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    時待人第二部六話「アリスのお茶会-ティーパーティー-」『さてディウス。貴方に一つお話があります』

     それは話を送った翌日の事だった。俺は自室にある花瓶から生えた花――女王(クイーン)に呼び出された。
    「一体話ってなんだ?何か変な部分があったのか?」
    『そうではありません、ディウス。貴方の休暇はそろそろ終わりを迎えます』
    「早かったな……」
    『……あんな事あれば、休暇なんてあっという間でしょう』
     そもそも自分が休暇中という事をすっかり忘れていたというのもあるが。本当にあっという間だった。
    「ということは、ラエタと一緒に……でいいんだよな?」
    『そうです。ラエタと共に、世界を飛び回る事になるでしょう』
     そうなると、この街と時計屋とはお別れをしなければならない。次にこの街へ訪れる事があるのかもわからないから、ある意味この地とは永遠の別れとなるだろう。
    『貴方達はもうあの魔術師に狙われています。点々と世界を渡った方が安全だと、私は思うのです』
    「そうか、一か所に留まっていたら狙われやすいが、点々としてしまえば…」
    『だからこそ、休暇を早めに切らせました。そしてこの世界の情報も十分に得ましたし』
     そう言われてしまっては仕方ない。この街は住み心地は良く、アリスとしての任が終わったらここで住みたいと思ってしまうくらいに名残惜しさがあるのだ。
    「じゃあ、ラエタにも言わなきゃだな」
    『よろしくお願いしますね』
     ここで俺と女王の会話は終わった。この事をラエタに言わなければならないのだが、この時計屋をどうするつもりなのかが気になってしまう。
    「まさか閉店……?」
     そう思いつつ、俺は1階へと降りていった。
     
     1階にあるリビングのソファーでラエタは本を読んでいた。すっかり忘れていたが今日と明日は時計屋の店休日だ。
    「ああ、いい所にいた。ラエタ、ちょっと話がある」
    「えっ!?あ、ああうん!?なななな、何かな!?」
     ただ一声かけただけなのに、なぜか慌てている。昨日からずっとこんな状態が続いていて、正直話しかけにくい。
    「……えっと、俺の休暇が終わるって話がきてだな」
     要点をかいつまんで、先程女王と話した事をラエタにも話す。すると、少し寂しそうな表情をしつつ、時計屋の今後を語った。
    「このお店、閉じるにはちょっと惜しいからなあ」
    「そうだよな、ラエタが一人で切り盛りしてたわけだし」
     うーん、とラエタは考えた。やはり時計屋を閉店にするのは嫌なのだろう。
    「そうだわ。ヴェルカ達にこの店を譲渡しよう」
    「え」
    「幸い店の2階は工房部屋だし、彼はあの部屋気に入っていたし。いけるでしょ」
     そんなのでいいのだろうか、というよりか彼はこっちに住む気あるのか。色々気にはなるが、どのみち最後に彼らと会わなければと思っていたので、明日ヴェルカ達をこちらへ呼ぶ事にした。
    「んー…せっかく集まってくれるしー……」
    「何か、もてなしたいという事か?」
    「うん、それ!あ、じゃあお茶会でも開いちゃおうか。せっかくだからとっておきの紅茶を出したいなーって」
     お茶会という名のお別れの会。良い判断だと俺は思った。それにヴェルカとはまた少し話をしてみたいと思っていたので丁度良い。
    「じゃあ、ヴェルカに連絡しなきゃだねー」
    「……そうだ、俺からの提案だが。もう二人呼んでもいいか?」
     今回の件でものすごくお世話になったあの二人こと、ダンテルとレフォーヌだ。
    こんな弱い俺に魔術や剣術を教えてくれた恩人でもある。せっかくだから、俺からもお礼がしたい。
    「そっか、ダンテルとレフォーヌも……そうだね、呼んでしまおうか」
    「だがあの二人が来るかどうかはわからないけどな」
    「来るんじゃない?まー私からあの二人が来るように連絡しておくからー」
     そう言ってラエタは早速電話で連絡を取り合っていた。
    「お茶会か……ある意味これが最初で最後だなんてな」
     ヴェルカ達とダンテルらは初体面だ。どんな会話を交わすのか気になる所だ。
    「さて、俺は旅の準備をしておくか」
     集まるのは明日なので、今日中にある程度支度ができたらと思い、必要な物を買いに出た。
    それにこの街をすみずみまで見回っておきたいものもあって、いつもより遠回り気味に街を歩いた。


