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  • 端黒つな Link Message Mute
    Jun 13, 2018 4:09:57 PM

    #そのうち消す #アイドルマスターSideM #東アス
    しのあすいちゃこら

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    • 3【ヒプマイ】シブヤ #ヒプノシスマイク  #飴村乱数  #夢野幻太郎  #有栖川帝統  #FlingPosse
      ※過去絵
      癖になっても知らないよ(1枚目)



      詳細公開前の今しかできない妄想と初見の印象(2-3枚目)
      端黒つな
    • #そのうち消す  #アイドルマスターSideM  #アスラン=ベルゼビュート2世
      正直ペン入れ前の今が一番かわいいんだよな…
      端黒つな
    • #そのうち消す #アイドルマスターSideM #アスラン=ベルゼビュート2世
      このアスランめっちゃかわいく描けたと思いませんか?わたしは思います
      端黒つな
    • #アスラン=ベルゼビュート2世  #東雲荘一郎  #ツバキ=鳳  #リナト=クリロワ  #冬美旬  #神谷幸広  #アイドルマスターSideM  #マジカルデイズ

      左が5分で描いたもの。右が、それを下書きにして10分で努めて清書したもの。5分じゃ人に見せられる絵にはならないなあ…
      端黒つな
    • 【ロンパV3】あんたに会えたことだけは #ニューダンガンロンパV3  #赤松楓

      ネタバレは本編のみ、ほんのり赤春っぽい

      これhttps://galleria.emotionflow.com/48357/438655.html(百最R18なので注意)と同軸の話でオーディション赤松さん視点。続きではないので単品で読めます。
      V3の世界は全てプログラム、オーディションの映像と観客は本物で全員生きてるという特殊な設定です。キャラが原型とどめてなかったりするので注意。

      この設定で色々妄想が膨らんで楽しいのですが、あまりにオリジナル要素が強すぎてどうしようって感じです。



       息ができなくて、朦朧とした意識がふっと途切れた。
       ああ私死んだんだ。……あれ、でもそれじゃ今考えてる私は何? と危うく哲学的な思考に陥りそうになった瞬間、目の前に表示された文章。それを読んで、私は自分が何者だったか思い出した。

       GAME OVER
       ヘッドギアを外してください。

       その文章に従って、ヘッドギアを外す。現れたのはゲームの中で死んだピアノバカの赤松楓じゃなくて、このくだらない世界でくだらなく生きてきた一般人の赤松楓。
       重苦しいヘッドギアだったけど、そんなに長い時間かぶっていなかったから特に首は痛くないし、髪に癖もついていない。
       周りを見てみると、ヘッドギアをかぶって夢中でゲームをしているらしい制服姿の男女が十四人。とは言ってもコントローラーも何も持ってないし、表情もほとんど変わらないから傍目からじゃゲームしてるなんてとてもわからない。他には、誰も座っていない一人掛けのソファが一脚。天海の席だろう。
       静寂が支配する空間に、ドアの開いた音が響く。知らない人だけど、この部屋に入ってくる人なんて、チームダンガンロンパ以外に無い。
      「お疲れ様でした。待機用のお部屋にご案内します」

       今まで体感していた世界はすべて「ニューダンガンロンパV3」というゲームだった。ゲーム。仮想現実。虚構。嘘っぱち。
       才囚学園なんてどこにもなくて、超高校級の才能なんて誰も持っていない。コロシアイもモノクマも存在しない、平凡な世界。それが現実。
       ゲームの中の赤松楓は、私であって私でない。私は私であることを忘れて、ゲームの中の赤松楓を演じていた。役に入り込みすぎて自分を忘れた俳優みたい。
       演じたといっても、ゲームの中でおしおきを受けて感じた文字通り死ぬほどの痛みとか、首謀者と間違えて殺してしまった天海の死体を見てこみ上げてきた後悔や絶望感、その他諸々の感情だって全部本物。
       おしおきを受けて死んだはずの私は、実際はこうしてピンピンしている。同じように、私が殺した天海も生きている。死ぬ体験をしておいて生きている人間なんて、広い世の中探しても私たちしかいないでしょうね。なんて滑稽。

      「あ、赤松さん。おつかれっす~」
       さっきの人の案内で脱落者の待機部屋に入ると、ゲームの中よりも更にチャラい話し方の天海がこっちを向いた。
       まさか、待機部屋って全員同室のつもり? デリカシーなさすぎ。殺し殺された仲なのに、仲良くおしゃべりなんかできるほど神経図太い人いると思う?
       声には出さずにチームダンガンロンパに向かって毒づく。顔には出てるかも。
       部屋は大学の教室みたいに長机と椅子が同じ方向に置いてあり、正面には大きなモニターがある。観ると、学級裁判が終わって落ち込んだ様子の最原が映っている。ああ、全国放送してるニューダンガンロンパV3って訳ね。
       おしおきのすぐ後は何があったかわからないけど、最原、ゲームの中の私のことを想ってかめちゃくちゃ沈んでる。満身創痍って言葉がぴったりだ。
       バッカみたい。本物の私はまっすぐな正義を持ったキャラじゃないし、そんなひねくれた私は平然と生きてるってのに。

       私は少なからずショックを受けていた。ゲームの中の私は、「超高校級のピアニスト」だった。身体能力なんかは全く人並みだけど、いつも前向きで、簡単には諦めず、目標に向かって突き進んでいける。暴走しがちではあるけど、人に笑顔を見せられて、励まして一緒に歩いていける人間だった。なのに、なのに。
       本当の私は、ひねくれ者で、人間不信で、なんの取り柄もなくて、ダンガンロンパがちょっと好きなだけのただの高校生だなんて、絶望的だ。

       長丁場になるからか、スナック菓子やペットボトルの飲み物も用意してあった。
       ジュースを取って、適当な席に座る。天海と話したくないから近くはない席にしたのに、天海は私が返事しなかったことも気にせず一人でペラペラ喋ってきた。
      「いや~参ったっすよ。せっかく二回目に挑戦できたんだから、一攫千金狙ってもう一度生き残りたかったっすけど。あ、別に赤松さんを責めてるんじゃないんで! まあ一回目最後まで残ったから、そこそこもらえてるんすけどね。」
       こっちが何も言っていないのに、一人で喋り倒しては笑っている。まあ、自己完結してる分相手しなくていいから楽だけど。
      「それにしても、まさか赤松さんが真っ先にコロシアイを始めるなんてね。あっちの赤松さんの設定って、めちゃめちゃ正義感あるキャラだったじゃないすか。すんげー意外っすよ。赤松さんってダンガンロンパ霧切はカバーしてます? 七村彗星のセリフ、思い出しちゃうんすよね~……。『鉄は折れにくい一方で、一度曲がると元に戻りにくい。君みたいな子が一番危ういかもしれないな』……なんちゃって~、似てましたか~? いやいや、小説だから似てるかなんてわかる訳ないっすよね!アハハハ」
       なんで、そんなに楽しそうに話せるんだろう。私、天海のこと殺したのに。天海の考えてること、全くわからない。
      「あっ、観てくださいよ。最原くん、帽子取りましたよ。こうして見てみると結構イケメンじゃないっすか。こっちの最原くんも確か帽子持ってたっすよね。もったいないな~。取ったら意外とモテるんじゃないすか?」
       私にとってはそんなの心底どうでもいい。喋ってないと死ぬの?
       たまらず口を開いた。居心地が悪いからじゃない。私のことなんか構わず喋り倒す天海にイライラしたからだ。思わずトゲトゲしい口調になる。
      「あのさ、天海は私のこと本当に恨んでないの? 私だったら、いくらゲームの中でとはいえ自分を殺した人間なんかと話したくないんだけど」
       私が初めて口を開くと、天海はちゃんとこっちを見た。ハッとしたような顔だ。
      「もしかして、喋るの迷惑だったっすか? すんません、うるさくて……。さっきまで一人だったのが寂しくて、赤松さん来てくれたのが嬉しくて、つい……。あ、俺、赤松さんのこと恨んでないっすよ。だって所詮はゲームですし。痛かったのはすげー覚えてますけど、おしおき受けた赤松さんもそれは一緒っすよね。それに、やったのはあっちの赤松さんで、こっちの赤松さんじゃないっすよ」
       天海はこちらの考えも知らずけろりと言い放つ。結局またペラペラ喋ってるし。恨んでないって言うけど、やっぱり信じられない。だって、正論でみんなを振り回しておきながら、真っ先に殺人しちゃった奴なんだよ。
       返事はできず、天海の顔を見ることもできない。ほっといたら天海はまたモニターを観ながらなにやら喋ってる。
      「東条さんの作ったご飯めちゃめちゃうまそうっすね~……。っていうか、ゲームの中で食べたんでした。はあ~、毎日あんなうまい飯が食えたらなあ~。うち、片親しかいなくて貧乏なんすよ。自炊なんかしてる余裕ないからいっつも冷食で。栄養バランスなんて考えたこともないっすよ」
       別に聞きたくもない話だけど、耳に入るのがこれかモニターの音しかないので、まあ適当に聴いていた。特に返事をする気はしなかった。

