イラストを魅せる。護る。究極のイラストSNS。

GALLERIA[ギャレリア]は創作活動を支援する豊富な機能を揃えた創作SNSです。

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    しおり
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    しおり
    雨の日に招き入れる以蔵から見て立香は華奢で、なよやかな首筋から肩にかけての線といい、容易く手折れそうな手首や足首、小鳥のように掌に収まってしまうかかと。その肌の内側には生命力が詰まっていて、触れた先から弾けるような瑞々しさを以蔵につたえた。

    しとしとと地面を揺らす雨が降りつけている。

    「マスター? 何しゆう」

    以蔵が足元の玉砂利を踏みしめると、軋むような音を立てた。
    紅いろの傘をさし、うずくまる彼女のそばに腰を下ろす。目前の灰色の石の上、雨蛙がゲコと鳴いた。どうやら時間つぶしに観察していたらしい。
    途中、雨に濡れる以蔵に気づいた立香が、手元にあった傘を以蔵にさしかけた。あっという間に切り取られ、世界は雨垂れと、自分と彼女。それだけ。
    立香の髪先から、音もなく雨粒が滑り落ちた。白い顎を濡らしていく。夜明け前の眼差しは以蔵だけに注がれていて、ふたりぶんの吐息が紅いろがかった空間に落ち、絡まる。以蔵の体温がかっと上がった。
    はあと湿った吐息が頼りない首筋や形のいい耳、頬に触れ、そこに熱があるかも確かめる前にくちびるを塞いでしまう。舌を差し入れると、意外なことに立香も控えめに舌を伸ばしていて、くちゅりと淫靡な水音が立った。

    「んっ」

    ぬろぬろと舌を合わせ、じかに口腔内で交わす呼気がお互いの体温を上げた。やわこい舌を吸って、解放する。繰り返し。

    「んはぁっ、ふっ」

    どちらとも知れぬ唾液が口の端からつたい落ちる。とろけるような女の粘膜に夢中になった。はしたない水音も、雨音がすべて掻き消してくれる。ねちっこい接吻に立香の腰が抜けたのか、いつの間にかふたりの頭上から傘がなくなっても気にせずくちびるを貪った。

    「はあっ……」

    きつく吸った短い舌べろをじゅぽんと音を立てて離す。
    殊の外大きく響いた音に雨蛙が驚いたらしい。視界の端でぴょんと高く飛び跳ね逃げていった。
    拍子抜けした以蔵が腕の中の立香を見ると、くたんと腰が抜けてしまっている。
    都合がいいとインバネスコートの中に彼女を招き入れた。

    塩/あずまニカ Link Message Mute
    Jul 11, 2018 3:12:19 PM

    雨の日に招き入れる

    人気作品アーカイブ入り (Jul 12, 2018)

    以ぐだ♀
    紅いろの接吻のおはなし
    ##男女

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    • 無題現パロ以ぐだ♀ちょっとスケベ
      近所に住むチンピラ風情以蔵さん×高1ぐだ子
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 彼女を部屋から出さないためのエトセトラ現パロ以ぐだ♀ 書きたいところだけ書いた(二十線)
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 縫いとめる蝶ツイッターで見かけたなんかえろい体位の以ぐだ♀
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • オメガバース以ぐだ♀英霊だった頃の記憶を持つアルファ以蔵さん(ハイパー愛が重い)とベータの両親から生まれたオメガぐだ子
      この以ぐだ♀はド溺愛ものだけどこの時点で肉体関係は一切ないです
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 以ぐだ♀
      妙な蟲がいるらしい
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • はらわたの内側にあいを詰めるアナルセックスする以ぐだ♀(続きもの)そのいち ##男女塩/あずまニカ
    • 降り落とすそのすべて夢のような時間でした
      以ぐだ♀
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 小鳥のかかと(番外編)以蔵さん+龍馬×ぐだ子
      男の嫉妬は見苦しいと心底呆れる
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 甘やかしの首輪をしてあげるあんちゃんや思うてもええよ♡(首輪がっちゃん)の以ぐだ♀
      攻めのセリフにハートマークがついてるので注意
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 予期せぬ導火線(ケイぐだ) ##男女

      付き合ってない



      「マスター、明日の周回ですが……」
      「あっマスター!こんなところに!探しましたよ」
      「主殿、最近食欲がないとうかがったので、よければこちらを」
      「トナカイさん、今日はこの本を読んでほしいです!」
      「立香。ちょっと顔色がよくないんじゃ……い、一緒に食堂!行ってあげてもいいけど」
      「………………」




