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    時待人第六話「時を旅する人へ」 あれからいくつの世界を駆け巡っただろうか。
    日数を数えても、きっともう無駄だろう。駆け巡った世界は途中で数えるのを止めたが、50以上はいっているだろう。
    それでも彼を――オルロを捜す事を止めなかった。彼がいなければあの街はおろか、ラエタすら救えない。
    自分がいかに無力であることは知っている。だからこそ、彼にすがる他ない。
     次の世界へ渡り、彼がいる”現在”の時間にたどり着くまで――
     

    『ここもダメですね…』
     固い地面からでも伸びてくる花、もとい女王クイーンはこの世界にも彼がいないことを俺に告げた。
    「ここもか…」
     次の世界を渡っては、女王に探知してもらって彼がいるかどうか判断し、いなければさっさと次の世界へ。ひたすらこれの繰り返しで、頭がとち狂いそうになる。常人ならきっと途中で辞めているに違いない。
    『次、行きましょうか』
    「なあ、女王。本当にいるのか…?俺はだんだん不安になってきたんだが」
     一呼吸置いて、女王はゆっくり彼の事について話す。
    『…オルロは必ずいます。それは私が一度会ったから間違いない事なのです。ただ彼はありとあらゆる世界の時を回っています。必ず”現在”にいるとは限らない人物なだけ』
    「一度会った…?」
     女王は彼に会った事があったとは。でも会っていなければ、あんな事は言わないと思えば納得した。
    『随分前に彼と会いました。その時は少年の姿でしたが、今は立派な青年に成長…しているはずです』
     最後はなんだか曖昧なコメントだと思った。さらにため息交じりで語っていたので、オルロという人物は一体何者なのかとさらに気になるばかりであった。
    「…じゃあ次行くか」
     世界へ渡る扉を開いて、俺はまた次の世界へと渡っていく。

    『オルロー、なんかねーめっちゃ世界渡ってる人いるんだけどさ』
    「…時の破壊者タイムデストロイヤーか?」
     時の破壊者。様々な世界と時を渡り歩き、その世界に関わるものを壊す魔術師や魔法使い等を指す。オルロとニクルはそれを止めるべく、気配を辿っては時の破壊者を消去してきた。
    「追いかけるの?」
     ひょこりとソルシィは少し不安げな顔でオルロを覗き見る。それに応えるかのように、オルロは悩み答えた。
    「追いかけてみよう、かと思う」
    『さすがオルロだねえ、うんうん』
    「少しは黙ってなさいよダメ神」
     オルロの横でさめざめと嘘泣きをするニクルを置いて、オルロは行くぞと二人に声をかけた。
    世界をかなり渡り歩いている人物、それが一体何者なのか。気になると同時に、何故か胸騒ぎがしてならかなかったのだ。
    「時の音が、強くなっている…」
     少しずつ近づいてくる音に耳を傾けつつ、謎の人物に追いつくように違う世界へと転移する。
    時を旅する人達空鳥ひよの

     幾たびの世界を渡り続けてきたせいか、かなり疲れてきたのでほんの少しの休憩をはさむ事にした。
    女王もそうするといいと告げていたので、少しこの世界の街を探索しつつ食べる物があるか見回る。
     中央の通りらしき所では色鮮やかな屋台が連なっていた。夜の時間帯なため、提灯の明かりがきらびやかでまぶしく感じる。俺はそこで食べれそうな物を少し買い、通りから少し離れた所にある広場へ向かった。
    噴水がぽつりと存在している広場のベンチに腰掛け、屋台で見つけた甘味物を食べる。クッキーの間に冷たいアイスが挟まれており、ほどよい甘みと冷たさが付かれた体にちょうど良かった。
    『相変わらず、甘い物が好きですね』
     ぼこり、と座っていたベンチの下から女王という名の花が咲いた。いきなり出てくるのは大変驚くので、やめて欲しいものだ。
    「別にいいだろう…」
    『貴方は美味しい物…特に甘い物はすぐ細かく感想を書きますから、ね』
     これはつい癖でやってしまう事であり、女王も甘い物の描写が細かすぎて他の事が入ってこないとよくダメ出しを食らわされた。
    『一息ついた所で移動を、と言いたい所なのですが』
    「何かあったのか?」
    『時の力の気配がこちらまで迫ってきています』
     これはもしかすると、オルロなのであろうか?だがその前にあちらは俺の事を知らないはずなので、もしかしたらそれ以外の人物の可能性もある。
    『彼であれば一番いいのですが…』
    「とりあえず、近い場所に向かおう」
     手元にあった水の入った瓶を一気に飲み干し、立ち上がる。もしかしたら、と期待を持ちつつ女王とは一旦そこで別れ、時の力が強く感じと言われる場所へと足早に向かう。