       ガチャリと扉が開き、三人目の脱落者がやってきた。
      「お、星君。お疲れ様っす……ってあれ!? 次の殺人起こっちゃったんすね」
      「おう……天海、に赤松。ああ、まだ俺の死体が発見されてないってことか」
       俺の死体って謎ワードすぎじゃない?
       星は私と同じように、ペットボトルを取り天海の二つ隣の席に座った。私の位置からは、二人の頭が見える。
      「この部屋ってネタバレ配慮とかなんも無いんすね!まあ参加者なんだから我慢しろってことすかね~。おっと、じゃあ犯人は言わないでくださいよ星君。俺、観ながら推理するんで」
      「別にわざわざ言う気はねえよ。……天海、あんたのことはV2でも観てたが、ゲームの中とは随分雰囲気が違うんだな」
      「アハハ、実際の俺はあんな頭良くないっすから。ハズいっすけど。そういう星君は、あんまり雰囲気変わんないっすね」
      「ふん、そうかもな……。だが、現実の俺はゲームの中の俺とは決定的に違う。こっちが現実で安心したぜ」
      「へえ……なんすか、その違いって」
      「俺には、家族や友達がちゃんといるのさ。あっちの俺は、孤独だった。モノクマーズの動機ビデオがあっただろう? あそこには何も映っちゃいなかった」
      「動機ビデオ? あれ、他の人のと交換された人もいたみたいっすけど、星くんは自分のだったんすね」
      「そうだ。俺は自分にとって大切な人が誰もいないことを知って、生きたいと思う理由がなくなった。だから死んだのさ」
      「星君……」
      「でも現実の俺には、大切な人がちゃんといる。今の俺には生きる理由がある。早めに目を覚まさせてくれた犯人には、感謝したいくらいさ」

       モニターから人が減るにつれ、霊界とも言えるこの部屋に人が増えていく。その度に天海は声を掛け、話を聞いていく。私はぼうっとモニターを眺めながら、ずっと話半分で耳に入ってくる音を聴いていた。

      「私は、愚かだった……。みんなのために、国中の人のためになると思ってしたことだったのに、本当の私はこんなにちっぽけな人間だった。人のために何かできたことなんて一度もない。人にしてもらってばかり。星くん、本当にごめんなさい……。謝って許されることではないし、あれが現実ではないこともわかってる。でも、私は自分の傲慢さが恥ずかしくて……」

      「ゲームの中のアンジーは無邪気に神さまを信じてたねー。現実のアンジーは、神さまなんていないのわかっちゃってるから、すごく羨ましいよ。でも、ダンガンロンパに出られたからアンジー人気者になれるかな? 殴られてすごーく痛かったけど、人気者になれるならへっちゃらだよー」

      「転子はどうしてこんなに弱いんでしょうか……。ゲームの転子は、精神的にも物理的にも強かったのに。人を励ますことができるくらい、強かったのに。現実の転子にも、嫌なことは嫌って言える勇気が欲しいです……」

      「もう一人の僕は、心から姉さんを愛していたヨ。でも、今本物の僕には姉もいないし、愛している人もいないんだ……。愛する人を失って、僕の心にぽっかりと空いてしまったこの空虚な穴は、埋まることはあるのかな? どうすれば埋まるんだろうネ……?」

      「オ、オレ様ってさぁ、チャラくて軽いのは認めるけどよ、いい、いくらなんでもあんな下ネタのオンパレードは流石にひでーんじゃねーかぁ……? あ、ああ、あそこまでのビッチじゃねーからな! 勘違いすんなよ……。明日から、学校でからかわれたら、ど、どうしよぉ~……」

      「ゴン太、ゲームの中に戻りたいよ……。ゲームの世界は死にたいと思うくらい大変なことになってたけど、一緒に過ごしてたみんなはすごく優しかった。でも、ここはそうじゃない。ゴン太の友達はみんな優しくない。家族も優しくない。ゴン太、こんな世界嫌だよ……!」

      「ふ、ふふ……。あんなに軽々嘘ついて、楽しかったな……。現実でもあれくらい自由に嘘がつければいいのに。オレはずっとつきたくもない嘘をつかされて来たからね。あーあ。報酬のお金で一人暮らしでもできたらいいのになあ。」

      「クソっ、ムカつくぜ。なーにがボスだ。カッコつけやがって。オレはあんなタマじゃねーってのによ。まさかこのオレが一番嫌いなタイプのキャラ設定にされるとはな。チームダンガンロンパのヤツには、一度痛い目見せねーと気がすまねーな」

       あーあ。みんな何かしら病んでるじゃん。本当に、ヤバいゲームだよね。

       私はダンガンロンパが大好きでこれに参加したわけじゃない。友達に勧められて、過去のゲームをやってみたら面白かったから。でも、今はもう大っ嫌い。ゲームの中で聞いたリアルコロシアイエンターテイメントっていうのが事実じゃなくてまあ良かったとは思うけど、私たちにこんなトラウマ体験を与えて平然としている世界は、どう考えても狂ってるよ。

       相変わらず天海が他のメンバーとくっちゃべっているのを聞き流し、ゲームの中の最原たちが黒幕の手がかりを探しているのをぼーっと眺めていたら、そんな私の目を覚ますような物が目に飛び込んできた。
       隠し部屋から見つかった、砲丸。最原が調べてる限り、ピンクの繊維が付いてるらしい。
       どういうこと……?
       と声を発しようとした唇は、
       ガターン!!!
       椅子が倒れたシャレにならないくらいデカい音に阻まれた。
       音の発信源に驚いた全員の視線が集まる。その視線の先には、若草色のやわらかそうな髪。
      「……な、なんすかこれ。どういうことっすか……なんで砲丸が黒幕の隠し部屋に処分されてるんすか?」
       天海だ。
      「俺、赤松さんに殺されて、もう一つの砲丸は赤松さんが処分したんじゃないんすか……? 隠し部屋に捨てられてるってことは、黒幕に殺された? それで、赤松さんに罪をなすりつけた黒幕が生きてる? はあ~? わけわかんないっすよ!!」
       キレたらしい天海はすごい剣幕で、正直怖くて誰も一言も喋れなかった。唯一平気な顔をしている百田は興味なさそうで動く気配はない。
      「おかしいと思ったんすよ!! 俺は床に落ちた砲丸を見たから、赤松さんが転がした砲丸は二つだと思ってたのに、誰も数にはツッコんでなかった。赤松さんが一番に俺を発見して、当たらなかった砲丸を処分したんだと思ってたのに、第一発見者は四人だった!!」
       ……へ? 床に落ちた砲丸? 天海は何言ってるの?
      「あ、天海くん。落ち着いて……」
      「落ち着いてなんていられないっすよ! 俺は、なんとしても大学行くための金が欲しかったんすよ!! そのために、参加したってのに……黒幕の不公平なプレイで賞金が減らされるなんて、冗談じゃないっす!!」
      「いいから座れ、天海。あんたがここで暴れても、チームダンガンロンパの奴らには何も伝わらねーだろ。抗議するなら感情じゃなくて理性でしな。それに、お前の話が本当なら害を被ってるのはお前だけじゃねーだろう」
       天海の一番近くに座っていた星が諭す。頭に血が昇って真っ赤になった天海の顔は、徐々に落ち着きを取り戻していった。
      「……そうっすね。星君の言う通りっす。ありがとうございます」
       天海がすまなそうにチラッとこっちを見る。な、なにそれ。私どうすればいいの? 怒ればいいの?泣けばいいの? でも天海の顔はこちらの言葉を待っている顔だ。何か言わなきゃ。混乱してなにがなんだかわからない頭で考えたせいで、口走ったこともよくわからない。
      「……と、とにかく、最原が全部謎を解いてくれるんじゃないの」
       どうせ私は考えてもわからないし。私の真実は、全部学級裁判でぶちまけた(いや、最原にぶちまけさせたんだ)。それ以上の証拠は持っていないし、あとは任せて判決を受けるだけ(いや、もう受けたんだけどさ)。別に報酬は興味無いから少なくたっていいんだけど(いやでも、無駄に受けたおしおき分くらいはくれてもいいんじゃないの)。ああもうわかんない。続きをちゃんと観てればわかるよきっと(今までテキトーに観てたのに急にちゃんと観るようになるなんて、チームダンガンロンパの策にハマってる?)。
       私の言葉に従うように、みんなモニターを見つめて口を開かなかった。

