだ。
    総合司会は一応呼ぶが、基本は新郎、つまりヒロが司会進行をやる。いざとなった時、総合司会にバトンタッチできるから、安全だ。
    もう既存の音楽もかけない。ワーグナーローエングリーン第3幕の結婚行進曲もメンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」も、ワンパターンだ。もっと名曲があるだろ。「自然に帰れと叫んでる」とか「夏のワルツ」とか、他所では聴けない曲で入場すべきだ。
    新婦はまあオーソドックスな白い衣装。でも腕が透けて見える方がセクシーだ。新郎もこれまた白いスーツだ。黒服はおかしい。似合わない。
    式の守衛が3人立っている。別に何もなさそうだ。
    ところがいきなり一人が
    「結婚披露宴などさせてたまるか!奴らみんな叩き斬ってやる!」
    と暴れ出した。
    他の守衛が取り押さえた。
    「放せー、放せー、何が披露宴だ?!何が披露宴だー!!??」
    お客さんらは少し動揺した。
    しかし、新郎も新婦も別に気にしなかった。
    しかし、何なんだろうな、あの守衛は?何に対して反対だったのか?
    二人が結婚する事に反対の一人の回し者だろう。何らかの妨害をしたかったに違いない。
    新郎のヒロはまったく冷静だ。モトコは少し動揺してるのか、外を見まわしている。
    ヒロ「続けます。ご媒酌人仁村様、お願いします。」
    彼は隣のモトコを見つめて、気を落ち着けるように促した。
    そういえば、以前に新郎が自分で司会をして見事に大失敗した例があったが、ヒロは落ち着いている。やはり、総合司会を付けているからだ。
    媒酌人が二人の紹介をしたが、ヒロはさらに付け加えて紹介した。
    二人のなれそめだ。会社で知り合ったように思われがちだが、ずっと小さなころから知ってる、その旨を小学校の写真を掲げて述べた。
    モトコは振り返ってその写真を見てすごく照れて笑った。
    ねえ、モトコはこの小説で初めて笑ったと思わないかい?
    ということはヒロと結婚して本当によかったのさ。
    しかしな、やっぱり妨害が入ったのは気になる所だ。
    誰が妨害させたんだ?
    そんなことより、おい、ジャズのプロプレーヤーとか、クラシックピアノの大家とか、音楽面でもすごく充実した披露宴となった。ヒロも演奏したりして饗宴に花を咲かせた。モトコにも何か演奏してほしかったんだが、彼女は恥ずかしがりだから、それには加わらなかったんだ。
    でもすごく綺麗な花嫁さ。
    ヒ「ここで司会兼新郎の私から、披露宴でよく『口づけせよと』って繰り返して、新郎新婦にキスをせがむでしょ。あのような品のないことは私たちはしません。ロシアのペトレンコさんも言ってましたが、人前で男女がキスするなんてフランスの習慣です。アメリカ演奏旅行でも一度として見たことはありません。見たのは何と広島でした!(一同笑)
    そこで僕たちは、ハグしてお見せします。愛の証です。見て下さい!」
    ヒロとモトコは立ち上がってハグを交わした。
    やっぱりドキドキするものだが、お互いに温まるものでもある。
    一同大拍手だ。
    披露宴はうまくいった。ヒロもちゃんと真面目に司会をやった。
    皆さんありがとうございました。
    ヒ「モトコ、ごめんよ、お色直しを忘れてた。和服に着替えたかったかい?」
    モ「ううん、大丈夫よ。着替えるの面倒臭いわ。」
    本当にいい結婚披露宴だった。新郎も新婦も本当に輝かしい姿だった。
    「いつまでも他所の旦那や嫁はんのもんになってたまるか!」
    二人はそう心の中で断言した!
    着替えも済んで二人は近くの豪華ホテルに入った。
    ヒ「なあモトちゃん。」
    モ「お疲れ様、足やったらなんぼでも舐めさせてあげるよ。脚の付け根でも。」
    ヒ「お利口さん、っていいながらおいらの頭を足で撫でてーや。僕は司会の滑舌で舌の感覚が麻痺してるねん。」
    モ「うん、ええよ。」と言ってスリッパ脱いで、ストッキングごしにヒロの頭をなでなでした。
    モ「どう?」
    ヒ「気持ちいいわ。達成感がある。なあ、モトコちゃん、これで俺らはもう俺らだけのもんや。他の奴に取られてたまるか、くそー!」
    これで二人は不倫の罪科から救われた。
    そうだよ、「何が悪いねん??」
    言い訳さらして不倫続けてる奴等はいつまでもやってろ!
    もう俺たちは俺たちだけで愛を成就するよ。
    お前らこそ、自分の何が悪いか?それを考え直せ、ダニ!!
    ところでな、足で頭を撫でるプレイだが「足頭撫で」て呼んでは如何かね?ダーリン。
    あ、そーだ。忘れてた。モト子、もと子ちゃん、ハニーモト、大好きだよ。
    結婚しておくれ!~

    あ、そうか、もう結婚したんだ!!ブハハハハハ大笑。

    おしまい
    お舐め Link Message Mute
    2019/11/16 11:02:53

    第3話 最終回

    #オリジナル #カップル #不倫

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