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    さかみな短編小話ログ可愛いわれらのかわいい可愛い悪い大人の打算噂回避(モブ視点)読み違え(賢木→皆本/留学時代)それでいいのか可愛いわれらの

    「やったぞ賢木!」
     昼過ぎの研究室。
     解析の結果に喜んだ皆本が口にしたのは相棒の名で。
    「……」
    「……」
    「……」
     残念ながら皆本が名を呼んだ彼はこの場にはいないし、現在の研究と解析には一切関わってもいなかったりする。
     同室の研究員たちがどうしたものかと見守る中、皆本は現実を正しく把握して撃沈した。
    「……っ!」
     顔どころか耳や首筋まで真っ赤にした皆本は、最後の抵抗とばかりに手にしたファイルで顔を隠してその場に蹲る。
    「あの……わすれてください……」
     今や特務のトップチームを率い、バベルには欠かせない人材である皆本。彼の抜けた姿に研究室内が柔らかい雰囲気に包まれる。
     昔から頼りにはなったが、たまにこうやって笑えるようなミスをしたりと、人間味溢れる彼を好いている者も研究室に多い。
    「ほのぼのしてるけど、これ知られたらアイツ暴れないか?」
     研究員の一言に弛緩していた空気が凍りつく。
     アイツ、とは先程皆本が名を呼んだ賢木のことだったりする。
     研究員の一部では狂犬、モンペ、等の散々な渾名で呼ばれている。更には皆本を追いかけて自らも特務エスパーになったのではないかと、噂を通り越し決定事項として囁かれているのも研究棟では有名な話で。
     しかもタチの悪い事に賢木は高レベルサイコメトラーである。皆本に対して邪な感情を持った人間はどんな手段を持ってしても皆本に近づけさせない悪辣な面を持ち合わせている。
    「よーう、皆本。解析終わったか?」
     飼い主の危機を察知したのかエスパーの勘か。
     本来ならこの場に現れるはずのない賢木が扉を開けて入ってきた。
     赤面して蹲る皆本、眺めている研究員。
      賢木が壁を殴りつける音で修羅場の幕は開けられた。
    かわいい可愛い

    「皆本、そろそろ休け……」
     夕暮れの医務部の一室。カルテの入力を終わらせた賢木が椅子を回転させながら相棒の名を呼ぶ。が、この場に皆本はいない。
     黒い幽霊に仲良く拘束監禁、更にはウィザード設立とずっと一緒にいた弊害がポロッと。こんな形で現れたことに、賢木は頭を抱えたい衝動を抑えて顔を作る。
    「あー……、気にしないでくれ」
     今日の賢木は運がない。
     同じ部屋で働いている医務部職員は比較的新しい職員で、医務部の部長に就任した賢木が特務エスパーを兼任していることを詳しく知らなかったりする。そもそも特務エスパーというのが機密の塊で、同じバベルで働いていても特務エスパーの顔と名前をほぼ知らないというのはよくある話だったりする。更に国家機密の超度七のメンバーで構成されるチームに関しても知らされるような立場ではない。
     つまり、『皆本』が賢木の特務エスパーとしての上司であり親友であり共に修羅場を潜った相棒であることを知らない人間も多い。
     何もなかったフリをして机に再度向かった賢木の背中に、女性看護師の顰められた声が届く。
    「賢木部長の本命かな?」
    「えー、でも部長って女遊びが激しいって聞くよ」
    「だからこそよ。疲れた時にうっかり出ちゃうのは本命の名前でしょう」
     自分に容赦のないサイコメトラーの顔が浮かんで、賢木の背に冷や汗が流れた。同チーム、他の二人は直接攻撃を仕掛けてくるが、彼女は搦手を使ってくるようになっていてタチが悪い。
     そして賢木は人の噂に戸を立てられないのはよく知っている。皆本と付き合っているだの、将来を約束して指輪を贈っただの、その手の噂は留学生時代に大体経験済みだ。
    (逃げよう)
     有給は残っている。噂が広まって被害が出る前に物理的に遠ざかってしまいたいと、賢木は有給を申請するために立ち上がった。
    「ごきげんよう、賢木センセイ」
     見た目は絶世の美少女。賢木の天敵である銀髪のサイコメトラーが、感情を覆い隠す為の最高の笑顔でそこにいた。
    悪い大人の打算

     皆本がチルドレンの待機室で仮眠を取っている。
     局長の溺愛っぷりが目に見える良質なソファーは、少々の狭さにさえ目を瞑ればよい寝床ではあるだろう。が、ここは待機室であって仮眠室ではない。それでも皆本がここで仮眠を取っている理由を知っている賢木は頬を緩めた。
     眼鏡を外し、幼い顔で眠る皆本はチルドレンから見ても可愛いという評価を得ている。
     寝顔を他人には見せたくないと、皆本は仮眠室で寝ることを禁じられてしまったのだ。
     賢木も賛成の一票を投じた身。子供たちだけでは説得出来ぬ堅物を落とすのに一役買った。仮眠を取るのならチーム以外が入り込まない待機室で眠るようにと、皆本は約束を取り付けられてしまった。
     可愛いお嬢様方の独占欲と我儘によって、無防備な皆本が晒されることが減っていくのは、賢木にとっても願ったり叶ったり。
     問題児のチルドレンから信頼を得て、任務でも成果を出し、高超度エスパーの指揮官として名を上げていく皆本はもう国の機密に近い所にいる。扱いは自分たち高超度エスパーと同等かそれ以上になっていくだろう。
    (同じとこまで来てくれよ)
     もうすぐ隣に立てるようにするからと、賢木は手元の膨大な書類が入った封筒に目を向ける。
     特務エスパー契約書。
     なんにでもなれることを教えられて大人になった男は、なりたいものになるための手段を選ばないのだ。
    噂回避(モブ視点)

