欠勤届——虎始交一
「駄目と言ったら、駄目ですってば! 今すぐなんて、無理です! 」
冬至の祭祀を済ませると、しばらく大きな公の行事はない。春の新年行事を前に短い休暇で所領に戻る者もあり、王宮は少し人がまばらだ。とはいえ、平常のやるべきことはいくらでもあり、官吏は忙しげに働いている。
…そんな働く人々の前を、この日、大声で叫びながら駆け過ぎる一人の姿があった。
「冬至の後の公休が明けたばかりですよ!揃ってまた長期の休暇なんて!」
解き流したままの鋼色の髪に黒衣の若者、といえばこの王宮に一人しかいない。
「こんなにお休みばかりでは、国政に影響があるのではないですか?!」
戴台輔、麒麟である彼の声を耳にし、一斉に叩頭礼を取る官吏達は石床の上でこっそりと顔を見合わせる。
(今年は、少しお早いようだな)
(そのせいで、台輔のご都合がおつきにならないのだろうか)
そんな間に、泰麒の声は遠ざかって聞こえなくなる。だがすぐには彼らは動かない。動かないのは、理由がある。——直後に必ず現れるものが、あるのだった。
「…あれはどこへ行ったか、知らぬか…?」
その低い問いに、皆、平伏したまま一斉に声を上げる。
「この通り、見てはおらず存じ上げません、お許しを」
答えると、命じられる。
「…そうか。次は見よ」
見たら必ず教えるように、と、太い息をついてゆらりと追っていくのは、王。
——彼は毎年、冬に発情期を迎える。
*
「正頼! ちょっとだけ休憩させて! 」
お茶の時間に駆け込んできた泰麒が、正頼の座る卓から茶碗を取り、もう片手で盛られた菓子を掻っ攫った。立ったままでの飲食を、この時ばかりは正頼も咎めない。少しばかり眉を上げただけだ。
「お小さい時には、驍宗様との鬼ごっこやら隠れんぼやらには『隠して、隠して』とお可愛らしくいらっしゃったものですが」
「ごめんなさい! …もう行くね、ありがとう」
あとはよろしく、と、泰麒は庭に面した窓辺へ走り、玻璃窓を開け、パルクール並みの身のこなしであっという間に手すりを越えて消えた。
立ち上がりながらそれを見送り、冷気の入る窓を閉め、やれやれ、と思う間も無く、戸口に人影が現れる。
「蒿里、蒿里は来ていないか」
驍宗の鋭い視線が、机上の逆一方に置かれた飲みかけの茶碗と不自然に崩れた菓子盆の盛りを薙いで、それでも鉄壁の微笑をしている正頼に向けられる。
「おや驍宗様。おあいにくです。ご用事でしたら、私が承りますが」
「…蒿里がどこに行ったか知らないか」
半ば諦め顔で尋ねた驍宗に、正頼は微笑のまま椅子を薦めた。
「まぁ座って、お茶をいかがです? だいぶお疲れのご様子。今年は随分とやり合っていらっしゃるようですねぇ」
新しく茶を淹れながら、ここ数日をただ逃げられてばかりらしい王を見やる。
泰麒は麒麟だ。麒麟のもつ特殊な能力により、王の居所を鋭敏に察知できる。そのため、この鬼ごっこめいた追跡は、驍宗が一方的に不利なのだった。
…だが、それを知っているのに、この王はいつも自分の足で泰麒を追う。追っては、臆面もなく口説くようなことを口にして、また逃げられたりもしているが。
他人の手を借りないのは、自分の誠を尽くさんがため、なのだろうか。
「蒿里に、どうしても承知してもらいたいのだ。私のために早く後宮に入って欲しい。休暇にせず公務に出たいと言うのなら、午(ひる)にはそう出来るようにしてもいいと思っている。…と伝えたが、諾とは言われぬ」
そんな些少のことを譲歩のように言うのはどうなのだろうか、と正頼は思うが、どうやら驍宗は真面目にそのつもりらしい。
「それにしても、今年はいつになく例のものの訪れがお早いのですね。冬至が済んですぐとは」
茶を入れる正頼の手つきを眺めながら、驍宗は片肘をついた。
「そうなのだ、あまりに急で…私も対応し切れていない。唐突だったゆえ、蒿里の方も公務の予定と準備を整えられずにいるようだが、…どうも互いにかみ合わぬ言い合いばかり、…とはいえ、無理に連れていくわけにもいかぬ…」
まるで発情した獣そのもの、憧れと苛立ちを半ばしたような焦燥を、驍宗は低めた声に滲ませる。
「これのせいで迷惑をかけることは、承知している。だが、…毎年のこととはいえ、今回は五日かけても、一切を断られているのだ。…どうすればいいだろう」
ため息の揺らぎは真っ直ぐに悩ましく、正頼は鉄壁の微笑を少し淡くする。この王がこんな気弱いことを言えるのは古くからの馴染みである自分の前くらいだろうと、そう思えば何やら可愛げが増して見えるものだ。