       結局、私は無実で、天海を殺した犯人は黒幕の白銀だった。私はおしおき損ってこと。あんなに痛い思いしたのにね。天海は抗議して報酬上げてもらいたいみたいだけど、私は正直面倒くさい。フェアなプレイにこだわってたフリして、観客が見てないところで不正だなんて、結局ダンガンロンパもそんなもんってことだ。上っ面だけいい顔してる奴らと同じ。
       ま、最初から信じてなかったけど。

       もう結末もどうでも良かったから、ちゃんとは観ていない。
       白銀とキーボがおしおきらしいけど、黒幕の白銀は他にもやることがあるのか、この部屋にはキーボだけが来た。人間だったからみんな驚いてた。ゲームの世界に入る前は、みんなの顔なんかちゃんと見る機会なかったから当然だ。
       みんなとキーボの話も途切れた頃、白銀が生き残りの三人を連れてきた。生き残りは、明らかに私たちと違う表情をしていた。白銀を前にして天海はまた怒りがこみ上げてきたのか、不機嫌な表情のままだから三人に挨拶もしない。すると自分から三人に声をかける人はいなかった。なんて声を掛けていいのかわからなかったのかもしれない。
       全員が揃うと、白銀が色々と説明を始めた。この後の流れだとか、出演料のことだとか。ゲームと現実を混同しないようにカウンセリングが受けられるらしいんだけど、全員受けた方がいいんじゃない。私は受けないけど。
       もうダンガンロンパに興味が無くなってきた私は説明をまともに聞いていなかった。膨大な資料も同時に配られたから、多分大事なことは書いてあるでしょ。

       はあ。私、なんでダンガンロンパに参加したんだっけ。友達が「赤松ってダンガンロンパに向いてそーだよね」とか言ったからだったっけ。特別仲が良いって訳じゃない。あの子は私が人を信用しないのわかってるみたいだし。でも貸してくれたダンガンロンパは面白かったから、参加したらもっと面白いんじゃないかって、そう思ってオーディションを受けたんだ。
       でも、全然面白くなんかなかった。よく考えたら当たり前だ。殺して殺されるなんて面白い訳がない。安全な場所から他人事として見てるからこそ面白いんだよ。
       面白くもなくて、つらい思いばっかりして、現実とのギャップに戸惑って、早期退場のせいで報酬も少ない。
       何のために参加したんだろう。オーディションなんて受けなきゃ良かった。

      「以上で説明は終わりです。質問のある人はいますか? ……ないみたいね。それじゃあ、今日は解散です。みんなお疲れ様でした」
       白銀が死ぬほど長い説明を終えて、ドアに向かおうと体の向きを変えた瞬間、
      「待って!」
       ガタタンと椅子と床が立てた大きな音とともに、一人の女子が立ち上がった。長い髪の二つ結びのおかげで、彼女は春川だとわかった。でもあの子の雰囲気、表情、言葉遣いは、ゲームの中の春川とは全然似ていなかった。
       私を含めてみんな突然のことに驚いて、動きを止めて彼女を見つめた。
      「あのね、みんな……連絡先、交換しない? 私、せっかく出会ったみんなとの関係を、ここで終わらせたくないの!」
       え? 連絡先の交換? まさか、コロシアイをしたメンバーで友達になろうっていうの? 本気?
       心の中でつぶやいて、思いっきり顔をしかめてやった。似たように渋い顔をしている人は何人かいる。
       すると、また誰かが立ち上がる音がした。
      「僕は春川さんの意見に賛成だ」
       最原の声だ。それを聞いて、春川の表情はみるみる明るくなる。ほっとしたような顔。
       何、生き残りってそんなこと考えてたの? 三人はラストで寄り添って頑張っていこうって決意したから、その前向きな気持ちを現実にも引きずってる訳?
      「みんなでここを出たら友達になろうって、約束したしね」
       ……それを持ち出すのは卑怯だ。それを言ったのは私じゃないし、立場も状況も違う。最原にとっては大事な言葉かもしれないけど、勝手に使われるこっちの身にもなってほしいよ。
      「ボクも賛成です」
       もう一人口を開く。それは、ゲームと同じように白い肌をした、人間のキーボだった。
      「ボクたちはゲームの中で共同生活を行ってきましたが、人格はこの現実とは全く別のものでした。いわばここにいるボクたちはみんな初対面。ですが、ゲームの中で困難を共に乗り越えてきた仲間でもあります。ボクたちは、これから絆をつくることができると思います」
       そういえば、キーボは唯一悩みを話さなかったな。彼は私達と違って順風満帆な人生を送ってきたのだろうか。だからそんな能天気な発想になるのかな。
       みんなが視線をキーボに向けていたら、ドアに向かう姿勢のまま止まっていた白銀が、小さな声でふふ、と笑った。
      「黒幕が何言ってるんだって思われるかもしれないけど、わたしも賛成だな。黒幕の仕事も、地味に疲れちゃったんだよね」

       結局私みたいな反対派は、嫌そうに顔を歪めるだけ歪めて大きな声を上げないので、賛成派に押し切られて交換することになった。まあ、メッセージが来ても無視すればいいし、ほとぼりが冷めた頃にブロックすればいいや。
       面倒だけど、一人ひとりと順番につながっていく。IDを検索したり、QRコードを読み込んだり、方法は様々だ。
       私はほとんど喋らず、ただただ事務的に交換していった。ゲームの中と同じように帽子を目深にかぶった最原は少し話したそうな顔だったけど、急いでいたのか私の不機嫌な顔が怖いのか、「メッセージ送るから」と言ってさっさと次に行ってしまった。
       最後は言い出しっぺの春川だ。もう何度も繰り返した操作で、滞りなく連絡先が追加される。すると、
      「赤松さんのアイコンって、猫なんだ。可愛いね。飼ってるの?」
      「え? ああ、うん。二匹飼ってる」
      「へえ、二匹もいるんだ。いいね、ペット飼ってみたいな」
       私が返さないものだから、そこで会話は途切れる。でも春川はまだ話したいことがあるのか、動かないでこちらを見つめている。少しの間考えるような素振りを見せたあと、その小さな口を開いた。
      「あの、赤松さん……私と友達になるの、嫌かな……?」
       別に春川のことが嫌な訳じゃない。誰も殺してないし。むしろ、私は殺したんだけど。それでも友達になりたいの? 不思議。
      「……嫌っていうか。そもそも、興味が湧かないし。お互い、現実のみんなのことは何も知らないしさ」
      「そう、だから私、赤松さんのこと知りたいんだ」
       私は自分の後ろにあった机に寄りかかった。まっすぐな視線が、ひねくれた私にはむず痒い。
      「言っておくけど、私はゲームの中の私とは全然違うからね。混同されたら困るよ」
      「ふふ、そんなの当たり前だよ。私だって、『殺されたいの?』なんて、言ったこともない」
       今の演技、ちょっと上手かった。本人だから? 思わず笑みがこぼれた。
      「……それもそっか。暗殺者なんて流石にリアルにはいないよね」
      「そうだよ。あと、小さい子は好きだけど、孤児院育ちとかじゃないし。せいぜい親戚の子の世話をしたことがあるだけだよ。赤松さんは? ピアノは実際にやってた?」
       春川は鈴を転がすように笑う。私も少し楽しくなってついつい饒舌に。
      「うーん、小学生まで習ってたってくらいかな。最近は音楽にも触れてないし、今は全然弾けないと思う」
      「そうなんだ。部活とかはやってるの? 運動部? 私はバレーボール部なんだ」
      「へえ、バレーボール似合いそう。私は帰宅部。部活の上下関係とか、正直ダルくて」
      「ああ、結構大変だよね。先輩とうまく行かなくて辞めちゃう子もいるし」
       まるで教室でのお喋りのように、他愛のない会話のキャッチボール。ふと周りを見ると、部屋からはほとんどの人がいなくなっていた。春川もそれに気づいたみたい。
      「……私達も帰ろっか」
      「うん。駅まで一緒に帰ってもいい?」
       帰り支度を始めながら提案すると、春川がそんな風に訊ねてきた。人懐っこい子だなあ。
      「別に、いいよ」
       そう返す私も、結局人を突き放しきれないんだけど。

