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    1話 襲撃1話 襲撃

     この世界は「シルクス」と呼ばれる。
     そして現在、大きく分けて4つの勢力が存在していた。
     ひとつは魔術と学問の国 マギ・マグナ。 1000年前の「封闇戦争」で倒された「無の女神」を封印した扉を守るために作られた国。 どこの国よりも魔術が発達しており、ほとんどの国民が日常的に「スペル」を使って生活している。 気候的には寒冷地寄りで、冬は積雪が多い。国のシンボルであるシュネー山は国の最北端に位置し、一年を通じて深い雪に閉ざされている。
    首都はナウスで、シンボルである王城と世界図書館がある。首都以外はのどかな田園風景が広がっており、小さな村や町が点在している。
     また、ひとつは南のファルーナ国、北のライデンシャフト国、東の島国アキツ国とその近隣の諸島群からなる通称「王子同盟」。名前の通りある会談の場において帝国に対抗するべく、ファルーナ国王子ラディ・シエル・ファルーナとライデンシャフト王女ヒルダ・ユウリル・ライデンシャフト、アキツ国第3皇子ヤマト・アキツの3名が結んだ同盟である。ファルーナ国は温暖で暮らしやすく、芸術と食文化が発達し、スペルもまた普及している。ライデンシャフト国はマギ・マグナの首都ナウスとほぼ同緯度で、冬の寒さが厳しくスペルと機械が半々で普及している。アキツ国は独自の文化を持つ島国で、符術や棒術など独自の技が普及しており
    スペルはあまり普及していない。「王子同盟」の名はヒルダ王女が普段は男装の麗人であることもあり、ラディ王子の提案でつけられた、らしい。
     またひとつはオケアヌス海洋諸国連合。シルクス南方に点在するオケアヌス諸島が連合した新興勢力でミオ総督が全体を纏めている。海洋国家であるため、主な移動手段と生活手段は船。周辺に有名なならず者の海賊がいて、総督は手を焼いているようだ。主な特産物は南国ならではのフルーツ、海産物。
     最後に現在世界最強と言われるマキナブルク帝国。シルクスの東大陸全土に広がる強大な国で 「スペル」を組み込んだ機械が普及し、文化も生活水準も高い。約10年前まではマギ・マグナに遠く及ばなかったが現在の皇帝の尽力により急成長を遂げた。
     これら四大勢力とそれらに属さない少数民族で、この世界は成り立っている。世界史によると1000年前から現在までこの世界では争いなどは起きていないことになっている。

    ―しかし、10年前に起こったとされるある事件―もっともそれを記した文書などはないが―それを境目に世界の雲行きは少しずつ怪しくなり始めていた。それも水面下で。

    そしてついにそれは事件となって表面化することとなる。



    「よくお似合いですよ。王女様。」
     魔術国家マギ・マグナの首都ナウス。そのシンボルであると名高いシュネー城。
     その一室で第一王女リーリエ・マギ・マグナは成人の儀のための準備をしていた。百合の花を模した様な純白のドレスは彼女の金色の髪によく映えた。
    「ありがとう、エリス。あなたの目には狂いはありませんね」
    エリスと呼ばれた茶色の髪に王国のシンボルである百合の花の髪飾りをつけた女性は、
    「こちらこそ、そう言って頂けると光栄です。見立てた者として鼻が高いです。」
    そう答えると嬉しそうに微笑んだ。
    「ところで、やはりあの子は来られないのかしら……」
    リーリエの表情が曇る。
    「ええ、残念ながら……しかし、お祝いの手紙は届いております」
    エリスはそう言ってリーリエに手紙を渡す。ふわり、とバラの香りがした。
    「いい香り……懐かしい匂いがするわ。霧の森の館で過ごしていた頃の思い出が蘇るよう―」
    リーリエは手紙を開いてさっと目を通すとエリスにそれを手渡した。
    「そろそろ時間でしょう?私はあの子のためにも……立派にならなくては……」
    「リーリエ様、お時間です」
    「はい。ではいってまいります、エリス」
    リーリエは凛とした雰囲気を纏いながら部屋を後にした。
    ひとり残されたエリスは長い睫毛を伏せた。
    「……リーリエ様にあの子を会わせてあげたかった……何故あの子に「先祖がえり」なんか……
    それがなければこの城でふたりで生きていくことができたでしょうに―」

    「エリス」
     彼女が低い声に振り向くと男がひとり立っていた。王国の象徴である百合の花の刺繍の入った服を纏い、眼鏡をかけている。切れ長の瞳も合わさっていかにも知性派、といったいで立ちだ。
    「ロゼ。どうしたの?」
    「いえ、良くない噂を耳にしたのであなたにも伝えておこうと思いまして」
    その言葉にエリスの目が細められる。
    「良くない噂ですか……話してください。ロゼ」
    エリスは真剣な顔でロゼに報告を促す。
    「マキナブルク……帝国が動き出しました」
    「!」
    その言葉に思わずエリスは息を呑む。
    「いわゆる【王子同盟】の3国の王城全てが襲撃され、3人は皆行方不明だと。襲撃者は不明ですが、帝国の関係者ではないかという噂が立っています」
    「なるほど。それで帝国が動きだしたと思ったのですね。納得はいきます。遺跡封鎖も行いましたし」
    王子同盟は四大勢力のひとつだ。
    その彼らを簡単に襲撃できるとなればこの国か帝国ぐらいしかいない。
    「遺跡封鎖の件から考えても、帝国の目的とは恐らくは―」
    彼がその先を言おうとした瞬間だった。
    ガシャーン!!
    何かが壊れるか、または割れた様な、大きな音がした―