「例年のごとく、うんと仰って頂けるまで粘られるのが正しい道だと思いますが」
「…王と麒麟が揃って長期休暇を取る、といっても遠く離宮へ出るわけでもないのだから、特に問題はないと思うのだが…。後宮へ入ることにすんなりと諾と言ってもらえないのは、やはり麒麟として、倫理的に何か抵抗を感じるところでもあるのだろうか。あれは真面目ゆえ」
先程にその麒麟が行儀悪くも華麗に飛び出していった窓辺に、知らず驍宗は目をやり、玻璃越しの外を眺める。
「王が皆、このように発情するものでもないのかも知れぬが、歴代、後宮へ人を入れていた理由は、麒麟と揉めないためでもあるのやもしれぬ…蒿里は心優しい麒であると思う、他であればきっと大喧嘩となっても不思議ではないはず…」
またもため息。悩むあまりに思考回路が入り乱れていると見える。
麒麟についてその王への愛情を信じて疑わない男である。常に疑わないあまりに多少ずれたことを言う、それがいつものことではあった。だが。「恋は盲目」と言う、「発情はさらなり」とも言えるのかも知れない。と正頼は思う。
「どうでしょうねぇ。後宮に人を入れる理由を考えてみたことなど、ありませんでしたが」
茶碗を卓の向こうへ差し出し、また自分の前にも置きながら、少し考える。
「もしかしたら、後宮へ人を囲うのは麒麟への執着を自ら避けるためだった、ということも、あったのかもしれませんねぇ」
ぼんやりとした言いようをして、正頼は小首をひねった。驍宗以外に知るのは先王だけだが、彼について公務の場の姿しか知らず、その「もしかしたら」の想像の先には、あまりはっきりとした主従の像が結ばれないのだった。
「…もしそうだとすれば、あまり幸福とは言えぬものだな、王も、後宮に入る者達にとっても。もとより後宮とは、幸福を求めるための場所ではないのだろうが…」
その感触は驍宗も同様だったらしく、何やら薄い言葉だけで話が途絶えてしまう。
だがそれでも、温かいお茶は驍宗の気分を少し整える役には立ったようだった。泰麒の言い残していった、あとはよろしく、とはこういうことだっただろうと、正頼はそれから茶碗を手に、当たり障りのない話で和やかな時間を作ることに専心する。
やがて空の茶碗を置いて、驍宗が立ち返ったように言った。
「なるべく早く決着をつけたいが、焦りは禁物と心せねばな」
もはや肉体の若さから来る切迫したものを思い出されないほど遠く感じる正頼には、その決意表明に、何やら可笑しいように思う上に愛すべきもののような気さえ生じて、笑んだ。
「とにかく、お二人できちんと、お話しして下さいませ」
「そろそろ逃げるのはやめて話合いの席に着くように、お前からあれに言ってくれると助かるのだが」
と、言う驍宗を、正頼は眺める。
「…追いかけるから、いけないのではありませんか?」
毎年毎年、規模の大小あれど同じことが繰り返される。それにはもはや儀礼的な感覚さえあるが、その疑問を呟くと、驍宗は一転、太い笑みを見せた。
「逃げる時には、追われたいものだ」
*
二 逃げ回るばかりを繰り返すこんな時でも、朝議や公務の場では、泰麒は位置を少し遠ざけたのみで、そつのない振る舞いで務めを果たす。台輔として立つ時には私的な面の一切を閉じるせいで、かえって才美を兼ね備えた存在感が凜と際立ち、…それはこんな時期だからこそ、密かにどころではなく驍宗を眩ませ悩ませた。
「…ということですので、以上の件については各府にて諮問に…驍宗様?」
聞いていらっしゃいますか、と問いたげに冷たく目を細められて、そこで初めてこの怜悧な麒麟の切り回す様に見惚れていたと気づく。曖昧に返事をした驍宗は、咳払いと共に片手を上げた。
「そのように計らってくれ。…すまないな、今日はここまでとしたい」
驍宗の様子から察していたのだろう、麾下達が無言で一礼し、机上の物を片付け退室していこうとする、その静かなざわめきの中で、驍宗は泰麒へ顔を向ける。
「蒿里。休暇を共に取ってくれ。数日でもいい」
「冬至の後だからといって暇なわけではありません。十二月の政が四月を決する、と言うくらいです、公務を疎かにはできません」
今この場でその話ですか、とやや身構えた身体つきと表情を、驍宗は見、言葉をこぼした。
「もはや耐えられぬ。—— 今宵、そなたが欲しい」
一瞬耳をそば立てたように静まった室内の空気は、慌てて退出する足音で破られ、その騒音のうちにも構わずにさらに言う。
「頼む。出来るだけ、ほしいままにすることは慎むゆえ」
「今宵? 今から後宮に入れと?」
