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    2-17 黄昏、来たりて──
     シュリ達がリトスコスモにてディアマンテと未来を勝ち取る戦いを繰り広げていた頃。
     精霊界ソウル・エームの海の底に人知れず広がる大陸ヨトゥンへイムの玉座でスカアハは笑みを浮かべた。
     ヨトゥンへイムはかつて巨人、と呼ばれたユミル一族が暮らしていたもうひとつの場所だったが、自らの滅びを悟った彼らは自分たちの叡智を封印するために大陸ごと深い海の底に沈め、『血の結界』を張り巡らせた。『血の結界』とは物騒なものではなく、巨人の血──つまりはユミル一族の血を持つ者にのみ破ることのできる結界だ。
    そしてその結界が破られることは未来永劫ないはず、だった。
     しかしある組織の科学者の手によって禁忌魔術が行われ、ユミル一族の因子と記憶を持つ者が生まれてしまう。成功したただ1人のメックルカルヴィ──個体名「イーサ・ユミル」。結界を破るためだけに道具として生み出されたツクリモノ。ある組織は彼の血と「ユミルの記憶」を使って結界を砕いた。しかし彼らが出来たのはそこまでであり、ユミル一族の叡智に触れることはできなかった。今はもう失われた文字の意味を生まれたてのイーサは理解出来なかったからだ。
     彼らはその腹いせにイーサを白氷牢塔に閉じ込めて虐待と実験を繰り返したが、やがて戦乱の中で失意のうちに組織は滅びたとされている。しかし風の噂ではその組織に所属していた光精霊の何人かは今も生き残っているのだとか──

     では、何故スカアハがここで目覚め、ここを本拠地に定めたのか。ヨトゥンへイムの結界は解かれたものの、この大陸の存在は隠され続けていたためにスカアハに眠りの罰を与えるのには最適な場所だった。そのためミトラやその側近の光精霊たちはヨトゥンへイムにスカアハと真闇の眷属──タナトス、メリュジーヌ、ブロダイウェズを封印した。
     眠りの罰はスカアハが首謀者ではなく、参戦したのには夫であるリューを殺されたからという理由があったために情状酌量の余地があるとされ、10年という期間となった。タナトスら3人はスカアハより早くに目覚め、スカアハ復活後の計画の準備を進めていた。タナトスはリューとスカアハがふたりともユミルの血を持つことを知っていたために、その子どもであるロキをバルドルがいない隙に攫い、彼の血を使って封印されたユミルの叡智の一部にアクセスすることに成功、それを手がかりにユミル文字の解読を進め、様々な知識を得た。(バルドルに傷を負わせたのは実はこの時に足止め用に放ったタナトスの使い魔だった。バルドルが人間界から戻って来てすぐの出来事)
    そしてスカアハ復活後も、シュリの追跡以外は表に出ることもなくただ計画の準備を進めていた。
    そしてそれがついに成った。
    「スカアハ様。全ての計画の準備は整いました」
    「ご苦労じゃったなタナトス。では、計画の説明を」
    「はい。まずはノナ様、アスセナ様こちらへ」
     タナトスが合図をすると長い髪にピンクのワンピースを身に着けた少女と、かつて身に纏った緋色の法衣を豪奢なドレスに仕立て直した女性が姿を現した。
    「初めましてスカアハ様。私は断罪の牙の長、ノナです」
    「初めまして。私はアスセナです。大陽聖堂の元、緋の聖女と言えばよろしいかしら。以後お見知りおきを」
    「ノナに、アスセナか。ふふ、お前達の魂は歪んでいて闇に囚われていてとても美しいのう」
    スカアハはふたりを見て満足そうに笑みを浮かべる。
    「ありがとうございます。スカアハ様にお持ちしたのはこちらの『竜化毒」ですわ」
    ノナはそういうと紫色の竜の鱗のような結晶を手渡す。
    「この鱗で相手にたった一筋傷をつけるだけで構いませんの。たちまち毒は全身を駆け巡りマナバランスを崩しておぞましい竜へと変えます。ついでに傷口からマナを吸収してしまう『マナ喰らい』の成分も入れておきました。精霊や半精霊には致命傷です」
    「きゃーん!ノナさまって超ドSなんですね!やだーかっこいいー!」
    メリュジーヌが手足をぱたぱたさせながら嬉しそうに言った。肩の蛇も満足そうに鎌首をもたげている。
    「で、この毒を誰に使うの?どうせなら綺麗な男の子がいいなー」
    「残念でした、メリュジーヌちゃん。これは精霊の女王さまミトラちゃん用なのよー」
    「えー?つまんないー」
    意地悪そうな笑みを浮かべて言うブロダイウェズにメリュジーヌは口を尖らせる。
    「ふむ、タナトス。誰がその役をするのじゃ?我らでは怪しまれるじゃろう」
    「ちゃんと考えております。……リアン、クロワ」
    「……はい」「……こちらに」
     姫君のようなドレスを纏った夜色の髪と紫水晶の瞳を持つ女性と白と黒の髪に緋色の瞳を持つタキシードを纏った青年。ふたりは互いを落ち着かせるように固く手を繋いだまま、スカアハの前に跪く。
    「話はフルイドから聞いておる。『黄昏の姫君』リアン、そして彼女を護る『黄昏の騎士』クロワ。これより任務を与える」
    「はい」「わかりました」
    「数時間後にこの竜化毒を仕込んだネックレスが出来上がる。それを持ってミトラの居城神座ヴァラスキャルヴへ向かい、それをミトラの部屋へ置くだけじゃ。移動にはリアンに教えた転移呪文を使う。難しい行動は何もない。できるな?」
    「御意」「貴方の望むままに」

