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    時旅人第1話「少年と少女は出会った」 どこかの場所で火事が起きた。
    爆発と炎は時間が経つにつれ、酷くなり店そのものの原型も少しずつ崩れていった。
    その店の中にいた意識を持たない時計たちは物言わぬまま、溶けて壊れていく。

     そんな中、小さな爆発で飛んでしまった時計が、ひとつ。
    その時計は周りから期待されていた、輝かしい時計。だがその時計は宙に浮いて、飛んでいった。
    他の時計のような目には遭っていなかったが、飛んでいく距離は長く、遠く。
    ついにはどこでもない世界へと飛んでいった。

     飛んでいった時計は、ぱちりと意識が芽生え始めた。
    そして最初に出た一言は――

    ——もっと、生きたかった
    ――まだ、死にたくはない

     目覚めた時計は、初めて意思を持ち”生きたい”と願った。



     オレの記憶は、一体どこにあるんだろう?

    ぼんやりと頭の中で浮かんでは、消える言葉。そしてこの旅を続ける意味。
    どこかの世界のどこかの時間をさまよい、オレは旅をしている。
     目の前が真っ暗で、冷たい。どうやらオレは倒れてしまっている、みたいだ。
    目を開ける事がとても面倒で、このまま寝てもいいかななんて。
    ……そんな事を思っていたのだが、そうもいかず。
    「ちょっと、君!大丈夫!?」
     誰かに揺さぶられ起こされる羽目になるなんて、と。
    仕方なく、起きてみる。すると傍にいた、二つ結びをした桃色の髪の毛の少女がほっとした表情でオレを見た。
    「あ、ああ、だ、大丈夫だ……」
    「いや、どう見ても大丈夫じゃないよね君」
    「だ、だいじょ……」
     彼女曰く、どうやら顔が真っ青だという。自分では気づかないから、その辺わからなかった。
    ”また”オレは倒れてしまっていたんだ、と改めて認識する。
    「てか学校の廊下で寝るなんて、非常識すぎる…」
    「が、っこう…?」
     きょろきょろと辺りを見回してみた。
    立派な建物で、まるでお城の中みたいな装飾。今は夜なので、月の明かりが窓に差し込み、さらに幻想的な雰囲気が醸し出している。
    「というかその服装からして、ここの生徒じゃないね?」
    「……ここ、どこ?」
     はあ?という声とともにオレはびくっとびびってしまった。
    彼女の威圧的な瞳が、オレにはとてもきつく見える。
    「……まあいいや。ここはマジア魔法学校。見ない顔だから旅人さんかな」
    「あ、ああ……そうだ…」
    「紹介が遅れたね、私はソルシィ。ソルシィ・ティファン。貴方の名前は?」
    「……お、オルロ……」
     恐る恐る、自身の名を告げる。やはり誰かと喋るのは、とても疲れるし怖い。
    「ここだと先生に見つかっちゃうから、うちに来る?」
    「…え」
     彼女の手に引かれ、オレはソルシィの家へと連れていかれた。