    「くうっ……」
     つい先程まで成人の儀が行われていたその場所は大混乱に陥っていた。招待客と民間人はなんとか逃げることができたが、傷を負った王女はその場にうずくまったままだった。
    散乱する無数の硝子片。あるものはそのまま冷たい光を放ち、あるものは血に染まっていた。
    そしてそんな彼女を静かに見下ろす瞳の主がその歩を進める。
    「神聖な儀式を穢すとは……どういったつもりなのですか?」
    王女は傷つきながらも真っ直ぐにその声の主を見据える。
    「こんなことになったからには、警戒するなというのが無理かな」
    声の主は長い睫毛を伏せ、悲しげに続けた。
    「怪我を負わせてしまった以上、咎められても文句は言えない。だけどどうしても僕はあなただけに伝えたかったことがあってね」 片目を隠した白い髪を持つ人物が王女へとその手を差し出す。
    「……伝えたいこと?……この儀を穢してまで?」
    王女はそう呟き、痛みに顔をしかめた。
    「あなたは話さないで。あなたを失う訳にはいかないのだから。リーリエ王女、手短かに伝えます。実は―」

    告げられたその言葉に彼女はしばし沈黙し―やがて静かに頷くとその場から白い髪の人物と共に姿を消したのだった。


    時は少し遡る。
     マギ・マグナの事件が起きる3日前。その日の午後。南国ファルーナの首都の王城の会議室ではライデンシャフト国王女ヒルダ・ユウリル・ライデンシャフト 、アキツ国第三皇子ヤマト・アキツ、そしてファルーナ国王子ラディ・シエル・ファルーナが話し合いを行っていた。
    「ヤマト、それは本当なのか?」
    「ええ。我が国の忍たちの得た情報によればマキナブルク帝国がマギ・マグナ国の首都ナウスの襲撃を企てているらしいのです」
    「ふむ……先日の帝国による遺跡封鎖の件といい、きな臭いな」
    「ええ、そもそもあの遺跡は雪深いシュネー山脈の中腹ですから、元々立ち入る人はいないはずですがそれをわざわざ……」
    真剣そのもののふたりをよそに、残るひとりはというと―
    「むにゃ……」
    うたた寝。
    ラディは基本的にマイペースな人間であり、こんなのはいつもの事だ。そしていつもなら放っておく。
    だが、今は事情が違う―
    「おい!起きろ!ラディ!」
    「ふぇ!?」
    びくっとしたように体を震わせ、彼は体を起こした。
    「全く……これは重要な話だ!国を預かる者としての自覚はないのか?」
    ヒルダの剣幕をよそに彼はきょとんとして、
    「えーと、ごめん。何か話が難しくて気づいたら寝ちゃってたみたい。それで、何の話をしてたんだっけ?」
    そう言って頭をかいた。
    その様子に溜め息をついてから、
    「全く。帝国の動向が怪しいという話をしていたのだ」
    ヒルダはそう彼に告げた。
    「マギ・マグナの首都、ナウスの襲撃が計画されているらしいという情報が私の耳に入りまして」
    「……ナウス……」
    ラディは先程とはうって変わって少し考え込むと、
    「ねえ、ヒルダ。帝国って最近シュネー山脈の遺跡を閉鎖したんだっけ?」
    「ああ」
    「うーん……あの遺跡封鎖してナウス襲撃ってことはやっぱり【聖鍵】関連なのかなあ?ナウスって『扉の地』だし」
    「……」
    ふたりは困惑した表情で彼を見つめていた。
     というのは、ファルーナ国は「スペルのゆりかご」の異名を持つ由緒正しき魔術国家でありマギ・マグナより古い伝承や伝説、スペルやヴェールと言った魔術全般の知識は群を抜いている。さらに、王族に関しては失われた特殊なスペルを使いこなすこともできる。
     ラディは普段抜けていて全くそのようには全く見えないが魔術やその知識に関しては博士レベル。さらに本人の魔力もずば抜けている。そのため古代関連、魔術関連の話になると本人かマギ・マグナの宮廷護衛士でも無い限りはまず理解できないのであった。
    「待て、ラディ。ますは遺跡封鎖とクラーウィスがどう関係するのかを説明してくれ」
    「私にも。すみませんが、魔術にはあまり詳しくないものですから」
    「あ、ごめん。わかりにくかったよね。えっと、帝国が封鎖したあの遺跡には伝承によると結界が張られた部屋があるらしいんだ。 なんでも昔、ファルーナとマギ・マグナで合同調査したけど部屋自体が見つからなかったって記録があったけどね。
     『封闇戦争』の時代の遺跡とされるものはシルクス中にあるけど、記述を見るとあそこだけは微妙に遺跡の様式が他と違ってた。だから珍しいなーって思って、覚えてたんだ」
    「なるほど、つまりあの遺跡は何かしら特別というわけですね。では、結界と聖鍵は―」
    ラディは少し考え込んだ後、
    「えーとこれ、本当はファルーナの他言無用な伝承なんだけどね。【聖鍵】―クラーウィスは本当は7個あるって言われてるんだ」
    「……」
    2人とも言葉を失った。そんな重要なことをさらっと言ったのにも驚きだがそれ以上に彼らを驚かせたのは―
    「4つでは…ないのか。それが通説だから当たり前だと思っていたが」
    「文字がない時代の話ですから、失われた聖鍵があっても、おかしくはないですね」
    聖鍵に関する通説が、一般的な常識が一瞬で覆ってしまったからだった。

