1月10日【1月10日】
学校の最上階に来た。
この階に来ることは普段はない。特に用事がないからだ。当然、何の教室があるのかも知らない。
ひとつの教室の中から、人の声が聞こえた。覗き込むと、何かの面接を行っているようだった。中にいた面接官のような女性と目が合った。
あれよあれよという間に、教室の中へと招き入れられた。椅子に座ることを勧められたので、ひとつお辞儀をしてから静かに座る。
黒髪に赤い差し色を入れた女性が、手元にある紙を見ながら質問を投げかけてくる。
「蛙は胎児を宿すことになりますか」
「肺に硫化水素は取り込みますか」
「西棟の階段に足がありますか」
意味のわからない質問ばかりなのに、口は勝手に「はい」だの「いいえ」だのと答えを紡いでいる。
そうしている内に、面接が終わったらしい。お辞儀をして立ち上がり、礼を言って両手で静かに扉を閉めた。そうするべきだと体が覚えているようだった。
下の階に降りると、何やら人だかりができていた。
輪の中心で、女子生徒が倒れ込んでいるのが見えた。私の前に面接を受けていた子だった。おかしな色の血を吐いて痙攣している。
合わなかったのだなと思った。