人の居なくなった室から、泰麒もまた後退りで出ていこうとする、それを驍宗は立ち上がって、追い詰めぬように気をつけながら一歩ずつを近づいた。
「後宮は嫌か。では、私が今夜、蒿里の宮へ通うことを許してくれるか」
「…僕は麒麟です」
「麒麟だから、私を拒むのか」
「…王の命に背かず砕身働くのが役目といっても、『それ』は麒麟の本来の仕事ではありません、と申し上げています」
「これは王として麒麟に命じているわけではない。蒿里、分かってほしい」
泰麒はじりじりと出て行く、距離を一定にして驍宗も外へ出る。問答を続けながら、いつの間にか、人通りのある広い廊まで出ていた。
肌を締める空気に、初冬特有の影もないほど薄い日の明かりが、そこにある。
「王は陰陽の陽、陽気の回復する冬至を境に発情があるのは分かります。ですが同じく、陰陽の陰に位置する麒麟は、それは夏なのです。ご存じかとは思いますが」
主従の声と姿に気づいた者が次々に平伏する、その頭上を泰麒の声は通って、白い廊の壁に反射し、厚着をした人々の耳に吸い込まれていくようだった。
「とは言うが、麒麟は王気の影響を受けやすい生き物、王の発情に触れれば共に発情するのだから、問題はないだろう。黄医にもそう聞いている」
「…影響を受ける、それが時に負担であることもお聞きしておられるのでしょう? 特に今年は驍宗様の王気の変わりようが急激すぎて、刺々しさすら感じる…それに引きずられたくないんです」
身体の均衡を崩す、それは楽なことではないのですよ、と、泰麒は薄い日差しに顔を背けて、つぶやくように言った。
「だから正直に言えば、…今のあなたのそばには、近寄りたくない」
「ならば」
驍宗は近くにいる者に命じ、即刻に鸞を引き出させてくる。ずらりと止まり木で並べられた鮮やかな長尾の鳥は、華やかに院子(なかにわ)の広場の片方を飾った。その片方へ、驍宗は陣取る。
「これなら近づかずに済む。多少は話しやすくなるだろう」
「鳥を使うのなら、対面でなくともよいのではありませんか」
「遠目でもいい、姿が見たいのだ」
王専用の使いの鳥が鸞だ、これが使われる様を見る機会は内朝においてもほとんどない。そのために、また王と麒麟のやり取りを見たいがためにも、人々は、身を伏しこっそりとした動きで廊とその陰を埋めた。
鳥が飛ぶ。
「どうして、僕が休暇を取ってまで、驍宗様の発情にお付き合いせねばならないのですか」
「私の相手はお前一人と思うゆえだ…! 」
「僕、冬休みは別々で取る方が政としては停滞がなく合理的だと思います」
「政務が滞らぬように注意すれば良い、そういうことではないのか? 」
「僕だって時間がもらえるなら、やりたいことだってあるし」
「その時間は取れるようにしよう」
「どうしても、と仰る」
「そうだ。蒿里、頼むから後宮に入ってくれ…! 」
「そんな急には、僕が無理だと申し上げているのですが」
「無理はさせないように気をつける」
「僕でないと駄目ですか?」
「私が心から求めたいのは蒿里だけだと、何回言えばいいのだ?!」
「何回でも仰って下さって構いませんが」
「諾と言ってくれるのなら、何度だって言うぞ、蒿里…!!」
「でも僕、ほんとに今は発情期じゃないんです、それをご承知でのことですか」
「それは承知だ、済まないと思う。だがそれでも、それでもだ!!! 」
問答は鳥を介して続く。
驍宗は、鳥を使っていても大声で言うから、ほとんどはそのまま広い場所へ響き渡る。それは泰麒の元までも聞こえているはずなのだが、真面目に泰麒は鳥を受け取っては再生させた。驍宗の言葉ばかりが二度ずつ院子(なかにわ)に爆音で発されて、周囲は次第にこっそりとした笑みが地を這うように重なっていく。
だがそれは、長くは続かなかった。
「重ねて、今は嫌だと申し上げたら、どうなさいます」
やり取りの末に届いたその問いに、驍宗は手元の止まり木に戻った鸞を睨み、長いため息を吐いた。銀の粒を与えてから、目を落とし、次の返答まで長く時間が流れる。
「…今年はよほど、蒿里の身体の変調は辛いのだろうな。苦しませることを、体の弱い蒿里に強いてはならない。私は諦める。もとより、王として麒麟に要求するべきことではなかった」
放たれた鳥の羽ばたきの透彩を、驍宗は見送る。そして返事を待たずに、踵を返した。
冬の薄日にあやふやな影を引いて。
*
その夕刻すぐのこと。
騎獣舎へ騶虞を引き出せる準備をするよう伝えがあった、と、泰麒の元へ知らせてきたのは数ある使令の一つ。情報収集と警備のために、王宮内に配置してあるものだ。