     ちょっと外れた道になると辺りには誰もいなかった。広場ではあんなにたくさんの人々が集まっていたというのにだ。
    あるのは街灯だけで、その明かりもぼんやりとしかなく心もとない明るさだ。それでも俺はその道を進み、歩く。
    「確かこの辺り…」
     気配がある場所に着き、周辺を見回す。だが先ほど通った道と同じく、人はいない。
    「…この人がいない感覚、ガルデンを思い出すな」
     恋しい、とまではいかないが時が止まったあのさびしい空気をふと思い出してしまう。けれどそこに人はいた。俺はその人を救う為にここまで来ている。
     ひたひた、という音が遠くからした。足音からして恐らく2人。もしかしたら、と思いごくりと息を飲む。
    隠れるということはしないよう、足音が聞こえる方向へとゆっくり歩いて自然さを装いながら進む。もう少しでこの足音の正体が掴める、という距離まで来た。あと少し、少しで見えるという距離へ。
     そして、街灯にあてられた人物の顔を見た。そこには、俺が見慣れた人物の顔うり二つな青年と、桃色の髪色が綺麗な女性が歩いていた。
    「…え?」
     青年の髪色は黒、そして赤い目。そう、ラエタと同じ見た目だったのだ。けれど一つ違うのは、その人が男であるのとどこか冷たい表情をしていたという所だった。
     彼らは俺を見ながらひそひそと何か話している。じろじろと見た事が気に障ってしまったのだろうか。すると黒髪の青年は静かに俺の方へ向かい、立ち止まった。
    「…あ、あの、貴方が世界を頻繁に移動している人、か…?」
     たどたどしい喋り方だった。人と会話するのに慣れていないような、そんな喋り方だ。
    「そうだが、君は…?」
     少し視線をそらし、彼はこう名乗った。
    「お、オルロって言う…で、す」
    「オルロだって…!?」
     ついに、見つかったのだ彼が。オルロと名乗る青年は本当に実在していたのだ。
    「俺の名はディウス。とある人物からオルロという人を探し、頼れって事で探していたんだ。ずっと…」
    「えっ、オルロのストーカー!?」
     横にいた桃色の髪色をした女性が驚く。驚いているのはこっちだが、ストーカー呼ばわりされたのでそこはきちんと訂正した。
    「あ、なんだストーカーではないってことね…」
    「それで、何故、俺を捜していた?」
     俺は今までの出来事を簡単に話した。オルロの力がなければ救いたい人を救えないという事を。それに納得したのかどうか知らないが、なるほどと二人は静かに話を聞きいれてくれたのだ。
    そして彼らもここに来た理由を話してくれた。世界を頻繁に渡る者を補足し不審に思ってここへやってきたという。それがまさかの俺だったということだ。
    「別に悪い事しようとか思ってたわけじゃない」
    「ん。それは今の話を聞いて、思ったから、大丈夫」
    「それで協力は難しいだろうか…?」
     オルロはんー、と悩んだ。見ず知らずの人物に力を貸して欲しいだなんておこがましいし、悩むものなんだろうなと思った。
    もし無理だったら、と最悪の時の事を俺は考えていた。
    「いや、協力したいんだ。だがそれを”彼”がいいと言うか…」
    「彼?」
     そうしてオルロの後ろから、すうっと人の形が浮かび上がった。それは、まるで幽霊が現れたかのように。
    『呼んだ?呼んだ?』
     おちゃらけた言葉と同時に姿を現す。その姿はオルロと同じ髪色と目の色をしていたが、どこか異質な雰囲気を出していた。
    『あ、事情は後ろで聞いてたから大丈夫。初めまして、アリスと呼ばれる物語の紡ぎ人』
    「な、何故それを…!?」
     俺はまだ彼らにアリスであることを伝えていなかった。どう反応されるかわからなかったので、説明の時には世界を渡る旅人と名乗っていた。
    『んー、だってホイホイ世界を渡る人物、そしてその服装。アリスの特徴である水色の物を身に着けているとかでわかっちゃったねー。うん』
    「あー…、それでバレたか」
     だがその情報を知るのはごく一部の人物だけ。アリスと女王だけだ。そうなるとこの男は一体何者なのか、とつい警戒して見てしまった。
    『あ、ごめんね。私の正体も言っておこうか。私はニクル。正式な名前はニクル・クロノス――時の神だ』
    「時の、神…!?」
     目の前に神様を名乗る人物だなんて信じられないものだ。だがオルロは事実だ、と一言添えていた。
    「そうだ、私も忘れてた。この二人と一緒に旅をしているソルシィ、と言います。このバカ神のノリがわからなかったら言ってね。殴っておくから!」
    『やめてーソルシィやめてー君の拳はめちゃ痛いんだからさあ~』
     じろりと笑顔でニクルを睨むソルシィ。この二人に何があったかは知らないが、そういう仲なのだろうと思っておく。
    そして時の神・ニクルは真面目な顔つきで俺に語りかけてきた。
    『君の言っていたそれね、きっとめんどくさい術で彼女を呪いで縛りつけていると思うんだ。しかもめんどうな事に、時の力を悪用しいるから、これは私が関わる事になりそうなんだよね』
    「それで、協力するのか?」
    『うむ、これはその街に行くしかないね。あるべき時に戻すのも我々の役目だ』
     と言い、オルロにウインクを飛ばす。だがオルロはニクルの事を見ないでそっぽ向いていた。
    「なあ、俺二人に出会って思ったんだが、二人はその…ラエタと関係する人物か?」
     ラエタとそっくりな色なので、まるで赤の他人とは思えなかった。まさか、消えたラエタの弟か?と過ったくらいなのだが。
    「残念だが、俺にはそういう身内はいない…」
    『他人の空似ってやつだよーそれ。いやあ、そういう事もあるんだねえ』
    「そ、そうか…」
     二人が無関係だと言うのであれば、それ以上は追求しない事にした。世界には自分と同じ人間が三人いると言われているので、きっとそういう事なのだろうととりあえず納得しておいた。
    「それで、そのラエタさんって人はどうやって救い出すの?怪物化しているならなおさらじゃない」
    『うん、それだね。まずラエタの外殻をぶっ壊してね、中から引きずりだすんだ」
    「だが、それをするには…、どうするんだ?」
     外殻を壊そうにも恐らく莫大な力を有するだろう。だが時の神は余裕という表情を浮かべながらプランを語る。
    『まずはディウスとソルシィ、君たちで彼女を広い場所に誘導する。そこで私とオルロで時の力を込めた剣を食らわせるんだ。まず一発普通の剣で刺してから、その後に時の力を込めた剣を刺す。そして彼女を解放してあげるんだよ』
    「うん…?」
    「ははあ?」
    「ほう」
     俺達三人はぼんやりとした作戦を聞き、想像する。とりあえず俺とソルシィでオルロたちの元へと誘導し、その後彼が力を解放し外殻を壊すってことでいいのだろう。
    「ただ、外殻を壊しラエタを解放した後ってどうなるんだ?」
    『…それは私でもわからない。もしかしたらそのままかもしれないし、あるいは人の形を留まる事ができなくて時計に戻るかもしれない。その辺は予想できないんだ、ごめんね』
     外殻を壊した後、ラエタはどうなってしまうのか。彼女は呪いの力で人の姿を保てていたようなものだ。それを壊したらきっと彼女は消えてただの時計に戻るのかもしれない。それでも俺は、彼女を救いたい。
    『それで、どうする?君はそれでいいのかな?』
    「ああ、方法があるのならそれでいい。彼女を、ラエタを解放できるなら」
     結果がどうあれ、俺はあの街を戻したいし何より彼女を呪いから解放させたい。そうじゃないと最良の結末は描けないからだ。
    『なら決まりだね。いいね、二人とも?』
    「ああ、俺もその、そっくりな人に会ってみたいし…」
    「私もそれ思った」
    『君たちはそれ目的かーい!』
     面白いやり取りに思わず笑いがこぼれてしまった。なんだか久々に笑ったような、そんな気分だ。
    「それじゃあ行こう、か。時が止まった街を動かすべく。そして救うために」
     オルロは懐中時計を取り出し、夜空へ向かって放り投げた。その瞬間、足元には巨大な時計盤が出現し光始めた。
    『向かうはガルデン。さあ行こうか!』
     その一声で俺達は眩い光に包まれる。世界が、時間が飛ばされる。目の前はぐにゃりと歪んで、そして――
     
