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    Fatal Cross EP1 宿命と邂逅Ep1 宿命と邂逅プロローグ
    ―この世界に遺されし、勇者の伝説―

    今より5000年の昔
    世界は大いなる闇によって滅びようとしていた

    神はひとりの男に力を与え
    滅びゆく世界の救世主とした

    男はその力を以て 大いなる闇を封印し「勇者」の名で呼ばれた

    封印の直前に大いなる闇は「勇者」を殺したが
    皮肉にもそれにより封印は完全なものとなる。

    こうして世界は平和を取り戻した。
    これがこの世界に遺る、伝説である―

    時は流れ、現代
    人々は平和な日々を送り 魔物なき世界で戦うことを忘れ
    この伝説すら、もはや語るのは詩人のみ 遺るのは小さな村にのみ……

    しかし、大いなる闇は人知れず力を取り戻し
    忘れられた地 クルセ・ハルノの黒水晶は瘴気を生みだし始めている

    世界に異変が起こり始めささやかな平和は崩れていった。

    人々は神に祈り やがて世界には「運命の子」が生まれ落ちた―
    Ep1 宿命と邂逅朝の日射しが静かに部屋に射し込んでいる。
    どこからか聞こえて来るのは朝を告げる小鳥のさえずり。
    「もう……朝か……」
    青年はそう呟いてそっと体を起こした。
    目の前には見慣れた部屋の風景が広がっている。机の上に広げられたままの古いアルバム。
    文字を書く為の羽根ペン。窓際には薄紫のイオンの花を花瓶に挿してある。
    ただひとつ、いつもと違うことといえば、窓の外が異様に騒がしいということだった。
    「どうしたんだろ?」
    彼は窓際に歩いていって外を覗いた。たくさんの村人達が右へ左へと忙しく動き回っている。
    「お祭りかな?」
    彼は不意に呟き、
    「祭り!そうだ、忘れてたよ!」
    そしてはっとしたように言うと、階段を駆け下りる。
    彼は一階の鏡を覗いて手ぐしで寝癖を直してから、いきおいよく家のドアを開けた。
    「お前、また寝過ごしたのか?」
    むっとした顔の青年がドアの前に立っていた。緑色の髪は無造作に跳ねていて、額にはバンダナを巻いている。
    かなり軽装で腹部は露出しており、腰には二本の片刃の剣を吊っていた。
    彼の緑色の瞳には明らかに「呆れ」が浮かんでいる。
    「グラディウス、ごめん。春はどうしても眠くて……」
    どこかの国の言葉に「春眠曉を覚えず」というのがあった気がするが、まさにその通りだ、と彼は思う。
    事実、今でもまだかなり眠いようで、彼は目を擦りながら言った。


    「ま、お前にはいつものことだしな。ソレイユ」
    少しからかうようなグラディウスを、
    「う……放っといてよ」
    少しムッとしたような表情で彼は睨んだ。
    「それより、レルの丘に行って祭りの準備がどのくらい進んでいるか見てみないか?」
    ソレイユは頷くと、
    「いいよ。でも、準備って何の?」
    グラディウスはその言葉にしばし沈黙した後で、
    「まだ寝てるのか?ファドの村の千年祭。千年ごとに開かれる祭りで、今年が第5回らしい」
    そう、呆れたように言った。
    ソレイユは小さく「あ、そういえば」と言って、恥ずかしそうに俯く。耳まで真っ赤にして。
    「まったく、お前らしいな。」
    「う、当たってるから返さないけど!でもちょっとだけむかつくかも……」
    ソレイユはじとっとした目つきで彼を見つめた。
    「……あー。とにかく行くぞ。トロトロしてっと置いてくからな!」
    グラディウスはその視線から逃れるように踵を返して走り出す。慌てて、彼もその後を追う。
    「待てよ」
    「待たねーよ!」
    こうしてふたりはファドの村の南、レルの丘へと向かった。


    ――
    レルの丘からはファドの村の全てが見渡せる。いい具合に伸びた芝生は昼寝には最高だ。
    そんなわけでレルの丘はふたりにとってお気に入りの場所のひとつとなっていた。
    本当は許可無く村から出ることは禁じられているのだが、長く続く平和の中でその掟は忘れられたも同然だった。
    事実、丘のあちこちに村人らしき姿が見える。
    「おーだいぶ進んでるみたいだな」
    「ほんとだ」


