1月17日【1月17日】
夕暮れ時、バスに揺られている。
狭い道ばかりの、坂の多い街だった。なかなかバスは進まない。また踏切に引っかかった。
電車が民家の間を、洗濯物にぶつかりそうになりながら通っていく。早く駅のバス停に着かないだろうか。出来れば、一刻でも早く電車に乗って帰りたい。
両手に持っていた二つの杯を、リュックサックと一緒に抱きしめた。壁に埋もれていたのを、偶然見つけたのである。掘り出した金色の杯は、願い事を叶えてくれるらしい。
三つあった内の一つは妹に手渡した。弟にも分けようとしたのだが、要らないと返されてしまった。
悩んだ末に、いつかに世話になった恩人にあげようと思った。それで、少しでも早く元の街に帰ろうとしていたのだった。
きっと喜んでくれるだろう。驚く顔を想像して、一人顔をほころばせる。
浮き足立つ心音が、踏切の音と重なって響いていた。