     翌日、ラエタは朝から張り切ってお茶会の準備を進めていた。キッチンからどたどたと派手な音が聞こえてくるくらいには。
    「……何か手伝う事はあるか?」
     彼女に声をかけてみる。俺一人、何もしないというのもなんだか気まずいものだからだ。
    「あー……じゃあこの食器とかカップとか並べてくれる?」
     渡された食器たちを落とさないようにリビングへ持っていく。
    きらびやかな装飾が施されたティーカップとソーサー。それはとても美しい物だったので、割れないようにと緊張しながら運んだ。
    「なんだか高そうな食器だな…慎重に持っていこう」
     慌ただしい雰囲気の中、俺達は滞りなくお茶会の準備が進み、そして皆がやってくる30分前に無事終わらせる事ができた。
     
    「こんにちはー。二人とも、元気?」
    「…あ、あのこんにちは」
     最初にやってきたのはヴェルカとクエレだった。ヴェルカは工房でいた時の恰好ではなく、出先用らしき服装でやってきた。
    「ヴェルカー!いらっしゃい!!」
    「やっほー。二人とも元気になって何よりだね。」
     あいかわらずの緩い会話だ。だがそれが彼の持ち味というものかもしれない。
    「急な事ですまない、ヴェルカ。なんというか…申し訳ない」
    「なーんで、ディウス君が謝るんだい?別にかまわないさ。このお店の事もね」
     お店の譲渡の件について、ラエタはあらかじめヴェルカに報告していた。
    きっと無理なのでは、と思っていたがヴェルカは案外乗り気でお店の引き継ぎをすると言った。
    「いやー、あの2階の工房が快適空間だからいつか使いたかったからね!こっちとしてはありがたいよね~!」
    「私は売り子として、このお店を支えます」
     ヴェルカはいつも通り作る方に、そしてクエレはお店の売り子として働くと言っていた。
    ラエタ的にはクエレが売り子でちょっとだけ不安だ、とこぼしていたがそこはヴェルカがなんとかすると説明していた。
    「二人が来ちゃったし、早速お菓子やらなにやら色々出しちゃおう!」
     ヴェルカ達をリビングに案内し、お茶会を始める準備にラエタは勤しむ。
    だが、俺が呼びたい二人は未だ来ず。時間はまだ余裕があるのだが、あの二人は電話で連絡を取った時点で来るかどうかわからないような雰囲気だった。
    「ま、来なかったら来なかったでいいか」
     リビングに向かおうとしたその時。玄関からノック音が聞こえてきた。ラエタはリビングへ行っているので、場所から近い俺が出る事にした。
     玄関のドアを開けると、そこにはあの二人が立っていた。
    「あ~…間に合った……」
    「ダンテル、貴女は何故そうも…時間をミスするのです……」
     ダンテルとレフォーヌがやってきた。のだが、二人とも息切れをおこしていた。
    「……一体どうしたんだ」
    「どうしたもこーしたもねえよ!ええい、時間をミスったって話だ!!!」
    「招待される側が、文句言わないのです、ダンテル……はあ……」
     くたくたになっている二人を見ていられないので、とりあえず中に入らせることにしよう。
    「じゃあ、こっちへ。案内する」
     こうして、今日のお茶会に呼んだ人たちが揃いに揃ったのであった。

