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    一匹狼、おもしれー男に出会う1.
    「俺も行く」
     そう口にした瞬間、部隊の視線がさっと自分に集まるのを大包平は感じた。ただ一振り山姥切国広だけが、思案するようにゆっくりとこちらを振り向いた。
     感情の読めない碧の瞳、その視線を真正面から受け止める。咄嗟に口をついて出た言葉だったが、間違った判断だとは思っていなかった。山姥切は否と言うかも知れない。だとしても、大包平はあくまで主張を通すつもりでいた。
     だから、皆が静かに見守る中、山姥切が黙ってうなずいた時、大包平は思わず目をまたたいた。頭の中で組み立てていた反論が霧散する。誰にとっても予想外だったのだろう、かすかなざわめきが部隊の中を駆け抜けた。
     刀を手に、山姥切は立ち上がった。大包平もそれに続く。最後に隊長を振り返り、ひとつ大きくうなずいた。俺に任せておけという意気だったのだが、曖昧にうなずき返す隊長の顔には、期待よりも心配が現れていた。
     四振りの仲間に背を向け、山姥切の後を追う。誰も見ていないところで、大包平はぐっと奥歯を噛みしめた。分かっているのだ。この役割を任せられるほどの実力も実績も、まだ自分にはないということは。



     撤退の決断が少し遅かった。
     隊長は経験豊富な男士であったが、戦場のほうがこれまでとは状況が異なっていた。一度の戦闘に投入される遡行軍の数が格段に増えていた。それゆえに戦闘後の消耗も、これまでとは比較にならないほど大きい。
     従来の戦場に慣れた者ほど、戦況を見誤りやすいようだった。顕現して比較的日の浅い自分は、あるいはいち早く自軍の不利に気づけていたのかも知れない。早期に撤退を進言できなかった自分にも責任があると大包平は思っていた。
     だがそのことについて省みるのは、今ではない。
     最も偵察に優れた者に、敵陣をうかがわせた。その結果、既に敵の後続が間近に迫っていることが明らかになった。一旦遭遇すれば、激しい戦闘は免れない。
     負傷者を抱える中で、この状況をいかに打開し、みなで本丸に帰還するか。判断を迫られた隊長はしばし沈黙した。その時だった。山姥切国広が、この出陣で初めて発言したのは。
     自分が囮になると山姥切は言った。一振りで可能な限り多くの敵を引きつけて時間を稼ぐから、そのあいだに撤退しろ、と。
     山姥切は最も古くから本丸にいた刀の一振りであった。実力も経験も、おそらく彼の右に出る者はいない。普段は隊長の決定には口を挟まないのだが、ひとたびこうして意見すると、他の男士は誰も異を唱えられない空気になるのだ。
     大包平はそれが気にくわない。
     采配に口を出すのならば、もっと早くに撤退するよう言えばよかったのだ。山姥切ならばそれができたはずだ。だがそうはしなかった。ぎりぎりまで隊長に任せておいて、どうにもならなくなったところでようやく手を挙げる。
     何も今回に限った話ではない。部隊の危機に際して、自ら危険な役を買って出る。そういうことがこれまでに幾度もあったと大包平は聞いていた。いざとなれば自分一振りでどうにかすれば良いと考えているし、実際にそれができると思っている。
    「俺のことは心配するな。頃合いを見て退く」
     沈黙する部隊に向かって、山姥切は言った。取って付けたような言葉だと大包平は思った。だが、そのひとことで重く停滞していた空気が再び動き出した。
     方針は決まった。それはもう覆せない。けれど大包平は納得していなかった。
     自分の身を顧みない作戦を提案する山姥切も、それを言われるままに受け入れる仲間たちも。みな間違っていると思った。
     だから、同行を主張した。
     仲間はみなそれぞれに傷を負っていたが、自分の怪我は軽い。自分は太刀であり、頑強さに優れた刀種である。深手の者と共に先に撤退するほうか、敵を引きつけて時間を稼ぐほうか。己がどちらの役目を果たすべきかは、明白だろう。
     ――俺も行く。
     大包平の発言に対し、みな山姥切国広の判断を待っていた。隊長ではなく。そのことがまた大包平を苛立たせた。時には危険な役回りを引き受ける者が必要になる場合もあろう。だがそれは、互いに納得した上で実行すべきであるはずだ。誰かに言われるままに従うのではなく。
     一度、山姥切と面と向かって話しをしなければならない。大包平はそう強く思っていた。