    「私以外誰もいないから、大丈夫だよ」
     ソルシィはそう言うと、オレを椅子に座るように指す。
    「あ、あの、ありがとう……」
    「ん?まあ、いいよ。それに君…じゃないやオルロはなんか顔色悪かったし、放っておけなかったから」
     誰かに心配されるのは初めてだった。どこの世界へ行っても、オレは厄介者扱いをする。
    だからこんなに親身になって接してくれるのは、なんだか申し訳ない気持ちもあった。
     台所らしき場所から出てきたソルシィは、オレにお茶を運んでくれた。
    すうっと飲んでみると、とてもあたたかった。
    「で、あんなところに旅人が入り込むなんて一体どんな魔法を使って入ったの?」
    「……ま、ほう。う、うーん。魔法か……??」
    「なんでそんなに曖昧なのよう…」
     喋ることや説明はあまり得意ではないのだが、オレは断片的に話す事にした。
     オレは、何者なのかという旅を続けている。
    記憶は一切持たず、ただオルロという名前と、壊れかけている懐中時計一つ、そしてラフィニルトという剣を所持していた。
    「そして、夢をみるたびに、ここへ来いと案内する声が、きこえる」
    「声?」
     その声は何か知っているらしいのだが、オレの声はどうやらあちらに届いていないようだった。
    わかるのは女性ということ、そして剣の使い方や、世界と時を渡る方法を教えてくれた事。
    「ちょーっと待って。今さらりと世界と時を渡る言ったけどどういうこと!?」
    「……あ、ああ、えっと」
     オレは普通の旅人とは違う旅人。あらゆる世界と時を渡れる力も同時に所持していたのだ。
    「なるほどなーすごいなあ……」
    「そんなに、すごくないぞ」
     すごいよ、と悲しそうな顔でつぶやいた。その後に出たのは、ため息。
    「だってさ、いろんな世界と時を旅するんでしょう?羨ましいなあ、って」
    「うらやま、しいのか…?」
    「ほ、本当は言っちゃダメなんだろうけれど!でも…」
     とても思い悩んだ顔をしている。さっきまでの威勢の良かった彼女は一体どこへやら。
    「私ね、落ちこぼれなんだよ。あの学校の」
     彼女は淡々と語った。魔法学校に通っているのだが、勉学は良いのだが技術となるとてんてダメという。
    技術だけで追試をたくさん受けた。今まではなんとか良かったのだが、今回は進級がかかっている大きな試験。
    ここで落ちたら、退学と一番偉い先生に言われたという。
    「私さー、学校から支給されている魔法道具と相性悪いみたいで、失敗しちゃうんだよね」
    「そう、なのか?」
    「うん、この魔法道具だったら全然できるんだけどねー」
     見せてくれたのは、銀色の指輪。魔法陣らしきものが刻まれていて、不思議な力を感じた。
    「これじゃ、ダメ、なのか?」
    「ダメなんだって……。なんか学長命令らしくて」
     そういいつつも、あらゆる方法でなんとかしてみると諦めてはいないようだった。
    「そうだ、旅人なら寝床必要だよね。一部屋空いているから、そこ使っていいよ」
     ソルシィは扉の向こうを指し、今日の寝れる場所を案内してくれた。
    「ありが、とう……」
     だが、不思議と思った。彼女以外の人、例えば両親等はいないのだろうか、と。
    「嬉しいん、だが、その親とかは…」
    「ああ、それ?うん、いないんだ。事故で亡くしているから。だから気にしないで」
     彼女はさらり、とそれを言った。
    「だから、何も気にしなくていいよ」
     その時の表情は見えなかったが、悲しかったのかそれとも悲しくなかったのか。
    それはわからない、オレが知る由もない。

     オルロ、とオレを呼ぶ声が聞こえた。
    ああ、これはあの夢の中なんだな、とその声でわかった。
    「また、あんたなの、か」
    『オルロ、貴方は――』
     柔らかい、あの声が白い空間を満たす。
    『貴方は、何者かに狙われるでしょう』
     何故?オレは誰かに恨みを売るような事をしたのだろうか?
    『その者と、戦いなさい。そしてこの果てにある世界まで——』
     待ってくれ、と声をかけた。だが、白い空間は崩壊し、オレは奈落の底へと落とされる。

     落とされたと同時に、夢から覚めた。
    そっと起き上がるが、あの夢の言葉は忘れていなかった。

    ——貴方は、何者かに狙われるでしょう

    「何が、起きるん、だ……?」
     ぎゅっと毛布を握りしめる。今まで危険なことがなにもなかった旅。
    これから何が起こるのか。ただ恐怖だけでしかなかった。

     下へ降りると、ソルシィがすでに起きて何か準備をしていた。
    「おはよう。そうだ、君もご飯食べるよね?一応準備しておいたから」
    「あ、ありが、とう…」
     何か恩を返せなければ、と思うが思い浮かばない。
    オレは今まで誰かに物を与えることや、贈り物などをした事がないからだ。
    「一宿一飯の恩……」
    「いや、それはいいよ……」
     あきれ気味にソルシィが言う。彼女はそういうのいらないから、ときっぱり断りを入れてきた。
    「それよか、どうするの?もし暇だったら、私の練習に付き合ってもらったら嬉しいんだけど……無理だよねー……」
    「いい、ぞ」
     本当!?とソルシィは笑顔で答える。
    彼女と行動すれば、もしかしたら道中でオレを知る人がいるかもしれない。
    それにここをむやみに歩くのも危なさそうだと、そう判断したからだ。
    「じゃあ、魔法学校の裏にいきましょ!」
    「昨日の、ところか」
     急いでご飯を食べて、オレとソルシィはその場所へと向かう事にした。

