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    明日を探しに
    "会いたくない相手だ。"

    「こんばんは。ラグエル。何か…」

    「あなたの行動が最近おかしいという話を聞いてきました。仕事を怠けて何をしているのかと思えば……。あなたらしくもない。何をしようとしていたのです?」

    天使の監視を司る天使 ラグエル。天使の仕事を監視するものだ。仕事を放棄し、さらに悪行または天界に反する場合は神に報告し、その後堕天とされる。ゾフィエルの行為はその審判に触れていた。

    「小さな村を一つ、守ったとしても罪にはならないかと。村に結界を張ろうと考えていました。それだけでもいけないことですか?」

    ラグエルは無表情のまま話を聞く。表情を変えることはまずないことくらいゾフィエルも把握していた。

    「眼下に広がる町を見てごらんなさい。悲しいことです。同族である人間。人と人とが争う時世になってしまった。我々とて一人でも多くの人間を守りたい。だからこそ、我々は考えに考え綿密に動いている。私情で勝敗を分けたとして、さらに多くの人間が死ねばあなたの罪は重いでしょう。結界を張りたいのはこちらとて同じ。誰しもが想い想いの人間を守りたいのです。」

    ゾフィエルは目を反らし、眼下に広がる町をただみていた。

    「大義ということですか。大義のために、小さな命は捨てねばならぬと。この町の人々みたいに。」

    "綺麗事だ…。何もしないだけの綺麗事だ。"

    「ゾフィエル……。あなたの気持ちはわかります。」

    "辛いの?目が真っ赤だよ。"

    「気持ちだと…私の気持ちがわかるものか……!」

    ラグエルの豊かな苔色の髪がなびく。ゾフィエルの返答に驚いている様子だった。ゾフィエルは続けた。

    「堕天にしたいのであればすればいい。それほどまでに大義が大事なら……!」

    「結界を張るのなら、堕天させますよ。ゾフィエル。」

    「……。」

    ラグエルの曇った目は、だんだんと澄んだエメラルド色に輝く。ラグエルが本気で言っているのことを示しているのだ。ラグエルはその後何も言わず、ずっとゾフィエルを睨みながら火の海へ落ちて消えた。悪趣味な消え方だとゾフィエルは嫌な顔をし、彼も町から離れた。


    あれから3日後、モモはゾフィエルを待っていた。2人が会ったあの場所で、美味しいりんごをあげようと切り株に座り、足をパタパタさせながら周りを見回していた。

    「私が来ると思っていたのか?」

    モモは上を見上げた。鋭い目の優しい天使が頭上でため息をついていた。ゾフィエルは地面に降りた。

    「天使様!」

    ゾフィエルの顔は今日も疲れていた。モモはそれを心配そうに見つめ、また腕を優しく触る。

    「今日はりんごをもってきたのよ。」


    「お前は、死なないか?」

    ゾフィエルはわずかに唇を噛んだ。モモはじっと見つめる。

    「うん!死なないよ!だから心配しなくていいよ!天使様!」

    小さなモモは背伸びをし、ゾフィエルの頬に触れた。


    「天使様、我慢したらダメだよ!」


    ゾフィエルはさらに唇を噛んだが、堪えきれず涙がどっと溢れてしまう。


    「天使だからって、泣くのを我慢したら辛いでしょ?」


    その言葉が心に響いたのか、天使は自分の右腕で目を隠し静かに泣いた。そして、心の中でひたすら呟いた。

    "ごめん、ごめん、ごめんなさい…。本当に申し訳ない……。"