    2.
    「山姥切国広、参る!」
     大鋒の刀を抜き放ち、山姥切が高らかに名乗りを上げた。日頃の陰気な様子からは想像もつかないような、戦場に朗々と響き渡る声だった。普段は自分を覆い隠すために纏っている真白の布を豪快にひるがえし、敵前に踊り出る。
     その姿に大包平はつかのま見惚れた。見惚れながら、今日まで彼が一振りで立った戦に思いを馳せた。どのような戦場にあっても、さぞや目を引いたことだろう。
     敵の注目を一身に集めて、山姥切は駆ける。仲間の勇姿に素直に感嘆すると同時に、大包平は腹を立てていた。自分自身への腹立ちだった。
     なぜ自分にはあれと同じことができない?
     いや、できるかできないかではない。やるのだ。
    「死にたくないなら下がれ!」
     敵の視線を山姥切から奪わんとするかのように、負けじと声を張った。
     戦いの目的は、こちらが本隊だと敵に思わせることで、先に撤退する仲間の存在に気づかせないことだ。だから正面から突撃する。
     敵が、戦が、動き始めるのを大包平は肌で感じた。初手は上々の手応えだった。



     波のように押し寄せる敵を、二振りで迎え撃つ。
     戦いが始まる前に山姥切が口にしたのは「折れるなよ」というひとことだけで、作戦も何もあったものではない。あるのは、斬るか、斬られるかだけだ。
     後で話さなければならないことが増えたなと思いながら、大包平はひたすらに刀を振るう。
     個々の強さはそれほどでもないが、とかく敵は数が多い。斬り合いを重ねるうちに、少しずつ手傷が増えてゆく。ひとつ深手を負いでもしたら、そのまま嬲り殺しになるだろう。集中を切らせば、その瞬間に終わりがくる。
     先に顕現していた分、山姥切のほうが大包平よりも練度は高い。けれどあちらは打刀である。肉体の強度や体力は太刀である自分よりも劣る。大包平にはそれが気がかりであった。
     また一体を斬り捨て、次の敵と間合いをはかり合う。そのわずかのあいだに、山姥切の様子をうかがった。
     視界の端で布が翻る。ひとまわり小さな打刀は、こちらよりもずっと派手に立ち回り、より多くの屍を足元に築いていた。一瞬で大包平は理解した。要らぬ心配だ。それどころか、むしろ自分のほうが助けられている。
     フードの下からのぞいた瞳が、しばし大包平を捉えた。気遣うようでもあり、品定めをするようでもある一瞥だった。
     大包平は歯噛みした。破損した防具を脱ぎ捨てるや、睨み合っていた敵との間合いを詰めて、一瞬で片をつける。悔しいが、こちらに構うなと言えるほどの強さは、まだ自分にはない。
     白い布を汚すのは返り血か。山姥切の動きは少しも鈍っていないように見えた。相当の手練れであることは知っていたが、戦場での強さを目の当たりにしたのは初めてだった。
     立っている敵の数は次第に減っていく。粗方の敵が片付いたのを確認して、大包平は山姥切の名を呼んだ。撤退するならば今だろうと思われた。
     最後の敵を斬り捨てたあと、山姥切は無造作に血振いをした。本体を目の前にかかげ、刀身の状態を確かめる。それが終わるとようやく大包平を見た。頭の先から足までをさっと眺めたあと――大包平の予想に反して――山姥切は敵の後続が待つほうへと駆け出した。
    「おい! 退くのではなかったのか!」
     予期せぬ行動に大包平は激しく動揺したが、山姥切の後を追うことに迷いはなかった。



