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    時待人 第一話「ようこそ、黄昏時に止まった街へ」アリス――それはあらゆる世界を駆け巡り、訪れた先で見たもの、聞いたものを物語にして書き、暇を持て余した女王クイーンに捧げる役職。


     今から綴る物語は、とても長くて欠伸が出てしまうかもしれない。それでも俺にとっては貴重な経験となり、そして忘れられない事件だ。


     時が止まった街、一人の女性、そして――
     アリスの一人である俺、ディウス・フェリメントが体験した長い、長い日々を今から語るとしよう。


    ――まるで世界に取り残されたような気分だった。

     

     事の始まりは次の世界へ渡り、到着した後の事である。目を開けると、オレンジ色に染まった街、眩い光。俺は今、夕方という時間帯でこの世界にやってきたと認識した。

     目の前に広がるは、煉瓦でできた道とたくさんの店が並ぶ大通りらしき場所。ここまでは色んな世界を渡ってきた俺にとって普通の光景、そう思っていた。

     けれど、その中で一つ違うと思った事がある。それは一体何かと言うと。

    「人が、動いていない……?」

     人がまるで氷漬けになったかのように動きがないのだ。ここはそういう世界なのか、と疑問に思ったが、まずはこの謎より、先にこの場所の名を知らなくては。

     俺はアリスにとって重要な物となる”本”を開く。この本は物語を書き、女王に送る役目だけではなく、その世界の場所を知らせてくれる役目も担っている不思議な本だ。

    「この街の名は……”ガルデン”というのか」

     不思議な状態な街・ガルデンを調べるべく、煉瓦の道をゆっくりと進む。もちろん、置物と化した人達を避けながら。

     大通りを抜け、さらに複雑な小道を進んで行くと、小さな広場へと辿り着いた。住宅に囲まれた中にぽつんとある広場には、水が噴出し止まった噴水があった。試しに水に触れてみようと手を伸ばしてみると、水はすくえた。でも噴水の中にある水は動いていないという不思議な感覚だ。

     広場にあったベンチになんとなく座ってみる。夕暮れの空を見上げ、ここへ来た時に思った事をつい零す。

    「なんだか、世界に一人取り残されたような、そんな気分だな」

     昔、そんな話を本で読んだ。世界に誰もいなくて、物語の主人公がただ一人取り残され、そして一人で死んでいくという話を。本にあったことを体験できるなんて、読んでいた当時はきっとそう思わないだろう。

     座ったまま、周りを見渡してみた。人や動物たちがその時動いてたであろう姿とポーズのまま止まっている。生きている人達が固まっていると不気味悪く感じる。

     誰か一人でもいい、止まっていない人間はいないのか。そう思い俺はベンチから立ち上がり、広場を後にして再び街を歩き続けた。

     だが歩いても歩いても、動いている人は誰一人いない。いるのはマネキンのような人。こんな中で物語を書くのかと思うと、少し心がやられそうだ。

     適当に道を歩いていたら、目の前に少し年期の入った店が見えた。何故かその店だけふと目についてしまった。小道を抜けた先にある、裏路地に存在していたから気になったのか、それともそこに人がいると思ったのか。

     試しにその店に入ってみようと思い、店に近づく。ショーウィンドウにあるのは少し古びた時計がずらりと並んでいる。置き時計、掛け時計、そして懐中時計といった豊富な品揃えで出迎えてくれる。もしかしてここは時計屋だろうか?と思い店の名前を確認しようと看板を見る。店名は「デンメルグ」。そして横に”時計屋”と小さく書かれていた。

    「ようこそお客様、時が止まった中よく買いにきてくれたねえ」

     ぼうっと眺めていた俺はすぐさま後ろを振り向いた。そこにいたのは動いている人だった。いや人は動いているものだが、ここまで誰一人動いている人間を見かけなかったせいで、そんな感想しか出てこなかった。