     道中、すれ違う人からソルシィは声をよくかけられていた。
    〈ぼーいふれんどなの?〉
    〈彼はなにものなの?〉
     オレに対する質問もたくさんあった。ただ、どう答えていいのかわからなかったので、回答は全てソルシィにまかせた。
    その判断は正解ではあったが、代わりに彼女が答え疲れていたのだった。
    「いやー……あいつらマジないわー」
    「すまな、い…」
    「いいよいいよ、いつもの事だから近所の人たちは」
     彼女を見る限り、ではあるが。近所の人とはわりと仲が良く見える。
    人当たりも良く、普通の少女のように見える。が、どことなく彼女からは何か、ふわっとしたような力を感じる。
    それはなんなのかはわからない。けれど、その力はきっと悪いものではない、となぜか判断できる。
    「さあ、着いたよ。ここが私の特訓場!」
    「……ただの森、だな」
     魔法学校の裏に存在する緑が生い茂る森。ここは知る人ぞ知る、修行場といわれているという。
    「さて、始めますかー」
    「……オレは何を、したら、いい?」
    「あ。そうだねー…」
     普通に見ていてほしいと言われた。見る人も重要らしく、自分では認識できていない部分があるからだという。
    「さーて、いきますか!」
     学校から支給されている魔法具を構え、彼女は魔法を出すのに必要な呪文を唱える。
    「水よ、猛き龍に変化し、その木にまとわりつけ!」
     勢いよく唱えるが、水はぐにゃぐにゃと蛇のような状態になり、次第に水になって地面を濡らす。
    「……やっぱりか」
    「形、少しだけなってた、な」
    「形だけは…ね。でも結局維持はわずかにしかできていないのよね、これが」
     はあ、とため息をついたが彼女はそれでもめげずに挑戦する。
    「すごい、な」
     今までの旅では、誰かと深くかかわる事はなかった。それはオレがかかわろうとしなかったから。
    でもこうやってかかわってみて、改めて人のすごさを間近で感じている。
    彼女の諦めない心は羨ましい。それをぽつりと思ってしまった。
    「んー……そろそろ格闘系もしたいな」
    「え」
    「というわけで、オルロ手合わせできる?」
    「は?」
     何故かオレはソルシィと手合わせをすることになった。剣と魔法で。



    「おんどりゃー!」
    「……ッ!」
     彼女は魔法だけじゃなく、格闘技までできた人だった。
    魔法がうまくいかないなら別の分野で。それならば格闘技を極めようと、こっちも練習していたという。
    傍らでやっていたとはいえ、一撃が重い。
    オレがあまり剣技を磨いていたわけでもなく、通りすがりの旅人に一時期鍛えられただけで実戦はほぼなかった。
    「ほらほら!やられちゃうよ!」
     彼女の重い蹴りが剣に直撃する。一生懸命、短剣を盾にして防御に徹しているが反撃の機会はまだ見えない。
    「その剣はお飾りなんですかー!」
    「ち、ちがう…」
    「じゃあ、もうちょっと踏み込んでみなさいよ!」
     踏み込む。ならばこうしてみよう、とオレは短剣を改めて構える。
    ソルシィが飛び込もうとしようとした瞬間。彼女の懐に踏み込む。
    「これ、でッ…!」
     短剣の柄が彼女の脇腹に当たる。彼女はその場でしゃがみこみ、やるわねと一言笑顔とともに言い放った。
    「すす、すま、ない」
    「大丈夫!かるーく当たっただけだし問題はないよ」
    「で、でも」
     狼狽えるオレにソルシィは大丈夫、とまた言ってくれた。
    「それに、そろそろ練習切り上げないと」
    「え?」
    「今日、なんだ。試験」
     魔法学校に大きくそびえたつ時計台を見ると、時刻は16時となっていた。
    「17時に試験があるんだよ。いままで練習付き合ってくれてありがとうね」
    「だ、だが、まだ魔法は…」
    「ぶっつけ本番?かな。でもやってみるよ」
     彼女は笑顔で魔法学校の中へと入っていく。オレはそれを見守る他ない。
    「どうし、ようか…」
     彼女と別れ、オレはこれからどうしようと考えていたその矢先だった。
    「貴方が、例の。」
     上から女性らしき声が聞こえた。ふと見上げると、木の上に紫の長い髪の毛をした少女が立っていた。
    「だれ、だ?」
    「死んでください。計画のために」
     その瞬間、彼女の手からは魔法が放たれオレはそれを咄嗟に避けた。
    「まさか、夢、の」