      「マスター」
      土に染み入る慈雨のような。深い声が耳に滑り込んでくる。
      「どうかした?」
      手元のタブレットから顔を上げると、本日マイルーム担当のケイローンが微笑んでいる。
      「参考までにうかがいたいのですが」
      「はい」
      あれ。よく見ると、先生。口角は上がっているが、目はちっとも笑ってない。何かあったのだろうかと立香はぼんやり考える。
      「あなたに愛する人がいたとして。その人が自分以外の、他者も分け隔てなく慈しむ人だったとしましょう」
      それは両思い?片思い?尋ねると、片思いだと云う。想像してみると、胸が痛かった。
      「それは……苦しいだろうね」
      胸に秘めた思いだ。身勝手な苦しみを相手に伝えられないぶん、余計に。
      ケイローンが眦を細めて「そうでしょう」と今度こそ真実の微笑みを浮かべている。いつもの花マルのそれとは違う、切なさが翳となってたち浮かぶ笑みに、目が吸い寄せられた。
      長い指が、立香の手を取り、絡められる。手を繋ぐ寸前、爪先でそろりと指の股を引っかかれ、なぜだかびくりと肩が跳ねた。「あなたにとって、私はどんな存在なのかと考えてしまう」
      引っかき傷程度では我慢ならない、と男が耳元で囁く。
      立香の顔が真っ赤になった。

      「つまりは、そういうことなのです」
      ##男女

      付き合ってない



      「マスター、明日の周回ですが……」
      「あっマスター!こんなところに!探しましたよ」
      「主殿、最近食欲がないとうかがったので、よければこちらを」
      「トナカイさん、今日はこの本を読んでほしいです!」
      「立香。ちょっと顔色がよくないんじゃ……い、一緒に食堂!行ってあげてもいいけど」
      「………………」




      「マスター」
      土に染み入る慈雨のような。深い声が耳に滑り込んでくる。
      「どうかした?」
      手元のタブレットから顔を上げると、本日マイルーム担当のケイローンが微笑んでいる。
      「参考までにうかがいたいのですが」
      「はい」
      あれ。よく見ると、先生。口角は上がっているが、目はちっとも笑ってない。何かあったのだろうかと立香はぼんやり考える。
      「あなたに愛する人がいたとして。その人が自分以外の、他者も分け隔てなく慈しむ人だったとしましょう」
      それは両思い?片思い?尋ねると、片思いだと云う。想像してみると、胸が痛かった。
      「それは……苦しいだろうね」
      胸に秘めた思いだ。身勝手な苦しみを相手に伝えられないぶん、余計に。
      ケイローンが眦を細めて「そうでしょう」と今度こそ真実の微笑みを浮かべている。いつもの花マルのそれとは違う、切なさが翳となってたち浮かぶ笑みに、目が吸い寄せられた。
      長い指が、立香の手を取り、絡められる。手を繋ぐ寸前、爪先でそろりと指の股を引っかかれ、なぜだかびくりと肩が跳ねた。「あなたにとって、私はどんな存在なのかと考えてしまう」
      引っかき傷程度では我慢ならない、と男が耳元で囁く。
      立香の顔が真っ赤になった。

      「つまりは、そういうことなのです」
      塩/あずまニカ
    • 絶夏以ぐだ♀
      試し読み
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 夏の浜辺の女の子リクエストいただいた水着でわちゃわちゃ(してるのは地平線あたりに行かされてる人たち)以ぐだ♀
      しれっと第一部ねたばれ注意
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • あのね(アイミア) ##男女


      数日間の逃亡期間、アイゼンはぽつぽつと己の話をしたが、少女は触れ難い静けさをもってほとんど自分について語りはしなかった。
      彼女の持つ、痛みに由来する静けさは、アイゼンが持っているものとよく似ていたから、時折落ちる沈黙は苦痛ではない。