     

     目を開けると、そこには見慣れた街並みがあった。少しの間離れてただけなのに今は懐かしく思っている。
    けれど街の色は相変わらず白と黒だらけで、俺が離れた後何も変わっていなかったということが窺える。
    「ここが、ガルデン、なのか…?」
    「白黒な街はなんなの?」
     初めてこの光景を目の当たりにする二人はきょろきょろとまわりを見渡していた。
    「本当は黄昏時に止まった街なんだ。だけどこれは…」
    『時の力を暴走した結果だね、これ。だから異様な空間を生み出している』
     ニクルは瞬時に状況を把握していた。そして彼は苦い顔をしながら、小声で語った。
    『…あんなに美しい街だったのに、ね』
     彼はこの街の事を知っているというのだろうか?だがその表情はすっかり消え、オルロに話しかけていたので聞き逃してしまった。
    「まずはラエタを捜さなければ」
     あの大きい怪物だからすぐに見つかるだろう。そして、彼女を広場――時計台の前へと導かなければならない。
     解放の時はもうすぐ。俺とラエタの物語は少しずつ終わりに近づいていった――
     
    時待人第七話へ続く……
    空鳥ひよの Link Message Mute
    Sep 30, 2018 3:00:00 PM

    時待人第六話「時を旅する人へ」

    次回更新は10月中旬になります。
    #オリジナル #創作 #ファンタジー

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