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    祝福(4)
    なんでもいいからロナルド君を困らせてやりたくなって、彼が苦手そうな「アレ」を見つけようと案内板を目を皿のようにして探した。
    「ヨッシャーッ!お化け屋敷あった!入るぞロナルド君!」
    「俺ムリだから!」
    「怖さが3段階で選べるらしいぞ、やはりここはMAXだろうな」
    「全ッ然、入りたくないんですけど!」
    「あ、一般2枚怖さ最恐でお願いします。マジロは券いいですよね?」
    「人の話聞いてる!?」
    「全部作りものなんだろう?人間が作ったのではないものがいたら私が教えてあげるから大丈夫だよ」
    「そういう問題じゃねえ!」
    「存分に私を畏怖したまえ、さあ行くぞ」
    「イヤだーーッ!戻るうううっ!」

    律儀にどんな仕掛けにも素晴らしい反応を見せてくれたロナルド君にバイトの死体たちもやりがいがあって大満足しただろう。
    想像の上を行く絶叫が聞けたので最恐を選んで正解だった。
    「まあまあ楽しかったね」
    「どこが!?」
    「うわ、君すごいことになってるな、これ使う?」
    涙目で鼻水まで垂らしているロナルド君にティッシュを差し出してやった。
    これだからロナルド君といるのは飽きないのだ、と考えて私の心のどこかがズキンと痛んだ。


    設定に難儀しながら2人と1匹でプリクラを撮り、次は屋台村を冷やかした。
    まだお化け屋敷のことで文句を言っているロナルド君だったが、ジョンとたこ焼きやフライドポテトを食べているうちに機嫌が直ってきた。
    「お前はなんか食えるものないの?」
    「アイスくらいなら」
    「特濃ミルクソフトなんてどうだ?」
    「おお、いいね」
    ロナルド君が3つソフトクリームを買ってきてくれて、せーので一斉にかぶりつく。
    「うまっ」
    「ヌアー」
    「うん、おいしい」
    ロナルド君とジョンと私が同じものを食べて同じものをおいしいと感じるこの時は、永久に留めておきたいような美しい瞬間だった。幸せすぎて涙が出そうだ。
    楽しい時間は無限に続かない。
    ロナルド君の時計を横目で見ると、終わりの時間が迫っているのがわかった。


    「9時過ぎたから観覧車乗ろうか」
    「そうだな、時間ヤバいかも」
    急いで列に並ぶと、まわりには同じように考えて最後の乗り物として選んだカップルや友達グループが結構いて、観覧車をバックに自撮りなどをしている。
    私は手持ち無沙汰に夜空を見上げた。
    吸血鬼は夜目が利くので暗くても人間より見えるものが多い。
    上空を同族が変身した梟が音もなく通っていったが、特に知らせる必要もないので黙っていた。
    「なんか見えんのか?」
    「…別に」

    観覧車は止まることがない。
    次々にゴンドラのドアが開いては人々をひとときの非日常へと連れ出す。
    私たちの番になり、係の人の誘導に従って乗り込んだのはいいが、マントの裾をドアに挟まれそうになって焦ってしまう。
    ロナルド君がニヤニヤしていてばつが悪かった。
    ゴンドラの右側に私とジョン、反対側にロナルド君が座った。
    ジョンは背伸びして窓に張りつき、ゆっくりと変わる景色を熱心に眺めている。
    合成された女声のアナウンスが淡々と流れる中、ゴンドラは微かに揺れながら上昇を続けた。頂上に達するまで後およそ5分。
    「ドラ公、こっち来ないか?」
    「あ…うん」
    ロナルド君の顔を間近に見て気づいたが、目の下に薄くクマができていた。
    アトラクションで酔ったのは寝不足のせいもあったのかもしれない。
    仕事に影響しかねない不眠になるほどの悩みを抱えさせたのかと申し訳ない気持ちになった。
    窓の外に視線を向けたまま彼は話し始めた。
    「俺さ…ちょっとは考えていたんだよ。言ったことなかったけど、その…お前らがいて楽しいっつーか、いや、むしろいてくれてうれしいみたいな…だから、あの」
    「……」
    「なあ、今まで通りじゃダメなのか?俺、多分だけど、結婚しないと思う」
    睡眠時間を削ってまで一生懸命考えてくれたのであろう彼の誠意は十分すぎるくらいに伝わった。
    俯いた顔を盗み見るとうっすら頬が赤かった。
    新横浜に来たばかりの頃は隙あらば私を誰かに押しつけようとしていたものだが、それを考えれば私たちの関係性も知らないうちに随分変わっていたのだと思い知らされる。
    だが、私はもうそれだけでは満たされないのだ。

