1月28日【1月28日】
誰かの体の中から外の世界を眺めていた。
朧気な意識で、自分のものではない視覚情報を受け取り続けている。解離性同一性障害、いわゆる多重人格者の副人格になったならば、こんな気持ちだろうか。
テレビ画面をそのまま貼り付けたような見え方だと感じた。それくらい、私に見える世界は限られていた。
この体の持ち主は、職員室のような場所にいるようだ。教科書やファイルがずらりと並べられた机が見える。
年配の教員と言葉を交わしたあとにプリントを受け取った。それを一緒にいた友人達に分けて、軽く一礼をして部屋から出ていく。
「そろそろ飽きて……しても、いい頃じゃないかな」
「…………なら楽しいかも、今日……」
友人らしき生徒と談笑しているのだが、ところどころノイズが交じったように聞こえる。目も耳も、限られた範囲でしかこちらに情報を与えてくれないようだ。
もう一人の生徒がため息を吐く。
「本気でやるの?俺は……」
「…………は嫌?」
「どうせなら……達も…………いい」
二人して何やら言えば、彼は諦めたように大きくため息を吐いた。
電源を切ったように視界がぷつりと途切れた。それに合わせて私の意識も眠りに落ちた。
次に電源が入ったのは夕暮れ時だった。
先程の二人とはまた違う生徒と帰っているようだ。どこかの駅前らしく、設置された噴水が橙色に染まっていた。
声が聞こえた。視界が後ろを向くと、背の高い生徒が走ってくるのが見えた。急いだせいか、制服が乱れている。
「急がなくても大丈夫だったのに」
「電車乗り過ごしそうだったから」
そんな風に笑いあっているのが聞き取れた。
私は、君達はこれからどこに行くのだろう。
どうして、私はここに閉じ込められているのだろう。
そんな疑問を口にした瞬間、電源が切られた。