「驍宗様が、お出かけになる…こんな時間に、一体どこへ。まさかお忍びで城下…? 」
泰麒は無意識に爪を噛み、それをどこからか伸びた白い手がそっと離させた。
他に変わったことはないかと使令に調べさせたあげく、予想通り急な用件がなさそうであることに、泰麒は心を痛める。どうやら完全に私的な目的で城下へ下りるらしい、と推察されたのだ。
「どうしよう」
鳥でのやり取りから後、王気の棘はどこか向きを変えたようだった。諦める、とはどういうことになるのか、泰麒は去った王にそれを聞くことができず、なすすべもなく帰宮している。
「…どうしよう。そんなつもりじゃなかった。本気で断るつもりなんか」
爪に残されるは、小さな白。迷いと後悔と恐れの混じる、形にならない刃のこぼれ。
*
三
「おお寒い。おやまぁ、いらっしゃいまし」
炭火のおこる銅鉢の前を離れて出て、これはこれは、と目を見はるのは、楼閣の女主人。いくぶん趣味の悪い派手な女だ。丸い体にけばけばしく染めた毛皮の衣を羽織って、さらに丸みを増している。この女は、先王の後宮へ召され功績があったとして仙籍を保持する自らの経歴を誇るところがあるが、だがそれは表向きで、実のところ今は城下の諜報役を長く務める直属のひとりでもあった。
他にも客の姿がある入り口で、仕事ではない、と首を振って伝えると、女主人は肉付きのいい瞼に埋まって見えるほど目を細めて声の調子を跳ね上げ、立て続けに尋ねてくる。
「他にお連れ様は? お一人? ご指名はあります? お好みは? 」
「…黒髪の、あまり煩くないのはあるか。それと、離れを。酒は少しあればいい程度だ」
「欲のないお人だ、それだけでいいんです? 」
と、女主人は紅に照る唇で愛想笑いをした。もっと要求があればそれだけ大金が転がり込んでくれるのに、と言わんばかりに見える。
「今いるのは、黒髪は下使いの見習いしか。ま、ちょっと訳ありだ…、それでもお酌とお相手くらいはできますけどね」
女は言いながらも上客を囲い込むように両手を広げて、暖かい店の中へと迎え入れ、下男を呼んだ。
そして、
「見習いだから、まだ歌も踊りも、座を持たせるような遊びごとは何もできない不調法ですが、それでいいんですね」
と念を押す。
「それでいい。多少の相手でかまわぬゆえ」
「そちらの意味でも、多少でよろしい?」
それにも頷くと、女主人は腕にかけた領巾(ひれ)をなびせて手で口元を覆い、またまた、おほほほ、と笑った。あでやかで俗に見えるのはこういう場所では好い女に映る、この店自体、そう上品なつくりではないから余計なのだった。
「お代は先払い、お後に出た分のお足を頂きますよ」
分かった、というと、控えていた下男が先導して一番奥まった離れへ案内された。部屋代と一式として金を少し多めに渡すと、細く明かりが点され、火盆に荊柏の炭が置かれ、下男は丁寧な礼をし下がっていく。豪華な飾り枠のついた窓を通して見えるのはこの店の楼閣、明々とした階層はすでに人影が多く賑やかしいが、間仕切り代わりにだろう、ごてごてと大きな飾り石の置かれた庭を隔てて、こちらは暗い代わりに静かだった。
「…今頃、蒿里はどうしているだろうか」
装飾は多いが、がらんとした空洞の室に身を置いて、炭で手を炙りながら驍宗は呟く。
「怒っているかも知れぬな」
まさかこの程度で泣いたりはしないだろう、というどこか期待のようにも自嘲のようにも思う気分が胸の底を砂の吹きすぎるように沈んでいった。
王気に棘がある、と泰麒は言った。棘となったその苛立ちには、自分の希望がすぐに容れられないことに対する駄々のような甘えがあっただろうと思う。それを咎められることすら、耐えられない気持ちになる。それがあの聡い麒麟にはまざまざと感じ取れたがゆえに、あれほどの反発を受けたのかも知れない。
「心中を滅得すれば火も自ずから涼し、とはほど遠いな」
思えば思うほど、武道の師に教えられたような『執着心を超越すれば火も熱くなく、生きることも死ぬこともたやすいのだ』という心境には、とてもなれそうになく。
「水鏡の如くあれ、とは難しいものだ」
いくら求めるものを目の前から遠ざけたとして、それでも自ら悩み揺られるのだから、これが静まることは未来永劫ないのかもしれない。
…と、惑うようにもそう考えたところで、部屋の戸が小さく叩かれた。
入ってきたのは垢抜けない少女だった。確かに黒髪ではある。下使いの見習いだと女主人の言った通りに、身が痩せているのだろう、輪郭の線が硬い。急いで施されたらしいくっきりしすぎた濃い化粧や油つやの浮いた髪のつくりが少し不似合いな上、借り物らしい派手な着物が色々と身の丈に合っていない。多めの金を支払ってのこれとは、いっそすがすがしい気がするほどだった。