    「ダメだね」
    私は薄く笑ってロナルド君の手に自分の手を重ねて握りしめると、そのまま自分の胸に引き寄せてぎゅっと押しつける。
    「だって私は、君とこういうことがしたいのだもの」
    肋のことさら浮いた箇所を教えてあげるように彼の手を握ったまま胸の上でスライドさせて、服の下のこの体に触れる勇気はあるのかと暗に問いかける。
    彼の怯んだ顔に屈折した快感がゾクゾクと背筋を這い上った。
    「よせよ、ジョンが…」
    「ジョンは大人だぞ」
    私は今この時、淑女を言葉責めする遊び人みたいな悪い表情を浮かべているに違いない。
    「こ、恋人じゃなきゃダメなのか!?」
    ロナルド君は泣きそうな顔で叫んだ。
    「頼むよ、もう少し時間をくれ…!」
    「…時間が解決する問題だとは思えないのだが」
    「だって、お前らはどっか行ったらもう絶対会えねえんだろ!」

    核心を突く言葉にフッと我に返った。
    繋がったネットワークを全て切り離し、竜の一族の権力を使って他の吸血鬼から情報が入らないようにすれば二度と彼に会うこともないだろうし、実際にそうするつもりだったので、彼がそこまで考えていたことに驚きを隠せなかった。
    私はロナルド君の手を解放し、窓の外の広大な夜景を見つめて虚空の中に答えを探した。
    「お前のお母さんが連れてったあの時とは違うだろ…お前らがいなくなったら俺には探す方法がねえんだよ!」
    「ロナルド君…」
    「多分お前が考えているより、俺とお前は近くにいると…俺は思っている」
    頂上を過ぎたゴンドラが刻々と地上に近づいて別の世界から現実に戻っていくような感覚に軽い眩暈を覚える。
    眼下の煌めく光の地図は海と陸とを分かち、あの光の粒一つ一つがそれぞれ別の物語を紡いでいることに思いを馳せた。
    私たちの物語はここで終わるのか、それともここが始まりなのか。
    人間の生は短いと古い吸血鬼の誰もが言う。
    私にとってはわずかの間、待つことで失うものは何もなかった。
    「…わかったよ、黙っていなくなったりしない。君が吸血鬼の約束を信じてくれるというのなら、だがね」
    「本当だな!?」
    「…ああ」

    ロナルド君の横顔が映り込んだ窓ガラスに触れて指先でその輪郭をなぞる。
    いつか生身の彼に触れることができて、私の気持ちを余すことなく伝えられたら幸福のあまり死んでしまうかもしれない。
    彼がこちらを向いておずおずと私の方に手を伸ばしてきた。
    「…髪、触ってもいいか?」
    「えっ?」
    「さっき、教えてくれただろ。正直、そんな気持ちでお前が髪を伸ばしていたなんて知らなかったから、その…なんていうかすごく…」
    ロナルド君は最後まで言わず、私を横に向かせて後ろ髪に触れた。
    窓ガラスに映る彼の指の動きに目が離せなくなる。
    彼は手触りを確かめるようにゆっくりと何度も私の髪を指先で梳いた。
    最後に一房の髪を摘んで毛先にそっと唇を押し当てるのが見えた。

    どこか遠い場所で上がった花火が夜空に浮かび、消えながら遅れて破裂音が響く。
    私は胸が一杯になり何も言うことができなかった。
    点滅を繰り返して地上を華やかに彩るイルミネーションが、全てを祝福しているかのように一層輝きを増した。


    <終わり>
    tenn Link Message Mute
    Aug 14, 2022 3:00:00 AM

    祝福(4)

    #ロナドラ #吸死 #小説
    ド→ロ片思い
    30年後に繋がる話
    捏造多数
    ドラさんの代謝速度は人間のおよそ1/10の設定
    閲覧ありがとうございました

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