     こうして集まってみると奇妙なメンバーが揃ったようなものだ。
    時計、女王の側近、工房主、そしてはぐれ精霊。普通だったら集まらない、珍しすぎる人たちだ。
    その光景に思わず笑いそうになってしまうが、笑ったら不審な目で見られそうなので今は堪えておこう。
    「じゃあ、皆揃ったところだし始めようか!」
     始める、と言っても各々自由にお菓子やお茶を楽しみ、そして何気ない会話を楽しむ会だ。ラエタの号令で、皆一斉にお菓子を取ったり、お茶を飲んだりと早速自由にやっている。
    「へー、お前工房主か。じゃあ魔術具も作れるってわけか」
    「ああ、そうだよ」
     ダンテルとヴェルカは魔術具の事で色々話していた。意外な二人だが、ダンテルは主に武器の事を語っていた。
    「……それで、貴女ははぐれ精霊でそしてあの魔術師の呪いを…」
    「はい…」
     しんみりとした雰囲気を出しているレフォーヌとクエレ。人ではない者同士、なにか気が合う話があれば良いのだが。
    そうした状況をぼんやりと眺めていると、横からラエタが話しかけてきた。
    「まあ一応成功?」
    「じゃないか?」
     彼らは普通に語っているので、楽しんでもらえてなによりだった。
    「それはそうと、スコーンがすごく美味い。さっきから止まらないぞ」
    「その言葉は嬉しいけど、他の人の分も残しておきなさい!」
     昨日からラエタが一生懸命作っていたスコーン。プレーンやチョコ、ブルーベリー味がありどれも美味しい。
    美味しいお菓子に舌鼓しつつ、俺はダンテルとレフォーヌに一つ質問をした。
    「なあ、ダンテルとレフォーヌに質問がしたいんだが。……色々と呪いを施している魔術師について、教えてほしい」
     その事を口にすると、二人の表情が一変した。まるで聞いてはいけなかった話題のように、表情が凍りついている。
    「……それは、教えられないな」
    「どうしてもか?」
    「その事について、僕も知りたい。妹の事、何か手掛かりがあるかもしれないし」
     ヴェルカもこの話題に食いついた。俺とヴェルカの圧に押されたのか、仕方ないという顔でレフォーヌが語ってくれた。
    「女王にも軽く口止めされているので、当たり障りのない範囲で言いますが…」
     呪いを主に扱う魔術師の名はヒュゴーレ・シュテルング。彼はあらゆる世界を渡り歩き、そしてその先々で思いついた呪いの実験をしているという。
    ――彼と出会ったら即座逃げる事。さもなくば彼の呪いにかかってしまう。
     そんなことが魔術師たちの間で言われるくらい、最悪にして最凶といわれている魔術師。今まで彼に立ち向かったものは皆、例外なく呪いにかかって死んでいるという。
    「それぐらいに、私たちの間でも警戒しろと言われています」
    「まさに手に負えない獣ってやつだねー」
    「……他には?」
     さらに彼は欲しいと思ったものは手に入れないとすまない性格だそうで、今までも人の物を横取りしその持ち主を殺している。
    この事を聞いて俺はぞっとした。人の物が欲しいと願い、それは殺しを犯してまでも手に入れたいというその精神に恐怖を抱いた。
    「そして彼の見た目は若い時のままなのですが、中身は500歳以上等…噂は色々あります」
     とにかく噂が絶えない魔術師であり、時の神ニクルですら警戒しているくらいの人物。正直遭遇したくはないものだ。
    「それを聞いたら、次あいつに会ったらさっさと逃げるんだな。特にアリス!……お前はとんでもない力を保有しているんだから」
     現時点で時の力を扱えるのはオルロ、そして俺だそうだ。オルロは時の神の加護があるのである程度回避はできるが、何もない俺はただひたすら逃げる事しかできない。
    「わかった……。肝に銘じておく」
     ようやく見えた魔術師ヒュゴーレの実態。彼は今、一体何を考え、何をしているのだろうか。
     