      目は相変わらず塞がれたままで、恐らく治る見込みはない。
      アイゼンはつと少女の膝の上で覚醒した。
      水のにおいが立ち込める。どうやら泉のすぐ近くのようだ。熱で気を失う寸前「ちょっと休憩する」と彼女が口にしていたと思う。
      夏の突き刺すような日差しを、生い茂った青い葉が遮る。敵国で、自分たちが追われている状況でなければ。──いちばん大切な人の行方がようと知れぬ現実さえなければ。穏やかな昼下がりといえたかもしれない。
      けれどその人は。アイゼンの生きる理由であり、根幹をなす。何を置いても失い難い大切な人であったから、アイゼンは現実を片時も忘れることなく、帝国に塞がれた目の下で、瞋恚の焔を燃やし続けている。
      「おい」
      アイゼンが気を失っていたのはそう長い時間ではなさそうだが、どうやらアイゼンを膝に乗せた帝国の娘はすっかり寝入っているようだった。普段より高い体温、規則的な呼吸。呼び鈴がわりの長い髪を引っ張っても、返事はない。
      「……なあ」
      いつも丁々発止のごとく言い返してくる相手が黙っていると調子が狂う。
      アイゼンはふかふかとは言い難い枕の上で、しばしの間思案した。
      『あのね』
      虫の音が響く寝苦しい夜。
      『眠れないなら、頭の中で羊を数えればいいのよ』
      帝国の連中は毎晩羊の数でもかぞえてんのか。アイゼンはそんな風な軽口を口にしたように思う。
      『羊が好きなのか?』
      意味のないからかいに『……うん』心を込めて頷いた娘の声が、耳にこびりついている。


      「あのね、アイゼン。愛してる人はいて?」
      夕暮れに彼女の影は濃く伸びていて、手にした剣も黒々とした影の中。
      夢の中で会う少女は、いつしか憎い女と同じ顔になって、紫苑の瞳で微笑んでいる。


      アイゼン×ミレディアという地獄のごときCPが最推し
      ##男女


      数日間の逃亡期間、アイゼンはぽつぽつと己の話をしたが、少女は触れ難い静けさをもってほとんど自分について語りはしなかった。
      彼女の持つ、痛みに由来する静けさは、アイゼンが持っているものとよく似ていたから、時折落ちる沈黙は苦痛ではない。


      目は相変わらず塞がれたままで、恐らく治る見込みはない。
      アイゼンはつと少女の膝の上で覚醒した。
      水のにおいが立ち込める。どうやら泉のすぐ近くのようだ。熱で気を失う寸前「ちょっと休憩する」と彼女が口にしていたと思う。
      夏の突き刺すような日差しを、生い茂った青い葉が遮る。敵国で、自分たちが追われている状況でなければ。──いちばん大切な人の行方がようと知れぬ現実さえなければ。穏やかな昼下がりといえたかもしれない。
      けれどその人は。アイゼンの生きる理由であり、根幹をなす。何を置いても失い難い大切な人であったから、アイゼンは現実を片時も忘れることなく、帝国に塞がれた目の下で、瞋恚の焔を燃やし続けている。
      「おい」
      アイゼンが気を失っていたのはそう長い時間ではなさそうだが、どうやらアイゼンを膝に乗せた帝国の娘はすっかり寝入っているようだった。普段より高い体温、規則的な呼吸。呼び鈴がわりの長い髪を引っ張っても、返事はない。
      「……なあ」
      いつも丁々発止のごとく言い返してくる相手が黙っていると調子が狂う。
      アイゼンはふかふかとは言い難い枕の上で、しばしの間思案した。
      『あのね』
      虫の音が響く寝苦しい夜。
      『眠れないなら、頭の中で羊を数えればいいのよ』
      帝国の連中は毎晩羊の数でもかぞえてんのか。アイゼンはそんな風な軽口を口にしたように思う。
      『羊が好きなのか?』
      意味のないからかいに『……うん』心を込めて頷いた娘の声が、耳にこびりついている。


      「あのね、アイゼン。愛してる人はいて?」
      夕暮れに彼女の影は濃く伸びていて、手にした剣も黒々とした影の中。
      夢の中で会う少女は、いつしか憎い女と同じ顔になって、紫苑の瞳で微笑んでいる。


      アイゼン×ミレディアという地獄のごときCPが最推し
      塩/あずまニカ
    • おとぎの恋◆診断メーカー
      以ぐだを書く東ニカさんには「永遠なんてない」で始まり、「雨は止んでいた」で終わる物語を書いて欲しいです。できれば10ツイート(1400字程度)でお願いします。
      #書き出しと終わり
      (コピペ終わり)
      期限付きの恋をした
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • この手は赤い忌まわしくも/呪わしくも/慕わしくとも
      絆5以上ある以ぐだ♀
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • さながらの海枕になってほしい
      あなたにしか言わないから
      以ぐだ♀
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • あのね(ケイぐだ) ##男女