薄明かりにぎこちない動作で酒盆を運び、硬い表情のうつむき加減のまま、無言で一礼し、杯を差し出す。
「…名は、なんという」
少女は細い指で、卓上へ『交璃』となぞった。その字を、驍宗はしばらく眺め、女主人が訳ありだといった理由をそれと察する。
「口がきけぬのか」
目を伏せたまま、こく、と頷いた少女は、その動作に金釵(かんざし)の歩揺(さげかざり)をちり、と鳴らした。
「ここへ来て長いのか。親はどうした」
『親兄弟には死に別れました。ここに移って日は長くはないです』
「不憫だな」
それきり無言で注がれる酌は、だが驍宗の飲む様子をよく見ているのか、急がず待たせずでゆるやかに時間を作ってくれる。確かに、酌ならできるという女主人のその言葉は嘘ではなかったようだ。
「座敷でするような余興遊びはまだできぬと聞いた。だが、ほかに何かできないか」
少女は俯いたまま長い睫毛をしばたかせて、瓶子を置くと、ふいと席を立つ。部屋の隅の小机を探し、紙の束と文具の小刀を持ってきた。
盆に紙を重ね置き、その上で半分に畳んだ一枚にすうと小刀の先を走らせて、出来上がったのは左右対称になった蝶。それを卓上に広げ、それから驍宗へと材料を渡す。
「剪紙(きりがみ)か」
考えたあげくに、驍宗も紙の二つ折りから、四肢のあるの騶虞のつもりの獣を不器用に切り出す。それは頭と尾は広げたまま、間の胴と四つ足の部分だけを二つ折りにして背を作れば、卓上へ不格好ながらも立った。
それを見て、少女は初めてうっすらと微笑する。その、薄い灯火に浮き上がったその笑みの柔らかさに、驍宗はしばし瞬きを忘れた。
「…似ている」
ふと呟いた声の低さに、びくりと少女は笑みを消し、身を引いた。
「いや、済まぬ。私の知っている者に、重なって見えたゆえ…」
見詰めると少女は避けて横を向いた、その輪郭にさらに視線を注ぐと、彼女は袖をあげて遮るようにしてしまう。
その細い腕を、驍宗は掴み、引き寄せた。
「……ッ…!! 」
声にならない声を上げて倒れ込んできた身体は固く、抱き入れればその背筋と肩幅から、…明らかにそれと分かる。
「そなた、…」
間近に、黒髪を結われ少女めいたきれいな男妓は、金釵の歩揺を鳴らして顔を背けた。暗がりのせいか、薄く青ざめて、その分、肌の白さがどこか匂い立つように思われる。
「…私は、どちらでも構わぬのだが、」
そう低く言うと、目の前に歩揺が震えた。
「…こういうことは初めてか」
問いかけられ、その横顔は背けたままの目を見開き、しばらく言葉の出せない唇を震わせる。その様子をしばらく見守ってから、驍宗は静かに手を放した。
「そうか。今の私が相手ではあまりにも不憫だ、…戻りなさい。他に替えさせよう」
その瞬間、背けていた顔が返る。目にあふれるものを光らせて、男妓は跳ねるように身を投げかけてきた。
薄闇の宙を流れた金の残光、そこに、発された声は。
「…そんな、——驍宗様…!! 」
*
歪む涙声は尖り、絡みつく腕が必死さを表して強い。
「…どうして、僕だと分からないんです。こんな、妓楼に行くって、…当てつけですか? 僕が毎日追いかけっこさせたから? 挙句、人前で、あんな問答をして、恥をかかせたから……? 」
訴える言葉は理を伴いはしたが、その声は次第に保てずに、崩れる。
「ひどい、こんなの、誰か分からない相手でもいいって、…僕はどうなるんです。放っておいて、それでいいと思われたのですか。…毎日、あなたの王気を浴びて、…僕、僕だって」
しゃくり上げる声が震えながら懸命に紡ぐ言葉を耳に、驍宗は、腕にその細身ごとまるごとを抱える。
「蒿里、お前」
「僕がどれだけ王気の影響を受けやすいか、お忘れですか? ずっと、最初から、あの蓬山でお目にかかってから、僕が麒麟として作り変えられていく、その機序はすべてあなただったんだ。それなのに、それなのに……! 」
それなのに、と繰り返して泰麒は思いの丈があまったのか、首を振ってその黒い鬣を飾る歩揺を強く鳴らし、腕を振り上げた。それを受け止めて、強く抱く。
「放して下さい、僕、…僕は」
「できぬ」
「放して。僕が、どれだけ、…」
「それはできぬと、重ねて言ったらどうする」
「……っ…」
耳元に、短い呼吸が、感情の弾け散った先を見つけられない惑いを含んで、ひどく揺れた。
「…諦めろ」
ちり、と音を立てた金の色、それを視界に見ながら、抱き締める。
