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    ❀桜❀*桜*






    桜の花びらがヒラヒラと舞い落ちる
    静かな丘の上 …。

    私は静かにたたずんでいる。
    誰も居ない月夜の晩に
    ただ、静かに月を眺め続けていた。


    昼間騒いでいる小鳥達も
    私の足元に戯れる虫達も
    今は自分達の棲みかに帰り眠っている。


    私の相手は夜空に浮かぶお月様だけ。


    別に月とお話したりする訳では無いけれど・・・
    まだ、肌寒い月夜の晩には
    その姿を見ているだけで落ち着くの。


    私は何時も一人。
    もう随分と長い間この場所にたたずんでいる。


    街が見下ろせるこの場所で
    ずぅ〜と、ずぅ〜と一人ぼっち。


    何時か巡り会える誰かを待ちながら・・・・・・。


    今年も満開の桜が咲きました。


    決して、そんなに大きくない桜だけど
    何時も美しい花を咲かせます。


    けれど・・・・・・。


    毎年この季節になるとあの人の事を思い出す。






    私を埋めたあの人の事を・・・・・・。







    昔、私は貧しいながらも幸せに
    暮らしていました。

    小さな頃から外で遊ぶのが大好きで
    野に咲く花達を摘んでは花飾りを
    一生懸命作って遊んだり
    野山を駆けずり回るような元気な女の子。

    成人を迎えた時には
    とても素敵な旦那様と巡り会い
    幸せが一生続くと信じてた。




    でも・・・。




    幸せは長く続きませんでした。




    この人だと決めた旦那様が
    何時しか外で他の女を作るようになりました。


    心は別々に離れていき
    普通の会話さえもほとんど無くなり
    お互いに笑顔は消えていきました。


    このままでは旦那様が何時しか
    家にも寄り付かなくなってしまう。


    私は泣きました。


    旦那様に言いました。


    もう、行かないで・・・と。




    それが運命の分かれ道。



    ちょうど言い出してから半月が経ち
    桜が満開になった季節・・・。


    珍しく旦那様が桜を見に行こうかと
    優しいお声をかけて下さいました。


    めったに人の来る事の無い
    人里はなれた綺麗な丘に。


    私は心が踊り、涙を流しました。


    やっと私の元へ帰ってきてくれたのだと。


    何時もより少しおめかしをして
    ちょっとした二人分のお弁当を持って
    丘の上に一本だけ咲く満開の桜を見に行った。



    桜は本当に見事なほど美しく
    空は青く澄み渡り
    鳥達は春の訪れを喜んでいるかのように
    美しい鳴声を上げ
    楽しそうに飛び回る。


    本当に素敵な時間でした。


    この時が永遠に止まれば良いと思う。


    久しぶりに笑顔がこぼれ
    二人でお弁当を食べた後
    二人仲良くお昼寝をしました。


    素敵な夢を二人で・・・。


    今から二人はやり直せると。



    もう、どれくらい時間がたったのだろう?



    すっかり日も落ち
    辺りは薄暗くなっていました。


    私は目を覚ますと
    旦那様は私の目の前に立っておりました。


    どうしたの?
    って私は言うと旦那様は・・・
    さよなら。
    と一言だけ言い
    私の頭をめがけ一気に大きなスコップで
    私の頭を殴りました。


    何度も・・・。

    何度も・・・・・・。


    私は旦那様の手で
    綺麗な桜の木の下に埋められました。


    冷たい、冷たい土の中へ・・・。


    幸せなど有りはしなかった。


    私を殺し、他の女と一緒になるために
    演技をしていたのです。


    結局、最後の最後まで愛されはしなかった。


    悲しい最後を迎えてしまった。


    土の中で私は泣きました。

    ずぅ〜と、ずぅ〜と長い間。

    悲しみを全て洗い流してしまうかのように。




    やがて私は目を覚ます。




    私は桜になったのです。




    私の体から栄養を木にうつし
    薄いピンクだった花びらも
    何時しか見事なほどに
    濃いピンクの花びらになりました。


    決して、大きくは無いけれど・・・
    毎年、美しい花を咲かせます。



    何時か。



    この私を愛してくれる人が見つかるまで。


    素敵な誰かに会えるまで。


    何時までも。


    もう一度、やり直したい。


    あんなに酷い男ではなく
    今度こそ幸せになれる誰かと二人で。


    ごく普通の生活をおくりたい。


    月夜に浮かぶお月様。

    どうか。

    この私に平凡な幸せを・・・・・・。


    桜の寿命が尽きる前に
    もう一度だけ。





    数年後・・・。


    あの一本だけ咲いていた桜の木は
    静かに寿命をとげました。


    決して、大きくは無い桜の木。
    毎年、濃いピンクの花を咲かせてきた
    桜の木。






    彼女の魂は今・・・何処に?




    そう。


    それはね。




    優しく温かい女の人の体内の中。


    まだ、ちゃんとした形には
    なっていないけれど
    着実に成長を遂げています。



    彼女は赤ちゃんになるのです。



    今度こそ幸せになるように。



    あの日のお月様との約束は
    今、ようやく叶えられるのです。



    前の記憶は無いけれど・・・。



    いや。
    その様な記憶は無い方が良い。



    きっと、その方が幸せになれるから。





    次の年の桜が満開になる季節。


    彼女は第二の人生を歩みます。


    彼女の名前は


    桜。


    今度こそ。


    幸せになりますようにと。



    お月様がくれた・・・。



    ささやかな贈り物。





                     fin



    *あとがき*
    お疲れ様です♡
    此処まで読んでくれた皆さん!
    有難う御座いました!╰⁠(⁠⸝⁠⸝⁠⸝⁠´⁠꒳⁠`⁠⸝⁠⸝⁠⸝⁠)⁠╯♡
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    2022/11/22 10:48:00

    ❀桜❀

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    オリジナル小説(*´ω`*)♡おとぎ話風です♡

    #小説 #オリジナル #創作 #オリキャラ

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