    ——貴方は、何者かに狙われるでしょう

     この言葉が過る。まさかこの事だったとは。
    「お前は、誰だ」
    「…まあ名乗っておきましょう。私の名前はレフォーヌ。とある方に頼まれて貴方を殺しにきました」
     レフォーヌは表情を何一つ変えずに、淡々と目的を述べる。
    「なぜ、オレを殺す」
    「それは秘密です」
     会話しながら彼女は次々と魔法を放つ。それをオレは必死に避ける。
    手には剣ラフィニルトを持っているが、なかなか反撃ができる隙がない。
    「なんとか、しなければ…」
     するとレフォーヌは突然魔法学校に向けて、魔法を放った。
    「!? 一体、何を…」
    「ああ、ごめんなさい外しました」
     人形のような顔でさらりとそれを言った。けれど、放った先にはおそらく——
    「そ、ソルシィ!」
     急いで魔法学校の中へと入っていった。


     瓦礫交じりの廊下を走ると、そこにはソルシィがいた。
    「あ……!オルロ!これは一体何…?」
    「戻って、きたのか」
     どうやらソルシィは、爆発音を聞いてこっちへ来たという。
    だが試験の時間が差し迫ってきているというのに。
    「でも、試験は」
    「あ、そうだった……ってオルロ後ろー!」
     後ろを振り向くと、レフォーヌが瓦礫の上に座っていた。
    「お仲間さんですか?」
    「なか、ま…じゃない、この人は関係、ない!」
     彼女に向けて剣を構える。相手はこちらだ、ソルシィは関係ないのだから。
    「ソルシィ、今のうちに試験の、ところへ」
    「いやいや!絶対そういう状況じゃないよね!?」
    「ただオレを殺したいだけって話、だから」
    「でもそれ危ないやつでしょうが!!」
     それでも行ってほしい。必死に説得して、オレはソルシィに行ってもらうようにした。
    「き、気を付けてよね…!」
     ソルシィはそう言って廊下の奥へと駆けていく、はずだった。
    「させませんよ。私の顔を見たのなら、貴女も殺します」
     ソルシィが行くべき道を、レフォーヌが魔法で遮った。
    これで試験会場へ行く道がふさがれてしまったのだ。
    「嘘、でしょ……」
     彼女の目には涙が浮かんでいた。せめて彼女だけは、と思っていたのだが。
    「オレが狙いなら、オレだけ、でよかったはず」
    「言ったでしょう?私の顔を見た人は殺す、と」
     レフォーヌは冷たく言い放つと同時に、再び魔法を放とうとしていた。
    「しまった…!」
     やられる、と思った瞬間、オレは目を閉じ手で頭を守る体制に入った。
    「……あ、れ?」
     魔法は何一つこない。どころか、目の前にはソルシィが立っていた。
    「ふ、ふざけんじゃないわよこの人殺しウーマン!!!私の学校人生をつぶして何が楽しいのよ!!」
     突然、彼女はぷつりと切れたかのように、レフォーヌに怒涛の文句をぶつけていた。
    「だから、なんですか」
    「だからじゃねー!ああもう怒ったわ!!この魔法でぶん殴ってやる!!」
     ソルシィは学校の魔法具を捨て、使えると言っていた銀の指輪をはめた。
    「可愛い女の子であっても容赦しないから!」
     彼女の得意とする格闘技、そして魔法を織り交ぜた術でレフォーヌを翻弄していた。
    「な、なんですかこのヘンテコな術は…!」
    「ヘンテコで結構!」
     先ほどの練習のように魔法が出せなかった彼女の姿は、そこにはなかった。
    とにかく攻める、攻める。圧倒されるような術と格闘技で、レフォーヌは狼狽える。
    「これでどう!?」
    「甘いですよ、貴女」
     その瞬間、ソルシィはレフォーヌの魔法を思いっきり喰らった。まるで待ってましたと言わんばかりに。
    「ソルシィ…!」
    「くっそお……」
     吹き飛ばされた先に彼女はうずくまっていた。
    するとレフォーヌは目先をオレへと変え、やっと殺せるとつぶやく。
    「あの子は後で殺してあげましょう。まずは貴方から」
    「させ、ない」
     とくん、と何かが脈打った。それはラフィニルトを通して、聞こえた脈動。
    「関係ない人は、殺させない」
     短剣が、いやラフィニルトが一回り大きくなる。
    それはいわゆる普通の剣と呼ぶべき大きさとなった。
    「成長したなんて……そんなの聞いていない…!」
    「成長……」
     そう言うにふさわしい姿だった。光輝くラフィニルトはオレの言葉に応えたのか、見事に成長した。
    「放つは、未来」
     自然に言葉が浮かんでくる。まるでオレのために用意されたかのような言葉。
    「穿つは、守るべき力」
    より一層、剣を持つ力を強くする。

