田園風景の前で、ゴウシン、天津の会話
「ゴウシンよ。」
「なんですかい?」
「懐かしいのか、この風景が。」
「・・・頭・・・。」
「遠い目をしておったのでな。余計な世話だったか。」
「いやいや、滅相もねえ!・・・おいらはしがない百姓の倅でしてね。あんころはこういった畑で一生懸命鍬を振るって、稲を抱えて一生を過ごしていくって思ってたもんです。おいらは村一番の力持ちだったんで、娘っ子にも母ちゃんどもにも引く手あまただったんでさ。」
「そうか、そうか、お主ならば、頼れる童であったのだろうなぁ。」
「ってえ、頭はおいらの昔なんてぜえんぶお見通しでございやすよね。」
「お主の一生涯を見れたとしても、心のうちを見ることは出来ぬ。人がいつ喜び、いつ泣き、いつ郷愁にかられるのかは、それを感じたものにしかわからぬのだ。ありがとう、ゴウシン。お主のことが、またひとつ知れた。」
「・・・頭。」
「綺麗な田畑じゃ。土の香りと、草の香り。人々が瑞々しく生きておる。」
「・・・へい。」
「私もこの光景が好きだよ。」
「・・・頭ァ!一生ついていきやす、頭ァ!」
「はっはっは。ありがとう、ゴウシン。まあ、ほどほどについてきておくれ。」