    3.
     次から次へと、敵は退くことのない波となって押し寄せる。一度の戦闘がこれほど長時間にわたったのは初めての経験だった。斬った敵の数は覚えていない。あるところまでは数えていたのだが、やめた。視界を狭めるだろう布を、戦場にあっても頑なに手放さなかった山姥切が、自らフードを脱いで戦い始めたのを見た時に。
     この期に及んでようやく、この刀は本気になったのだと大包平は気づいた。今までは力を出し切っていなかったということであり、全力を出さねばならないほどに追い詰められているということでもあった。
     立て続けの戦闘で、身体が思うように動かなくなってきているのを大包平は感じていた。時間稼ぎはもう十分であるはずだった。仲間は無事に帰還しただろう。あとは、この作戦を成功で終わらせるだけだ。
     そのためには、ここで倒れるわけにはいかなかった。必ず二振りが揃って本丸に帰還しなければならなかった。山姥切と自分が引き受けたのは、危険な役目を負うことであって、自らを犠牲にすることではないのだから。
     目の前の敵を斬る。それ以外の雑念を捨てた。あとどれだけ斬れば良いのかと考えるのはやめた。
     山姥切がまだ立っていること。重要なのはそれだけだ。それだけを確かめて、刀を振るった。敵を斬った。
     斬って斬って斬り続けた。
     そしてとうとう、立っているのは二振りだけになった。
     肩で息をしながら、大包平はあたりを見回した。敵の後続はもういない。
     時間稼ぎをするだけのはずが、すべての敵を倒してしまった。
     勝った。
     大包平は山姥切を振り返った。山姥切もさすがに激しく息をついてはいたが、片手で構える刀に揺らぎはない。鋭い目で周囲をうかがったあと、ふと刀を下ろす。そして大包平を見た。
     言葉はなかった。
     勝利を、無事を、うなずき合ったあと、大包平はその場に倒れ込んだ。相手もほぼ同時に倒れ込むのが見えたが、気遣っている余裕はなかった。極限状態から解放され、糸が切れたように四肢から力が抜けた。
     限界まで動かした身体が悲鳴を上げていた。息をしてもしても苦しく、喘ぐようにひたすら空気を取り込んだ。
     あらゆる所に痛みがあった。それが斬られたからなのか、筋肉を酷使しすぎたからなのかもわからない。全身が燃えるように熱かった。水がほしい。これほどに渇きを覚えたのは、顕現して初めてのことだ。今すぐに本丸に帰って、よく冷えた水を飲みたい。いっそのこと頭からかぶってしまいたい。そうでもしなければ、この熱が引くことはないように思われた。
     それでも、全身を濡らした汗が少しずつ少しずつ肌を冷ましていく。永遠とも思える時間が過ぎて、ようやく息苦しさが和らいだ。早鐘のように鳴っていた鼓動も、平常に近づきつつある。
     大包平はふらつきながら立ち上がった。痛みと熱が引いていくのと入れ替わるように、今度は疲労が襲う。
     少し離れたところで、山姥切はまだ倒れていた。赤く染まった布を見て、臓腑がひやりと冷たくなるのを感じた。
     駆け寄り、そばに膝をつく。かぶさっていた布をめくって、全身に目を走らせた。胸の動きから、呼吸が正常であることはすぐに分かった。深刻な傷はないようだったが、大包平と同様に切創がそこかしこにある。
    「山姥切国広」
     名を呼べば、ゆっくりと目蓋が上がった。緩慢にまばたきを繰り返したあと、ようやく大包平に視線が向く。
    「大丈夫か山姥切」
    「問題ない。が、少し疲れた」
     そう言って、山姥切はまた目を閉じようとする。
    「おい」
    「なんだ」
    「頃合いを見て退くのではなかったのか」
    「作戦を変更した」
     手足を力なく投げ出したままで、山姥切は答えた。
    「お前と二振りなら、このまま勝てると判断した」
    「だったら行動に移す前に説明しろ」
    「時間がなかった。だが今の戦闘で、お前もだいぶ経験を積めたはずだ」
     強くなりたいんだろう? と山姥切は言った。地べたに倒れたままなのに、どうしてこうも偉そうな態度なのだろう。助け起こそうと思っていたのだが、大包平は先に言いたいことを言うことにした。
    「山姥切。俺はお前のやり方に異議がある。後で俺と話をしろ」
    「分かった」
     拍子抜けするほどあっさりと、了承を得た。
    「忘れるなよ」
    「お前が覚えていればいいだろう」
    「なんだそれは。……まあいい」
     約束を取り付けただけで良しとすることにして、山姥切に向かって手を差し出した。口は十分に回るようだが、表情には疲労の色が濃く、目にも力がない。