    ——応えよ、時の聖剣ラフィニルト。悪しきものを止める力を、今ここに。

    「な、なに、これ——」
     剣に満ちる力と光。それはレフォーヌに向けて放たれた。
    だが彼女はぎりぎりのところで避けたようだ。
    「こんなの、知らない。こんなの、あの方から聞いていない…!」
     そう言いながら、彼女はすっと消えていった。
    「なんとか、追い払ったみたい…?」
    「だ、な」
     瓦礫の中、オレとソルシィは気が抜けた状態でいた。
    あの力はなんだろうか。あの言葉はなんだったのか。
    今はわからない。けれど、これはオレの記憶に関係することなんだろうか?


     魔法学校の時計台から鐘が鳴り響く。それは17時を知らせる鐘の音だった。
    「あー……終わった。私の学校人生終わった」
    「す、すま、ない……オレが、わ、わる…」
    「泣かない!それに私は平気だよ。なんとなーくだけど、行っても落ちる運命だったのかもしれない」
     薄々気づいていたという。たとえ進級したところで、その先もまた同じような苦しみが待っていただろう、と。
    「だから案外平気なんだけどさー…。退学になるわけだから、まあオルロにも責任取ってもらおうかな」
    「え、オレ、お金、ないぞ……」
    「いや、そういうのじゃなくて」
     彼女はにたり、と笑った。これは悪い方の、笑い方というやつか。
    「あのね、もし大丈夫なら私もオルロの記憶を探す旅に同行したいの」
    「……え、あ?」
    「だって、一人より二人いた方が記憶を探す効率よくない?ね、ね、私戦えるしどう?」
     ソルシィはずいずいと、オレに同行したいという。多分、二人でも次の世界と別の時を渡れる、はずだと思うのだが。
    「だが、旅はそんなに…」
    「あーもー、あんたが!私を!退学させちゃった!!……っていうのはまあ冗談なんだけどー」
    「あ、ああ……。えっと、はい…、あの、どうぞ……」
     きゃっきゃと笑う声が聞こえた。ガッツポーズをして、大変喜んでいる様子だった。
    オレは胃が死ぬかと思った。まあ、でも彼女をそうさせてしまったのはオレの責任だ。
    「じゃあ、行こう、か」
    「え?もういいの?」
    「ああ、ここ多分、ない気がするから。オレの記憶」
     何故かその世界の時を渡ると、そこに自分に関する情報があるかどうかを直感でわかってしまう。
    実は、あの魔法学校で出会った夜からすでに知ってはいたのだが。
    「ふーん、まあいいか。じゃあ次行く所にあるかもしれないんだね」
    「そう、かも」
     そこに記憶の手がかりはあるのか、それともまたレフォーヌという少女と出会い、戦うかもしれない事もある。
    どっちにしろ、次の世界と時を渡らなければ。
    「じゃあ、行こう、か」
     鈍く光る壊れかけた銀色の懐中時計を、宙に投げる。
    すると、オレとソルシィを包むかのようなまばゆい光が時計から発する。
    「お、おお!」
    「頼む……」
     光に包まれ、飛ばされた先は――




    黒いビル群が立ち並ぶ場所。そこは未来でも過去でもない世界。
    だが、現代とも言い難い何か。
    そこに一人の鋭い目つきをした少女が、雨が降りしきる中立っていた。

     彼女との出会いは、もうすぐ。




    時旅人第2話に続く…














    空鳥ひよの Link Message Mute
    May 16, 2019 2:30:00 PM

    時旅人第1話「少年と少女は出会った」

    時旅人リメイクです。全8話予定…のはず!
    というわけでよろしくお願いします。
    #創作 #オリジナル #ファンタジー

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