       駅までの道は覚えているから迷うことはないけど、私より少しだけ狭い春川の歩幅に合わせて、一人のときよりもゆっくり歩いていた。
      「春川は、どうしてダンガンロンパに参加しようと思ったの?」
       一度会話が途切れたのをいいことに、私は気になっていたことを春川に投げかけた。生き残りの三人からは聞きそびれていたし、特に問題を抱えていそうに見えない春川がどうして、という気持ちもあった。
      「えっとね……ダンガンロンパのちょっと不思議な世界観が好きっていうのもあるんだけどね。一番は、違う自分になってみたくて」
      「違う自分?」
      「そう。私はやっぱり、私としてしか物事を考えたり感じたりできない。でも、記憶を上書きされて、全く違う自分になれば、今はつらくて仕方ないことも、別の感じ方ができるんじゃないかって思ったの」
       驚いた私は、目を丸くした。まさか、ダンガンロンパにそんな利用方法があるなんて。しかもすごく前向きな理由じゃない。そんな動機で参加した人、他にいるのかな?
       だからこそ、気になってしまった。春川にそこまでさせたのは、一体何?
      「そんなことを思わせた、つらいことって……」
       好奇心に抗えず、素直に口に出してしまってから気がついた。こんなプライベートなことを、今日はじめて知り合った私に言う訳ないよね。でも一度発した声はどうしたって戻せなくて、尻すぼまりに小さくなるだけ。気を悪くさせちゃったかな。
       しかしそんな私の考えとは裏腹に、春川は一呼吸置いてからゆっくりと語り始めた。
      「私ね、おせっかいしすぎて、友達がいなくなっちゃったんだ。友達に何か頼まれたら断れなくて。っていうか、頼りにしてもらえるのが嬉しくて。私は友達だから力になりたいって思って、ノートをとってあげたり、宿題写させてあげたり、お金を貸してあげたりしてたんだけど、ある時聞いちゃったんだ。その子が他の子に向かって、『春川は都合の良いパシリだ』って言ってるところ」
       歩く先の道を見詰めた春川は、そこまで一息に話してしまった。やはり彼女にとって、簡単に話せることではなかったのだ。
      「すごくショックだった。私にとっては大事な友達だったのに、あの子はそう思ってなかったんだって。どうしてそうなっちゃったんだろう。私はどうすれば、あの子の友達になれたんだろう。一度別人になった今でも、よくわからないや」
       少しうつむいてそう言った春川は、少し涙目になっていた。
       私は、ゲームの中の自分が彼女に向かって言った言葉を思い出した。現実の彼女もきっと、愛が深いんだ。その愛を悪用されて、悲しんでいる。そんな彼女を見ていたら、私も悲しくなった。
      「自分を責めないでよ。それ、別に春川は悪くないんじゃない? 相手の子が春川の好意につけ込んでるってだけで。誰だって、相手のためになるならなんだってしてあげたいと思うでしょ。私だってそう思うよ。まあ、そこまで思う相手は、今までいなかったけど」
       横にいる春川の顔を見ながらそう言うと、彼女は驚いたようにぱちぱちと目を瞬かせた。
      「今までそんなこと言ってくれた人いなかった。みんな言うんだ、甘やかしすぎなのがいけないって。でも、私はあの子を躾けている保護者じゃないんだから、甘やかしてるっていうのが腑に落ちなかったんだ」
      「あー、まあ確かに甘やかしてるとは言われそうかもね。でも、私はそうは思わないよ。どっちかって言うと、その子をそんな甘えん坊に育てた親が悪い」
       暗かった春川の顔が、元に戻った。うん、春川はそっちの方が似合ってると思う。
      「……赤松さんって良い人だね。あのオーディションの映像観て、私誤解しちゃってたかも」
      「えっ、なにそれ? ……ってそりゃあ、あれ観たら冷たい人間だって思うよね。まあその通りなんだけど、誰も信用しないって訳じゃないし……もう、あの映像使うなんて思ってもみなかったよ」
       撮られているなんて全く気が付かなかったから好き勝手言っているし、あんなのを全国に公開されたなんて恥ずかしい。つい頭の後ろを掻いてしまう。
      「赤松さん、全然冷たい人じゃないよ。はっきりズバズバ言うタイプだけど、ちゃんと心がこもってるもん。ねえ、私のことは……信用してくれた?」
       春川が小首を傾げながら訊ねてきた。
      「え? ……うーん、今は、信用してるよ。さっきの話をしてくれたのは、私を信用してくれてるからでしょ? フリじゃなくて、ちゃんと信用してくれる人は、信用できるよ」
      「良かった。ね、人を信用できなくなったきっかけって、聞いてもいい?」
       春川も話してくれたんだから、ここは筋を通すべきだよね。抵抗も特に感じなかった。絆されてるなあ。
      「いいよ。って言っても単純なことだよ。昔親友だった子に弱みとか恥ずかしいこととか全部話してたら、クラスみんなの前でバラされたってだけ」
       こんな話、今となっては笑い話だ。本当に笑う奴がいたら殴るけど。春川は笑わないってわかってる。
      「思えば、春川と一緒だね。親友だと思ってたのは私だけ。親友だから、誰にも話さないって信じて秘密を話したのに。それから、もう簡単に人を信用するもんかって思ったよ」
      「……そっか。私達、似た者同士だったんだね」
       春川はかすかに微笑んだ。歩幅はさっきより少しだけ狭くなっている。空も赤らんできた。道を歩く人通りも増えている。タイムリミットが近い。
      「私、赤松さんに出会えたから、ダンガンロンパに参加して良かったよ」
      「ちょっと、何その恥ずかしいセリフ」
      「恥ずかしくなんかないよ。本心だもん。別人になって別の見方ができるようになったかはまだよくわからないけど、これだけは言える。赤松さんはどう?」
      「私は……」
       さっきは参加しなきゃ良かったって、後悔した。今は……どうなんだろう。……いや、自分でちゃんとわかってるはずだよ。
      「言わない」
      「えーっ、どうして?」
      「恥ずかしいから!」
       半ば八つ当たりをしながら私が怒鳴ると、春川は右手で口を押さえてくつくつとこらえるように笑いだした。
      「恥ずかしいからって、全部言っちゃってるみたいなものだよね。もう、赤松さんったらかわいい」
       頭に血が上って、はくはくと口を開閉するけど、言葉は何も出てこない。か、かわいいって何よ!
      「でも、赤松さんがそう思ってくれてすっごく嬉しいよ。今日初めて会ったとは思えないくらい、赤松さんのこと好きになっちゃった」
       わかった。春川って恥ずかしいこと普通に言えるタイプなんだ。わかったから、もうやめてほしい。耐えられなくて、赤くなった顔を隠すように逸らす。
      「ねえ、遅くなってもいいから、絶対メッセージ返してよね。それで、また会おうよ。みんなでも、二人でも」
      「返すよ、返すから。ほら、駅着くよ。春川はどっち方面なの」
       それから私達は再会を約束して、それぞれの家路に就いた。春川が最後まで絶対だよ、絶対返してね、とうるさいので、別れてすぐに携帯を取り出し、春川から来るより先にメッセージを送ってやった。
      「ダンガンロンパは最悪だったけど、あんたと会わせてくれたことには感謝してる」
       そしたらすぐに既読がついて、かわいいスタンプが連続でいくつも送られてきた。
      #ニューダンガンロンパV3  #赤松楓

