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    Strange church第2話「優しい世界に潜む闇」Ⅰ.この世界の光と闇Ⅱ.戦うひとの帰る場所Ⅲ.あたたかいもののためにⅠ.この世界の光と闇


    ――優しい世界だとしても、そこには必ず闇が潜んでいる。
      
     
     俺は次々と夜の森にいるという、魔物達を剣で薙ぎ倒していく。魔物は斬られていくと、しゅわっと煙のように消える。
    「もうすぐ夜明けか」
     少しずつ森に明るい光が見えてくる。奴ら――魔物は次々と消えていくだろう。あいつらは明るい光に弱い特性を持つようだと、つい最近知った。
    「早く家に戻らないと、プリエラにバレちまうな」
     俺は急いで教会の隣に隣接する家に戻る。今日は結構斬りまくったので、疲労が珍しく押し寄せてきた。
     夜起きてもそんなに寝なくてもいい体質を活かし、俺は教会に近い<帰らずの森>で毎晩魔物を狩る仕事をしている。
    昼は教会の神父のフリをしつつ、俺を召喚した主であるプリエラの傍に仕えている。 
    「今日の朝飯は何だろうなー。プリエラ特製スープあるかなー」
     俺は早く美味しい朝飯をいただきたいのだ。プリエラが作る飯は全て美味い。何でこんなに美味しい飯とおやつが作れるのかってくらいに美味い。
    だから俺は彼女が作った物全て平らげてしまう。そして毎回、喜んで「また作りますね」と笑顔で答えてくれる。
    その笑顔が見たくて、俺は毎回全部食べているようなもんに近い。いやでも、飯類は本当に美味い。
     そんな楽しみを抱きつつ、住居を構える家に戻っていくのだ。
     
     
      この町――いや、この世界にやってきてから一週間が経とうとしていた。
    俺は違う世界から召喚されてやってきたのだが、この世界はとても優しい匂いがする世界だった。
    もしかしたらこの町だけの雰囲気かもしれないが、俺はこののんびりした空気は嫌いじゃないとも思っている。
    以前俺がいた世界は常に争いばかりで、生きるのも死ぬのも当たり前のようなもの。殺し合いなんて日常茶飯事だ。
     それなのに。この世界は殺すだの、血まみれたなんとかだの、ほとんどなかった。触れるもの全てが優しくて、暖かい。そして何より、一目惚れしてしまったプリエラの存在が大きい。
     プリエラは教会のシスターとして振る舞っている。そして来る人、出会う人に優しく接する。その性格からか、町の人からは評判が良いと魔女ババアことルーシャからこの間聞かされた。
     でも本当はプリエラは孤独を何より嫌っている事を俺は知っている。ババアも恐らく知っているだろうが、きっとほんの一部だと思う。
    俺は召喚された際に、彼女の孤独の記憶を垣間見てしまった。だからこそ、彼女の傍にいようと思った。
    力になりたくて、彼女の前では明るく振る舞ってやろうと思った。そして心配させるような事は隠していこうと、思った。

