1月29日【1月29日】
大通りで妖怪と妖怪が争っている。
逃げた人が乗り捨てたのか、道中に車が雑に放られていた。潰れた車もあった。大通りを歩いてた人たちも、蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
私は一人、足元の血溜まりを呆然と見つめていた。近くで何かが壊れる音がして、ハッと我に返った。一番近くの路地を通って、なるべく人がいない方へ走る。
大通りで戦っている個体以外にも、沢山の妖怪が人間を襲っては食らっていた。何度も何度も、人間だったものに躓いた。
幸い、地の利があったので、ほとんどの妖怪は撒くことができた。逃げ込んだ場所で、一人の妖怪が女の子を匿っていた。彼は味方であるらしい。一緒に逃げ切ろうと約束した。
塀に登って辺りを見渡す。空は真っ暗だった。黒い顔をした鬼女が、腕を前に突き出したままゆっくり歩いてきているのを見つけた。戻って鬼女のことを伝えると、仲間の妖怪が囮役を買って出てくれた。
私は足を挫いている女の子を抱き上げて逃げた。こちらに気がついた鬼女が咆哮をあげて追いかけてきた。仲間の妖怪が鬼女を蹴り飛ばしたのが見えた。合流してそのまま遠くへ走った。
逃げている内に病院のような場所に着いた。正面玄関の前にロータリーがあった。停車している車の間から一本の白線が見えた。
あの白線を踏めばゴールなんだと思った。
三人で白線を踏んだ。空が晴れ渡った。