1月6日【1月6日】
学校の空いてた教室で暮らしていた。
過去に放送室だったらしい部屋には、私達兄弟の荷物がそこかしこに置いてある。
古びた放送器具の下に穴を開けて、海から水路を引いていた。魚やクラゲをたまに掬ってみては、焼いたり蒸したりして食料にしていた。
ある日の朝、放送器具のある部屋の扉を開けると、小さなアザラシが我が物顔で寛いでいた。水路に迷い込んだようだ。
弟にとても懐いたアザラシは、海に帰る気を一切失くしたようだった。結局、一緒に暮らすことになった。
アザラシとの暮らしにすっかり慣れた頃のことだった。授業に出席するために中庭に向かっていた。
ガラスのドームが特徴的な中庭は、植物園の温室のようでお気に入りだった。
天井近くまでそびえ立つ木を眺めていると、ガラスの向こうで何かが光った。何か嫌な予感が背筋を走った。
「伏せろ!」
周りが咄嗟にしゃがみこんだのと同時に、爆撃音とガラスの割れる音がした。幸いにも、植物の葉が傘になったおかげで、みんなかすり傷で済んだようだった。
それからは、学校で避難生活を送ることになった。
どうも、各地の学生を狙ったテロが起こっているようだ。帰宅途中の学生や、子ども部屋を執拗に狙っているらしい。
私も、自宅にいる犬を連れてくる為に、大人の服を借りて帰宅することにした。道中、トンビのような大きな鳥が、電信柱の上から子どもを監視していた。変装して正解だとほっとした。
なんとか犬を連れて学校に戻ると、沢山の靴箱に青い紙が差し込まれていた。避難している子どもに向けた、家族からの置き手紙であるようだった。自分と弟の靴箱にもそれぞれ置かれてあったので、持って帰ることにした。
放送室に戻ると、アザラシが呑気に魚を食べていた。
緊張感の欠けらも無い光景に肩の力が抜けた。