      ネタバレは本編のみ、ほんのり赤春っぽい

      これhttps://galleria.emotionflow.com/48357/438655.html(百最R18なので注意)と同軸の話でオーディション赤松さん視点。続きではないので単品で読めます。
      V3の世界は全てプログラム、オーディションの映像と観客は本物で全員生きてるという特殊な設定です。キャラが原型とどめてなかったりするので注意。

      この設定で色々妄想が膨らんで楽しいのですが、あまりにオリジナル要素が強すぎてどうしようって感じです。



       息ができなくて、朦朧とした意識がふっと途切れた。
       ああ私死んだんだ。……あれ、でもそれじゃ今考えてる私は何? と危うく哲学的な思考に陥りそうになった瞬間、目の前に表示された文章。それを読んで、私は自分が何者だったか思い出した。

       GAME OVER
       ヘッドギアを外してください。

       その文章に従って、ヘッドギアを外す。現れたのはゲームの中で死んだピアノバカの赤松楓じゃなくて、このくだらない世界でくだらなく生きてきた一般人の赤松楓。
       重苦しいヘッドギアだったけど、そんなに長い時間かぶっていなかったから特に首は痛くないし、髪に癖もついていない。
       周りを見てみると、ヘッドギアをかぶって夢中でゲームをしているらしい制服姿の男女が十四人。とは言ってもコントローラーも何も持ってないし、表情もほとんど変わらないから傍目からじゃゲームしてるなんてとてもわからない。他には、誰も座っていない一人掛けのソファが一脚。天海の席だろう。
       静寂が支配する空間に、ドアの開いた音が響く。知らない人だけど、この部屋に入ってくる人なんて、チームダンガンロンパ以外に無い。
      「お疲れ様でした。待機用のお部屋にご案内します」

       今まで体感していた世界はすべて「ニューダンガンロンパV3」というゲームだった。ゲーム。仮想現実。虚構。嘘っぱち。
       才囚学園なんてどこにもなくて、超高校級の才能なんて誰も持っていない。コロシアイもモノクマも存在しない、平凡な世界。それが現実。
       ゲームの中の赤松楓は、私であって私でない。私は私であることを忘れて、ゲームの中の赤松楓を演じていた。役に入り込みすぎて自分を忘れた俳優みたい。
       演じたといっても、ゲームの中でおしおきを受けて感じた文字通り死ぬほどの痛みとか、首謀者と間違えて殺してしまった天海の死体を見てこみ上げてきた後悔や絶望感、その他諸々の感情だって全部本物。
       おしおきを受けて死んだはずの私は、実際はこうしてピンピンしている。同じように、私が殺した天海も生きている。死ぬ体験をしておいて生きている人間なんて、広い世の中探しても私たちしかいないでしょうね。なんて滑稽。

      「あ、赤松さん。おつかれっす~」
       さっきの人の案内で脱落者の待機部屋に入ると、ゲームの中よりも更にチャラい話し方の天海がこっちを向いた。
       まさか、待機部屋って全員同室のつもり? デリカシーなさすぎ。殺し殺された仲なのに、仲良くおしゃべりなんかできるほど神経図太い人いると思う?
       声には出さずにチームダンガンロンパに向かって毒づく。顔には出てるかも。
       部屋は大学の教室みたいに長机と椅子が同じ方向に置いてあり、正面には大きなモニターがある。観ると、学級裁判が終わって落ち込んだ様子の最原が映っている。ああ、全国放送してるニューダンガンロンパV3って訳ね。
       おしおきのすぐ後は何があったかわからないけど、最原、ゲームの中の私のことを想ってかめちゃくちゃ沈んでる。満身創痍って言葉がぴったりだ。
       バッカみたい。本物の私はまっすぐな正義を持ったキャラじゃないし、そんなひねくれた私は平然と生きてるってのに。

       私は少なからずショックを受けていた。ゲームの中の私は、「超高校級のピアニスト」だった。身体能力なんかは全く人並みだけど、いつも前向きで、簡単には諦めず、目標に向かって突き進んでいける。暴走しがちではあるけど、人に笑顔を見せられて、励まして一緒に歩いていける人間だった。なのに、なのに。
       本当の私は、ひねくれ者で、人間不信で、なんの取り柄もなくて、ダンガンロンパがちょっと好きなだけのただの高校生だなんて、絶望的だ。

       長丁場になるからか、スナック菓子やペットボトルの飲み物も用意してあった。
       ジュースを取って、適当な席に座る。天海と話したくないから近くはない席にしたのに、天海は私が返事しなかったことも気にせず一人でペラペラ喋ってきた。
      「いや~参ったっすよ。せっかく二回目に挑戦できたんだから、一攫千金狙ってもう一度生き残りたかったっすけど。あ、別に赤松さんを責めてるんじゃないんで! まあ一回目最後まで残ったから、そこそこもらえてるんすけどね。」
       こっちが何も言っていないのに、一人で喋り倒しては笑っている。まあ、自己完結してる分相手しなくていいから楽だけど。
      「それにしても、まさか赤松さんが真っ先にコロシアイを始めるなんてね。あっちの赤松さんの設定って、めちゃめちゃ正義感あるキャラだったじゃないすか。すんげー意外っすよ。赤松さんってダンガンロンパ霧切はカバーしてます? 七村彗星のセリフ、思い出しちゃうんすよね~……。『鉄は折れにくい一方で、一度曲がると元に戻りにくい。君みたいな子が一番危ういかもしれないな』……なんちゃって~、似てましたか~? いやいや、小説だから似てるかなんてわかる訳ないっすよね!アハハハ」
       なんで、そんなに楽しそうに話せるんだろう。私、天海のこと殺したのに。天海の考えてること、全くわからない。
      「あっ、観てくださいよ。最原くん、帽子取りましたよ。こうして見てみると結構イケメンじゃないっすか。こっちの最原くんも確か帽子持ってたっすよね。もったいないな~。取ったら意外とモテるんじゃないすか?」
       私にとってはそんなの心底どうでもいい。喋ってないと死ぬの?
       たまらず口を開いた。居心地が悪いからじゃない。私のことなんか構わず喋り倒す天海にイライラしたからだ。思わずトゲトゲしい口調になる。
      「あのさ、天海は私のこと本当に恨んでないの? 私だったら、いくらゲームの中でとはいえ自分を殺した人間なんかと話したくないんだけど」
       私が初めて口を開くと、天海はちゃんとこっちを見た。ハッとしたような顔だ。
      「もしかして、喋るの迷惑だったっすか? すんません、うるさくて……。さっきまで一人だったのが寂しくて、赤松さん来てくれたのが嬉しくて、つい……。あ、俺、赤松さんのこと恨んでないっすよ。だって所詮はゲームですし。痛かったのはすげー覚えてますけど、おしおき受けた赤松さんもそれは一緒っすよね。それに、やったのはあっちの赤松さんで、こっちの赤松さんじゃないっすよ」
       天海はこちらの考えも知らずけろりと言い放つ。結局またペラペラ喋ってるし。恨んでないって言うけど、やっぱり信じられない。だって、正論でみんなを振り回しておきながら、真っ先に殺人しちゃった奴なんだよ。
       返事はできず、天海の顔を見ることもできない。ほっといたら天海はまたモニターを観ながらなにやら喋ってる。
      「東条さんの作ったご飯めちゃめちゃうまそうっすね~……。っていうか、ゲームの中で食べたんでした。はあ~、毎日あんなうまい飯が食えたらなあ~。うち、片親しかいなくて貧乏なんすよ。自炊なんかしてる余裕ないからいっつも冷食で。栄養バランスなんて考えたこともないっすよ」
       別に聞きたくもない話だけど、耳に入るのがこれかモニターの音しかないので、まあ適当に聴いていた。特に返事をする気はしなかった。

