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    コーチトレーナーになったエリトレの話② 夢に親友が出てきた。彼はコーチトレーナーの制服を着ている私を見て、可笑しそうに笑った。

    「何それ。僕の真似?」

     似合ってないよ。彼がくすくす笑う。
     久しぶりに親友の笑顔を見た私は、彼に近付いて、彼を抱きしめていた。
     夢なのに、彼の体温が伝わってきた。温かなそれを感じながら、私は肩を震わせた。

    「……馬鹿だなぁ」

     彼はそう言って、優しく私を抱きしめ返した。
     
    「君はエリートトレーナーでいるのが一番なのに」

     親友の手が、私の髪に触れた。

    「髪も染めちゃって。僕は黒い方が好きだよ」

     ……馬鹿なのは、分かっている。
     自分がどれだけ馬鹿で滑稽なのかは、よく分かっている……

    「……それ、でも。私は」

     お前の存在を、感じていたかった。
     お前の存在を、消したくはなかったんだ……

     私の目から涙が零れ落ちた。
     親友を抱きしめながら、私は嗚咽を漏らした。
     夢の中の親友はずっと私の背中を撫でていてくれた。



     それからも親友は時折私の夢の中に現れた。

    「髪、黒に戻しなよ」

     私を見る度に彼はそう言ってきた。私が頑なに髪色を変えずにいると、彼は呆れたような顔をした。

    「君は昔から頑固なんだから……」

     はあ、と溜息をついて、彼は私を見つめた。私を見つめる彼の目は悲しげだった。

    「僕に固執するのはやめてほしいな。僕はもういないんだから」
    「……っ!」

     一番聞きたくなかった言葉を言われ、私は思わず彼を睨みつけた。

    「……お前……私が、どれだけ……」

     私がどれだけ、お前を頼りにして、お前を拠り所にしていたのか、知らないのか。

    「…………」

     私は押し黙った。握りしめていた両拳が震え出した。

    「……ごめん。でも君は……分かっているんだろう?」

     そう投げかける彼の目はやはり悲しげだ。

    「僕は……君は君として、君の道を生きてほしい」
    「…………」

     私は彼から視線を逸した。
     親友の願いも、よく分かっていた。
     私が彼に固執することを、彼が望んでいるはずがなかった。
     頭では分かっていても、心は理解することを拒否していた。




     一番の相棒であるニドキングが一向に見つからず、焦りに駆られていた。
     そんな中、ある洞窟で一体のニドキングを見かけたという情報を得た。
     私は直ぐにその洞窟に向かった。
     洞窟の中は想定していたよりも険しく、必死に洞窟の中を進んでいった。ある程度進むと絶壁に突き当たった。
     この壁を登った先に、ニドキングがいるかもしれないのだ。
     そう思うと立ち止まってはいられなかった。
     躊躇わずに壁を登った。何度も落ちそうになりながらも必死に登って。
     あと少し──そう思った時、掴んでいた岩が崩れた。

    「……!」

     体勢を崩し、体が落下した。

     まずい……!

     全身を衝撃が襲って──私は意識を手放した。




     誰かが、私の名前を呼んでいる。
     私は目を開けた。
     私の体を抱き起こしている男性が、ホッとするように息をついた。

    「良かった。気が付いたんだね」

     男性──亡くなったはずの親友が、笑みを見せる。
     私は暫く彼を見つめて、辺りを見回した。

    「……ここは……?」

     辺りは一面黒く、暗いため何処なのかよく分からなかった。親友は私の問いかけには答えずに、ある場所を指し示した。

    「あっちに歩いていけば、君は帰れる」
    「……え……?」

     親友が指し示す方向は、微かに明るい光が差していた。

    「このままここにい続けるのは危ない。早く、帰るんだ」

     親友の言葉の意味がよく分からなかったが、いつになく緊迫した様子の彼に、自分に危険が迫っていることは理解出来た。
     私は立ち上がろうとして、私を支えている親友の腕が震えていることに気が付いた。

    「……お前も、一緒に……」

     親友を一人で残して行くなんて、私には出来なかった。しかし彼は頭を横に振る。

    「……僕は、行けないんだ。君だけでも、早く……」

     私だけが、行く? こいつを此処に残して?
     こんな暗くてよく分からない場所に……?