    村のあちこちで屋台の準備が進められ、店主達が商品の準備に走り回っているのが見える。
    一口に屋台といっても商品はいろいろだ。ソームすくい(金魚のような川魚。ペットとして人気がある)やメーラ飴(りんごのような果実に水飴をかけたもの。林檎飴)、村の伝統の焼き菓子である「天使のつばさ」。この菓子は遥か昔、ひとりの天使が地上に降りてこのファドの村を作ったという伝説にちなんだものだ。かと思えば日用品を売っているいわゆるフリーマーケットのようなものもある。とにかく千年祭はこのファドの村にとって一大イベントというわけだ。
    祭りの開会式では村の少女から選ばれた「天使」が神へ詩を捧げてその年の豊穣を願う儀式もある。
    「今年の『天使』はマーニって子がやるらしいんだが、ファドの村始まって以来の美人らしいぜ!」
    嬉しそうにグラディウスが言った。
    その様子に少し呆れたように、
    「グラディウスって本当女好きだよね」
    ソレイユが言った。
    「お前はそういう方面に興味と耐性なさすぎだ。17歳にもなって初恋もまだだっていうんだから」
    少しムッとしたように彼は言い返す。
    「うるさいな!べ、別に初恋なんて何才でしなきゃいけないって決まりはないんだから!」
    「まあまあ。そうムキになるなって」
    からかいを含んだグラディウスの言葉に、
    「この話は終わり。僕はもう村に帰るから」
    ソレイユは怒ったように言うとそのままひとりでレルの丘を降りていく。
    「おーい!待てよ!ったく冗談の通じない奴だなー」
    グラディウスは溜め息をついてから、彼を追った。


    ――
    ふたりがファドの村に戻ると祭りは既に始まっていた。たくさんの人々が屋台に列を作っている。
    「千年祭か。初めて見るなあ」
    「まあ、千年に一回だからな。この目で見られるってのはエルフとかと違って寿命の短いオレらには貴重な体験だよ。
    ところでな、エルフの女性ってすごい美人らしいぜ?ああ一度会ってみたい……もう絶滅したとは言われているけどどこかにひとりぐらいは……」
    「あーはいはい」
    (まったく、女好きなんだから。)
    ソレイユは心底呆れながら、村の広場へと彼を引っ張っていった。ちょうど儀式が始まる頃だったのだ。




    「では、儀式を執り行う。天使よ、ここへ」
    村の広場に建つ天使の像の前で静かに村長が言った。いよいよ儀式が始まるのだ。
    「はい」
    村長の言葉に導かれるように、ひとりの少女が像の前に立った。茶色の髪と瞳。天使の翼のついた衣装を身に纏っている。少女はそっと瞳を閉じて祈り始めた。
    <この地を創りたもうた神よ……我が名はマーニ。今、偉大なるあなたに仕える『天使』となりて歌を捧げん……>
    少女はそう言うと謳い始める。
    <大地を吹き抜けていく風よ 空はどこまでも 蒼く澄みわたる 我らの祈りの言の葉を聴くのなら 豊穣という恵みを この地へと捧げたまえ>
    少女の透きとおった歌声が広場を包んでいく。少女はなおも歌を紡ごうとした。
    「くだらない儀式はやめるんだな」
    しかし、急に広場に響いた冷たい声に驚いて少女は歌を止めた。
    「誰だ!」
    大事な儀式を邪魔されたことへの怒りを露わにして、村長が怒鳴る。
    「……答える必要はない。それよりもお前が村長なら早く村人達をこの広場から遠ざけるんだな」
    声の主は広場の像の前にその姿を現すと、村長を見据えて冷たく言い放つ。
    「こ、子どもが何を!」


    声の主の正体は金色の髪に紫色の瞳をもつ少年だった。右手には刃先が何又にも分かれた剣を持っている。
    歳は恐らく16、7だろうが身に纏うオーラはかなり大人びている。
    「そうか、知らないのか。お前達が儀式で崇める豊穣の神の正体は―」

