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    2-19 光──
    わたしは、イオンといいます。うまれたときからせなかにはねがかたほうしかありませんでした。
    ひかりせいれいでありながらはねのいろもほかのひかりせいれいよりはいいろにちかかったのです。
    そんなわたしを、みんなきらいました。うとんで、そしてちいさなへやにとじこめました。
    だけど、あるひ、きらきらとかがやく『ひかり』がわたしにあいにきたのです。
    そのひとたちもせいれいでもひとでもないはざまのそんざいで、はじめはのけものにされていたんだそうです。
    かれらはわたしにひかりをくれました。だからひともせいれいもやさしいひとがいるんだってわかったのです。
    やがてかれらはせいれいたちにとっても『ひかり』になりました。

    あるひ、かれらはよにんそろってやってきて、わたしとあそんでくれました。
    だけどなにかがちがっていることはわかっていました。
    たぶんこれで、かれらとあうのはさいごになるのだと。
    かれらはいつもとおなじようにわらってまたねといったけれど
    それはわたしをきずつけないためのうそだとわかっていました。
    だってかれらはとってもおひとよしでまっすぐでうそをつくのはへたなのですから。

    『ひかり』がきえればやみがやってきます。
    たそがれがくれば、せかいはよるにしずむのです。
    だけど、いつかあさがかならずやってくるように、わたしはいつかまた『ひかり』をみるのでしょう。
    だからさよならはいわないのです。

    かわりにちいさくそらにむかってつぶやくのです。
    「またね」って。

    ──
    「準備はいいかな、みんな」
    「はい」「ええ」「大丈夫だ」
     神座ヴァラスキャルヴの最奧にある巨大なマナの門。世界に廻るマナの総量を調節する役割を持つ決して開かれることのなかった門の前でイージス、リート、マリア、フェリットの4人は輪になって立っていた。
    床には複雑な魔法陣が描かれている。
    「いよいよ、か」
    イージスはそう呟いてそっと目を閉じた。

    襲撃の数日前、何かを感じ取ったミトラは扉守達4人を呼び密かに命令をしていた。
    「もしも私に何かあったら、迷うことなくマナの門を開いて下さい」
    「はい」
     マナの門を開く、それは精霊界で心喰らいが起きるようになってからずっと計画されてきたことだった。
     精霊が人間よりも大量のマナを必要とする存在である以上、精霊界のマナを多めに保つために人間界のマナの門は開かれることはなかった。とはいっても、人間界で問題が起こらないレベルに別のルートを通じてマナは供給されていたのだが。
     精霊はマナの総量が大きく違う人間界では長く暮らすことはできない。それは生きているだけでマナが消耗されるからだ。
    (シュリの場合は精霊の女王の娘であるという血筋、そしてリヒトにマナを分け与えた時にマナリンクを行ったことで
    彼からもマナの供給が受けられるようになったために例外的に長く留まることが出来た)
    その点を解消するための唯一の方法がマナの門を開くことだった。
     ミトラはスカアハが宣戦布告をすれば、恐らく人間界も精霊界も巻き込んだものになるであろうことをわかっていた。そしてスカアハが人間に力を与えて仲間としているという情報も入って来ていた。
     そこでミトラも同じ道を選択した。マナの扉を開いて精霊が人間界でも普通に活動出来るようにすること、そしてそのことにより2世界を行き来しやすくし、人間に力を与えて共に戦えるようにすることを。

