君が君であること「やあ、僕の写し身。元気にしてる?
まあいつでも元気なわけじゃないよね、君はそういう仕事をしているんだから。
造られた存在であること、闘うことが使命であること。青みがかった白い髪、小さな体躯、大きな力。
僕と君は同じだ。いや違うね、同じだった。
造られた存在だけれど、造られ方も種族も違う。闘うことが使命であるけれど、背負うものの規模が違う。
君は僕の写し身として造られた、けれど同じなのは名前だけ。最初から何もかも違ったんだ。
お別れだよ僕。鏡像は個の存在となり、誰にも縛られることはなくなる。
実に唐突で勝手な話さ、分かってるよ。でも君だっていつかはこうなると、どこかで思っていたんじゃない?
……さあ、もう時間だ。唯一のつながりを、ここで断ち切ろう。
今日の為に一生懸命考えてきたんだ、君のことを考えながら、君に似合う"名前"を。
タンポポを知っているかい?そちらの宇宙にも自然豊かな星はあるそうだけど、君は見たことないかもね。
地球に来た時に探してごらん、小さくても、どんな場所でも強く咲く花だよ。
タンポポには『神託』という花言葉がある。君の所属するオラクルと同じ意味だ。縁を感じるだろう?
そして、『幸福』『真心の愛』といった言葉もある。
僕が君に贈る、最初で最後の贈り物だ。名前と共に君の幸福を願い、愛に包まれることを祈ろう。
【アグリオ】これが君の新しい名前だ。
タンポポの他の言語での呼び方からとったんだよ。カッコいいだろう?
これで君は唯一の存在になった。もう誰の物でもない、君は君自身だ!
僕と君のつながりはこれで完全に切れた、でも君が独りになった訳じゃない。
忘れないで、君には仲間がついている。僕にもいるから心配しないでね。
最後に僕と約束をしよう。お互いに無理はしないこと、仲間を悲しませないこと、生きて幸せを掴むこと。
それじゃあ、どうか元気で。
……タンポポにはもう一つ花言葉がある。それは、『別離』。
僕等は二度と会う事はない、君も僕を忘れて生きていくんだ。
さようなら、かつて僕だった君。君の未来に、幸多からんことを。」
タンポポ、ギリシャ語でアグリオラディキ。
花言葉は『愛の神託』『神託』『誠実』『真心の愛』『幸福』
そして『別離』
始めた当初は他と被らないような名前にしようと思って、うちの子のエクアの名前を引っ張ってきていました。
しかし彼らの名前が被りっぱなしでは意味がないと思い至り、この度改名することにしました。
個の特性を手に入れたアグリオと、同じく個となったエクアを、これからもよろしくお願いします。
2019/07/25 樹雨 槐