/旅慣れない女性の手紙
バラック小屋の連なる町に訪れました。
人々が秩序など気にせず建てた小屋の群れはまるで迷路です。
建物の隙間に、猫のコロニーや鳥の巣を見つけました。
じき冬が来ます。この子達がどうやって冬を越すのか気になりますが、3日後にはここを発ちます。
渡り鳥のようだと言うと、少し笑われました。
また彼が撮った写真を送ります。
それでは。
/少女の日記
風景だけが写った写真と、短い手紙が届きました。
写真を見ても彼らがどこに居るのか、まるで分かりません。
日付はないですが、どうやら手紙の中の2人は秋の終わりに居るようです。
(それすら本当かは分かりません。)
ころころと景色が変わる2人の生活は、まるで物語の中の出来事のように感じます。
差出人のないこの手紙が、兄の消息を知る唯一の手段となりました。
今年も夏を迎えます。
きっと彼らが戻るなら冬だろうから、賭けはまた私の負けです。