流刑 ……ザザァー……ザザァー。
波と砂がおりなす音に目を覚ますと、見知らぬ海岸が広がっていた。
海岸?これは海岸だ……と確信している。では自分は誰だ?
「では今日から働いてください、カルエラ」
「はい、支配人。お世話になります」
島には姚桜館という旅館があり、カルエラの使命はここで働く事だと支配人は言った。
「あなたには別館を管理しているアネモネのサポートをお願いします。まずは彼から仕事を受けるといいでしょう」
「……」
青々と伸びた蔦、ボロボロの外壁、この朽ち果てる寸前の建物が別館であるとは思いたくない。錆びた門を通り、ギィ……と入り口をゆっくり開けた。
明かりがない館内は斜陽が差すところだけ鮮やかにうつる。そこには、床に転がっているホウキと何者かの指先が見えた。
「あの、大丈夫ですか?」
アネモネはぼろぼろのソファに座ってティーカップから水を飲んだ。
「新人くん、嬉しくも絶望的なことに仕事はないんだよ」
「え……アネモネさんは今まで何をしていたんですか」
ホウキとアネモネを見ながらカルエラはたずねる。
「そうだなあ、ドアを直したり、草を刈ったり、床を掃除したり。でもずっと前から寝ちゃってさ、君が来たおかげで起きることができたよ……」
斜陽は相変わらずアネモネの手元をうつす。
「カルエラだっけ、君は自分のけいきを聞いていないの?」
「けいき?」
「刑期、ええっとつまり、いつまで働くのか」