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    時待人第二話「時計台で待つ者」 目の前に広がる異様な空間、果てしない黒の空間。俺達は今からそこへと足を踏み入れる
    「ええ…これ大丈夫?」
    「進んでみないとわからないだろうそういうのは」
    「いや、そうなんだけどさあ…」
     怖気ついたラエタは、俺の後ろでおどおどと果てしない空間を覗き見る。
    とにかく奥が気になるので、まずは最初の一歩を俺から踏み出した。
    「…普通の地面だ」
     感触はいつも歩いている、固い地面。けれど一つ違うのは、足を踏み入れた瞬間に足から波間をうっていた。
    水でも張っているのかどうかわからないが、歩いても大丈夫そうなのでそのまま進む。
    「ま、待ってってー!」
     追いかけるようにラエタもこの空間へ足を踏み入れる。
    「あ、そうだ。戻れなくなったら危ないから、扉の光は見逃さないようにしよう」
     万が一、迷ってしまったら危ないしおまけに何が起こるかわからない。
    進んだとしても、まずは扉の方向を見失わないように時折後ろを振り向くことにした。

     あれから数十分は過ぎた。歩けども、歩けども、何も現れないしおまけに何も起きない。
    異様な静けさを保ったまま、俺達は奥へ奥へと進んでいる。
    「このまま何も起きなかったら、一旦戻ろう?」
    「…ん、それもそうだな。無駄に体力消費して終わるだけだしな」
     あともうちょっと進んで何もなければ引き返そう、そういう話になった。
    正直、ここが何もないというわけではなさそうだと思っているし、そして時計台だけがまるで”時が止まっているのを逆らっている”ような、
    そんな雰囲気を纏っているように思える。歩けば波打つ地面、そして時々上の空間も波打っている時があった。
    ここだけまるで時が止まっていない、そう思えてしまうのだ。
    「ここはまるで…生きているような…」
     ぽつりと言葉を漏らしたその時だった。急に目の前から何かが落ちてきた。落ちてきたそれは、きらりと光った。
    光った物は俺の掌に着地し、その姿を現す。
    「これは、ネジ?」
    「うーん、これって時計とかで使うパーツかな?」
     時計店の主が曖昧に言うのもどうかと思うが、大きさからにしてそれっぽく見える。
    「なんでディウスが持っているのさ」
    「急に上から降ってきたんだ」
     二人して天井らしき場所を向く。だがそこには信じられないものがあった。
    「…人の顔?」
     一瞬心臓が止まりかけた。黒い空間からひょっこり現れたのは、人の顔。ラエタも思わず小さい悲鳴を上げていた。
    「な、なななんなの!?!?」
    「…!よく見ろ、あれは人じゃない」
     顔のラインにわずかな繋ぎ目の線が見える。これはもしかして――
    「人形か…」
     人ではなく人形だったので、俺は少しほっとした。これが人間だったら、ホラーな展開になっていただろう。
    だが落ち着くのもつかの間、本当の恐怖というものはこれからだった。
     人形の顔は徐々に下へ下へと下がっており、ついには体いや全身そのものが見えて俺達の前へ着地した。
    その人形に続くかのように、また一人ひとりと着地していく。踊り子の衣裳やピエロ、そして小人のような恰好をした人形達が続々と集結していった。
    「なんだこれは」
    「ここまでくると怖いというか、やばいというしか」
     人形達は手に持っていたはさみやナイフといった凶器を携えていた。これはもしかしなくても、俺達を狙っているのだろう。
    じりじりと人形達は俺達の距離を詰めていく。やはり戦う事は避けられないということか。
    「仕方ない、戦うとしよう」
     いつも使っているペンを呼び、それを武器の形にしていく。三角の形をした楯のような武器を生成し、右腕に装着する。
    戦う事は苦手だが、今は自分の命を守らなければならない。
    「ラエタ、とにかくお前は逃げ…」
     最後の言葉を言う前にラエタはすでに戦っていた。銀色に鈍く光る2つの扇子をあおいでは、人形達をなぎ倒していった。
    「こっちから倒していった方が早い!」
     その姿は生き生きとしており、俺より戦うの得意なのでは?と思うほどだった。
     ラエタの風を発生する攻撃で倒していきつつ、俺達は出口がある扉へと全力で走る事にした。
    とにかくここから出なければ、と判断したのはいいが、人形達は次から次へと出没する。
    正直キリがなく、戦う体力は目に見えて減っていった。
    「くっ…これは扉にたどり着けるかどうかって所だな」
    「無駄口叩いてないで、さっさと逃げる!」
     ようやく扉との距離がわずかになった。ここからは全力でダッシュしつつ、敵を追い払う。
    だがあの人形達は光を見ると後ずさって奥の方へと逃げていく。もしかしたら光に弱いのかもしれない。
    「扉だー!早く早く!!」
     黒い空間から黄色い光が溢れる世界へ。俺達はあの空間から逃げれたのだった。
    「あー…もう二度とこんな目に遭いたくもない」
    「あはは、まあ疲れたもんねー」
     安心した気持ちで扉を閉めると、突然頭の中で女性のような声が響く。
    ラエタの独り言かと思ったがそうではなかった。そう、この声は違う、気がする。

