アーサーガンダムMk-Ⅲ 闇堕ちifアーサーガンダムMk-Ⅲは憔悴しきっていた。
ここ数日、毎日のように民からクレームやデモが相次いでいるのだ。
「なぜ突然…?」
アーサーは全く心当たりがない。
しかもその内容が、事実もあるが大半が全くのデマなのだ。
そうこうしていると、側近のマーリンガンダムから再び報告が届いた。
内容はもちろん民からのクレームだ。
「またか…」
アーサーは頭を抱えた。
するとマーリンは、「いくら陛下がお優しいとはいえ、これは許してはなりません!粛清すべきです!」と訴えた。
「しかしな…」
アーサーは渋る。
これがただの賊ならば多少は迷っても実行するだろう。
しかし、今回は一般の民が叫んでいるだけで実害があったわけではない。
「陛下!」
「…もう少し考えさせてくれ…。」
そう言ってアーサーは自室である書斎に戻ってしまった。
「(チッ…なかなかしぶとい)」
そう。このマーリンは司馬懿デスティニーガンダムが化けている偽物なのだ。
民が反乱を起こす数日前から入れ替わって暗躍していた。
数日前の城下町。
司馬懿はマントで身を隠しながら民に噂を吹き込みまわっていた。
「聞きましたか?アーサー王が…」
「えっ、それは本当かい?」
「ええ、実は…」
さらには暴動を起こすよう、民に賄賂を渡すなどの工作も行った。
それでもなかなか思い通りにならないアーサーに、司馬懿マーリンはどうしたらアーサーを堕とせるか思考を巡らせる。
そこで思いついた。
アーサーには可愛がっていたハロがいたはずだ。
彼が多忙な際、ハロの世話をマーリンが頼まれる事があった。それを利用するのだ。
どちらにせよ、このハロが集まることで自分にとっては面倒な種にしかなりえないのでどうなろうと構わないのだ。
アーサーが憔悴しきったある日。
とうとう体調を崩し寝込んだアーサーはマーリンにハロの世話を依頼した。
「私はこの通りハロの世話をすることができない。マーリンよ、世話を頼めるか?」
「はい、よろこんで。」
チャンスが巡ってきたとばかりに司馬懿マーリンは心のなかでほくそ笑んだ。
預かったハロを拘束具を使って動けなくすると、民の元へ連れて行く。
マントで姿を隠しながら「皆さん、これはアーサー王のペットです。王は民の事もそっちのけでこんな贅沢をしているのです。許せませんよね?」
司馬懿がそう言うと、民から次々と許せないコールが飛び交う。
さらに、「王に直接手を出したら捕まってしまいます。しかし、間接的ならどうですかね?」
そう言って司馬懿は民を扇動する。
ハロはそれを聞いて目を見開く。
民は一瞬顔を見合わせたが、「ああ…そうだな!」と言うと、次々とハロを殴る蹴るなどしていく。
しばらくすると機能を停止し、動かなくなるハロ。
それを司馬懿はそそくさと回収すると、マーリンに化けてアーサーの元へ向かう。
「たっ大変です!陛下!」とわざとらしく焦ったふりをしながら、「私が目を離した隙に逃げ出してしまい…見つけた時には”民に”…こんな酷い仕打ちを…」と、涙を流す演技をしながら民がやったことを強調する。
その無惨な姿に変わり果てたハロを観たアーサーはわなわなと震えだす。
「陛下?」と司馬懿マーリンが尋ねると、
「マーリン。」
「はっ。」
「…これより民への粛清を行う。」
その表情は怒りに震えていた。
「かしこまりました。それでは陛下。これを…」
と、待っていましたとばかりに司馬懿マーリンはダークマスクを差し出す。
「これは?」
アーサーが尋ねると、「これは陛下の威厳を保つためのものです。陛下はお優しい。いざ粛清を行うとなれば躊躇されるでしょう。それを防ぐためのものです。陛下は王なのです。民の前で弱いところを見せてはなりません。」と、司馬懿マーリンはもっともらしい事を言ってダークマスクを手渡した。
「そうか…」と言ってダークマスクを受け取ると、ゆっくりと顔に近づける。
一瞬ためらうが、ダークマスクから触手が飛び出しアーサーの顔へと取り憑いた。
驚いて「ぐっ!」と思わず声が出る。
しかし、すぐに何事もなかったかのように静かになると、アーサーの体はみるみるうちに銀色をベースとした体から、信長エピオンのダークバージョンを思わせる暗い色へと変わっていき、同じく瞳も赤く変化した。
「マーリン、ゆくぞ"ゴミども"の処理へとな。」
「はっ。それと…あなたも行きますよ。」
呼ばれた主は陰からゆっくり歩みを進め、二人の前に姿を現した。
それはロビンフッドガンダムAGE-2であった。
その顔にはダークマスクが付いていた。
アーサーにダークマスクを進呈する数時間前。
ロビンフッドの部屋へと向かった司馬懿マーリンは部屋の扉をノックする。
「あれ?マーリンじゃないか。どうしたの?」
「いえ、ちょっとこれを…」
というと、普段のマーリンからは考えられない動きでダークマスクをロビンフッドの顔へと装着した。
「なっ!?なにこれ!?と、取れない!?」
必死で外そうとするが、全く取れる感じがしない。
そうこうしているうちにダークマスクに意識を奪われ、人形のように棒立ちとなった。
「さて、あなたは私が呼ぶまで待機していてくださいね」
「…わかった」
時は現在に戻る。
アーサー達の他にも全員ダークマスクを装着された兵達を引き連れ、城下へと向かった。
突然現れたアーサー王とその兵達に民達は驚くが、すぐにその意識は奪われていくこととなった。
禍々しい色へと変わったエクスカリバーを振り回し、次々と民を狩りとっていく。
禍々しい姿のアーサー王と雰囲気にただ事ではないと感じた民は叫び声を上げながら逃げ惑う。
アーサーから逃げても、ダークマスクを付けた兵により斬られていく。
攻撃から命辛がら逃げ出しても、屋根の上から狙っていたロビンフッドの弓矢により命を奪われていく。
その様子は地獄絵図だった。
司馬懿マーリンはというと、その様子を遠くから笑みを浮かべ見守っていた。
数分後、あっという間に街には人々の亡骸があちこちに転がっていた。
斬ったはいいが後始末に困ったアーサーが立ち尽くしていると、
「後の始末は私と兵にお任せください。陛下はロビンフッドと一緒に城へ先にお帰りください。」
そう言って司馬懿マーリンは二人を城へ一足先に帰らせた。
「本当に良いのか?」とアーサーは返すが、問題ないと言っていたので一足先に帰ることにした。
後に街には司馬懿と兵によりダークマスクを装着されたことで生き返り、ダークマスクを装着したままの民で溢れていたという。
異様な光景だが、アーサーはそれを見て何も感じないばかりか、司馬懿マーリンに「陛下に逆らわない理想の民ばかりのワールドですよ、陛下の手も煩わせないし問題ないでしょう?」と言われ、その後は何も疑問を抱かなかったという。
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「三国創傑伝 蒼翔記」にて、荀彧が民の暴動により殺されたエピソードをリスペクトしています。