「――やっと、捕まえた。私の麒麟」
*
「気づかなかった訳ではない」
「どうして…?」
泰麒は幾分、怒ったようにも拗ねたようにも言う。
「…驍宗様は『人の顔を一度見れば忘れることはない』と、そう仰っていらっしゃったのに、…」
その不満を、驍宗は愛おしく受け止めた。
「お前が正体を隠して現れた目的が、分からなかったゆえ」
「…てっきり、本当にお気づきではないのかと」
細い身体から出て行くため息は、少し投げやりになる。
「相手に間諜の疑いを持った時には、まずこちらの疑念を知られぬよう隠しおくのは鉄則だぞ」
「…そうだとしても、『替えさせよう』だなんて、ひどいですよ…」
あんな鎌のかけ方、と、責める声は、けれど、腕に抱き包まれてしまえば溶けるように消える。
「お前なら何をおいても追ってくるのではないかと、少し期待をしていた」
そう言うと、再びのため息は、仕方なさそうに少しの笑みを含んだ。
距離が近くなるほど、肌身に直に触れればそれだけ強く王気を浴びる。
膝に乗せて抱き抱えたまま、涙に濡れた顔を拭いて、崩れた化粧ごときれいにしてやる頃には、泰麒の様子が急に変わった。
胸元へもたれる形で、急激にぐったりとする。
「………っ…」
発情期ではないはずのこの時期に発情を迎えさせられるのは、身体の均衡を崩すことで苦しいことなのだという。変化が急であればあるほど、かかる負担は大きいのだろう。だが、泰麒はもう動かずに、片腕を驍宗に預けて、甘くも重く、吐息を吐くばかりになる。
「蒿里、…大丈夫か」
その吐息を身にかかるほど近く耳にするのは悩ましくも、苦しげに眉を寄せるその表情を見れば、とても無理をさせられるものではないと思う。変調に喘ぐ身を腕に抱いて、驍宗は迷った。
「あまりに辛いようなら、今宵は連れ帰って黄医の元で過ごさせよう」
そう言って背をさすってやると、泰麒はおぼろげに呟いた。
「…僕なら、平気、です…」
辛い最中だろうのに、泰麒は顔を上げて甘く夢のようにも笑みかけた。
「…驍宗様の全てを、引き受けてさしあげると、僕が決めたのですから…」
その言葉と共に、額が首もとへすり寄せられて、そっと抱き締められる。
「蒿里」
返す声が甘くうわずるのは致し方のないことだった。発情の唐突な現れがあって以降、数日にわたり自分で自分を持てあましているのだ。叶えて欲しがる身体と叶えて欲しがる気持ちが、先に走りそうに渦巻く。だが、泰麒の状態が完全に整いきるまでは、と自制し、深呼吸をする。
そんな不自然に規律正しい腹式呼吸の繰り返しに気がついたのか、やがて、泰麒の手が重たく持ち上げられて、頬を撫でた。
「驍宗様の方が、お苦しそう…ずっと、我慢をなさっておられる…」
もう少しだけ待って。あと少しだけ。
呟いた泰麒の、切なげについたため息にさえ掻き乱されて、身の内から手を伸ばしたがる細胞で粟立ちそうになる。
それを、数度の呼吸で散らした。
「結局、公務を二人して休むことになってしまったな」
気を紛らわしたく言葉を発する。
と、泰麒は、ふふ、と笑った。
「…何の問題も、もうありませんから、大丈夫…」
「問題ない、…?」
「…ええ、…ちゃんと、休暇が取れるように、してきましたから」
そう泰麒は言って、僅かに誇るようにも微笑んだ。
「もしかして、蒿里、お前…」
…ようやく、悟る。
この数日、わざわざ人通りの多い場所を選んで走り回っていた理由、それは諸官以下に説明と伝達の手間を省くためでもあったのだろう。噂話というものは電流のように隅々まで行き渡るものだ。
そして、いたずらな時間稼ぎに見えた数日で、人の少ないこの時期、急な長期休暇のための人員組成に猶予を与えるとともに、例年よりも長い変な追いかけっこで微妙な距離を取りながら、泰麒は王気の急な変化に、少しずつ自分を慣らし続けていたのだ。
淡く、泰麒は続ける。
「…だから、今日はここで、過ごしたって、いいんです。明日には、後宮に移れるようにも、しておきました…」
「蒿里…」
急な発情に、それしか考えられない獣のように成り下がっていた王のふぬけ具合に比べて、この台輔は。
「…王のために、出来ることをするのが、麒麟ですから」
「…蒿里」
胸の内に湧き上がる熱に耐えきれずに、抱き締めると、泰麒は甘やかに吐息をついて、腕に力を込めて応えてくれた。
「…僕の驍宗様なのですもの…」
*
そして、しばらくがすぎてから。
「…ああ。そろそろ、…僕、いいのかも…」
「発情したか」
情緒のない確認に、驍宗によりかかり胸に顔を伏せていた泰麒は少しだけ笑ったようだった。