      とんと肩にもたれかかってきた重みに、ケイローンは瞠目する。
      此度のマスターは、交流を深めるために頻繁にボディタッチをしたがる。したがるが、それは相手が嫌がるギリギリのラインを見極めてのものだと、よく観察していれば判るものだった。
      かつて彼女が、こんなにも親密な距離を取ったことはない。
      「マスター?」
      呼びかけても、いらえはない。
      ドライヤーを手に、すうすうと穏やかな寝息が耳をつく。
      「……眠ってしまいましたか」
      苦笑する。
      昨日も、今日も、年頃の少女には過酷な日々だろう。一度世界を救っていたとしても。
      なんとなしに惹かれて、さらりとした髪に指を巻きつける。シャンプーのためか、甘く清潔な匂いが鼻先を過ぎる。つむじにくちびるを寄せた。
      力ない肢体を難なく抱き上げ、寝台へ運ぶ。白いシーツに彼女をおろして踵を返そうとすると、──
      「ケイローン先生」
      裾をくんと引っ張られる。
      振り向くと、彼女が苦労してまぶたを押し上げようとしていた。それでも重ったるくて仕方ないのか、まぶたが震えている。
      「先生、あのね」
      「はい」
      眠気がまさっているのだろう。舌足らずな喋り方に微笑んで、寝台のそばに片膝をつく。「ここにいますよ」
      「うん……」
      細い指がケイローンの眦に触れ、子どもにするように、小麦色の頭をよしよしと撫でた。
      「っ!」
      「おやすみなさい」
      目を細めた立香は、そのままこてんと寝入った。

      部屋には「……参った」と片手で顔を覆う男が取り残されている。
      ##男女


      とんと肩にもたれかかってきた重みに、ケイローンは瞠目する。
      此度のマスターは、交流を深めるために頻繁にボディタッチをしたがる。したがるが、それは相手が嫌がるギリギリのラインを見極めてのものだと、よく観察していれば判るものだった。
      かつて彼女が、こんなにも親密な距離を取ったことはない。
      「マスター?」
      呼びかけても、いらえはない。
      ドライヤーを手に、すうすうと穏やかな寝息が耳をつく。
      「……眠ってしまいましたか」
      苦笑する。
      昨日も、今日も、年頃の少女には過酷な日々だろう。一度世界を救っていたとしても。
      なんとなしに惹かれて、さらりとした髪に指を巻きつける。シャンプーのためか、甘く清潔な匂いが鼻先を過ぎる。つむじにくちびるを寄せた。
      力ない肢体を難なく抱き上げ、寝台へ運ぶ。白いシーツに彼女をおろして踵を返そうとすると、──
      「ケイローン先生」
      裾をくんと引っ張られる。
      振り向くと、彼女が苦労してまぶたを押し上げようとしていた。それでも重ったるくて仕方ないのか、まぶたが震えている。
      「先生、あのね」
      「はい」
      眠気がまさっているのだろう。舌足らずな喋り方に微笑んで、寝台のそばに片膝をつく。「ここにいますよ」
      「うん……」
      細い指がケイローンの眦に触れ、子どもにするように、小麦色の頭をよしよしと撫でた。
      「っ!」
      「おやすみなさい」
      目を細めた立香は、そのままこてんと寝入った。

      部屋には「……参った」と片手で顔を覆う男が取り残されている。
      塩/あずまニカ
    • そうやってあいしてね新婚さん要素をあんまり感じないけど新婚さん以ぐだ♀
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • あなたを脅かす/誘惑する/とろかす影になりたい二臨姿の以蔵さんとぐだ子の以ぐだ♀
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 聞き上手の声に耳を澄ます(李ぐだ) ##男女
      ※付き合っていない
      ※別段物静かではないけれど、聞き上手なマスターと


