〜想い人〜セバツア♡~想い人~
ナザリック地下大墳墓
人間で有りながらナザリックへとやって来た
女が一人。
名はツアレ・ニーニャ。
ナザリック執事「セバス・チャン」に助けられ、ナザリックでメイドとして働く事を選んだ者。
メイドとして一人前に働ける様に先輩方を見習い、仕事を覚えるため日々努力する。
掃除や礼儀作法、お茶の入れ方までしっかりと覚えなくてはならない。
地獄から救ってくれたセバスに恩返しにも
ツアレは頑張らなくてはならない。
失望されては困るのだ…。
そして、ツアレは思う。
こうして頑張っていれば「愛して」貰えるかもしれないと…。
「今日は、セバス様にお会いできるかしら?」
甘い溜息を付くと後ろから声がかかる…。
先輩メイドの方達だ。
「ツアレさん。お掃除は終わりましたか?」
「あっ、はい!只今、終了致しました。」
「ご苦労様。では、食事にしましょう。」
「有り難う御座います。」
ツアレは丁寧にお辞儀をすると先輩方の後に続く。
ナザリックのメイド達は驚くほど
良い人ばかり。
人間のツアレにも何時も優しく、食事も誘ってくれる。
面倒見の良い先輩方をツアレはとても嬉しく思う。
自然に笑顔が浮かんでしまうほどだ。
「ツアレ。今日はセバス様に会えると良いね。」
「えっ!あっそんな…。」
「隠さなくても良いよ。セバス様の事、好きなんでしょ?」
「あ、あの…その…はい。」
「やっぱりね~♪」
「私なんかじゃ…不釣り合いですけどね。」
「またまた~。」
ツアレは顔を少し赤らめながら先輩方と
セバスへの恋話をし、食堂へと歩いて行く。
食堂へ通じる廊下を暫く歩いていると
食堂の方から歩いて来る黒服の男の姿が見えた。
ナザリック執事、セバス・チャン。
ツアレや先輩メイド達も目を見開く。
良く見れば食堂付近も少し賑やかな様子。
普段、この様な場所に現れる確率の低い人物が居れば、ちょっとした騒ぎになる。
セバスはツアレ達に近付くとツアレ達は頭を下げ挨拶をかわす。
「申し訳ないのですが、少しツアレをお借りしても?」
「!」
「どうぞどうぞご自由に~セバス様♪」
メイド達は深く頭を下げると顔をにやつかせながらさって行った。
残されたツアレは心臓が嬉しさと緊張で早鐘をうつ。
顔も熱をもった様に熱い。
「ツアレ。待っていましたよ。」
「えっ!セバス様が私を!?」
「ふふっ。そんなに驚かなくても結構ですよ。」
「はっ、はい!」
緊張しているツアレに優しく微笑み、片手をとる。
ツアレは手を触れられた驚きと嬉しさで頭が混乱し、あわあわと声にならぬ声をあげた。
「此れをツアレに。」
そうセバスは言うとツアレの手に小さな缶を置く。
とても綺麗な黒と黄色の配色の缶で、尚且つとても良い香りがした。
「セ、セバス様…これ。」
「最近、紅茶の勉強をしていると聞いたものですから。」
「セバス…様。あっ有り難う御座います!」
「ふふっ。喜んで頂けて光栄ですよ。」
「私何かの為に…私、私は幸せです!」
「幸せ…ですか。では、私も幸せです。」
「セバス様!」
ツアレは泣きそうだった。
セバスがわざわざ自分の為に此処まで足を運び、紅茶をプレゼントしてくれるなど思ってもみなかった事。
セバスの優しい笑顔や言葉も何もかもが嬉しい。
「セバス様。本当に有り難う御座います。
大事にします!こんな良い香り初めてです。」
「どういたしまして。」
「あっ、あの?わ、私の淹れた紅茶…飲んで頂けますか?」
「宜しいので?」
「はい!よっ宜しいのです!あ、宜しくお願い致します!」
「では、楽しみにしています。ツアレ。」
「此方こそ!」
セバスはツアレに微笑み、この場を後にする。
残されたツアレはセバスの背中を見えなくなるまで見詰めていた。
「頑張らなくては!」とツアレは心に誓い、
近々やってくるだろうセバスとのお茶会に
美味しい紅茶を淹れ、セバスに褒めて貰う事に想いをよせ、目を閉じた…。
end