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    時待人第三話「鐘は鳴り響き渡り、君は消える」 眠りから覚め、ゆっくりと身を起こす。どうやら書いた後にそのまま机で寝ていたようだ。
    「身体が、痛い…」
     机に突っ伏して寝ていたせいか、身体の節々が痛い。前日、活発に動いたのが身体に響いたのであろう。
    「…あの頃よりは健康なんだがな」
     ぼんやりとした意識の中、ふと昔を思い出す。けれど今はそれを振りかえる時ではない、と思い顔ばしっと叩く。
    頬がじんわりと痛いが、目を覚ますのにちょうど良い痛さだ。そうして我に返り、目に入ったのは机の上に置きっぱなしの懐中時計。
    「危ない危ない…。無くしたりしたらラエタに怒られる」
     ラエタ自身そのものと言える懐中時計は、窓辺に差し込む光に当てられ一層美しさを際立っていた。
    それを手に取り、時間を確かめる。針は午前の九時十八分を指していた。
    「これは寝過ぎたな」
     きっとラエタが心配するだろうと思い、とりあえずシャツだけを着替え、そして下のリビングへと向かった。
     一階のリビングを覗くと、テーブの上にぽつんとと朝食が置かれていた。そして一緒に置いてあった置手紙を手に取り、ぼんやりとした目で読む。

     ――ディウスへ
     ちょっと外へ買い物に行ってきます。
     買い物から戻ったら、洗濯物干すから手伝ってよー!
     ラエタより

     とても平和的な内容で少し気が抜けた。洗濯物を干す手伝いまでやらされるとは、思いもよらなかった。
    「まあ、ここに居させてもらってるし手伝いはしておくもんだよな」
     手紙を再び机に置き、そして席に着いて朝食を摂る。今日はスクランブルエッグと軽いサラダ、そしてパンとスープ。
    それらを食べながら、俺は手伝いをした後どうするかを考えていた。
     時計台で出会った謎の女性の影。きっとあの人が鍵を握っているのは間違いないだろう。
    だが、ずっと繰り返している罪やら罰やらという物騒な言葉。あれは誰の事を言っているのか。
    少し考えていたのだが、この街の時を戻すには恐らく彼女が言う罪と罰を許さなければならないであろう。
    それを許す為にはどうしたらいいのか、色々聞きださなければならない。そして何故、時を止めたままにしたがるという理由もだ。
    ガルデンの時が止めたままでは、俺がこの世界から出て行く事ができない。それにラエタがここで一人ぼっちで、というのも辛いものがある。早い所、どうにかしなければならない。
    「時は、進まなければならない。何であろうとも」
     時計台の彼女は動かすな、と言われたが、止めたままではいけないのだ。本来の時に戻さなければいけない。
     それを過去、俺に教えてくれた人がいた。その人がもしここにいたら同じことを言うだろうし、きっと俺と同じ事をするだろう。
     ゆっくりと摂っていた朝食を食べ終え、台所へと向かい食器を片す。
    窓から差し込む光は今日も明るく、そして影を濃くしていく。だんだんと見慣れてきた風景を見つつ、部屋に戻り、昨日書きそびれた事をメモに書いていった。

