誕生日、おめでとう義勇視点
胡蝶「……ほう、何となくですが事情は分かりました。」
義勇「本当か」
胡蝶「善逸君の誕生日が何日か知りたいんですよね?確か9月の3日……明後日ですね。」
義勇「!」
今日は9月の1日、明後日は善逸の誕生日。
明後日は普通に学校がある。いつ、プレゼントを渡そうか……
胡蝶「善逸君は甘いものが好きですよ。竈門君のパン屋さんで買ったらどうです?」
義勇「……いちごジャムのパンがいいだろうか……」
胡蝶「それは先生に任せます。」
胡蝶はそれだけ言うと、そのままさっさと行ってしまった。
今日、買いに行くか……
今は誰もいない時間帯。
善逸の机の上をツー、と指で直線を描いた。
義勇「……」
今日、善逸は休みだ。
風邪を引いて休んでいるのだ。
義勇「……早く明後日にならないものか……」
窓から差す夕日の光が善逸の机に当たる。
少し暖かくなった机に、今度は掌全体を乗せた。
義勇「……会いたい……」
その言葉だけ残して、俺は教室を出た。
ーーー
9月2日
今日も善逸がいない。
明日なら、来るだろうか……
モヤモヤ考えていたら、ゴン、と鈍い音がした
義勇「…っつ」
ボーッとしてしまった為、壁に頭をぶつけてしまった。
額を抑えつつ、俺は職員室へと向かう。
義勇「……善逸……」
ボソリと呟き、またツカツカと歩いた。
無音の廊下に静かな足音が響く。
ーーー
9月3日
善逸の誕生日。
今日は善逸はちゃんといる。
隣にいる黄色の頭に目を向ける。
いつもなら、「髪を染めろ」と言ってるが、黒くしたら善逸がどこかに行ってしまう様な気がする。
だから今は言わない。勿論、これからも。
善逸「おはようございます、2日も寝込んでしまってすみません……」
義勇「別に平気だ」
善逸「あ、はい」
会話が続かない。
何を言葉にすれば……
ーーー
放課後。
校門の前、善逸一人がいる。
義勇「善逸」
善逸「あ、義勇さん」
義勇「すまないな、待たせてしまって。」
善逸「別にいいですよ。」
義勇「……その……」
紙袋を差し出し、目を合わせて言う。
義勇「誕生日、おめでとう」
善逸「え!?あ、そうか……今日誕生日か……」
義勇「竈門ベーカリーで買った。いちごジャムのパン」
善逸「それ、俺が一番好きなパン」
にっ、と笑う善逸が太陽のように見えた。
喜んでくれた。嬉しい。
善逸「……食べていいですか?」
義勇「(コクリ)」
善逸「じゃ、いただきます」
モグモグと食べる姿は、まるで子動物のようだった。
善逸「やっぱ美味しい。」
義勇「ジャム、付いてるぞ」
善逸「あ、すみませ___」
(ペロッ)
善逸「〜っ////!?」
善逸が甲高い声を上げる。
声になるかならないかぐらい。
義勇「たしかに、美味しいな」
善逸「全く、もう……」
頬を膨らませる善逸。
義勇「っ……」
顔がにやけそうになるのを我慢し、口元を手で隠す。
善逸「じゃあ俺、もう帰りますね」
義勇「待て」
(チュッ)
善逸「んむ!?」
義勇「……じゃあな」
善逸「いぁ、はい……」
帰って行く後ろ姿を見送った。
夕日が優しく善逸を照らす。