「連れて行って、…」
折り屏風で仕切られた向こうには、続きの間があり天蓋付きの寝台が置かれてある。その派手な調度品など目に入りようもなく、そこが真白の夜となった。
*
四
朝。冬の鴻基には珍しく、その日は快晴となった。
澄み切った空から差す真っ直ぐな太陽光が、透明な空中の細かな氷片を浮かばせてきらきらと輝かせる。
「きれい」
雪や氷の青い影のうちにそれを見て、泰麒は白い息で笑った。
「行くぞ」
引き出されてきた計都の白い毛並みも、日の光にきらきらと五彩の光沢を見せる。抱き上げられて鞍に乗せられて、その背の上から泰麒は見送りに出ている女主人に向かって手を振った。
「ありがとう」
「次はも少し美人にして差し上げますよ、悪いことをいたしましたね」
なんせ急すぎてね、と毛皮に埋めた口元で笑う、その女主人に驍宗が言った。
「まったくだ」
おほほ、と笑って、女主人は丸い身を屈めて礼を取る。綺麗な仕草だった。
それへもう一度手を振って、泰麒は飛翔する騶虞の背の上、鴻基の凍えた街並みを見はるかした。光る白に覆われた鈍い紺の甍は薄青い陰影として広がり、区画に押し詰まった人家からは煮炊きをしているのだろう、いくつもの細煙が上っている。それは、すぐに真下の光景として小さくなり、青空が、遙かに広がった。
「あれも、悪くはなかったな」
後ろから抱きかかえる形で鞍へ共乗りしている驍宗の声が耳元に落ちて、泰麒はきょとりとする。
「あれ、って…」
「女装、というものに興じる向きを怪訝に思ったことがあったが、なかなか趣深い」
「…えっ……」
お前の結い髪の姿を見るのは初めてだったゆえ、と、くつくつと笑われる。
「…お気に召してしまいましたか…」
「それに、結ってあると、邪魔にならずによい」
「僕は麒麟だから、本当は鬣は結わない方がいいのですけれど」
「そうだな、たまのこととしようか。乱れるのも何やらよい」
朝に湯を頼んで洗ってもらったばかりの鬣を大きな手で梳き流されて、泰麒は顔を赤らめる。
二人を乗せた騶虞は鴻基の街から高度を上げていく。都が取り囲むその中央、巨大な岩山は凌雲山、どこも雪が朝日に輝き所々に凍り付いた瀧が白い筋になって見える、その天の頂きにある真白な王宮を目指して、風を駆け上がっていく。
やがて、雲海に近づく。城門が遠く小さく見えてくる。
そこで、驍宗が尋ねた。
「蒿里は、今から公務へ出るのか」
「…いえ、そのような予定は入れていませんが? 」
「…そうか……」
「……? 」
きょとりとまた目を瞬かせると、手綱を放した片腕が泰麒を抱き込んだ。笑い含みの声が、耳元に響く。
「その予定がないのなら、昨夜に加減などするのではなかった」
「…え…」
「お前はあれほど、公務が公務が、と喚いていたではないか。それだから、正頼には『半日程度なら公務に出られるようにする』と言いもしたし、お前には『ほしいままにするような真似はしない』と約束をした。それゆえ、だったのだが…」
驍宗に嘆息されて、泰麒は瞬きを忘れて目が乾きそうになったのを、ようやくぱちりとさせる。
「…あれで、手加減を…?」
そう言って真っ赤になった泰麒が今更のように固まったので、驍宗は笑い出す。そして、泰麒の後頭部に口づけが落とされた。
「…したつもりだったが? しかし、どうにも腹が減りすぎていたからな」
「どれだけ食べたらお腹いっぱいになるんでしょう」
「もっとたくさんだ」
「…僕、頑張って、驍宗様のお腹がいっぱいになるように、して差し上げないといけませんね…」
「そうしてもらおうか」
くつくつと、嬉しげに笑う驍宗は、少しだけ意地悪く言った。
「蒿里の胎の内の方が、先に一杯になると思うが」
「……!」
驍宗様のえっち、と呟いたその声の色は、たぶん驍宗の耳には届いたはずではあった。
*
そして、騶虞で城門へ下りる距離になって、二人は目にする。
帰宮した二人を迎えたのは、門に掲げられた「おかえりなさい」「心置きなく休暇を」の垂れ幕の文字。
もちろん、朝に泰麒が使令を走らせて、二人の帰りを知らせてあったのだが。
泰麒の狙った以上に、噂は広まったらしい。
だがその噂には、誰がどう加担したのか、泰麒が飛び出していったのち数刻も経たない宵のうちからこの早朝までに、『休暇が取れないあまり、主上と台輔が脱走した』、『いや、あれは発情のあまりの駆け落ちだ』、『いやいや主上は台輔に振られて傷心旅行に出たらしい』、『黄海まで台輔が追いかけていったらしいぞ』など盛大に尾ひれが付いて、王宮は水面下で大いに盛り上がっていたのだ。