    「あの、生きてるというか、動ける人、ですか?」

     失礼な質問だとわかっている。けれど念のため確認が取りたかったのだ。今目の前にいる人物は夢ではないかと。

    「もちろん、動けるとも。というか、この街で唯一動ける人だと思うよ?
     この街で唯一動けるという女性はにっこりと笑う。少し黄色かかったシャツとどこかで見た事がある、和風のロングスカート。そして肩には男物の偉そうな人が着てそうなコートを羽織っていた。奇妙な服装で、一度見たら忘れられない、この街と同じで不思議な人だ。

    「私、そこの時計屋の主人を務めているラエタって言うんだ。君は?」

    「俺はディウス。ここに来たばかりだ」

    「久々の客としてもてなそうじゃないか。さあさあ、お店へどうぞ」

     半ば強引に店へ入らされたが、今は少しでも情報が欲しいのでここは大人しく従うとする。店主のラエタから何か聞けたらいいのだが。

    「それにしてもよくここへ来れたね?君は何者なのさ?」

    「…旅人だ。そう思ってもらえたら今はそれでいい」

     品物が並ぶ店の奥にある部屋へと通された。そこは大きなテーブルと椅子だけある部屋だった。案内された後、ラエタは別室で手際良くお茶の準備をし、先ほど通された部屋へと運び始めていた。

    「旅人で、しかもこんな”時が止まった街”にくるなんて大したもんだよ。魔術師とかそういう類い?」

    「半分当たりといったところだと思う」

     テーブルに出されたのは、不思議な香りがするお茶とそしてクッキーらしき形状の焼き菓子。俺はまずお茶を啜った。お茶の味もまた不思議な味がする。呑気にお茶を啜ってる場合ではなく、先ほどラエタが言っていた”時が止まっている”について問う。

    「さっき言っていた”時が止まっている”とはどういう意味だ?」

     ふう、と一息ついてラエタは答えた。

    「…多分ここまでの道のりで見ただろう?そのままの意味さ。この街は黄昏の時で突然止まってしまったんだ。私一人だけを除いてね」


     魔術や機械物が盛んな中、何一つ昔から変わらない街・ガルデン。人々が行き交い、大通りの商店も人で賑わっていたりと、比較的平和な街だった。だがある日突然、街全体の時が止まってしまった。

     大通り、小道、広場。そして学校などあらゆる建物を駆け巡った。でも誰も彼も時が止まったまま。物はそのまま動かせたり、食べ物は調理もできるが気付いたらまた同じ場所で物が復活しているという不思議な現象の中、ただ一人だけこの静かな時間を過ごしてきた。

     何日経ったか、あるいは何年経ったのか。最近はもはや時間の概念でさえ気にする事も無くなったと彼女は静かに語った。

    「いやあ、誰かと喋るのって久々で嬉しいよお」

    「そりゃどうも…」

     わざわざ丁寧にこの街の状況を話してくれたので、俺も自身が何者かをラエタに話す。アリスという役職、様々な世界を渡り歩き物語を書くこと。理解してくれたかはわからないが、話している間は興味津々に聞いていた。

    「すごいねえ!そんな事ができるなんてさ!」

    「そうでもないけどな」

     また一口茶を啜り、一息つく。思えば今まで自分が何者かというのを人にあまり話したことはない。とりあえず作家で旅をしているという事でずっとごまかしていたからだ。

    「じゃあ、もしかしてこの街だと話が書けないのでは?時が止まってるし」

    「今日ラエタと出会った事は書ける。それを女王に送って大丈夫だったらここから離れることになるが」

     少し寂しそうな表情で、そっかとラエタは呟いた。本当はここの原因を解決してあげたいのだが、俺にはやるべきことがある。

    「というわけで、今から俺は話を書く。邪魔はしないで欲しい」

    「うんうん、おっけー!私は今日の食料を確保してきます。行く前にせめて食べて行って」

    「あ、ありがとう…?」

     鼻歌まじりでラエタは食料を確保しに店を出た。その間、俺は今日あった事を本に書く作業に入る。街の特徴、時が止まっていること、そして一人の女性に出会ったこと。これだけあれば十分だろう。書くものが決まれば早速書く。魔法のペンと言われる”シュライト”で全てを書き綴っていった。