    「さあ、そろそろ教会を開けましょうか」
     朝の支度を終えると、教会を開ける準備に入る。俺は扉を開ける等そういうのを担当しているのだが、その後は基本奥に戻ってサボっている。正直、教会でやる事がほぼないに等しい。
     神父のフリはしているが、聖書を読む等といったそういう類はプリエラに全部任せている。俺は神を信じない奴なもんだから、罰が下りそうだと思っているからだ。
     そもそもこの世界の”教会”という立ち位置がどういうものなのか、俺は未だに把握していない。
    プリエラに聞いても、どこにでもありそうな教会の話しかなかった。ただ本人もそのような情報しか知らないと言う。
    「んでだな、そこの物陰にいるババア」
    「うるさいわよクソ犬」
     お決まりの台詞から、俺と魔女ババアルーシャとの会話は始まる。
    「この世界について色々聞きたいと思ってだな。まず、この世界の”教会”ってどういう形で存在している?なんとなく、神様拝んで云々っていう話だけじゃないと俺は思うんだが?」
     へえ、勘がいいじゃないとババアはにやりと笑う。そしてババアはこの世界の現状と教会について語ってくれた。
    「そうね、プリエラから教会の”表向きの話”だけ聞いているとは思うけど」
    「表向き?」
     聞く所によると、この世界は大昔にあったという争いにより、魔物を召喚するための”穴”が各地に複数存在している。
    もちろんこの町ホルトスも例外ではなく、ババアが住んでいる森にひっそりとその穴は存在しているそうだ。
    「で、神を信じる事に関心が薄れつつあるこの世界で、教会はもう一つの役目を担う事になったのよ」
     その役目というのが、魔物を退治するという事だった。だから教会の神父やシスターは戦う術を身に着けているという。
    「魔物を戦えない町の人や、そういう人達の為にこの町は教会と手組んでそれでやっているんだけどね」
    「待ってくれ、そしたらプリエラはまったく戦えないのに…」
    「それをフレデリックは今まで隠していたの。あの子を戦わせたくないって」
     プリエラが戦えないからと今、ババアが森の魔物を退治しているという。
    「……どのみち俺がその役目を負う事になるんだな」
    「そういうこと。でもアンタはそっちの方がいいでしょ?」
    「もちろんだ。俺は、戦うのは得意だからな」
     今まで戦いに身を置いていたんだ。今さら魔物だなんて雑魚に等しい。
    「じゃあ、私とアンタで手を組みましょう。ただし、私と組んでいるっていうのは町の人には内緒で、ね」
    「何故だ?」
    「魔女は忌み嫌われているものでしょう?そういうこと」
     なるほど、こちらの世界でもやはり魔女は嫌われ者という事か。俺がいた世界でも、魔女は恐怖の対象に入っていたし、地方によっては魔女狩りがあったと聞いていた。
    「でも魔女狩りはなくて良かったな」
    「むかーーーしあったみたいだけどね。ほんと、誰のおかげでこの町――いやこの世界の平和が保たれていると思っているのよ!」
     こんな優しい世界でも、昔は殺伐としていたようだ。でもそれは大昔に偉い魔女が統制したおかげでどうやら平和になったらしい、とババアは語った。
    「とりあえず、俺はこの世界でやるべき事はわかったし、尚更プリエラを守らなきゃいけないって思った」
    「今の所はそれでいいわよ、うん」
     そして俺はもう一つ気になった事があった。それは――
    「…なあ、この世界の教会ってやっぱ神父とシスターは結婚や恋はしちゃいけないのか?」
    「それかよ!!!!!」
     ババアは秒で俺にツッコミを入れてきた。いややっぱ気になるだろ?そうじゃないと俺はプリエラと……ってならないかもしれないしな?
    「フレデリックが前言っていたけれど、一般の人と結婚したり恋したりの他、同じ職同士でもいいみたいよ。教会をやっていく人が減りまくっているから、もうなんでもいいから子を作って跡継ぎ作れって話らしいわ」
    「なんかすげえな、ここの教会のやり方は」
    「だから、フレデリックはプリエラを拾ってきたんだと思うんだけども」
     跡継ぎ対策で拾ってきたのか、前神父。でも一体だれとプリエラに嫁がせようとしていたのか、とても気になる。ああ、気になるぞ…。
    「ちなみに、プリエラに相手はいないから安心しなさい」
    「心読まれた!?」
     この世界、そして教会の仕組みはよくわかった。そして俺がこの世界でやるべきことも。
    まあ、まずは彼女の周りにいる虫どもを確認しておかねば、とやることがまた一つ増えたのだった。
    Ⅱ.戦うひとの帰る場所

     夕方になると、教会の周辺にいたガキどもは次々と帰路へ急ぐ。俺はそれを見て早く帰れと促すようにしている。
    そう、夜が来る。人々が恐れる、夜が訪れるのだから。

    「ご馳走様でした」
    「ごっそさん」
     二人だけの夕飯を済ませると、プリエラは食器を片す作業に入る。
    俺はというと、部屋に戻りそのままベッドに寝転ぶ。手伝わないのかよ、とツッコミを入れられそうだがプリエラがやると言って聞かなかった。
    このまま粘っていたらなんとなく気まずいと思い、そういう形にしている現状だ。
    「今日もご飯がうまかった……」
     プリエラの特製ポタージュは特にうまい。思わずおかわりしてしまううまさなのだ。
    俺が喜んで食べているせいか、プリエラはよくスープを出してくれるようになった。
    「前の世界にいた時は、質素すぎる飯だったからな」
     ぽつり、ぽつりと思い出す。すでに遠い日と思ってしまうあの灰色の日々を。
    身に覚えのない罪を着せられ、異空間に投げ込まれてはそこにいた異質な怪物と戦う日々。
    生きるために俺はあがき、戦い、そして逃げた。けれど、生きる事に何も意味がないと知ってしまった時、俺は死のうと思っていた。
     だがそこにプリエラの召喚の儀が起き、俺はこの世界にやってきた。プリエラの使い魔として。
     そっと自分の瞳をなでる。右目は元の緑色の目だが、左目は蒼い色の目。左目の色は、どうやら使い魔として召喚された際に変質したようだ。
    ババア曰く「使い魔としての証」だそうだ。証は使い魔それぞれだそうだが、俺の場合は目の色に出たらしい。
     遠くでボーン、ボーンという音が聞こえる。振り子時計が夜を知らせた。
    「そろそろ、か」
     プリエラが寝たのを見計らって、俺は今日も夜の魔物狩りへと身を投じるのだ。