そんなこんなで、仲良く戻った二人を、皆が喜んで、そのまま後宮へ送り込んだ、という話である。
これ以後、主上の発情は冬の恒例行事として知られるようになり、そのための休暇の設定は最優先事項とする、とされ、——そして、この休暇はのちに、冬栄休暇と言うように…なったとか、ならなかったとか。
とっぴんぱらりんの。
(本編・了)
*
(おまけ)
「月暈」
その後。
——後宮の宮のひとつに、二人はいる。
奥へ入ってから、相手ひとりを世界の中心として、まどろみと覚醒と欲の朧とを幾度も入れ替えた。それは渦巻く嵐のようでもあり、優しい雨のようでもあり、また遠のく夢のようでもありながら、どこまでも止まず、人のかたちをしながら人ではないようにして、流れる時流すら、時に止まり、時に飛びすぎて、…何もかもを忘れる。
だがそんなのちにようやく、二人は別の欲求から人として目覚めさせられた。
「…さすがに、腹が減ったな…」
「いま何刻でしょう…」
牀榻の冬帷は厚く内は暗いが、その隙間にのぞく室の窓辺は明るいようだ。戴は冬季には日のある時間が短いから、明るければ真昼、ということになる。どうやら、ここですでに一昼夜を過ごしたようだった。泰麒は目を擦る。
「人を呼びましょうか。ご飯と、…お風呂に」
「面倒だな。なぜ腹が減るのだ…」
お前を食べられればよいのに、と、ふざけて身体へ口付けられて、泰麒はくすくす笑う。
「…だめ。ちゃんと食事をしないともう僕、もたないかも」
泰麒が使令を走らせ控えていた者達が一斉に働き出す、その間に二人はもう一度肌身を寄せ合った。
静かな口づけが、やがてはすぐに、甘く、火を導くように焦渇する。
片時も離れたくない。
そう思う気持ちを際限なく許される。それが互いに、今だけの、幸福のようで。
(おまけ 了)
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どうでもいいおまけ。
古代中国で考案された季節を表す方式に二十四節気があり、それをさらに細かくした七十二候に、大雪 次候として古くは「虎始交」(宣明暦以前)があります。
(国立天文台 > 暦計算室 > 暦Wiki
https://eco.mtk.nao.ac.jp/koyomi/wiki/B5A8C0E12FBCB7BDBDC6F3B8F5.html )
虎は冬に繁殖シーズンが来るらしいので、驍宗様に発情期がある設定なら時期は冬のこの辺り?と思っていたのですが、今年2022年は現在の暦での「大雪 次候 熊蟄穴 くまあなにこもる」がちょうど十二国記の日である12月12日にあたる、ということで、発情期の話を絶対書きたいと思いました!書けました!よかった!
おまけの「月暈」のタイトルは、
「酉陽雜俎」巻十六 毛篇の項に「虎交而月暈。」
とあったので、そのまま借りています。
これから月に暈がかかっているのを見るたびに、「あっ今夜はもしかして…」と思うようになる呪いにかかって下さいw
ちなみに、発情期について追加。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jrd1977/28/2/28_2_81/_article/-char/ja/
奈良公園の鹿の調査で、
「成熟雄鹿では生殖器官の季節的変動が著明である。交尾期の雄鹿精巣は長軸が約5cm,短軸は3~4cmの円味をもつ楕円体である。重量の増加もまた著明で,3月および4月の退縮期のものの約4倍に達する。最高活性期の精細管は140~240μmの直径を示す一方,退縮期になると100~140μmに減少する。
3.奈良公園のシカの交尾期は10月中旬から12月中旬までとされている。精巣の季節的再発達recrudes-cenceはほぼ6月に始まり,8月になると重量および精子形成能とも十分な発達段階に到達する。精巣間質組織も季節的な分化を繰返し精細管の発達と密接に関連しているように見える。
4.第2年目の秋に精巣重量が飛躍的に増加するのに対応して精巣上体重量も増大する。これと共に精巣上体管直径ならびにその上皮も著明に増大する。成熟雄鹿の場合,交尾期のものは非繁殖期のものの約2倍の重量に達すると共に精巣上体管直径にも著明な増大がみられる。」
とあって、臓器が2倍になるのは大変そう。急に発情したら生理痛どころじゃないという感想を抱いたことから、こんな設定にしてしまいました。
長い話を読んで頂きありがとうございました😊
十二国記の日おめでとうございます!