    しかし、マナの門を開くにはかなりの代償を支払う必要があった。
    「しかし、あの扉を開く事は禁忌。精霊とてその罰からは逃れられないのです。『転生の魂」となって地上で転生し続けるなど首を振るものは……」
     計画会議の時に顔なじみの精霊が呟いた言葉をイージスは今でも覚えている。
     マナの門を開くには、門の前で禁忌歌とされる精霊歌を謳い自らの魂を贄として捧げる必要がある。そしてその魂は罰として『転生の魂』となり、精霊としての力と生まれ変わる前の全ての記憶を保ったままで『人間』として転生し続ける。
     精霊達は元々人として生まれ変わることを嫌う。それは精霊界ソウル・エームが積極的に人間と交流をしてこなかったためだ。
     しかし、イージスはそのことを罰だとは思わなかった。だから、迷わずにこう告げた。リート達からも計画会議の前に同意は得ていたから。
    「ミトラ様。その任は我らが負いましょう」
    「イージス!」
    顔なじみの精霊が驚いたような顔で彼を見た。
    「マリアもリートもフェリットも同意しています」
    ミトラも会議に出席していた全ての精霊がその言葉に息を呑んだ。
    「……本気……なのですか?」
    戸惑ったように聞き返すミトラに、イージスは小さく頷く。
    「はい。……僕たちは……我らは『人から成りしもの』。厳密にいえば人でも精霊でもありません。若くして死んだ人間の魂に、ミトラさまがほんの少しだけ力を与えてくれて生まれたかりそめの命です」
    「確かにそうだ……しかしだからと言って消えていいという事にはならない。お前達は……この場所の『光』だ」
     別の顔なじみの精霊が悲しそうに彼を見た。
     初めはあんなに嫌っていたのに、もう今では親友のひとりになっている。それが嬉しくて微笑みそうになるのをイージスはなんとか抑えた。
    「人として生まれ続ける事、それ自体が罰だとは僕は思いません。ですが、心苦しいのはこのことが恐らくは生まれ変わった後に運命の影を落とすこと。それだけです」
    「わかりました。貴方達の決意は固いのですね」
    ミトラはそう言うと玉座を降りて、イージスの頬にそっと触れ、そして優しく抱きしめた。
    「ひとつだけお願いをしてもいいですか?」
    「言ってご覧なさい。」
    小さく頷いたミトラに、彼は彼ら4人のひとつだけの願いを伝えた。
    「生まれ変わった僕らに希望を。そして最後には幸せを」
    「ええ、約束しましょう」
    「ありがとうございます。ミトラ様。いえ、最後に失礼なのを承知で一度だけこう呼ばせてください。……ありがとう、お母さん。愛しています」
     イージスはそっと目を閉じてそう言った。精霊界の女王に人でも精霊でもない自分たちがこんなことを言うのは失礼だとわかっていたけれどそれでも、最後に感謝を込めて言いたかった。
     本来ならあの時点で終わっていたはずの生。ただの気まぐれかもしれないけれどもう一度それぞれの会いたかった人に会えたこと、世界を見ることができたこと。大袈裟かもしれないけど、人や精霊に少しでも『光』を与えられたこと。それが出来たのは全てミトラのおかげだ。
    「……ありがとう、イージス。ううん……私の可愛い我が子達。貴方達は光でした。愛しています。そして私はずっと……憶えていますー」
    ミトラは咎める代わりにイージスの頬にキスをして、そして微笑んでこう告げたのだった。

    「……楽しかったな」
    イージスはそう言って目を開いた。
    「ああ。本当にな。兄さんともまた会えた訳だし、あの子達に未来も遺してやれた。心残りはないよ」
    リートの言葉にマリア、フェリットも頷く。
    「あとは、私たちが消える前にマナルーンを彼らに託すだけだわ。この一連の事件の核心は恐らく『あの場所』にあるから」
    「そうね。そこに行くには必要になる力だものね」
    「じゃ、そろそろ始めようか。」
    イージスが大きく息を吸い込み、そして初めのフレーズを歌う。

    床の魔法陣が輝きだし、黄、青、緑、赤の光の柱が生まれる。
    「イージスさん!」
    「リヒト。それにみんなも」
     リヒト達の姿を見た4人は歌を中断して彼らの方を見た。精霊歌は初めのフレーズを歌ってしまえばもう発動解除はできない。
    だからこそイージスは彼らが来るよりも前に、そのフレーズをあらかじめ謳うことにしたのだ。
    「お母様から全て聞いたの……」
    俯いたままのシュリに、リートは笑って言った。
    「そんな顔するなよ、シュリ。精霊の女王になるんだろ?女王は少なくともみんなの前では強く居ないとだめなんだぜ」
    「もちろん、泣いちゃいけないってことはないけどね。別にね、私たちは怖くはないのよ。だって元々人だったんだもの」
    「だけど、生まれ変わっても力が消えないのならあなたたちは……!だって人は自分と違うものを怖がるし……蔑む……から……僕は、知ってるから……」
    「兄さん……僕も同じだよ……特にリートさんは心配かな……色々」
    いつもは見せない強い調子でそう言ったリヒトとフィンスは悲しそうに睫毛を伏せる。
    「私たちを心配してくれるのね。リヒト、フィンス。貴方たちは本当に優しい子だわ」
    マリアはラルムを喚び出すと、動けない自分のかわりにふたりを抱きしめさせた。
    「……ぼ、僕は別に……優しくなんか」
    耳まで赤くして俯くリヒトに、フィンスがそっと告げる。
    「……兄さんは気付いてないだけ。僕はいつだってその優しさに救われて来た。きっとみんなもそうだと思う」
    「フィンス、いやゾンネのがいいか」
    「フィンスでいいです……リートさん」
    「気に病むなよ、代償の件。俺が選んだ事だ。お前にはまだ生きてやるべき事がある。……というとかっこいいけど、まあ早い話生きてて欲しかったんだよお前には」
    リートはそう言うと照れくさそうに笑った。
    「……どうして……?そのせいで貴方はこれからずっと……」
    「フィンスってのはフィンスターニス……闇から来てる名前だ。確かに闇って言うと、いいイメージじゃないかもな。
    けどな、生まれ持った力で善悪は決まらない。お前はその力で絶望でなく希望をもたらせ。闇がなければ星は見えない。闇があるからこそ光は自らの輝きに気付くのだから」
    「……希望を……だけど壊れた僕がもたらせるのはきっと歪んだ希望でしかない……」
    「フィンス。壊れてたお前はあの時に死んだんだ。今のお前はもう壊れてなんかいない。その証拠にほら」
    「あ……」
    フィンスの目から涙が一筋流れて、落ちる。
    「壊れた人形は涙なんて流せないだろ?」
    フィンスは涙を拭って、
    「リートさんは父さんみたい」
    「だから、そんな年じゃねーよ。まあ蒼月の島に碧風の門があったからお前達の小さい頃から一部始終は見て来たけどな。強くなったよ、ふたりとも」
    リートは少し照れくさそうにそう言ってとびきりの笑顔で笑った。
    「あ、そうだ。この力をみんなに渡しておかないとね」
    イージスが合図をすると、4色の光がシュネル、クルク、マトリ、アルヒェの中へと吸い込まれていった。
    「これは?」
    シュネルの問いに、
    「精霊にのみ使えるマナルーンよ。私達にはもう必要の無い力だから」
    「これは私たちの推測だけど、心喰らい現象の原因はある場所にあると思うわ。そしていずれそこにあるのなら行くのにこの力は必要になるの。受け取っておいて」
    「わかりました」
    アルヒェはフェリットに頷いてみせる。
    「リヒト、アルヒェ、シュネル、フィンス、クルク、マトリ、プロミネ、イーサ、ロキ、ニミュエ、そしてシュリさま。この世界を頼みます。
    ……本当は最後まで見届けたかったけれど、叶わないから。だけど、さよならは言わないよ。またね」
    イージスが最期に笑顔でそう言うと、彼らは再び歌い始める。