    その時だった。
    急に地面が激しく揺れたかと思うと、地面から巨大な根が現れた。
    「ば、化け物だー!」
    村人達は悲鳴をあげながら一斉に広場から逃げ出す。ソレイユとグラディウスは逃げるそぶりも見せずに、化け物の姿をじっと見つめていた。
    根はどんどん太く巨大になり、やがて太い幹のような部分が現れる。しかしそれは樹ではなく骨だった。
    そして枝にはどす黒い血のような葉っぱが茂り、最後に幹に髑髏が現れる。その化け物は根を真っ直ぐにマーニに向かって伸ばすと、彼女を捕らえた。
    <オマエモワタシノイチブニ>
    <テンシトシテドウカシロ!>
    「いや!」
    マーニは根から逃れようともがくが、
    <ニガシハセヌ!>
    化け物はそれに反応したように最大限の力でマーニを締め付けた。
    「あうっ……は……」
    その力の強さに少女は気を失う。
    「まずいか。そこのふたり、そしてそこの女!不本意だが手を貸してくれ!」
    金髪の少年が少し取り乱した様子で叫ぶ。
    「もちろんさ!あたし達にまかしときな。あっと、あたしは『女』じゃない。フィーユだよ!そっちのふたりは?」
    少年の言葉を受けて、少女が答えた。金髪を高い位置で結っていて薄緑色の瞳を持つ。身に纏う服は軽装で腹部が露出している。
    「オレはグラディウスだ!そっちはソレイユ!」
    グラディウスはすぐに紹介を済ますと武器を構える。ソレイユも同じだ。
    「では、行くぞ!」
    ソレイユ、グラディウス、フィーユはほぼ強制的にこの化け物と戦うことになったが、誰ひとり不満に思ってはいなかった。
    早い話この3人は困っている相手を無視することなどできない性格なのだ。


    「くらいな!疾風!」
    フィーユは化け物に向かって走り込むと数回その幹を風の属性を纏った拳で殴り、最後に蹴り飛ばした。
    化け物は大きく体勢を崩し、枝に茂っていた葉っぱは全て地面に落ちた。
    「植物なら燃えちまえ!燃え盛る焔の力、我が剣に宿れ!火炎烈破!」
    続いてグラディウスが炎の属性を纏った衝撃波を飛ばす。衝撃波は化け物の根を切り裂き、その炎は幹に燃え移った。
    同時にマーニが解放され、その体が空中に投げ出される。その体が地面に叩き付けられる寸前でソレイユは彼女を受け止めた。
    「マーニは大丈夫かい?」
    フィーユはソレイユに駆け寄ると、心配そうに抱きかかえられているマーニを見つめた。
    「大丈夫。気を失っているだけみたいだよ。フィーユ、マーニを頼む。僕はあの化け物に一発喰らわせてやらないと」
    「わかった。頼んだよ!」
    ソレイユはフィーユにマーニを任せると化け物へと向かっていった。狙いはただひとつ。燃え盛る幹に浮かび上がる髑髏だ。
    「我が剣に宿りし光よ、刃となりて敵を切り裂け!聖光波!」
    彼の振り下ろした剣から光を纏った斬撃が飛び出し、化け物をまっぷたつに切り裂く。断末魔の悲鳴をあげて、化け物は土に還った。
    「うん、こんなものかな」
    ソレイユは納得したように頷くと、剣を腰に戻した。


    「でも、なんでこんな化け物が?化け物っておとぎ話の中の存在だろ?」
    フィーユが不安そうに呟く。
    「つまりは、この世界に異変が起こっているということだ。あの化け物はお前達が神として崇めていた豊穣の女神プライナの成れの果て。
    元は大地を守る優しき彼女を狂わせたのは千年ごとに生け贄にされた『天使』たちの負の想いと、瘴気だ」
    金色の髪の少年は淡々と答えた。
    「それはどういうことなんだい?」
    「あとは村長にでも聞けばいいさ。僕はもう行く。最後に、一応僕の名を教えておこう。ルイナス・アルヴィレント。