     帰らずの森へ向かうと、そこにはババアがいた。
    「お、今日はやる気なのか」
    「うるさいわね。今日は私がやる番だっつーの」
     口での喧嘩はさて置いて、俺達は森の中へと入っていく。
    相変わらず薄気味悪い森だ。夜でもこの森はやや暗いため、近所のガキどもは度胸試しで入る事がある。それくらい、人が寄り付こうとしない森なのだ。
    「早速、お出ましときたか」
     耳をすませば、がさがさという音が遠くから聞こえてくる。そして邪な気配も同時に漂う。
    「じゃあ俺あっちやるから、ババアはあっちな」
    「はいはい、死ぬんじゃないわよ」
    「…誰が死ぬかよ、ババア」
     そう言って俺とババアはここで別れて、それぞれ倒すべきものを目指す。


    「今日の仕事、終わりっと」
     魔物のボスらしきものを倒し、そして同時に夜明けがやってきた。
    ボスを失った魔物たちは森の奥へと消えていく。今回は犬型の魔物だったのだが、剣に食いついてくる等少しだけ厄介な相手だった。
    「犬は勘弁してくれよな、本当に」
     何を隠そうと、俺は生き物があまり好きではない。犬や猫など、皆がかわいいと言っている生き物はあまり理解ができないのだ。
    意思疎通もできない生き物相手に、何が良いのか。プリエラの前で言ったら確実に嫌われる事間違いないので、俺は心の中にしまっている。
    「さて、帰りますかね」
     森を背にして、俺は帰るべき場所へと向かう。
    ここに来て思ったのは、帰る場所があるのはいいものだと感じるようになった。
    こういうのも悪くない、と思う自分がそこにいる。
    「魔物さえいなけりゃ、なかなかいい所だと思うんだよな」
     本当に、魔物さえいなければ。そう思いつつも、俺はどこか戦える場所があるのもまた良いとも思ってしまっている。
    「ああ、やはり俺は戦うことしかできないな」
     もうすぐ朝がくる。人々の笑いが満ち溢れる、朝が。
    Ⅲ.あたたかいもののために


     プリエラお手製朝ごはんを平らげ、いつもの神父服に着替えて教会を開ける準備をする。
    プリエラがまだ教会へ向かっていない時、俺は教会の中でぼんやりと立っては、優しい光が差し込むステンドグラスを眺める。
    前の神父――フレデリックという男は、日々どう思いながらここを守っていたのだろうか。
    既に死んでいるものだから、答えは返ってこないし知る事もできない。
    ただ、とてもやさしい人物である事は確かなので、きっと彼も俺と同じ事を思っていたのかもしれない。

    ――プリエラと、この教会を守る



     ふう、と一息つく。そろそろプリエラが教会にやってくる頃だろう。
    「俺がその役目で呼ばれたのなら、それはそれでいい」
     だからこそ、数多の剣を持つこの俺が呼ばれたのだろう。
    この剣は、かつて俺は自分が生き延びるために振るった。もちろん殺しさえも犯した。
    ここの神様はこんな俺をどう見ているのかは、神のみぞ知るというやつだが。
    それでも、俺はこの平和を守っていきたい。ただそれだけだ。
    「神様はきっと飽きれているかもしれないな。こんな自分勝手なやつが神父だなんて、ってさ」
     そうつぶやいた時、プリエラが教会の中へと入ってきた。
    「アーティオ、おまたせしました」
    「おう。んじゃ、今日も開けるか」
    「はい!それでは今日もよろしくお願いしますね、アーティオ」
     にっこりと微笑む彼女は、ひだまりのようなあたたかさをくれる。
    そのあたたかいもののために、俺は今日も守るのだ。

    ――光と闇に包まれた、この世界で俺は生きるんだ




    Strange church第2話 完


     

    空鳥ひよの Link Message Mute
    Apr 30, 2019 3:08:19 PM

    Strange church第2話「優しい世界に潜む闇」

    アーティオ視点で展開される第2話。
    #創作 #オリジナル #ファンタジー

    すとちゃ第1話と2話を収録したコピー本を7月開催のCC福岡にて頒布予定。
    表紙は描きおろしになります。挿絵は現在検討中…。続報をお待ちください。

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