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    • モナモナ退屈すぎる書類仕事を済ませた金曜の夜。
      来週はハンバーグが食べたいとのミウからのおねだりに答える為、昨晩のうちから仕込んでいたデミグラスソースを温めているとチャイムが鳴った。

      「ハンバーグのにおい!おそとまでしてた!」

      扉を開けると満面の笑みと共にミウが靴を脱ぎ、小走りでキッチンにやってきた。石鹸のような心地よい香りが鼻をくすぐる。

      「ちょうどソースできたとこ。食べようか。」

      テーブルの上には2人分の食事が整えられていて、既に焼き上がっていたハンバーグの上へと丁寧にソースを掛けていく。
      その横でミウが美味しい食事のお礼にと花瓶に淡いピンク色の花を添えていた。
      ずいぶんと明るくなった男の独り部屋の姿に思わず目を細める。

      初めて2人で夜を過ごした次の日の朝。
      ありあわせの材料で作った食事をミウが海都一の有名店と呼ばれている店のものより美味しいと大絶賛し、モナの家でのんびりと過ごす逢瀬の際には、ミウからのリクエストに答えたメニューを楽しむことから始まるようになっていた。

      駆け出しの時代、金銭的な余裕がなく素材を自ら調達した上、どうにかして満足のできる食事をとれれば。の苦肉の策をきっかけに身につけた技であるが、こうして喜んでもらえると文字通り苦虫を噛んで絶望を感じたあの日の自分も報われることだろう。

      「モナさん、しってるかニャ?」

      「なに?」

      「どこかの国の言葉で、おいしいときに モナモナ! っていうらしいニャ!」

      「へえ。知らなかった。」

      突如繰り返される自分の愛称に目を丸くする。

      「モナさんのごはんは世界でいちばん美味しいってことだニャ」

      「はは。ありがと。」

      何度も自分の名と同じ異国の感謝の言葉を口にするミウはどこか滑稽であり同時に愛おしくもあり、思わず小さな笑い声が漏れる。
      また来週も再来週も、またその次も腕を振るい、この笑顔をいつまでも眺めていられたらどれだけ幸せなことであろうか。

      「まだあるからね。ゆっくり食べるんだよ。」 

      おかわりがしたいと満面の笑みで答えるミウが差し出す皿を受け取り、この幸せがいつまでも続くように。と心の中でいつまでも噛み締めていた。
      monakuwahara
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