    「立てるか」
     差し出した手を無視して起き上がろうとした山姥切だったが、上体を少し起こしたところで、すぐにまた倒れ込んでしまった。
    「厳しいようだな。俺が背負っていこう」
     その言葉に、山姥切は苦虫を噛み潰したような顔になった。
    「少し休めば動ける」
    「お前を運ぶくらい訳ない。今はすみやかに帰還すべきだろう」
    「おい……おい待て!」
     問答をしている時間が惜しかった。多少強引にでも抱え上げてしまおうと考えたのだが、思いのほか強い口調で制された。
    「どうした」
    「大包平。お前、怪我は」
    「中傷程度だ」
    「疲労は」
    「どう見てもお前よりは元気だろうが」
     そうだなとうなずいて、山姥切は目を閉じた。さっさと連れて帰りたい気持ちを抑えて、大包平はしばらく待つ。
     目を開けた山姥切は、やけに真剣な表情をしていた。大包平は思わず居住まいを正した。
    「大包平」
    「何だ」
    「お前の霊力をよこせ。少しでいい」
    「霊力だと?」
     大包平はしばし返事を躊躇した。
     霊力――男士をこの世に顕現させ、姿形を維持し、傷を修復し疲労を癒やす、全ての根源となる力。審神者が男士に与えるものだが、男士同士でも多少は受け渡しができる――という程度の知識はある。
    「構わないが、それはどうやる」
    「待て。やったことがないのか」
     ない。そうきっぱりと答えた。山姥切はあからさまに驚いた顔をしたあと、眉根を寄せて黙り込んだ。
    「なんだその反応は」
    「教わらなかったのか」
    「教わったぞ。接触し、体液を与えるんだろう」
    「そういうことだ」
     そういうこととはどういうことだ。そう思ったが、山姥切はそれ以上何も言わない。
     確かに知識はある。だが実践したことはない。そもそもそれが必要な状況に陥ること自体が、大包平にとっては想定外だった。
    「俺は何をすればいい」
    「いま自分で言っただろう」
    「指示くれ。具体的にだ」
     後半を強調しながら大包平は言った。これは非常に重要なことだった。分からないことは教えを請わなければならない。やることに誤りがあってもいけないだろう。
     何を逡巡しているのか、山姥切はしばらく視線を彷徨わせたあと、目を閉じて言った。
    「口で」
    「口を、どうする」
     一度は閉じた目が見開かれる。本当かよ、と小さく呟く声が聞こえた。
    「口を合わせろ」
    「よし分かった」
     大包平は膝をついて身を屈めた。山姥切の片手を取って、指を絡めて握る。体躯に比して大きな手だと思った。
    「待て。なぜ、手を握る」
    「肌と肌の接触でも多少は与えられる。そう教わったぞ」
    「それは、そうだが」
     言葉の続きは溜息となって消えた。そうだが、何だ。言うべきことがあるなら言ってほしいのだが、山姥切は口をつぐんでしまった。次いで目も閉じた。
     大包平は相手の口元に己の口を近づけ、唇同士を触れあわせてから、離した。
    「これでいいのか」
     山姥切が目を開けた。
    「大包平」
    「何だ」
    「……ちを……ろ」
    「何と?」
     不明瞭な相手の声を聞きとろうと、顔を寄せた。その時だ。
    「口を、開けろ――」
     襟ぐりを掴まれたかと思うと、思いがけず強い力で引き寄せられ、口づけられた。指示に従ったわけではなく、驚いて開いてしまった唇のあいだから、相手の舌が入ってくる。
     その時にはもう、相手の腕が首の後ろに回されていて、大包平は身動きが取れなくなっていた。
     口の中を舐められて、舌に舌が擦り付けられる。粘膜同士の接触を増やそうとしているのだと理解し、力を抜いて相手の動きに委ねた。
     舌を絡め、吸い、口内に溢れた唾液を啜ってから、山姥切はようやく大包平を解放した。
     相手の唇が、どちらのものとも知れない唾液で濡れている。それを舌で舐め取ってから、山姥切は口を開いた。
    「だいぶ楽になった。助かった」
    「お、おう、そうなのか。それは良かった」
     どうして自分だけが息を乱しているのか、腑に落ちないものを感じながらも、大包平は礼を受け取った。
     楽になったというのは本当なのだろう、山姥切は危なげなく上体を起こすと、片膝を立てて座った。
    「楽しかった」
    「いま何と?」