    ……また会うような気がするのでな」
    「あ、ちょっと……待って……!」
    3人の呼びかけに振り向くこともせず、少年はその場から姿を消した。


    一方すべてを暴かれた村長は逃げ出しもせず、その場に立っていた。開き直っているかのようにも見える。
    「村長、答えて下さい。これはどういうことなんですか?」
    「話すことなどない。全てはあの小僧の言った通りだからな。わしはプライナ女神が狂い始めていることを知っていた。
    しかし古い伝承には5人目の『天使』は全ての穢れをその命で浄化するとあった。だからこうした」
    村長は淡々と答える。その言葉は凍り付いたナイフのように3人の胸をえぐる。
    「だから、だからあんたはマーニをあんな風にしていたんだね。納得がいったよ。部屋から一歩も出さないで、罪人みたいに閉じ込めて」
    気を失ったマーニを抱いたまま、フィーユが怒りを押し殺すように静かに言った。
    「お前、なぜそのことを!」
    村長はそう言うとフィーユを睨みつけた。
    「何だっていいだろ。あんたは人の命をなんだと思ってるんだ!人と出会わなければこの世に未練がなくなるとでも?
    残念ながらあたしはマーニと出会ったよ。あの子は自分の状況を悲観してはいなかったよ。でも、瞳にははっきりと哀しみの影が見えた。
    わかってたんだろうね。あんたの本心が。そしてあんたに殺されるってことがね!」
    彼女の言葉に村長は顔を真っ赤にして黙り込む。
    そして、
    「追放じゃ!ソレイユ、グラディウス、フィーユ、マーニ!お前達は今日中にこの村から出て行け!二度と帰ってくることは許さん!」
    村長は4人に向けて大声で怒鳴ると、逃げるように自分の家へと帰っていく。
    「旅支度だな。終わったらレルの丘に集合だ」
    フィーユは目を覚まさないままのマーニをその背に負って家へと帰っていく。
    ソレイユ、グラディウスもそれぞれの家へと向かった。
    家に戻って来たソレイユは机の上のアルバムを閉じてリュックの中へ入れた。
    それから家にある食料と地図、コンパスをリュックに詰めこみ、最後に父の形見の剣を腰につけると家の玄関に鍵をかけた。
    (父さん、母さん。どうか僕を、僕たちを守って下さい)
    ソレイユは心の中でそう呟くと、グラディウスと合流してレルの丘へと急いだ。
    後ろは決して振り返らずに。

    レルの丘に着くと、フィーユと無事に意識を取り戻したマーニが立っていた。
    「初めまして、かな?わたしはマーニ。助けてくれてありがとう。でも、ごめんね?なんだか私のせいで追放されちゃったみたいだから」
    マーニはそう言うと長い睫毛を伏せた。茶色の髪が風にただ、揺れている。
    そんな彼女を励ますように、
    「気にすんなよ。オレ達は困っている人間を放っとけないタチなんでな。あ、オレはグラディウス。隣がソレイユ。これからよろしくな。」
    「あ、ありがと。よろしくね、グラディウスにソレイユ」
    そう言ってマーニは少し微笑んだ。
    「さて、これからどうするんだい?」
    フィーユの問いにマーニが答える。


    「あのね、わたしには使命があるの。持って生まれた使命が……」
    彼女はそう言うと首飾りを指差した。月を象っており、中央には青い宝石がはめ込まれている。
    「この首飾りは、『運命の子』っていうこの世界の救世主の証だって、亡くなられた村長のおばあさまは言っていたの。
    世界が瘴気に包まれる時に、生まれ落ちるんだって。おばあさまはわたしにもよくしてくれた。
    わたしが希望を捨てずにいられたのはそのおかげなんだよ」
    マーニは懐かしそうに目を細める。


    「『運命の子』か。おとぎ話の中だけの存在だと思ってたけど、本当にいるなんてねえ」
    「そういや、あのルイナスって奴も瘴気について言ってたもんな」
    「そうだよ。全部本当のお話なの。そしてね―」
    マーニは言葉を切るとソレイユをじっと見つめる。
    「あなたもわたしと同じ『運命の子』なんだよ。ソレイユ」
    「え?」
    驚いているソレイユに、
    「その首飾りはね、わたしのものと対になるの。嘘じゃないよ?」
    彼女はそうはっきりと告げた。
    「そ、そうなんだ。僕が『運命の子』なんて信じられないけど、とりあえずは今出来ることをしようと思う。後悔だけはしたくはないから」
    「へー。あのソレイユくんがそんな大それた存在とはねえ。世の中、何があるかわからねーな」
    「ちょっと!失礼じゃないのかい?」
    このままではフィーユとグラディウスが喧嘩を始めそうなので、
    「えっと、それでマーニ。具体的には何をしたらいいの?」
    ソレイユは話を変える為にマーニにたずねた。
    「狂った自然を元に戻さないといけなくて、そのためには『精霊』の力を借りないといけないんだ。だから、まずは情報を集めないと」
    マーニは3人に向かって言った。
    「そうか。じゃ、とりあえず川越えだな」
    グラディウスが清流サルラナ川のある方角へと足を向ける。
    「じゃ、行こう!」
    フィーユが先頭に立って、4人はレルの丘を西へ下っていった。



    かくして物語の幕は開く。


    続く
    上月琴葉@絵仕事募集 Link Message Mute
    Jul 2, 2018 3:28:17 PM

    Fatal Cross EP1 宿命と邂逅

    #オリジナル #創作 #一次創作  #小説  #ファンタジー

    「太陽」の救世主ソレイユと「月」の救世主マーニ。ふたりの運命の子を巡る物語。
    ジャンル…純異世界ファンタジー

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