    「そんなこと、出来るわけないだろ!」

     私は親友の腕を掴んだ。
     帰れなくても、いい。私はこいつと一緒にいる。
     こいつを一人此処に置いていくくらいなら、私は……

    「……っ、馬鹿!!」

     私の決意は、親友の怒声に吹き飛ばされた。
     親友は私の手を振り払った。

    「……っ!」
     
     私は目を見張る。
     親友は私を睨みつけた。彼が怒る姿も、彼がこんな顔をするのも初めて見た。

    「君は、帰るんだ! 僕は君を……君の未来を奪いたくない。頼むよ……」

     彼の声は震えていた。
     彼は泣き笑いの表情を浮かべた。

    「……さようなら。どうか、幸せに」

     私は彼に手を伸ばそうとして、その手を握りしめて──彼に背を向けて、駆け出した。

    「戻ったら。髪、黒に戻しなよ」

     無我夢中で走りながら、そんな親友の呟きが聞こえたような気がした。



     目を覚ますと私の傍には見慣れた相棒の姿があった。

    「ニドキング……?」

     私はニドキングの腕の中にいた。
     ニドキングが心配そうに私を見つめている。

    「お前が……助けてくれたのか?」

     ニドキングは頷いた。ニドキングに会えたことが、彼が私を助けてくれたことが嬉しくて、ニドキングを抱きしめた。

    「ありがとう……お前にまた会えて、良かった……」

     ニドキングは優しく私を抱きしめ返してくれた。嬉しくて、でも何だか切なくて。私の目から涙が溢れ出した。

     壁から落ちて気を失っている間に、夢を見ていた気がする。
     その夢の内容は思い出せないが、何故だろう、胸が痛い。

     ──さようなら。

     誰かの笑顔が浮かんで、消えた。
     ニドキングの腕の中で、私は涙を流した。






     私の元から離れて洞窟で暮らしていたらしいニドキングは、私と再会してまた私の手持ちになった。
     私は染めていた髪を黒色に戻した。
     見た目を戻した私を見て、ニドキングは安心するように笑った。彼にはかなり心配をかけてしまっていたようだ。すまないとニドキングに謝罪して、彼に心配をかけないようにしよう、と固く決意した。

     ニドキングと再会してから、時折夢に出てきていた親友は私の夢に現れなくなった。
     彼の存在は、こうして次第に思い出になっていくのだろうか。
     そのことが寂しくて、悲しかった。

     ……でも。私は前に進まなければならない。

     ずっと眠っていたエリートトレーナーの服を押し入れから出して、袖に腕を通した。

    『君はエリートトレーナーが一番だね』

     そう言って笑う親友の姿が浮かんで、私も少し笑った。


     エリートトレーナーに戻った私は、あのコーチトレーナーの女性に会いに行った。
     髪型も服装も変えた私に女性は驚いていたが、ふふっと笑った。

    「今のあなたの方が素敵です」
    「……ありがとう」

     お礼を言って、ニドキングに会えたことを伝えると、女性は自分のことのように喜んでくれた。

    「折角ですし、ニドキングとバトルしたいです」
    「そうだな。私もバトルがしたい」

     女性はボールから、カイリキーを出した。

    「私のカイリキーと勝負してください!」
    「ああ。その勝負、受けて立つ!」


     出会いと別れ──それを繰り返しながら、私は生きていく。
     彼奴の分まで、これからも、私は……

    『うん。僕も、今の君の方が好きだな』

     バトル中に、そんな親友の声が聞こえたような気がした。
    キサラギ Link Message Mute
    Jun 29, 2020 10:47:28 PM

    コーチトレーナーになったエリトレの話②

    ①の続きです。死ネタなので苦手な方は注意してください。

    #ポケモン #小説

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