28歳
アローラの富豪アリア家(父、母、兄泡沫、妹澪の四人一家)に長く仕える執事。アリア家使用人のリーダー格で主人から全幅の信頼を得ている。が、最初からそうだった訳ではなかった。
人との意思疎通が困難となる人魚化が進んだアリア家母の噂をどこからか聞きつけ、 彼女の世話役を買って出たのが10代前半の九里真だった。どこぞの馬の骨とも知れぬ少年を理由もなく使用人に迎え入れる訳にはいかず、断り続けていたがあまりの執念深さと熱意にアリア家父は折れ渋々彼を雇う。九里真の働きぶりは凄まじく、当時から使用人の誰よりも動き、振る舞いや心配りも丁寧。
博識で頭の回転も早く柔軟。主への忠誠心も確かなものだったのだとか。
そんな九里真は目的としていた人魚となったアリア家母の世話役を嬉々として引き受け、人魚を目の前にした時の興奮ぶりに変人扱いされていたが彼は人の目を何一つ気にしていなかった。
九里真は生まれて間もない頃から父母は居らず孤児であったが、その正体は翡翠時代から続く『人ならざるもの』の医療研究をする一族の末裔。翡翠ジュナイパーの血を引いているためか、弓術も扱えるが脚力を武器にした体術の方が得意。
確かに一族の末裔なのだが、彼は血を次の世代に継ぐ事は一切考えていない。
『人ならざるもの』の研究は完全に趣味として扱い、先祖の努力を腐らせないために医療研究記録はデータ化なり書籍化なりにまとめ、興味を持ったどんな者の目につくものにしようと動いている。
九里真の色違いの特殊能力は『血の記憶』。その力は戦闘向きではないが、彼の体内に流れる血から先祖の記憶をある程度辿ることができる。対象は基本自身のみ。稀にほんの僅かだが他人の血に触れることで過去を知る事もあるようだ。彼は幼い頃からその能力に目覚めた為、年若い頃から博識で両親を知らずに先祖を知る理由はここである。