    深夜、皆が寝静まった頃村長は異様の気配を感じ、寝床からむくっと体を起こした。すると、部屋の隅に人の影がみえた。

    「モモに伝言を頼んだのだが、聞いていなかったのだな。」

    村長は人ではない異界のものだと感じ、体が固まる。影がゆらめき、緑色の光がほのかに部屋を照らしていた。村長は負けじと言い返す。

    「協定を結んでも、農作物を分けられない。自分たちが食べていくにいっぱいいっぱいなのだ。」

    緑色の光はさらに輝きをまし、微かに人の形になっていく。

    「この村から遠く離れ、東へ進むと都がある。あそこへ向かって進むのだ。」

    村長は首を横にふる。

    「あそこの都までは遥かに遠い。行けるわけがない!」

    人の形をした緑色の光はさらに、人間の姿に変わっていく。その人間は背中から翼を生やしていた。

    「モモが言ってた…天使か…?」

    「いかにも。我が名は、伝令の天使 ゾフィエル。都に行かねば確実にこの村の人々は滅ぶ。それなら、遥か遠い都に行く方がまだいいだろう。賭けかもしれないが、その間で何人倒れるかはわからぬ。農作物はまだあるうちに出たほうがいい。」

    村長はゾフィエルをまじまじと見た後、ゆっくり頷いた。



    明け方、モモの村は遥か彼方の東の都に向けて移住することに決めた。荷車の列が朝日に向かって突き進んでいるのを、ゾフィエルは遠くから見つめていた。モモは、キョロキョロと当たりを見回しながら皆と歩いている。ゾフィエルを探しているようだった。

    "許せ、モモ。お前があの都までたどり着けるかはお前にかかっている。東の都に行けば後は大丈夫だ。きっと生きていけるだろう。お前のその屈託のない希望に満ちた瞳。さぁ、明日を探しにお行き。私はこれくらいしかできないんだ。"

    ゾフィエルは、村の一行が見えなくなるまでずっと見守り続けていた。




    天界に戻ると、レイフォルエルに会った。ゾフィエルにとって彼を見るのは久しぶりだった。レイフォルエルは密偵が人手不足のために仕事に駆り出されていた。レイフォルエルは長くて綺麗な金色の髪をなびかせ、ゾフィエルに手を振った。

    「おう!ゾフィエル!久しぶりだな!」

    レイフォルエルはニコッと微笑んでいたが、目の下に酷い隈ができていた。

    「あぁ。端東の国はどうだった?」

    レイフォルエルの青色の目がわずかに揺れた。しかし、彼はあははと笑い、頭をかく。

    「酷いもんだよ!今はどこも酷い有り様だけどさ!」

    彼は辛いといつも頭をかく。ゾフィエルはそれを知っていた。あの時、モモがゾフィエルにしたように、ゾフィエルはレイフォルエルの肩に手を置いた。

    「レイフォルエル。天使だってな、泣いたっていいんだ。」

    レイフォルエルはそれ聞いた瞬間、ぶわっと涙が溢れた。青色の瞳が褪せてしまいそうなほど涙が滝のように流れていた。


    ゾフィエルはレイフォルエルの背中を擦る。

    「酷い時代だ、悲しい時代だよ。早く終わるよ。きっと早く終わるから。」


    あれから、時は流れた。モモが後にどう生きたかゾフィエルは気にしないようにした。

    ゾフィエルは信じていた。
    モモが生き続けて、幸せに過ごしていることを。





    そして、21世紀。
    荒波が去り、比較的穏やかな波の時代がまた始まった。ゾフィエルはこれを機に服装を変え、さらに杖も新しくした。

    雫型の装飾。ゾフィエルの仲間たち、ゾフィエルと出会った者たちがあらゆる時代で堪えてきた涙。その涙を想って作った杖。

    彼らの心が浄化されることを願った杖だ。

    ゾフィエルは気を取り直し、助走をつけた。

    目を閉じ、これからやってくる未来を思う。

    それが叶うことを願って目を開き、太陽に向かって一気に飛び立つ。

    こうして伝令の天使は、忙しい仕事場へと向かっていったのだった。

    倉世 朔 Link Message Mute
    Sep 14, 2018 7:53:48 AM

    明日を探しに

    #創作 #オリジナル #小説

    ゾフィエル編終わりです(汗)。
    ずっと書きたかったので、一人嬉しくなっています((泣))。
    それでは、よろしくお願いします。

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