     人の精神や心に触れる能力を持つエスパーはどうしても忌避されがちだと聞いているし、自分も心を読まれたりするのはお断りなのだけど、目の前の光景を見るとそんなに怖くないのかなと錯覚してしまう。
     サイコメトラーで医者の賢木先生と特務課の皆本さんが手を握り合いながら、言い合いをしていた。
     次の診察までに片付けがあるので見てる場合ではないけど、聞こえてくるのはどこか弾んだ声で。
    「喉まで出かかってるのに!」
    「おらもっと気合い入れて思い出せ!」
    「君にも見せたことあるはずなんだ……あの、小さい瓶の……」
    「お前の家はマイナーな調味料とか出てくるからな……」
     皆本さんが思い出しきれないことを賢木先生に透視してもらっているらしい。
     仕事に必要なことかと思いきや、調味料?
    「確か先月の……」
    「いらない事まで思い出してんぞ、お前の記憶って情報量多くて処理が大変なんだけど」
    「もっと深く入ってきていいから」
    「そういうのは夜に言ってく……ぶっ!!」
     鈍い音と皆本さんの怒鳴り声。
     今は皆本さんも別件で怒ってはいるのだけど、心を読まれている嫌悪感なんて全く感じられない。
     仲良くできることに憧れと尊敬を感じつつ、賢木先生と皆本さんの楽しそうな言い合いをBGMに片付けを続行した。
     夜に言って欲しいってなんだったんだろう?

    読み違え(賢木→皆本/留学時代)

    「賢木さん。これ、教授からです」
     はい、どうぞ。と何の躊躇もなく書類を手渡してきたのは、この前出会った超能力研究科の皆本という男。
     あれきりの接触になるかと思いきや、こうやって教授の使い走りにやってくる。
    「お前な、教授のお使いなんてしなくても単位足りてるだろうが」
     あれから皆本という人間が気になったので軽く調べてみた。天才と呼ぶのに相応しい賢さを持ってることはよくわかったが、情報と目の前の奴の人間性があまり合致しない。
    「貰えるものは貰っておこうかなって。研究に没頭したり、論文読んでて登校すら忘れることってありますし」
     忘れるなよ、というツッコミを何とか口の中で噛み砕く。
    「それに賢木さんと話すきっかけになるかなって」
    (は?)
     全く予想してない言葉に頭の動きが止まる。
    「学部が違うと話しかけにくくて……あ、チャイム」
     留学してから聞き慣れたチャイムを聞いてもまだ身体が動かない。幸い、授業や予定もなかった筈だ。
    「僕は行きますね、じゃあまた」
     小走りで離れていく皆本が見えなくなった頃。ようやく頭と身体が動き始める。
    (早めに透視しておけばよかった)
     渡された書類を握り締めた。
     胸を重くするのは自らの失態への不安と、ほんの少しの希望。
    (やらかした)
     最初に接触してから皆本を透視することはなかった。皆本が持ってくる荷物も透視していない。何度も皆本が手渡してきた荷物越しにだって透視することは可能だったのに、しなかった。
     知りたくなかったから、できなかった。
     皆本が何を考えて、自分の元に来ているかを知りたくなかった。
    (本当に単位稼ぎならよかったのに)
     それなら皆本にも利益がある。
     あの賢いらしい人間が単位が足りなくて苦しんでる姿を想像できないが、自分を納得させるには及第点の理由だ。喜んで、利用されてやろう。
    『じゃあ、また』
     また来てくれるのか、なんて考えている時点でもうダメだろう。認めるしかない。
    「……おう、待ってる」
    やっと絞り出した一言は、まだ届きそうにない。
    それでいいのか

     機密ばかりの国家機関でも噂話があり、流行り廃りがあることに、皆本は少しばかり辟易としていた。
     自分たちが噂の対象となっているのが主な理由。次点はくだらない内容が多いこと。
     噂話の一つが気になったので、用事ついでに皆本は試してみることにした。
    「お嬢さん方の検査結果と詳細がこれ、あとは……」
     向かったのは検査ラボ。もうひとつ、と書類を確認している賢木が自分に意識を向けていないことを皆本は確認。行動に移した。
    「……」
     静かに賢木に背を向ける。そのまま静止。後ろに組んだ手を少しだけ、賢木に向けた。
    ――瞬間、指に触れられる感触と体温。透視されている、という感覚。
    「嘘だろ……!」
    「マジか……」
     ほぼ同時に二人が呻く。
     噂の内容は『賢木先生は皆本主任が手を伸ばすと必ず触れる』というもの。
     皆本を透視した賢木にも噂の内容は正しく伝わっていた。
    「だいぶ恥ずかしいなコレ……」
     皆本の指を握ったまま、賢木は項垂れる。
     賢木先生は皆本さんのことが大好きなのね、と不良少年が優しいお兄さんに懐いたような、微笑ましいエピソードとして広まっているのを正確に読み取った本人のダメージは計り知れない。
     元不良少年、女遊びが激しい軽薄医師は、職員に優しく見守られているのを知ってしまった。


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    2022/08/23 10:18:31

    さかみな短編小話ログ

    絶チル 賢木×皆本

    #賢皆

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