自分が戻った時、その玉座は空っぽだった。
「やっぱりここだったな」
声に振り返ると、見覚えのない顔が立っていた。その人だと分かったのは、見慣れた金色を、彼がまとっているからだろう。
「お前にも世話になったな」
「いえ……ありがとう、ございました」
言いたいことが多すぎて、目元まで溢れてくる。うつむいた頭に触れる手は、いつもとは少し違った。ただ、それが彼らしさなら、取り戻せたことが嬉しいと思う。
目元を拭って、名残惜しさを消していく。「それではまた」と顔を上げれば、丸い目がさらに丸くなった。「なにを言ってるんだ?」と笑う顔に、今度は自分が驚く番になる。
「お前もオレの大切な仲間だ。置いていくわけないだろう?」