    ──
    「ふふ。俺の負けみたいだね……」
    「ディアマンテ様!」
    ディアマンテはその場に膝をつくと、ダイアモンドが埋め込まれたレイピアを杖のように使って立ち上がった。
    「スイ、いるんだろ?こっちに来て癒してくれ」
    「あ、はい。すぐに」
    ディアマンテの後ろから黒髪に蒼い瞳を持つ和洋折衷のような服を着た少年が飛び出して、ディアマンテにそっとキスをする。
    「はあ……っ……これで大丈夫です。」
    すると代わりにスイと呼ばれた少年がその場に膝をついた。
    「お、おい?大丈夫なのか?」
    心配そうなシュネルに、スイは微笑んでみせる。
    「大丈夫。みんなの傷や穢れをマナリンクによる『穢れ移し」で移して浄化するのが僕の役目だから……貴方は優しくて強い炎のような人ですね。貴方の中には常にその炎が燃えているー心配してくれて、ありがとう。ディアマンテ様、下がります」
    スイはそう言うと姿を消した。
    「おっと、そこのキミにはちょっと刺激が強かったかい?」
    ディアマンテは顔を赤くしているアルヒェを見つめる。
    「あ、え?……で、でもこれが貴方達の文化なんですよね?」
    「ま、そうだね。俺たちは平気でキス以上のこともするけど。別にマナリンク=キスじゃないんだけど方法としてはそれが一番簡単なんだよ。精霊が生きていくためにはどうしても多くのマナがいる。ひとりで補うのは本当に大変だから、互いにマナを分け合う。そして魔力の通り道(パス)を形成し同時に絆による保護呪文をかける。こっちは『護りの証』って呼ばれてるね。人間も恋人同士は同じことをする」
    「なるほど、興味深いわね」
    「人間が同じことをしても全く意味がない訳じゃない。ひとりで生きていけないから彼らもまた分け合う。それに精霊と人間のマナはそれほど大きく違う訳じゃない。だからこそ、人間と精霊が愛し合ったり子どもを産むこともできるわけだ。人間だって石素は持っている訳だし、ある程度石素濃度が濃ければ互いの石素を混ぜ合わせて複数属性のマナを行使する『コンビネーション』という術が使えるって聞いたことはある」
    「さてと、そろそろ長話にも飽きて来ただろう。約束通り『未来』を渡そう」
    ディアマンテは頷くと首から提げていたダイアモンドの指輪を外し、マトリに渡した。
    「ありがとう、ディアマンテ様」
    ディアマンテは少し寂しげに睫毛を伏せる。
    「キミ達とはまた会うような気がするけれど、鉱石精霊以外と話すのも戦うのも久しぶりだったから少し寂しいな」
    「……ディアマンテ様」
    「なんてね。俺らしくもない。……それより急いだ方がいい。俺の力で君たちをヴァラスキャルヴへ飛ばしてあげるよ。
    ……『黄昏が来る』。目を閉じて」
    「黄昏?それは──」
    ニミュエが何かを問おうとしたが、その時には既にシュリ達はヴァラスキャルヴの城門に立っていた。

    そしてすぐにマトリが異変に気付く。
    「……シュリ、みんな気をつけるんだ。何かが……おかしい!」
    その刹那。
    「きゃああああ!」「うわああ!」「助けてー!」
    悲鳴とともにたくさんの人影がヴァラスキャルヴの城門を飛び出していく。
    「シュリ様!ご無事でしたか!」
    「スヴァン!」
    銀色の髪をなびかせて、上空からスヴァンフフィードが舞い降りて来た。彼女が乗っているのは白鳥の精霊だが、その羽には傷を負っている。彼女自身もあちこちに浅い傷があった。
    「スヴァン!何があったの?」
    「ミトラ様が……ミトラ様が……!」
    彼女は酷く慌てた様子でそう繰り返すだけで、完全に自分を失っていた。
    「母様……!」
    「待ちなさいシュリ!これは罠よ!」
    ニミュエの制止を無視して、シュリは城内へ飛び込んでいく。
    「とりあえず後を追おう!ニミュエ、スヴァンフフイードさんから落ち着いたら事情を聞いてくれ!」
    「わかったわ。お姉さんに任せなさい!」
    そしてシュリの後を追うように、マトリ達も城の中へと飛び込んでいった。

    ──
     階段を二段飛ばしで駆け上がり、シュリは玉座の間に辿り着いた。城内にはすでに人影はなく、何が起こったかはわからないが避難は上手くいったらしい。
    (リヒトにフィンスも……無事だよね?)
    「シュリ……」
    「母様!そこにおられるのですか?今すぐ──」
    シュリがそう言って扉を少し開くと同時に、
    「え……?」
    巨大な竜の口がシュリに襲いかかり、そして彼女を呑み込んだ。
    上月琴葉@絵仕事募集 Link Message Mute
    Oct 20, 2018 3:12:01 PM

    2-17 黄昏、来たりて

    あらすじ
    そして世界は、黄昏に至る。

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