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    嫌いな世界
    弱い自分が嫌いだった。
    何も出来ない自分が嫌いだった。
    守れる力のない自分が嫌いだった。
    こんな自分を見せつけてくる世界が嫌いだった。

    「こんな世界は嫌いです。」

    いっそのこと縋りたかった。
    こんな運命を呪った。
    もう嫌だと
    殺してくれと叫びたかった。
    俯くようにして言った言葉は取り返せない。
    泣きたかった。
    でも泣いたって戻ってくるものはない。
    これ以上弱音を吐きたくなかった。吐いたらきっと自分を許せなくなる。
    言葉を飲み込めば飲み込むほどに胸の中に沈んでいくものを感じる。
    彼女のことが好きだった。
    好きだったけど俺の軽率な行動が彼女を傷つけた。
    今思うとそんな行動をした自分をぶん殴りたい衝動でいっぱいだ。
    守りたかった。
    ただ守りたかっただけだった。
    俺の命よりも彼女の命が失われる方がよっぽどましだとその時には思っていた。
    でも泣いてる彼女を見て
    後悔し続ける彼女を見て
    そんな思考に走った自分を許せなくなった。
    あの時こうしていれば、ああすべきだったと後からあとから押し寄せてくる。
    傷ついていく自分を見て絶望する彼女の顔がしこりのように残っている。
    思わず手を握り締める。
    秋月さんはそんな俺を見ながら困ったように笑っていた。

    「良いんですよ。嫌いでも。」

    秋月さんはそんな俺を許すように言葉を言った。
    秋月さんの方がよっぽど辛い思いをしているはずなのに。
    乗り越えてしまう秋月さんが羨ましかった。妬ましくも思えた。

    あの日そんな風に勝手に決めつけていたのだ。
    なにも知らない俺は。


    ****


    日数年数を重ねてゆけばこんな嫌いな世界にも慣れるものである。
    今日の俺は生きて今日の世界が終わる。
    そしてまた明日の世界がまたやってくる。
    そういう繰り返し。
    自分の能力のせいでほかの人にわずかに影響を及ぼすことを知ってからは前向きに考えるようにした。
    彼女が笑うようになった。
    まだ俺を見ると罪悪感を抱いた表情をするが前よりはずっといい。
    秋月さんと一緒に組むことがあるせいか席の近い俺と顔を合わせることが多い。
    そのたびに少しだけ期待してしまう自分に情けなさを感じる。
    どんだけ純情なんだよ俺は。
    でもこれで良いんだと思う。
    仕方がなかったのだと。
    あの日助けなければ彼女は生きていなかった。
    助け方を間違えた罪はもう実感している。
    身の振り方を覚えた自分はあの時の愚かさを知っている。

    「弐方さん」

    恐る恐るというように話しかけてきたのは朝霧さんだった。
    自分がいうのもなんだがこの子は真面目すぎて大丈夫なんだろうかと見ていて不安になる。
    自信なさげででも誰かのために戦うような子。
    秋月さんと似ているようで似ていない。
    秋月さんは本当人が好きっていう人だから分かるけど、この子は違う。と思う。
    十文字さんに懐いているみたいでよく後ろをちょこちょこと付いて歩いているのを見かけたことがある。
    仕事こそ一緒にはなったことがないが今後あるとは思う。
    朝霧さんが話かけて来たのは書類の確認のためだった。
    いくつか修正を加えるだけで問題はなかったのでそれを述べると深々とお辞儀をしてきたので焦った。そこまでお礼を言わなくても。

    「朝霧さんは…」
    「はい…?」

    言いかけたところで切ってしまったので朝霧さんが不思議そうに見上げてきた。
    自分でもなにを言おうと思ったのか考えてなかったので自分で戸惑った。
    誤魔化すようになんでもないというが彼女の方が何かしたかとだんだん顔色が悪くなってきたのをみてやってしまったと思った。違うんだ、誤解なんだ。
    とりあえずなんでもいいから考えろ俺。

    「えっと、朝霧さんは何歳なんだっけ?」
    「…?21になります」
    「そ、そっか…」

    俺は馬鹿か。
    ほんのちょっと前に頼と同じ歳くらいだよなぁって思ったばかりだっただろうが。
    会話が浮ついてるのを実感して思わず頭を抱えた。

    「ごめん、実はなにも考えずに話しかけた」
    「い、いえ!大丈夫です」

    不安げにした表情をしていたが自分の失態をさらけ出すとちょっと考えたように止まったと思うとふんわりと笑った。
    いつも不安気なおどおどした感じのせいか笑った表情のギャップに思わずときめいたのは気のせいだ。気のせい気のせい。
    そこでふと聞いてみたくなったのだ

    「朝霧さんは嫌いなものがあったらどうする?」
    「え…?」

    ポロリと出た質問だったが、聞きたかったのはこれだったのかもしれない。
    朝霧さんは俺の質問の意図が分からないのかすごく悩ませてしまっている。
    こんなに真剣に考えてくれるとは思わず悪いことをしてしまったと申し訳なさが出て来たので謝罪しようとしたがその前に朝霧さんの口が開いた。

    「えっと、そのものによります…」
    「うん」
    「ダメなものはやっぱりダメですし、もしかしたら好きになるかもしれないものもあるかもしれないですし…うう、優柔不断すぎてすみません…答えになってないですよね…」
    「ううん、そんなことないよ」
    「なにか克服しないといけないものでもあったんですか?」

    そう言われて少しハッとした。
    いつの間にかそうしないといけないと思っていたのだ。
    秋月さんさえ嫌ってもいいと言っていたのに好きにならないといけないとなぜか思っていた。そうじゃないとおかしいだなんて。
    朝霧さんには詳しくは言わなかったからそういう返答だったのかもしれないけどどっちでもいいのだと言ってくれた。それが妙に嬉しかった。
    つい笑ってお礼を言うと朝霧さんはこっちの事情なんて分からないから余計混乱していたみたいだった。謝罪しながら戻ろうかというと落ち着いたみたいではいと返事をしてくれた。
    秋月さんはこんな俺を肯定してくれた。
    それでいいのだと。
    朝霧さんは否定も肯定もしなかった。
    それがとても心地よかった。

    嫌いな世界。
    でももしかしたら好きになれるかもしれない世界。
    そんな世界で今日も一日を殺してゆく。


    *****

    診断メーカーからでした!

    畔さんには「こんな世界は嫌いです」で始まり、「君は否定も肯定もしなかった」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば8ツイート(1120字程度)でお願いします。
    #書き出しと終わり
    https://shindanmaker.com/801664
    おととい Link Message Mute
    2018/06/24 23:04:32

    嫌いな世界

    小説なんて久しぶりすぎて色々おかしなところがありますが許してください!
    kinokoさん宅の朝霧さんお借りしております。尚ちゃん好きだっ!
    ##死霊

    more...
    作者が共有を許可していません Love ステキと思ったらハートを送ろう!ログイン不要です。ログインするとハートをカスタマイズできます。
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