     店の扉が開ける音がした。どうやらラエタが帰ってきたようだ。
    どたどたと騒がしく、住居スペースへと迫ってくる。
    「たっだいまー!」
    「…おかえり」
     どっさりと荷物を抱えてきたラエタは、それをテーブルに置き、疲れたのか椅子に座る。
    「大量大量~」
    「そういえばこの食糧ってどこから持ってきてるんだ?」
     時が止まった街でどうやって食糧を得ているのか、それは少し疑問に思っていた。しかも水とか色々使えるのも疑問だった。
    「あーそれね、食糧取っても大丈夫っぽくて。しかも新鮮なままね」
     ラエタによると、食糧を取っても一定時間過ぎれば元に戻るという。
    ちなみにお代は一応置いていってるらしいが、こちらも一定時間過ぎれば財布にお金が戻ってくるそうだ。
    水等についても、何故か時計屋だけ使えるらしい。理由はわからないが、聞いているとラエタだけの為にという仕様にしか思えないくらいだ。
    「なんでだろうねー時計屋だけってのも変だよねー」
     ここに何かあるのだろうか?けれど、そのような気配や物は見当たらない。
    「とりあえず、洗濯干すの手伝ってよねー」
    「はいはい…」
     考える暇もなく、ラエタと共に俺は洗濯物干しの手伝いをすることにした。
     洗濯物を干すという事自体久しぶりで、俺は慣れない手つきで黙々と干していった。別に洗濯をしないというわけではないし、着替えも持っている。ただ、世界を渡り過ぎて、どのタイミングで洗うか等を忘れがちという事なだけである。
    「ディウスってちゃんとした生活してないよね…」
    「まあ、色んな世界渡ってる――いわゆる旅人ってやつだからな」
     ふらふらとした生活だが、一応女王クイーンから収入をもらっている事には違いない。物語を一つ送ると、報酬を得る事ができる。その報酬は、その世界で使用する通貨など様々だ。
     俺は基本、その世界で使える通貨を報酬としてもらっている。他のアリスは、魔術だとかそういった力を得る奴らが多いと女王が随分前に言っていた。
    「でもいいなあ、私も旅に出てみたいものだよ」
     遠くを見るような瞳で、そして寂しげな表情を浮かびながらラエタは言った。
    「この世界の時間が動き出したら、きっと旅にでも出れるだろう」
    「…そうだね。その時になったらまた考えてみてもいいかもね」
     旅の話をしただけでしんみりとした空気にしてしまった。なんだか悪い事をしてしまった、と思い俺は話題を変えようとしたその時、ラエタから違う話題を切り出してきた。
    「あ、あのさっ!ディウスの言う、アリスって改めて教えて欲しいんだ!結構謎な感じがして気になってるんだよね」
    「アリスの事か…」
     アリス。それは遠い遠い世界に住んでいる”女王”に捧げる物語を書く者。それを行なう者は百人未満という噂である。
     そして中心人物となる女王は謎に包まれており、ある風の噂では不老不死、あるいは強大な魔力を持つ者、とアリスの中ではひっそりと伝わっている。
    「そういえば、ディウスは自分以外のアリスに会った事あるの?」
    「ある。といっても、数人しか会ってないけどな」
     基本、アリス同士で鉢合わせするのはあまりよろしくない。物語がかぶってしまって、女王の評価を下げるだけ、とアリス達の中では暗黙のルールとしている。けれど、あえて会いたいという変わり者もいるらしい。
    「へー…あんまり会っちゃいけないとか厳しいねえ。そうだ、ディウスはなんでアリスになったの?やっぱり話書くのが好きだから?」
    「それもあるが、俺はある人から受け継いで欲しいと頼まれたのがきっかけ…だな」
     病弱で、将来死ぬ事が約束されてたあの頃。突然目の前に現れて、アリスにならないか?と誘われたあの日を鮮明に覚えている。師であり、尊敬する人物として刻まれているあの人を。
    「師匠なる者に拾われて…って、ディウスは昔病気してたの!?」
    「ああ。しかもいつ死んでもおかしくはないっていうやつ」
     わたわたと慌てながらラエタにごめん、と言われたが、謝る事はないしそれに俺は今、こうして生きている。
    「アリスになった時にその病気は取り除かれて、こうして元気に生きているんだ。それに俺は、アリスになった事は後悔していない」
    「…そっか。なんだかそんなディウスが羨ましいよ」
     まただ。悲しげな表情を浮かべている。ラエタは何か、悲しいものを抱えているのだろうか。それとも、今の街の状態が辛くてそうなっているだけなのだろか。
    「なあ、ラエタ。ラエタはなんでそんな悲し…」
     俺の言葉を遮るかのように、遠くで鐘がけたたましく鳴り響いた。その音は恐らく、時計台の鐘。街の時は止まったままなのに、何故鐘だけが動くのだろうか。
    「もしかして、あの人の仕業か…!」
     時計台がある方面へ睨むと、時計台のてっぺんに人が立っていたきっと昨日遭遇した、あの女性に違いない。
    「そっちから姿を見せるなんて、な」
     あの人影を睨む。この人物こそが、街の時を止めた張本人だろう、と。
    「やはりもう一回、時計台へ向かわなければならないか」
     待っている、と言わんばかりに鐘はまだ鳴り響く。早速ラエタと共に向かおう、そう思っていた矢先だった。
     ラエタはずっと時計台をぼんやりとした目で見つめている。明らかに様子がおかしい。 
     「ああ、もうそんな時間なのね…」
     ふらりと、ラエタは時計台の方面へと歩いていく。動いても、彼女の視線は時計台へとまっすぐ見つめている。
     「おい、ラエタ!」
     止めようと思いラエタの肩を掴もうとしたその時だった。今さっきまでいたラエタが霧のようにいなくなった。
    「なっ…!」
     つかみ損ねた手には何も感触が残らなかった。さっきまでいた人がいなくなるなんて、とただただ驚くばかりだった。
     とにかく冷静になれ、と心の中で唱える。もしかしたら、ラエタが消えたのはあの時計台の彼女のせいかもしれない。
    「でもなぜラエタを…?」
     この街で唯一動ける人物だからなのだろうか?でもそれにしては決定的な理由としては薄すぎる気がする。 
    「いや、待てよ」
     さっきラエタと話していた事や、ここに来たばかりの事を思い出す。
     何故か時計屋だけ、水や火元が使える。そして物を取ってもいつの間にか戻ってくる。全て彼女の都合のいい事ばかりだ。
    「まさか、時が止まっている原因は時計台の人だけではなく、ラエタも何か関わっているって事か…?」
     ラエタは懐中時計。何かしらのきっかけで人になっているし、時に関する力が働いている可能性もなくはない。 
    「行こう、時計台へ」
     時計台にこの事件を解く真実の話があるとしたら。そして時計台にいる彼女がラエタと何か関わりがあるとしたら。俺はきっと、アリスとして見届けなければならない物語になるかもしれない。最悪の場合は、ラエタを敵として見る可能性もある。
    「それでも、しかと受け止めなければならない。ミグラ姉ちゃんの言葉に沿って動かなければ、だ」
     何かが始まる、そんな予感がしてならない。急いで時計台へ向かうとともに、その結末を見届ける覚悟を抱いて。
     
     
     
     
    ――私はそれを思い出した。
    ――あの時、あの魔術師にかけられた”呪い”を
     
     
     
                    時待人第4話へ続く…
    空鳥ひよの Link Message Mute
    Aug 19, 2018 12:35:34 PM

    時待人第三話「鐘は鳴り響き渡り、君は消える」

    時待人第三話です。※今後修正ありかもしれない

    第1話:https://galleria.emotionflow.com/43641/454213.html
    第2話:https://galleria.emotionflow.com/43641/453947.html

    次回は9月のどこか…かも。 #オリジナル #創作 #ファンタジー

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