キスをしようよ──アンジョルラス、今日はポッキーの日なんだって。
それで?
──ポッキーゲームって知ってる?
「知らないな。どういうゲームだ?」
アンジョルラスは首を傾げる。肩の上で金髪がさらさらと揺れた。
「それはね」
僕は笑い、ポッキーの箱を机の上に出した。包装を解き、一本のポッキーを取り出す。
アンジョルラスは僕と、僕の右手のポッキーをを不思議そうに見比べた。
「僕たちのうち片方がこのポッキーをくわえて、」
「うん」
アンジョルラスは真剣な顔で頷く。
「もう一人がもう一方の端を食べていく」
「……うん」
「先にもうだめだと思ったり、ポッキーを折っちゃったほうの負け」
アンジョルラスは少し考えるように目を伏せ、それから僕を見る。
「コンブフェール。それって、もしどちらも最後までポッキーを食べきったら……」
「キスになるね」
僕があっさり言うと、アンジョルラスはみるみる顔を紅潮させていく。
「……! だっ、な…っ、き、きみって……」
言葉にならないらしいアンジョルラスの声を引き継いだ。
「僕って?」
「……っ、は、はれんちだ……」
後半はもう囁くようでよく聞こえなかった。それきり俯いてしまったアンジョルラスの顔を覗き込む。
「……ごめん、からかいすぎた」
「……」
「アンジョルラス。こっち見て。僕のこと嫌いにならないで?」
彼はばっと弾かれたように顔を上げる。
「嫌いになんか……っ」
ならないよ、と君は林檎みたいな頬で言うものだから。
僕は少しだけひっかくみたいな意地悪を、やめられないのだ。