      ぬくもりのない頬に触れると、書文はぎょろりと見下ろしてきた。「なんだ?」
      そのままひんやりした頬を両手で包み込む。
      低く佳い声が、ゆらゆらと頭蓋を揺らしている。
      「マシュやジャックたちみたいに、やわっこくありませんね」
      何を判り切ったことを。
      呆れたように細められた眼は、書文の内心をありありと示している。気にしない立香はそのまま指をすべらせ、頬骨に触れた。思いがけない親密な接触に、ぎくりと彼の肩が揺れる。
      「っ」
      冬の日の、吐息のような。瞬間、黄昏の瞳にふっと熱が灯り、書文のうなじが総毛立つ。音もなく、平凡な造作の彼女に見惚れた。
      「おとこのひと」
      ぽつ、と落ちた呟きに、一気に頬が熱を帯びる。参った。獣のように、書文は喉の奥で唸る。
      聞き上手で、相槌で人を落ち着かせる役目を負うかのような声帯は、今は見知らぬ熱に浮かされていているらしい。
      「先生、かわいい」
      額に手を当てて項垂れると、そっと立香が微笑んだ。気ままに囀るくちばしを、ひょいと摘んでやりたくなる。
      ##男女
      ※付き合っていない
      ※別段物静かではないけれど、聞き上手なマスターと


      ぬくもりのない頬に触れると、書文はぎょろりと見下ろしてきた。「なんだ?」
      そのままひんやりした頬を両手で包み込む。
      低く佳い声が、ゆらゆらと頭蓋を揺らしている。
      「マシュやジャックたちみたいに、やわっこくありませんね」
      何を判り切ったことを。
      呆れたように細められた眼は、書文の内心をありありと示している。気にしない立香はそのまま指をすべらせ、頬骨に触れた。思いがけない親密な接触に、ぎくりと彼の肩が揺れる。
      「っ」
      冬の日の、吐息のような。瞬間、黄昏の瞳にふっと熱が灯り、書文のうなじが総毛立つ。音もなく、平凡な造作の彼女に見惚れた。
      「おとこのひと」
      ぽつ、と落ちた呟きに、一気に頬が熱を帯びる。参った。獣のように、書文は喉の奥で唸る。
      聞き上手で、相槌で人を落ち着かせる役目を負うかのような声帯は、今は見知らぬ熱に浮かされていているらしい。
      「先生、かわいい」
      額に手を当てて項垂れると、そっと立香が微笑んだ。気ままに囀るくちばしを、ひょいと摘んでやりたくなる。
      塩/あずまニカ
    • 光降る夜の花のこといとしい女の草舟に糸をくくりつけてやりました
      裏垢に投稿していた以ぐだ♀
      ヤミヤミ度 ★★★☆☆
      ##男女
      塩/あずまニカ
    • 範疇外(ギィミア) ##男女

      ギィは昔から大層よくもてていて、彼のそばに侍る美女をこれまで何人見たか、ミレディアは両の指が足りなくなったところで数えるのをやめた。顔の造作が整った、若くして将軍職に就いた男。引く手数多で当然だった。
      けれどミレディアの知る限り、長続きした人はどうやらいそうにない。
      「ギィ」
      談話室の暖炉の前に陣取り、無数のクッションに身を埋めている男に声をかける。ギィは目を瞑っていた。でも、眠ってはいないことを、ミレディアは知っている。「ギィってば」
      クッションの合間からこぼれる金茶の髪を、ぞんざいにぴんと引っ張る。ギィの異名を知っていて、ミレディアとの関係性を知らない下級兵が見たならば、まず卒倒しかねない光景だった。
      ミレディアはまだ諦めない。子どもの頃のように、彼の腹にのしかかる。「ギィ」
      「……なんだ」
      ついに我慢しかねたのか、不機嫌を隠すことなくギィがぽかっと片目を開ける。昔から知る少女に向かって思い切り眉根を寄せた。
      「ギィは、好きな人はいないの?」
      「あ?」
      「大事な人は、いる?」
      両手を頭の後ろで組んでいた男は、しばらく考え込むように目を瞑った。
      「そうだな」
      そして皮肉げに、ふっと片頬を緩める。自分の上にいるミレディアを視界に映した。
      けれど、なんとなく、その反応から。自分が聞きたいことに彼が答えたわけではないのだと察したミレディアは、不服げにギィのコートの裾を引っ張る。
      「いい加減にしろよ」そう悪態をついた死神だったが、無理やりどかすようなことはしない。ミレディアの甘え方は、いつでも判りにくい。

      「愛してる人はいるのって聞きたかったの」
      「ああ」
      「大事にしたい人ができたから」
      「知ってる」
      涙は出ないのに顔を覆ったミレディアを、小鳥を掌に収めるように胸に迎え入れる。
      ミレディアの不器用に繕われた心に、ギィは頬を寄せる。
      最後に、ひび割れた声が胸に落っこちてきた。
      「もうすぐ、私たちバラバラになってしまうでしょう」