     
     お茶会もそろそろお開きとなろうとしている時間。彼らは満足そうな表情をしていたので、この会は成功したとも言えるだろう。
    「いやー、ありがとうねラエタ君。お菓子美味しかったよー」
    「ありがとうございます、ラエタさん」
    「いいんだよー、それに二人にはこの時計屋を支えてもらうんだからさ。宜しく頼むよ」
     時計屋の譲渡については、また明日詳しくやり取りをするそうだ。そして、ダンテルとレフォーヌは明日でこの街を去るという。
    「ありがとう、ダンテル。そしてレフォーヌも」
    「あー……そういうのはかゆいからいい!」
    「はあ…ダンテル、そこは素直に受け止めてもいいのに」
     どうやらダンテルはこういう事に慣れていないらしい。けれど、楽しかったと一言いってもらえた。
    「困ったら女王を通して呼べ。そしたらまあ、お前たちの剣くらいにはなってやるからな」
    「女王が今後も貴方達二人をサポートするようにとも頼まれています」
    「なんだかすまないな。でも、これからもよろしく頼む二人とも」
     へへっとダンテルは笑い、レフォーヌもまた微笑んだ。まだまだお世話になるであろう二人だ、俺もまた二人に頼る面があるかもしれない。
    「じゃあ、そろそろ」
     そう言って、ヴェルカ達は帰ろうとしていた。けれど彼らは何かを見つけたようで、こちらへ引き返してきた。
    「あのさ、時計屋の前で誰か立っている。男の人なんだけど」
    「男の人?お客さんかな?」
     ラエタは時計屋の前に行ってその人物を確かめに行った。続けて俺も見に行く事にした。
    「すみませーん、今日は店休日でして……」
    「君が、あの時の時計だね?」
     男はなぜかラエタの正体を知っていた。そしてあの男からは何か危ない雰囲気がにじみでていた。
    「アリス、ラエタ!逃げろ!!!」
     背後からダンテルの叫ぶ声が聞こえた。その時男はラエタを素早く捕えた。あっという間のことで俺はラエタの手を引くことすらできなかったのだ。
    「は、ははは、ははははははは!!!!!!!やっと手に入れた!!!!!時の力を保有する時計!!!!!」
     喜びに満ちた顔、そして轟く声。けれどその喜んでいる姿は狂っているように見えた。
    「ラエタを離せッ!」
     剣を召喚し、俺は果敢に男へ挑む。だが男は、俺に目をくれず魔術で跳ね飛ばした。地面に強く叩きつけられ、体中に激痛が走る。
    「やっと手に入った。やっとだ。これで全てを支配できる…!」
    「そうはさせねーよ、ヒュゴーレ!!」
     ヒュゴーレ。その名はさっき聞かされた名前。そしてラエタやミグラ姉ちゃんに呪いをかけた張本人の名。
    「あいつが…ヒュゴーレ……」
     事実がいまだに飲みこめず、ただ彼の顔を見るしかなかった。そして彼の手にはラエタを捕らえている。早く、眠っている彼女をと手を伸ばす。
    「ラエタを…返せ……!」
     激痛の中、なんとか絞り出した声で彼に訴えた。
    「誰が返すと思ったか?殺し尽くしたはずの”フェリメント”の人間め。その武器を持っていることでようやく確信したけど、今になってはどうでもいい」
     殺し尽くした?一体どういうことなんだろうか。そしてフェリメントの人間、という事は俺の他にもいた人物――
    「じゃあね、役立たずな女王の部下たち!そして……フェリメントの人間よ」
     そう言って彼は切り裂いた次元の穴へと、ラエタ共々飛び込んで行った。待ってくれ、と叫んだがその言葉は彼の耳に届かない。
    伸ばした手は、悔しさのあまりそのまま地面へ叩きつけた。
    「ラエタ……!」


    時計は奪われ、最後の物語が幕を開ける空鳥ひよの
     

     
     夕暮れの光が酷く眩しい。まるで、身体ごと突き刺さるかのごとく。
     守りたい人が奪われてしまい、またもや無力さに痛感する。
     
     ――どうして、俺はあいつに大事なものを奪われていくんだ
     
     静まり返った時計屋の前。俺はただ、奪われていく様を見ているだけしかできなかった。


     
     
     
     
     時待人第3部へ続く……
     
    空鳥ひよの Link Message Mute
    Jan 17, 2019 9:47:13 AM

    時待人第二部六話「アリスのお茶会-ティーパーティー-」

    第2部最終話です。次回、第3部で完結します。
    #創作 #オリジナル #ファンタジー #時待人

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