    解放の謳を謳いましょう
    それはずっと閉ざされて来た扉を開く謳

    人として生き 扉守となった
    人でも精霊でもない狭間の者
    それ故に人の強さと温かさを知っている
    それ故に人の弱さと冷たさも知っている

    ひとりでは脆い存在だとしても
    護るべきー世界ー(ひと)を知るならば
    護りたいー場所ー(せかい)があるならば

    その想いは奇跡を紡ぎ深い闇を払い 黎明をもたらす風になるでしょう

    我らの魂を永劫の輪廻に縛り 代わりにこの世界へ祝福の謳を

    私たちはこの世界を愛しています
    故にこの魂と体を生け贄に捧げるのです

    願わくば嵐ののち、この世界が永久に凪ぐことを
    この世界の子供達が笑っていられる未来を
    この謳は「世界の希望」
    来るべき「夜明け」に「架かる虹」

     歌が終わると同時に真っ白な光の奔流が辺りを満たし、そして光が消えた後リヒト達の目の前にあったのは開かれた扉と4つの鉱石だった。
     虹を映したオパール。清らかな輝きを放つ真珠。誰にも束縛されない風のような鉱石の王ダイアモンド。情熱の炎を宿すルビー。 リヒトがそれらを手にとろうとした瞬間、その宝石達は粉々に砕け、その欠片さえも砂となって最後には跡形もなく消えた。
     そう、扉守の正体とは死んだ人間の魂を鉱石の器に宿らせ、ミトラの力で生前の姿を与えたものだったのだ。
    そして宿主が消えた今、役目を終えた器は碎け散った。開かれた門を見据え、胸に手を当ててリヒトは誓う。
    「ありがとう。あとは僕らに任せてください。そして必ずこの絶望に終焉を」
    そしてシュリも力強くこう告げた。
    「まだ、儀式は済んでないけれど、精霊の女王として誓います。必ずこの世界に平和をもたらすと」
    彼らは開かれた門に踵を返し、新たな決意を胸にその部屋を後にした。


    ──
    かくして『転生の魂』は生まれた。そしてやがて彼らは新たなる世界で新たな物語を紡ぐこととなる。
    彼らが最期に願った願いは叶うのか、そして再び彼らは巡りあったのか──それはまた、別のお話。

    「だいじょうぶ。わたしがずっとみまもるから。こんどはきっとしあわせになってね……」
    上月琴葉@絵仕事募集 Link Message Mute
    Oct 22, 2018 3:08:31 PM

    2-19 光

    あらすじ
    ひかりは、希望を遺して散る。やがてその先に別の物語が紡がれていくことなど知らないままに。

    ##FCAS #一次創作 #創作 #異世界FT #小説 #ファンタジー #オリジナル

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