SUGAR BABY LOVE 天邪鬼なんだよ、あいつはさぁ、と、旦那は言ったが。
つまりは保護者ってやつですかィ、あーあ。そもそも、旦那はなんのために俺にそれを言ったんですかィ。天邪鬼ってやつァ、確か本当とは正反対のことを言っちまう妖怪だった気がするんですがねィ。それは俺に言ったって、直るもんじゃ、ないと思いまさァ。
―――聞いたって、答える性格じゃあ、ねェしなぁ…。
俺は心の中で溜息をつき、適当に土方さんに嫌がらせをしながら街を歩いていた。姫さんともおさまるところにおさまったらしい土方さんは、正直むかつくんでィ。…手を貸しといて、言うのもなんですがねィ。ありゃあ、姫さんが泣いてんだろうなァ、とか思ったら、つい、――――なんとなく、許せなくて。
…だいたい、なんで皆して、このマヨラがいいんですかねィ。むかつくから、一層嫌がらせしてやりまさァ。
そうしてまた、バズーカをチンピラに向けるふりをして、マヨラに向けたとき、だった。万屋御一行様がやってきたのは。
「おう、このS星の王子が、今日こそ勝負つけるアルよ」
「望むところでィ、このチャイナ」
まぁ、当然といえば当然のごとく、こうなったところまでは良かったんでィ。いつもどおりのことでさァ。
「いい加減、私のことが好きって白状したらどうアルか」
「抜かしてんじゃねェや」
ふん、といって、あのチャイナは俺を睨みつけやがった。だけど、その瞬間、うっかり気づいちまった。
チャイナが、真っ赤な顔で―――その目が、少しだけ、にじんでるって、ことに。
うそ、だろぉ…、なんで…。
まず自分の目を疑って、何度かまばたきをしてみた。―――やっぱり、そうとしか、見えない。何、どういう、こと…?
「わたしだって、お前なんか、大っキライアル!」
その、叫んだ声の、語尾が震えた気がしたのは、……気のせいだと、思いたい。思いたいが……
―――やばいかも、しれねぇ、や…。
顔が熱い気がして、思わず自分の右手のこうで自分の頬をさわって、確かめた。
なんてこった…。逆、の、意味にしか、聞こえねェ。ばかマヨラの色ボケが、すっかりうつっちまったのか。
万屋の旦那が、にやっと笑ったのが、視界の端に見えた気がした。