本当に怖い時義勇視点
我妻は本当に怖い時、泣いたり喚いたりしない。
口角が上がる。笑う。
本人にとっては無自覚らしいが、最近どうも気になって仕方ない。
なら、本人に直接聞けばいい。
明日、合同任務だから、その時に聞くか。
ー次の日ー
いつものように、口角が上がる我妻。
聞くなら今じゃないか?
義勇「我妻」
善逸「ヒエッ!?な、なんですか?」
義勇「なぜ、そんなに笑ってるんだ」
善逸「え?俺、笑ってない……」
我妻は自分の口元に手を当て、確かめている。
俺も分かるが、今は笑っていない。
義勇「さっき、笑ってた。」
善逸「あ、そ、そうですか。すいません」
ペコリと頭を下げ、謝罪をする
善逸「この癖、何度も直そうとしたんですが……」
義勇「……」
(グイッ)
我妻の口角を指で無理矢理上げる。
我妻はしばらくピクリとも動かなかった。
少しの間が空いた後、我妻が叫び、俺から離れた。
善逸「な、何するんですかいきなり!言葉に出せっ!!」
義勇「すまない、つい」
善逸「つい、じゃないよ!もう!ほら、早く行きますよ!」
義勇「待て」
善逸「もう、今度は何___」
プツリと我妻の言葉が途絶え、また叫んだ。
今度は逃げなかった。いや、俺が逃さなかった。
我妻の体温。
少し暖かく、少し冷たい。
義勇「離さない。」
善逸「もー!冨岡さんは言葉が足りなすぎですー!」
少しくぐもった声が俺の羽織の中で聞こえる。
たしかに我妻の言う通り、俺は言葉が足りなかった。
その後はすぐに任務に行き、無事に帰れた。
言葉が足りなかったのか、好きの一言さえ言えなかった。