    ――幸せになることは許されない
    ――どうして、どうしてなの

    ――許さない


     悪意の籠った声だった。そしてぼんやりと目の前に黒い影に覆われた人物がいた。
    「あんたは、誰だ?」
     絞り出せた声で目の前にいる人影に問う。
    『許さない』
     また、あの言葉だった。どうして許さないと言うのか。この街の時を止めた原因と何か関係があるのだろうか?
    『遠くから来た者よ、なぜ君はこの世界の時を動かす?』
     何故?だって動かさないと、この街は死んだようなものだし、何より彼女が一人なのは可哀想だろう。
    『どうして罰を解こうとする』
     罰?それは誰に対しての罰なんだ?
    『もうここには近づくな』『帰れ』

     追い払うかのような光に包まれ、俺の意識はそこで戻った。
    気付いたら、ラエタが俺を揺さぶっていたのだ。何度呼びかけても上の空だったらしく、心配になっていたそうだ。
    「急に遠くを見て、ぶつぶつ言いだしたから怖かったんだよー!」
    「それはすまなかった…」
     さっきのは夢?それとも…と思いつつ、俺は時計屋へと戻る事にした。ラエタも一旦帰ろうと言う始末でもあった。

     あの時計台で見た人物は何者なのだろうか?
    声からにして女性だったが、何を許さないのか、誰に罰を与えているのか。
    時計台は今後、もう少しだけ探索する必要がある。また彼女に逢わなければならない、そんな気がして。