      愛する人を置き去りにせざるを得ない少女と、愛する人をひとりにしないために手を繋いで地獄と知って赴く男という構図は最高オブ最高
      ギィミアと言い張る
      ##男女

      ギィは昔から大層よくもてていて、彼のそばに侍る美女をこれまで何人見たか、ミレディアは両の指が足りなくなったところで数えるのをやめた。顔の造作が整った、若くして将軍職に就いた男。引く手数多で当然だった。
      けれどミレディアの知る限り、長続きした人はどうやらいそうにない。
      「ギィ」
      談話室の暖炉の前に陣取り、無数のクッションに身を埋めている男に声をかける。ギィは目を瞑っていた。でも、眠ってはいないことを、ミレディアは知っている。「ギィってば」
      クッションの合間からこぼれる金茶の髪を、ぞんざいにぴんと引っ張る。ギィの異名を知っていて、ミレディアとの関係性を知らない下級兵が見たならば、まず卒倒しかねない光景だった。
      ミレディアはまだ諦めない。子どもの頃のように、彼の腹にのしかかる。「ギィ」
      「……なんだ」
      ついに我慢しかねたのか、不機嫌を隠すことなくギィがぽかっと片目を開ける。昔から知る少女に向かって思い切り眉根を寄せた。
      「ギィは、好きな人はいないの?」
      「あ?」
      「大事な人は、いる?」
      両手を頭の後ろで組んでいた男は、しばらく考え込むように目を瞑った。
      「そうだな」
      そして皮肉げに、ふっと片頬を緩める。自分の上にいるミレディアを視界に映した。
      けれど、なんとなく、その反応から。自分が聞きたいことに彼が答えたわけではないのだと察したミレディアは、不服げにギィのコートの裾を引っ張る。
      「いい加減にしろよ」そう悪態をついた死神だったが、無理やりどかすようなことはしない。ミレディアの甘え方は、いつでも判りにくい。

      「愛してる人はいるのって聞きたかったの」
      「ああ」
      「大事にしたい人ができたから」
      「知ってる」
      涙は出ないのに顔を覆ったミレディアを、小鳥を掌に収めるように胸に迎え入れる。
      ミレディアの不器用に繕われた心に、ギィは頬を寄せる。
      最後に、ひび割れた声が胸に落っこちてきた。
      「もうすぐ、私たちバラバラになってしまうでしょう」



      愛する人を置き去りにせざるを得ない少女と、愛する人をひとりにしないために手を繋いで地獄と知って赴く男という構図は最高オブ最高
      ギィミアと言い張る
      塩/あずまニカ
    • あのね(二修) ##男男


      「二宮さん」
      なんだと振り向いた人があまりに安らいだやわらかな表情をしていて、修は考えていたことがさっぱりと頭から抜け落ちた。
      代わりに。
      「あのね」
      「……」
      「…………」
      「………………あ?」



      「聞かなかったことにしてください」
      「なぜ」
      まだくつくつと笑っている二宮に、修は羞恥半分、彼のリラックスした顔を見れた淡い喜び半分で、口元が妙にムズムズした。「早く忘れてください」「断る」「子どもですか」「子どものお前に云われたくない」「嫌いになりますよ」「俺のほうがお前を嫌いだ」
      その嫌いな子どもと付き合っているのはどこの誰なのかと呆れる。
      しょうのない人だとくちびるの端だけではにかんだ。


      幸せ時空
      ##男男


      「二宮さん」
      なんだと振り向いた人があまりに安らいだやわらかな表情をしていて、修は考えていたことがさっぱりと頭から抜け落ちた。
      代わりに。
      「あのね」
      「……」
      「…………」
      「………………あ?」



      「聞かなかったことにしてください」
      「なぜ」
      まだくつくつと笑っている二宮に、修は羞恥半分、彼のリラックスした顔を見れた淡い喜び半分で、口元が妙にムズムズした。「早く忘れてください」「断る」「子どもですか」「子どものお前に云われたくない」「嫌いになりますよ」「俺のほうがお前を嫌いだ」
      その嫌いな子どもと付き合っているのはどこの誰なのかと呆れる。
      しょうのない人だとくちびるの端だけではにかんだ。


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      塩/あずまニカ
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