       ガチャリと扉が開き、三人目の脱落者がやってきた。
      「お、星君。お疲れ様っす……ってあれ!? 次の殺人起こっちゃったんすね」
      「おう……天海、に赤松。ああ、まだ俺の死体が発見されてないってことか」
       俺の死体って謎ワードすぎじゃない?
       星は私と同じように、ペットボトルを取り天海の二つ隣の席に座った。私の位置からは、二人の頭が見える。
      「この部屋ってネタバレ配慮とかなんも無いんすね!まあ参加者なんだから我慢しろってことすかね~。おっと、じゃあ犯人は言わないでくださいよ星君。俺、観ながら推理するんで」
      「別にわざわざ言う気はねえよ。……天海、あんたのことはV2でも観てたが、ゲームの中とは随分雰囲気が違うんだな」
      「アハハ、実際の俺はあんな頭良くないっすから。ハズいっすけど。そういう星君は、あんまり雰囲気変わんないっすね」
      「ふん、そうかもな……。だが、現実の俺はゲームの中の俺とは決定的に違う。こっちが現実で安心したぜ」
      「へえ……なんすか、その違いって」
      「俺には、家族や友達がちゃんといるのさ。あっちの俺は、孤独だった。モノクマーズの動機ビデオがあっただろう? あそこには何も映っちゃいなかった」
      「動機ビデオ? あれ、他の人のと交換された人もいたみたいっすけど、星くんは自分のだったんすね」
      「そうだ。俺は自分にとって大切な人が誰もいないことを知って、生きたいと思う理由がなくなった。だから死んだのさ」
      「星君……」
      「でも現実の俺には、大切な人がちゃんといる。今の俺には生きる理由がある。早めに目を覚まさせてくれた犯人には、感謝したいくらいさ」

       モニターから人が減るにつれ、霊界とも言えるこの部屋に人が増えていく。その度に天海は声を掛け、話を聞いていく。私はぼうっとモニターを眺めながら、ずっと話半分で耳に入ってくる音を聴いていた。

      「私は、愚かだった……。みんなのために、国中の人のためになると思ってしたことだったのに、本当の私はこんなにちっぽけな人間だった。人のために何かできたことなんて一度もない。人にしてもらってばかり。星くん、本当にごめんなさい……。謝って許されることではないし、あれが現実ではないこともわかってる。でも、私は自分の傲慢さが恥ずかしくて……」

      「ゲームの中のアンジーは無邪気に神さまを信じてたねー。現実のアンジーは、神さまなんていないのわかっちゃってるから、すごく羨ましいよ。でも、ダンガンロンパに出られたからアンジー人気者になれるかな? 殴られてすごーく痛かったけど、人気者になれるならへっちゃらだよー」

      「転子はどうしてこんなに弱いんでしょうか……。ゲームの転子は、精神的にも物理的にも強かったのに。人を励ますことができるくらい、強かったのに。現実の転子にも、嫌なことは嫌って言える勇気が欲しいです……」

      「もう一人の僕は、心から姉さんを愛していたヨ。でも、今本物の僕には姉もいないし、愛している人もいないんだ……。愛する人を失って、僕の心にぽっかりと空いてしまったこの空虚な穴は、埋まることはあるのかな? どうすれば埋まるんだろうネ……?」

      「オ、オレ様ってさぁ、チャラくて軽いのは認めるけどよ、いい、いくらなんでもあんな下ネタのオンパレードは流石にひでーんじゃねーかぁ……? あ、ああ、あそこまでのビッチじゃねーからな! 勘違いすんなよ……。明日から、学校でからかわれたら、ど、どうしよぉ~……」

      「ゴン太、ゲームの中に戻りたいよ……。ゲームの世界は死にたいと思うくらい大変なことになってたけど、一緒に過ごしてたみんなはすごく優しかった。でも、ここはそうじゃない。ゴン太の友達はみんな優しくない。家族も優しくない。ゴン太、こんな世界嫌だよ……!」

      「ふ、ふふ……。あんなに軽々嘘ついて、楽しかったな……。現実でもあれくらい自由に嘘がつければいいのに。オレはずっとつきたくもない嘘をつかされて来たからね。あーあ。報酬のお金で一人暮らしでもできたらいいのになあ。」

      「クソっ、ムカつくぜ。なーにがボスだ。カッコつけやがって。オレはあんなタマじゃねーってのによ。まさかこのオレが一番嫌いなタイプのキャラ設定にされるとはな。チームダンガンロンパのヤツには、一度痛い目見せねーと気がすまねーな」

       あーあ。みんな何かしら病んでるじゃん。本当に、ヤバいゲームだよね。

       私はダンガンロンパが大好きでこれに参加したわけじゃない。友達に勧められて、過去のゲームをやってみたら面白かったから。でも、今はもう大っ嫌い。ゲームの中で聞いたリアルコロシアイエンターテイメントっていうのが事実じゃなくてまあ良かったとは思うけど、私たちにこんなトラウマ体験を与えて平然としている世界は、どう考えても狂ってるよ。

       相変わらず天海が他のメンバーとくっちゃべっているのを聞き流し、ゲームの中の最原たちが黒幕の手がかりを探しているのをぼーっと眺めていたら、そんな私の目を覚ますような物が目に飛び込んできた。
       隠し部屋から見つかった、砲丸。最原が調べてる限り、ピンクの繊維が付いてるらしい。
       どういうこと……?
       と声を発しようとした唇は、
       ガターン!!!
       椅子が倒れたシャレにならないくらいデカい音に阻まれた。
       音の発信源に驚いた全員の視線が集まる。その視線の先には、若草色のやわらかそうな髪。
      「……な、なんすかこれ。どういうことっすか……なんで砲丸が黒幕の隠し部屋に処分されてるんすか?」
       天海だ。
      「俺、赤松さんに殺されて、もう一つの砲丸は赤松さんが処分したんじゃないんすか……? 隠し部屋に捨てられてるってことは、黒幕に殺された? それで、赤松さんに罪をなすりつけた黒幕が生きてる? はあ~? わけわかんないっすよ!!」
       キレたらしい天海はすごい剣幕で、正直怖くて誰も一言も喋れなかった。唯一平気な顔をしている百田は興味なさそうで動く気配はない。
      「おかしいと思ったんすよ!! 俺は床に落ちた砲丸を見たから、赤松さんが転がした砲丸は二つだと思ってたのに、誰も数にはツッコんでなかった。赤松さんが一番に俺を発見して、当たらなかった砲丸を処分したんだと思ってたのに、第一発見者は四人だった!!」
       ……へ? 床に落ちた砲丸? 天海は何言ってるの?
      「あ、天海くん。落ち着いて……」
      「落ち着いてなんていられないっすよ! 俺は、なんとしても大学行くための金が欲しかったんすよ!! そのために、参加したってのに……黒幕の不公平なプレイで賞金が減らされるなんて、冗談じゃないっす!!」
      「いいから座れ、天海。あんたがここで暴れても、チームダンガンロンパの奴らには何も伝わらねーだろ。抗議するなら感情じゃなくて理性でしな。それに、お前の話が本当なら害を被ってるのはお前だけじゃねーだろう」
       天海の一番近くに座っていた星が諭す。頭に血が昇って真っ赤になった天海の顔は、徐々に落ち着きを取り戻していった。
      「……そうっすね。星君の言う通りっす。ありがとうございます」
       天海がすまなそうにチラッとこっちを見る。な、なにそれ。私どうすればいいの? 怒ればいいの?泣けばいいの? でも天海の顔はこちらの言葉を待っている顔だ。何か言わなきゃ。混乱してなにがなんだかわからない頭で考えたせいで、口走ったこともよくわからない。
      「……と、とにかく、最原が全部謎を解いてくれるんじゃないの」
       どうせ私は考えてもわからないし。私の真実は、全部学級裁判でぶちまけた(いや、最原にぶちまけさせたんだ)。それ以上の証拠は持っていないし、あとは任せて判決を受けるだけ(いや、もう受けたんだけどさ)。別に報酬は興味無いから少なくたっていいんだけど(いやでも、無駄に受けたおしおき分くらいはくれてもいいんじゃないの)。ああもうわかんない。続きをちゃんと観てればわかるよきっと(今までテキトーに観てたのに急にちゃんと観るようになるなんて、チームダンガンロンパの策にハマってる?)。
       私の言葉に従うように、みんなモニターを見つめて口を開かなかった。