     時計屋に無事戻る事ができ、ようやく一息つくことができた。
    ずっと歩いていたり、はたまた走ったりと体力に自信がない俺にとっては辛いものだった。
    住居スペースの客間にあるソファーに座り、うなだれる。とにかく疲れた、そんな感想しか出てこない程。
    「はあ…。発見はあったが、もう疲れた…」
    「まあまあ、とにかく今日?は休もうそうしよう!」
     今日という言葉に疑問符がついていたが、そういえば今は何時なのか、ここにきて何日経っているだとか意識すらしなくなっていた。
    そう思い、なんとなくズボンのポケットから懐中時計を取り出してみた。が、この時計はここに来る直前に壊れていた事に今思い出した。
    「どのみち時間なんてわからないか」
     そう呟くと、ラエタは隣でなぜか自信に満ちた顔で俺を見ていた。
    「時間がわからない?ふっふっふ…実はわかるものがあるのさっ!」
    「…え?」
     少し驚くと、ラエタはいつも着ている白いコートの内ポケットからある物を取り出す。
    「ディウス、これ貸してあげる」
     手のひらの上に少し重さを感じた。金色に輝く、懐中時計。蓋には花のような模様が刻まれており、さらに美しさを際立たせていた。
    「これ高いやつでは」
    「いいよいいよ、それは私自身だし気を遣わなくていいんだから」
     私自身?それは一体どういうことなんだろうか。ラエタはさらに言葉を続ける。
    「私の正体はね、その懐中時計なんだ」
     それからラエタは淡々と人になった理由を語った。
    どういういきさつで人になったかはあまり覚えてはいないらしいが、魔術師に頼んで人にしてもらい、時計屋の店主として過ごしているという。
    「昔の事はぼんやりとしか覚えてないし、人になろうとしたときの記憶もぼんやりとしか覚えてないのよね」
     遠くを見るような、そんな目をしながら彼女は語った。
    「でも、そんな大切な物を俺なんかに…」
     ラエタ自身を俺が預かるというのもなんだか危ない気がしてならない。もし壊したら、彼女に何か起こるかもしれない可能性も秘めている。
    「いいんだよ。私はディウスを信用、というか信頼してもいいかなって思っているから」
     そう微笑んで、俺に懐中時計(ラエタ)を渡す。彼女がそう言うならば、そう望むのならば。
    「わかった…この時計は借りる事にする。なるべく大事にはしておくが…」
    「それでこそ、時計としての私は嬉しいよ」
     にっこりと笑い、ラエタは続けてこう説明した。この時計だけはなぜか時が止まっていないということ。
    つまり、今が何時だとかはこの時計で確認ができる。彼女は俺が来る前からこれを目安として、1日が経ったか経ってないかというのを確認していたという。
    「だからこれで何時だとかは一発でわかっちゃうんだよ」
    「なるほどな…」
     時計の針は夜の8時を示していた。だがこの世界では相変わらず夕日に染まっている。
    「なんだか疲れた…寝たい」
    「それだったら部屋を用意するよ」
     ラエタは着いてきて、といい俺を2階へと案内する。ラエタの部屋の斜め前にある一つの部屋。
    扉を開けると、そこには机と椅子そしてベッドが置かれていた。
    「この部屋を使って。しばらくここにいるのならば部屋は必要でしょ?」
    「なんだか色々すまないな」
     ここに来てから、ラエタには頼りっぱなしな部分が多い。ますます早くこの街の時を動かさなければと思ってしまう。
     ラエタが部屋から去り、俺は早速机に向かう。今日あった事をまず記録しなければならない。
    時計台で出現した謎の人形、黒い空間、そして黒い影を纏う謎の女性。何故ここを中心に起きているのか。
    そして彼女が言った「罰」は、「時を動かすな」という意味は。
    「もう考えるのはよそう…。明日にしよう」
     そう言い、俺は机に突っ伏した。ぼんやりとした目と意識の中、先ほど借りたラエタの本体とも言うべき懐中時計をじっと見る。
    美しい時計、ただそれだけしか言えない程の美しさだ。今まで色んな時計は見てきたが、これほどまでに美しい時計は初めて見た。
    「時計が美しいから、ラエタは美しい女性なんだな…」
     段々瞼が重くなってきた。時計が刻む針の音を子守唄代わりにし、そのまま眠りの世界へと落ちていく。
     明日はどうしようか、と思う間もなく。






     どうして気づかないのか
     どうして忘れてしまったのか
     どうして罪を忘れたのか

     貴女がなぜ一人なのか

     もう一度思い出せ

     何故、存在しているのかを






     時待人 第3話へ続く…














    空鳥ひよの Link Message Mute
    Jul 18, 2018 11:56:07 AM

    時待人第二話「時計台で待つ者」

    第2話になります。次回第3話は8月~9月予定です。
    第1話:https://galleria.emotionflow.com/43641/453947.html

    #創作  #オリジナル  #ファンタジー

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