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    彼女は俺の腕の中だ 
     彼女がシャワーを浴び終え、次に俺が体を洗った。身体中に刻まれた自分の傷跡をなぞる。この体に乗り移って何年がたっただろうか。始めこいつの体は傷だらけになどなっていなかった。弱いひょろひょろの体で扱いが難しかったが、ようやくここまで体を鍛えることができた。
     そのせいか上の奴等も俺に関心し、こうして自由にやらせてくれている。殺し屋の体が出来上がるのは簡単だ。もう何回も繰り返しているのだから。俺は、バスローブを着て部屋へ戻った。

     ホテルはシングルしか借りれなかった。元からベッドを譲るつもりでいたが、リオナが先に布団をかけず、無防備に眠っていた。

     流石に疲れたのだろう。
     俺はため息をつき、リオナを抱えてベッドに入れてやった。

     ベッドから離れようとした際、リオナはぐっと俺の腕を掴んだ。

    「お、おじさ……ん。いかないで……」

     彼女は泣きながら眠っていた。おじさんの夢を見ているのかうなされている。目の前で身内が殺されたんじゃ良い夢なんて見れるはずがない。俺といるときはしゃんとしていたが、流石にそれは無理だったか。

     リオナはさらに俺の腕をぐっと掴む。まるで一人になるのを恐れるように、手が微かに震えていた。

    「ひ、一人は……怖い……」

     どうしたもんかと俺は躊躇い、彼女の額を撫でてみた。彼女はなかなか手を離さないが、ここで無理に離すと悪夢にうなされるだろう。

     悪夢にうなされる気持ちは痛いほどわかるから無理に離せない。

    「だぁぁ……ちくしょう。なんで俺がこんなことしなきゃならんのだ……!お前のせいだからな。どうなっても知らないからな!」

     俺はベッドに入るなり、リオナが腕を離すまで一緒に寝ることにした。これは俺のせいじゃない。この子が離そうとしないからいけないんだ。

     リオナ。
     彼女とこうまで近くにいるだなんて思ってもみなかった。

     彼女は貴族になったり、村の娘になったり、魔法使いになったり、踊り子になったりしていたが、いつだって俺は彼女を追っていた。

     肌のぬくもりも匂いも、顔さへもあまり判断がつかないまま、ただリオナを探してはこの輪廻を絶ちきりたかった。

     今俺の腕の中で、輪廻を絶ちきる源が眠っている。すやすやと、俺のぬくもりが心地よいのかわからないが穏やかな顔で眠っている。

     皮肉な状況だ。ちくしょうめと悪態をつきたくなる。
     今なら首を絞めて殺せるはずだ。
     こんな細い首なら一発で仕留められるのに。
     こんな顔されたら殺せるわけがない。

     まぁいい。この子は俺の腕の中だ。
     いつだって殺せるんだ。
     しばらく時間をやろうじゃないか。

     なぜかこの時、恐ろしいほどの睡魔が襲った。
     俺は彼女につられていつの間にか穏やかに眠ってしまっていた。

     だが、相変わらず悪夢だけは襲いかかってくる。

     前世の記憶。リオナは悪徳貴族の娘で俺は変わらず殺し屋だった。
     あの時は後少しのところで、リオナが崖から落ちた。俺も逃がすまいと崖から落ちこうしてまた転生した。

     あの時のリオナ嬢の言葉は忘れられない。

    「この人殺し!卑しい奴!この人殺し!」
    「違う!好きで殺し屋をやってるんじゃない!終わらせてくれ!頼むから終わらせてくれ!」

    「卑しい奴め!」

     パッ目が覚めたときは既に朝だった。

     隣を見るとリオナがじっと俺を心配そうに見つめている。

    「あなた、泣いてるの?」

     俺は頬に伝う涙を感じ、はっと拭った。
     一瞬で深く眠ってしまっていたのかと俺は勢いよく飛び起きた。リオナは優しく声をかける。

    「あなた、うなされてたわ……」
    「……」

     リオナはゆっくりと俺のもとへ近づいてくる。まるで怪我した野良犬を介護しようとやってくる女の子のようだと思った。

    「苦しいの?私で良ければお話聞くよ?」

     "卑しい奴!"

    「はっ!お前に俺の何がわかる……!」

     あの時のリオナ嬢と重ねてしまい、つい叫んでしまった。リオナはショックを受けたのか、怖かったのか静かに下を向いた。

    「ご、こめんなさい……」

     本当に調子が狂う。俺はため息をつき、荷物をまとめながら呟いた。

    「当分は俺といろ」

     その言葉にリオナはパッと明るくなった。

    「ほ、ほんとに!?」

     どうしてそんなに俺といたいのかわからないが、ああと俺は返事をした。

    「今日から俺は殺し屋をやめる。当分逃げてばかりが続くだろう、俺のもとから離れるな。いいな?」

     彼女は無邪気にうん!と答えた。

     自分が羊の皮を被った狼のように思え、リオナの無邪気な顔を直視することができなかった。
    倉世 朔 Link Message Mute
    Nov 8, 2019 12:40:26 PM

    彼女は俺の腕の中だ

    #創作 #オリジナル #小説

    4話目になります~!
    よろしくお願いします。

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