    「楽しかった。久しぶりに全力で戦った。倒れるまでな。やはり気持ちが良いものだ」
     汗みずくになった髪を掻き上げて、山姥切は笑った。見たこともないほど晴れやかな笑顔だった。その顔を見て、大包平の中にある疑念が浮かぶ。
    「お前、まさかとは思うが……。殿を務める、囮になる。そういった危険な役を進んで引き受けるのは、それが楽しいからなのか」
    「そうだ」
     平然と答えた山姥切を、大包平は思わずまじまじと見た。つい先ほどまで、敵陣の真っ只中で派手に立ち回っていた刀は、視線から隠れるようにフードを目深に被った。
    「俺は、この本丸に一番はじめからいる刀だ。主がいつまでも俺を使うから、俺はこの本丸で一番強いままで、誰も俺に追いつかない」
    「おう、そうなのか……」
    「俺は戦いたい。ぎりぎりの戦いがしたい。俺の力を限界まで使って勝ちたいが、俺についてこれる奴がこの本丸にはいない。一振りでできる戦は少ない。望まない奴を巻き込むわけにはいかない」
     だが、と山姥切はフードの下から大包平を見上げた。
    「お前は自分から言い出した。だから付き合ってもらった。なかなかの戦いぶりだったな。楽しかったぞ。礼を言う」
    「お、おう……」
     まるで予想もしていなかった展開だった。だが予想していたよりも事情は単純で、悪いものではなかったのかも知れなかった。
    「山姥切。お前、いま言ったことを一度みなにも話したほうがいいと思うぞ」
    「そうか?」
    「みなお前を、心配している」
    「なぜだ? 俺の力は俺が一番よく分かっている。無謀なことはしない」
    「だが――」
    「今回はお前がいた。だから多少の無理も利くと判断した」
     それに、と山姥切は言いつのった。
    「今まで、一度も止められたことがない」
    「それは、止められない、止めさせない雰囲気を出しているからだ! お前が!」
     山姥切は小首をかしげた。大包平は頭を抱えたい気分になった。
    「無自覚!」
    「よく分からないが、お前がそこまで言うなら、話はしよう」
    「是非そうしてくれ」
     腑に落ちない様子で首をひねりながら、山姥切は立ち上がった。立つとまだ少しふらふらするようで、堪えるように目を閉じる。
    「大丈夫か」
    「いい。自分で立てる」
     肩を貸そうとしたが、すげなく断られた。歩き出した山姥切の背中をしばらく観察したあと、大股で追いかける。隣に並んで、相手の手を握った。
    「まだ少し足りないようだが」
    「よせ」
     山姥切が手を振り払う。その拍子にわずかによろけたのを大包平は見逃さなかった。
    「ふらふらじゃないか」
    「いい」
    「手を繋いで帰るか」
    「よせ、馬鹿」
     また振り払われて、背を叩かれた。その反動で今度こそ山姥切はよろめいて、大包平の腕に掴まって身体を支える羽目になった。
    「良いことを教えてやろう。馬鹿というほうが馬鹿だ」
    「うるさい」
     山姥切は笑っていた。大包平も笑った。手は繋がなかったが、並んで帰った。



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    2022/07/01 22:04:17

    一匹狼、おもしれー男に出会う

    (※なぜかルビタグが上手くいかないのでルビなし版を上げています)

    山姥切国広と大包平の短編です。おもしれー男を見つけてしまった山姥切国広。
    霊力供給(?)ネタです。

    そもそも霊力とは何なのか。三日月極のつつきすぎ台詞から考えるに触っているだけでも移るものなのか。
    わかりません。
    何はともあれ霊力供給です。
    キスまでの接触があります。

    某本丸を見ていいなと思った組み合わせではありますが、某本丸とは別のとある本丸の話です。

    作中で大包平→山姥切国広の呼び方は山姥切としていますが、どちらもいるときはフルネームで呼び分けているのかなあと考えています。

    https://marshmallow-qa.com/segmenterin?utm_medium=url_text&utm_source=promotion
    感想を頂けると大変喜びます。
    誤字脱字等ありましたらご連絡いただけると幸いです。

    #刀剣乱舞 #二次創作 #大包平(刀剣乱舞) #山姥切国広(刀剣乱舞) #ReS

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