とある双子狼の話昔々、神殺しの狼の元に、男女の双子が生まれた。兄はスコル、妹はハティ。
魔狼の父の血をひくその双子には不思議な力があった。
兄のスコルは太陽の光を浴びると精悍な若者の姿になり、
妹のハティは月の光を浴びると美しい乙女に変わった。
双子が物心つく頃、その双子の能力に気づいた人間達は魔物だと気づき、双子を殺そうと襲ってきた。
住処を追われた双子は人間達から逃れるために遠くへ逃げた。
そして、太陽も月の光のささない黒い森の奥深くに落ち延びた。
そんな双子にはお互い願いがあった。
スコルは月の光を浴びたハティを、
ハティは太陽の光を浴びたスコルを愛していた。
二人が星の光の加護を受けた状態でつがいになりたいと。
どうしたら二人は美しい状態でつがいになれるのか考えた。スコルは言った。
『僕らはあの神殺しの狼であるお父さんの子なんだ。だったら神様を食べて力をもらうんだ。』
『その神様って誰?スコル。』
『太陽神のソールと月神のマーニだよ、ハティ。あの二人はいつも馬車を走らせているんだ。
あの二人を食べて、僕らはお互い好きな自分になって愛し合うんだ。』
『それはいい考えね、スコル。それなら私は月神のマーニを追うわ。』
『なら僕は太陽神のソールを追うよ。ラグナロクで神様を食べたら落ち合おう。愛しい妹よ。』
『ええ、ラグナロクで。また会いましょう。大好きなお兄様。』
こうして、スコルはソールを追いかけ日食が、ハティはマーニを追いかけ月食が生まれた。
ラグナロクが終わった後、双子は無事神の力を手にし、つがいになったのか、誰も知らない。