       結局、私は無実で、天海を殺した犯人は黒幕の白銀だった。私はおしおき損ってこと。あんなに痛い思いしたのにね。天海は抗議して報酬上げてもらいたいみたいだけど、私は正直面倒くさい。フェアなプレイにこだわってたフリして、観客が見てないところで不正だなんて、結局ダンガンロンパもそんなもんってことだ。上っ面だけいい顔してる奴らと同じ。
       ま、最初から信じてなかったけど。

       もう結末もどうでも良かったから、ちゃんとは観ていない。
       白銀とキーボがおしおきらしいけど、黒幕の白銀は他にもやることがあるのか、この部屋にはキーボだけが来た。人間だったからみんな驚いてた。ゲームの世界に入る前は、みんなの顔なんかちゃんと見る機会なかったから当然だ。
       みんなとキーボの話も途切れた頃、白銀が生き残りの三人を連れてきた。生き残りは、明らかに私たちと違う表情をしていた。白銀を前にして天海はまた怒りがこみ上げてきたのか、不機嫌な表情のままだから三人に挨拶もしない。すると自分から三人に声をかける人はいなかった。なんて声を掛けていいのかわからなかったのかもしれない。
       全員が揃うと、白銀が色々と説明を始めた。この後の流れだとか、出演料のことだとか。ゲームと現実を混同しないようにカウンセリングが受けられるらしいんだけど、全員受けた方がいいんじゃない。私は受けないけど。
       もうダンガンロンパに興味が無くなってきた私は説明をまともに聞いていなかった。膨大な資料も同時に配られたから、多分大事なことは書いてあるでしょ。

       はあ。私、なんでダンガンロンパに参加したんだっけ。友達が「赤松ってダンガンロンパに向いてそーだよね」とか言ったからだったっけ。特別仲が良いって訳じゃない。あの子は私が人を信用しないのわかってるみたいだし。でも貸してくれたダンガンロンパは面白かったから、参加したらもっと面白いんじゃないかって、そう思ってオーディションを受けたんだ。
       でも、全然面白くなんかなかった。よく考えたら当たり前だ。殺して殺されるなんて面白い訳がない。安全な場所から他人事として見てるからこそ面白いんだよ。
       面白くもなくて、つらい思いばっかりして、現実とのギャップに戸惑って、早期退場のせいで報酬も少ない。
       何のために参加したんだろう。オーディションなんて受けなきゃ良かった。

      「以上で説明は終わりです。質問のある人はいますか? ……ないみたいね。それじゃあ、今日は解散です。みんなお疲れ様でした」
       白銀が死ぬほど長い説明を終えて、ドアに向かおうと体の向きを変えた瞬間、
      「待って!」
       ガタタンと椅子と床が立てた大きな音とともに、一人の女子が立ち上がった。長い髪の二つ結びのおかげで、彼女は春川だとわかった。でもあの子の雰囲気、表情、言葉遣いは、ゲームの中の春川とは全然似ていなかった。
       私を含めてみんな突然のことに驚いて、動きを止めて彼女を見つめた。
      「あのね、みんな……連絡先、交換しない? 私、せっかく出会ったみんなとの関係を、ここで終わらせたくないの!」
       え? 連絡先の交換? まさか、コロシアイをしたメンバーで友達になろうっていうの? 本気?
       心の中でつぶやいて、思いっきり顔をしかめてやった。似たように渋い顔をしている人は何人かいる。
       すると、また誰かが立ち上がる音がした。
      「僕は春川さんの意見に賛成だ」
       最原の声だ。それを聞いて、春川の表情はみるみる明るくなる。ほっとしたような顔。
       何、生き残りってそんなこと考えてたの? 三人はラストで寄り添って頑張っていこうって決意したから、その前向きな気持ちを現実にも引きずってる訳?
      「みんなでここを出たら友達になろうって、約束したしね」
       ……それを持ち出すのは卑怯だ。それを言ったのは私じゃないし、立場も状況も違う。最原にとっては大事な言葉かもしれないけど、勝手に使われるこっちの身にもなってほしいよ。
      「ボクも賛成です」
       もう一人口を開く。それは、ゲームと同じように白い肌をした、人間のキーボだった。
      「ボクたちはゲームの中で共同生活を行ってきましたが、人格はこの現実とは全く別のものでした。いわばここにいるボクたちはみんな初対面。ですが、ゲームの中で困難を共に乗り越えてきた仲間でもあります。ボクたちは、これから絆をつくることができると思います」
       そういえば、キーボは唯一悩みを話さなかったな。彼は私達と違って順風満帆な人生を送ってきたのだろうか。だからそんな能天気な発想になるのかな。
       みんなが視線をキーボに向けていたら、ドアに向かう姿勢のまま止まっていた白銀が、小さな声でふふ、と笑った。
      「黒幕が何言ってるんだって思われるかもしれないけど、わたしも賛成だな。黒幕の仕事も、地味に疲れちゃったんだよね」

       結局私みたいな反対派は、嫌そうに顔を歪めるだけ歪めて大きな声を上げないので、賛成派に押し切られて交換することになった。まあ、メッセージが来ても無視すればいいし、ほとぼりが冷めた頃にブロックすればいいや。
       面倒だけど、一人ひとりと順番につながっていく。IDを検索したり、QRコードを読み込んだり、方法は様々だ。
       私はほとんど喋らず、ただただ事務的に交換していった。ゲームの中と同じように帽子を目深にかぶった最原は少し話したそうな顔だったけど、急いでいたのか私の不機嫌な顔が怖いのか、「メッセージ送るから」と言ってさっさと次に行ってしまった。
       最後は言い出しっぺの春川だ。もう何度も繰り返した操作で、滞りなく連絡先が追加される。すると、
      「赤松さんのアイコンって、猫なんだ。可愛いね。飼ってるの?」
      「え? ああ、うん。二匹飼ってる」
      「へえ、二匹もいるんだ。いいね、ペット飼ってみたいな」
       私が返さないものだから、そこで会話は途切れる。でも春川はまだ話したいことがあるのか、動かないでこちらを見つめている。少しの間考えるような素振りを見せたあと、その小さな口を開いた。
      「あの、赤松さん……私と友達になるの、嫌かな……?」
       別に春川のことが嫌な訳じゃない。誰も殺してないし。むしろ、私は殺したんだけど。それでも友達になりたいの? 不思議。
      「……嫌っていうか。そもそも、興味が湧かないし。お互い、現実のみんなのことは何も知らないしさ」
      「そう、だから私、赤松さんのこと知りたいんだ」
       私は自分の後ろにあった机に寄りかかった。まっすぐな視線が、ひねくれた私にはむず痒い。
      「言っておくけど、私はゲームの中の私とは全然違うからね。混同されたら困るよ」
      「ふふ、そんなの当たり前だよ。私だって、『殺されたいの?』なんて、言ったこともない」
       今の演技、ちょっと上手かった。本人だから? 思わず笑みがこぼれた。
      「……それもそっか。暗殺者なんて流石にリアルにはいないよね」
      「そうだよ。あと、小さい子は好きだけど、孤児院育ちとかじゃないし。せいぜい親戚の子の世話をしたことがあるだけだよ。赤松さんは? ピアノは実際にやってた?」
       春川は鈴を転がすように笑う。私も少し楽しくなってついつい饒舌に。
      「うーん、小学生まで習ってたってくらいかな。最近は音楽にも触れてないし、今は全然弾けないと思う」
      「そうなんだ。部活とかはやってるの? 運動部? 私はバレーボール部なんだ」
      「へえ、バレーボール似合いそう。私は帰宅部。部活の上下関係とか、正直ダルくて」
      「ああ、結構大変だよね。先輩とうまく行かなくて辞めちゃう子もいるし」
       まるで教室でのお喋りのように、他愛のない会話のキャッチボール。ふと周りを見ると、部屋からはほとんどの人がいなくなっていた。春川もそれに気づいたみたい。
      「……私達も帰ろっか」
      「うん。駅まで一緒に帰ってもいい?」
       帰り支度を始めながら提案すると、春川がそんな風に訊ねてきた。人懐っこい子だなあ。
      「別に、いいよ」
       そう返す私も、結局人を突き放しきれないんだけど。