     クラーウィス―聖鍵。各王家の建国の祖が持っていたと言われ、今も各王家に伝わる秘宝。現存するのは4つと言われており、王権の象徴でもある。言い換えれば、クラーウィスを持つ者はみな王族の子孫であり、国を作ることができるのだ。それがあと3つもあるとなれば現在の均衡は崩れかねない。もしくは現在の国がその3つを巡る争いを引き起こすかもしれない。 その可能性を危惧したからこそ、このことはずっと他言無用とされてきたのだろう。
    「このことを知ってもふたりは、聖鍵を奪ったりしないって信じてるからこの話をしたんだ。もちろん俺も。そもそも戦ったって弱いし、元々戦うのって嫌なんだ。そんな暇があるなら絵を描いてたいし」
    (いや……本気出したらお前は(あなたは)めちゃくちゃ強いと思うが(思いますが))
    だって魔力半端じゃないし。
    ふたりは心からそう思ったが敢えて何も言わなかった。
    「それで、結界とクラーウィスのことだけど、やっぱり大事なものがあるから結界張ってるのかなって思って。仮説だけどクラーウィスのひとつがあの遺跡にはあるのかもしれない」
    「ふむ、理解した。助かったぞラディ。相手の狙いがなんとなく見えたからな」
    「おそらくは……聖鍵が目的、と見て間違いないですね。助かりました。」
    「えへへ。俺もたまには役に立つでしょ。魔術なら任せていいよ?」
    彼はそう言って照れ臭そうに笑ったが、ふとある事実に気付いて表情を変えた。
    「あ、でもそれってつまりクラーウィス狙いの帝国が世界中の持ち主を襲撃するってことだよね?」
    「ああ」「そうなりますね」
    そしてその言葉を聞くやいなや、
    「ど、どうして2人ともそんなに冷静なの? 帝国だよ?どうしよう……戦い嫌いだし苦手だし兄さんはずっと行方不明だし……
    でもそもそもクラーウィスは渡せないよ!!!」
    半パニック状態になっているラディに、ヒルダが静かに告げる。
    「落ち着け!私たちがお前をほっとくとでも思っているのか?」
    「え?」
    「そうですよ。何のための同盟なんですか?……いえ、それ以前に私たちはもう親友、でしょう?」
    「そ、そうだ。いいこと言うなヤマト。私は親友を見捨てたりはしない。国の聖鍵に誓おう」
    ラディは差し出されたふたりの手を取る。
    「ありがとう、ヒルダ、ヤマト。持つべきものは友達、だね!」
    ラディはそう言うととびきりの笑顔で微笑んだ。
    「【聖鍵】は悪用されても失われても大変なことになる。みんなで頑張ろうね!」
    三人が頷き合って、話し合いが始まろうとしたまさにその瞬間―
    「失礼します!」
    乱暴にドアが開いてひとりの青年が姿を現した。ラディに仕える執事である。
    「どうしたの?」
    青年の顔色は蒼白だ。どう見てもただ事ではない。
    「大変なことになっています。詳しく説明している時間がありません」
    「……大変なことって?まさか『帝国』が?」
    「……帝国兵らしき者たちが突如侵攻してきました。国王陛下はご無事ですがまもなくこの城は落ちるでしょう。あちこちで火の手が上がっています。3人とも【聖鍵】はお持ちですね?」
    3人は少し戸惑い気味に頷く。
    「うん……持ってるけど」
    執事は何かを確認したように頷く。
    「窓からお逃げください。ラディ様のスペルなら問題ないでしょう」
    「……わかった。でも貴方もちゃんと逃げてね!ヒルダ、ヤマト、乗って!」
    <……具現<アルツァルシ!>翼よ羽ばたけ!暗い夜を切り裂いて!>
    ラディが素早く筆を走らせ、白い翼を持つ鳥を描くとそれが瞬く間に具現化され、形と命を持つ。
    その鳥に飛び乗って3人は窓の外へ消えた。
    晶月翠羽@絵仕事募集 Link Message Mute
    Nov 23, 2018 7:43:07 AM

    1話 襲撃

    #オリジナル ##FCSC #小説 #異世界FT #ファンタジー #一次創作

    あらすじ
    物語は魔術国家マギ・マグナから始まる―

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