     書くのに終わりが見えてきた頃にラエタが戻ってきた。そして彼女は早速調理に取りかかっていた。彼女の料理は一体どういうものなのかわからないが、食べられる物が出てくるとありがたいと祈る。

    「さて、女王に送るか」

     書き終わった後は送るためにに本を一旦閉じる。これで女王の所へ送れた、そう思った。のだが――
    「本が光らない…だと?」

     送る時はいつも本が光り、そのまま書いたものが女王に送り込まれるはず、がなんと本が光らない。試しに本を開けてみると、文章はまだ本に記されたまま。送った後は文章丸ごと消える仕組みになっているはずなのだが。

    「まさか…」

     嫌な予感がし、俺は非常用で女王と会話ができるという魔術を展開してみた。非常用なので使える回数は限られていると聞いているが、まさに今使う時がやってきた。必死で羽ペン型魔法具・シュライトを本の上で書き走らせる。術式が完成し、発動を試みたが通じるどころか何も起こらなかった。

    「通じないなんてそんな…」

     慌てる頭の中で思いつくのは、恐らくここは”何か”に守られ、それによって外部との連絡が遮断された状態になっているのかもしれない。そうなると、次の世界へ渡ることすらできないこととなる。

    「ということは、やるべきことは一つ、か」

     隣の部屋からいそいそと料理を運んでいくラエタに俺はあることを提案してみた。

    「なあ、ラエタ。ラエタは、この街の時間を動かそうと思わないか?」

    「ええっ!?きゅ、急にどうしたの!?」

     慌てるラエタに俺は先ほど起きた事を軽く説明した。説明を静かに聞いていたラエタはこう言った

    「そうだよね、次の世界すら行けないとかだったら女王って人にげんこつ食らっちゃうかもだもんね…」

    「そこかよ」

     自分ではなく、他人の心配がまず出てくるとは。マイペースな人なんだな、と心の中でひっそり思った。

    「というわけで俺は、この街の時を再び動かすために、この街にしばらく滞在する。…それで、原因を調べる調査にラエタも協力してほしいんだが…難しいか?」

     こんな提案に迷惑がられるだろうと思いきや、彼女の返答は意外なものだった。

    「いいよ!私もね、この時が止まったままの状況は面白くないし、そろそろ動かしてあげたいと思うしね」

     彼女は快く承諾してくれた。この街で唯一、この場所を知る者がいるのはそれなりにありがたい。

    「その前にご飯を食べよう!せっかく作ったから、熱いうちにめしあがれ」

     真剣な話なのに、ご飯を勧めるとは。でも、せっかくこの世界にきたのだ。腹ごしらえは…大切なものだと思うので、いただくとしよう。


     食事が終わり、俺はラエタと共に街を歩くことにした。この街がどういう道になっているのか、そして怪しい場所があるのか。調査を兼ねて、ちょっとした散策へ赴く。

    「本当に時が止まっているんだな」

    「そうだねえ…。私もびっくりしたけど、今は慣れちゃったよ」

    「慣れてどうするんだ」

     そうだよね、とラエタは小さく返し少し悲しげな表情をしていた。

    「どうして私だけが取り残されてしまったんだろう…ってちょっとだけ思っちゃうんだよね」

    「やはり、寂しいのか?」

    「…だって、誰も動かない、喋らない。まるで一人取り残された、そんな気分になっちゃうんだもの」

     その感想は俺がこの世界、いやこの街にやってきた時に思った事だ。俺が来なければ、この人は本当に一人ぼっちのままだったのだろう。

     重苦しい空気になりかねなかったので、俺はここで違う話題に切り替えることにした。

    「そうだ、一つ思ったんだが、この街に繫がる他の場所って行けないのか?」

     気になっていたこと。それはこの街だけが時が止まっているのだろうか、と。街の外はここと同じようになっているのだろうか。