       駅までの道は覚えているから迷うことはないけど、私より少しだけ狭い春川の歩幅に合わせて、一人のときよりもゆっくり歩いていた。
      「春川は、どうしてダンガンロンパに参加しようと思ったの?」
       一度会話が途切れたのをいいことに、私は気になっていたことを春川に投げかけた。生き残りの三人からは聞きそびれていたし、特に問題を抱えていそうに見えない春川がどうして、という気持ちもあった。
      「えっとね……ダンガンロンパのちょっと不思議な世界観が好きっていうのもあるんだけどね。一番は、違う自分になってみたくて」
      「違う自分?」
      「そう。私はやっぱり、私としてしか物事を考えたり感じたりできない。でも、記憶を上書きされて、全く違う自分になれば、今はつらくて仕方ないことも、別の感じ方ができるんじゃないかって思ったの」
       驚いた私は、目を丸くした。まさか、ダンガンロンパにそんな利用方法があるなんて。しかもすごく前向きな理由じゃない。そんな動機で参加した人、他にいるのかな?
       だからこそ、気になってしまった。春川にそこまでさせたのは、一体何?
      「そんなことを思わせた、つらいことって……」
       好奇心に抗えず、素直に口に出してしまってから気がついた。こんなプライベートなことを、今日はじめて知り合った私に言う訳ないよね。でも一度発した声はどうしたって戻せなくて、尻すぼまりに小さくなるだけ。気を悪くさせちゃったかな。
       しかしそんな私の考えとは裏腹に、春川は一呼吸置いてからゆっくりと語り始めた。
      「私ね、おせっかいしすぎて、友達がいなくなっちゃったんだ。友達に何か頼まれたら断れなくて。っていうか、頼りにしてもらえるのが嬉しくて。私は友達だから力になりたいって思って、ノートをとってあげたり、宿題写させてあげたり、お金を貸してあげたりしてたんだけど、ある時聞いちゃったんだ。その子が他の子に向かって、『春川は都合の良いパシリだ』って言ってるところ」
       歩く先の道を見詰めた春川は、そこまで一息に話してしまった。やはり彼女にとって、簡単に話せることではなかったのだ。
      「すごくショックだった。私にとっては大事な友達だったのに、あの子はそう思ってなかったんだって。どうしてそうなっちゃったんだろう。私はどうすれば、あの子の友達になれたんだろう。一度別人になった今でも、よくわからないや」
       少しうつむいてそう言った春川は、少し涙目になっていた。
       私は、ゲームの中の自分が彼女に向かって言った言葉を思い出した。現実の彼女もきっと、愛が深いんだ。その愛を悪用されて、悲しんでいる。そんな彼女を見ていたら、私も悲しくなった。
      「自分を責めないでよ。それ、別に春川は悪くないんじゃない? 相手の子が春川の好意につけ込んでるってだけで。誰だって、相手のためになるならなんだってしてあげたいと思うでしょ。私だってそう思うよ。まあ、そこまで思う相手は、今までいなかったけど」
       横にいる春川の顔を見ながらそう言うと、彼女は驚いたようにぱちぱちと目を瞬かせた。
      「今までそんなこと言ってくれた人いなかった。みんな言うんだ、甘やかしすぎなのがいけないって。でも、私はあの子を躾けている保護者じゃないんだから、甘やかしてるっていうのが腑に落ちなかったんだ」
      「あー、まあ確かに甘やかしてるとは言われそうかもね。でも、私はそうは思わないよ。どっちかって言うと、その子をそんな甘えん坊に育てた親が悪い」
       暗かった春川の顔が、元に戻った。うん、春川はそっちの方が似合ってると思う。
      「……赤松さんって良い人だね。あのオーディションの映像観て、私誤解しちゃってたかも」
      「えっ、なにそれ? ……ってそりゃあ、あれ観たら冷たい人間だって思うよね。まあその通りなんだけど、誰も信用しないって訳じゃないし……もう、あの映像使うなんて思ってもみなかったよ」
       撮られているなんて全く気が付かなかったから好き勝手言っているし、あんなのを全国に公開されたなんて恥ずかしい。つい頭の後ろを掻いてしまう。
      「赤松さん、全然冷たい人じゃないよ。はっきりズバズバ言うタイプだけど、ちゃんと心がこもってるもん。ねえ、私のことは……信用してくれた?」
       春川が小首を傾げながら訊ねてきた。
      「え? ……うーん、今は、信用してるよ。さっきの話をしてくれたのは、私を信用してくれてるからでしょ? フリじゃなくて、ちゃんと信用してくれる人は、信用できるよ」
      「良かった。ね、人を信用できなくなったきっかけって、聞いてもいい?」
       春川も話してくれたんだから、ここは筋を通すべきだよね。抵抗も特に感じなかった。絆されてるなあ。
      「いいよ。って言っても単純なことだよ。昔親友だった子に弱みとか恥ずかしいこととか全部話してたら、クラスみんなの前でバラされたってだけ」
       こんな話、今となっては笑い話だ。本当に笑う奴がいたら殴るけど。春川は笑わないってわかってる。
      「思えば、春川と一緒だね。親友だと思ってたのは私だけ。親友だから、誰にも話さないって信じて秘密を話したのに。それから、もう簡単に人を信用するもんかって思ったよ」
      「……そっか。私達、似た者同士だったんだね」
       春川はかすかに微笑んだ。歩幅はさっきより少しだけ狭くなっている。空も赤らんできた。道を歩く人通りも増えている。タイムリミットが近い。
      「私、赤松さんに出会えたから、ダンガンロンパに参加して良かったよ」
      「ちょっと、何その恥ずかしいセリフ」
      「恥ずかしくなんかないよ。本心だもん。別人になって別の見方ができるようになったかはまだよくわからないけど、これだけは言える。赤松さんはどう?」
      「私は……」
       さっきは参加しなきゃ良かったって、後悔した。今は……どうなんだろう。……いや、自分でちゃんとわかってるはずだよ。
      「言わない」
      「えーっ、どうして?」
      「恥ずかしいから!」
       半ば八つ当たりをしながら私が怒鳴ると、春川は右手で口を押さえてくつくつとこらえるように笑いだした。
      「恥ずかしいからって、全部言っちゃってるみたいなものだよね。もう、赤松さんったらかわいい」
       頭に血が上って、はくはくと口を開閉するけど、言葉は何も出てこない。か、かわいいって何よ!
      「でも、赤松さんがそう思ってくれてすっごく嬉しいよ。今日初めて会ったとは思えないくらい、赤松さんのこと好きになっちゃった」
       わかった。春川って恥ずかしいこと普通に言えるタイプなんだ。わかったから、もうやめてほしい。耐えられなくて、赤くなった顔を隠すように逸らす。
      「ねえ、遅くなってもいいから、絶対メッセージ返してよね。それで、また会おうよ。みんなでも、二人でも」
      「返すよ、返すから。ほら、駅着くよ。春川はどっち方面なの」
       それから私達は再会を約束して、それぞれの家路に就いた。春川が最後まで絶対だよ、絶対返してね、とうるさいので、別れてすぐに携帯を取り出し、春川から来るより先にメッセージを送ってやった。
      「ダンガンロンパは最悪だったけど、あんたと会わせてくれたことには感謝してる」
       そしたらすぐに既読がついて、かわいいスタンプが連続でいくつも送られてきた。
      端黒つな
    • 4【マジデ】リナツバ #マジカルデイズ  #リナツバ  #リナト=クリロワ  #ツバキ=鳳  #腐向け

      ※過去絵

      ①概念的リナツバ
      ②なんとなく描きたくなったクリスマス
      ③④本編24,25章がつらすぎるのでリナトは早く幸せになって
      端黒つな
    • 3【ヒプマイ】イケブクロ三兄弟※過去絵

      MVを2周した時から既にハマっていたのさ…

      ヒプマイやばいです。三兄弟かわいいし幻太郎と寂雷さんもとても気になる。楽しみです。

      #ヒプノシスマイク #山田一郎 #山田二郎 #山田三郎 #BusterBros!!!
      端黒つな
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