    「残念ながらね、この街からは出られないんだ。見えない何かに遮られているようでね」

     外への助けも求めることもできないとは、まさに隔離された世界だ。ただ、街の外の人達はこの街をどう見ているのだろうか?そこも気になったが、今は置いておくとしよう。

     煉瓦道の大通りを歩いているうちに、やがて大きな広場に辿り着く。小さな広場にあったものとは比べものにならない、大きな噴水。所々に存在するベンチ、イス、テーブル。そして次に目につく建物は――
    「あれは時計台か…」

     大きな時計盤に、小窓が5つ。恐らく時間になったら仕掛け物が動く時計台なのだろう。

    「ああ、あれね。あの時計台はある時間になると、からくり人形が出てきてちょっとした劇を見せてくれるんだ」

     針は午後6時前を示しており、時が止まっていなかったらきっと人形達による劇が見られたかもしれない。

     俺はなんとなくこの大広場に来てから、時計台そのものがなぜか気になって仕方ない。時計台から放たれる”何か”が俺を呼んでいるようにも思えた。

    「ラエタ、あの中って入れるのか?」

    「入れるけど、私が入った時は何もなかったよ?」

    「俺はそこが気になる。何かが呼んでいるような…そんな気配がする」

     そわそわする気持ちに従うまま、俺達は裏手にある作業用の出入り口へ向かう。扉を開けようと出入り口のドアノブを引こうとする。が、鍵がかかっていた。

    「鍵が必要か…」

    「それはご安心を。私が持ってるんだよねえ」

     ラエタは白いコートの内ポケットから鍵を出し、自慢げに出した。彼女は以前、時計屋ということでこの街の偉い代表者に時計台の鍵を渡されたという。取り出した銀色の鍵は夕陽にあてられ、鋭く光っていた。早速鍵を鍵穴に入れ、回す。のだが、扉が開く気配がない。

    「おっかしいなあ…前開いたのに。鍵もこれで間違いないというのにさ」

    「試しに俺が」

     ラエタから鍵を受け取り、再び鍵穴へ。すると、鈍くがちゃりという音がした。

    「ええー!なんでディウスの時は開くの!?」

    「力の入れ加減じゃないのか?」

     とりあえず開けた理由はそういうことにしておいて、改めて扉の中へ入ることにした。そして、俺達が見た時計台の中は――
    「な、何これ!?時計台の中はこんなんじゃないぞ!?」

     目の前には時計台の中とは思えないほどの異空間が広がっていた。異空間の中は一面真っ黒なのだが、黒の中に星のような輝きが辺りに散らばっている。

    「これは俺でもわかるぞ、異常すぎる空間だ…」

     まずは試しに一歩を踏み出す。すると、黒い地面から波紋が広がっていく。それ以外、何も起こらなかったのでとりあえず中へ進む。

    「ほ、ほんとに進むのかい?」

     おどおどと心配するラエタ。だがこのまま進まないと何も始まらないし、それにここに何かがあるかもしれない。

    「もちろん。じゃないと手がかりを掴めなくなるからな」

     ラエタも俺の後ろに続いて、この異様な空間へと踏み込む。


     この先にあるのは、街の時を止めた原因が潜んでいるのか、あるいは――
           

    時待人第2話へ続く…
                                                  


    空鳥ひよの Link Message Mute
    Jul 17, 2018 8:03:49 AM

    時待人 第一話「ようこそ、黄昏時に止まった街へ」

    時待人の第1話になります。
    キャラ紹介はこちら▼
    https://www.uchinokomato.me/list/show/21856

    #オリジナル #創作 #ファンタジー

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