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    凪の中で君と踊る「休みの日にブチャラティと出かけたんだってぇ?」
     外回りから帰って来て早々ナランチャに絡まれ、アバッキオはまずいなと思った。
     既にチームに打ち解けてはいるし、何度か修羅場を共にし信頼関係も築いてはいるが、ことブチャラティに関しては別問題だ。
     ブチャラティは博愛というほどに平等な男である。自分がどういうふうにメンバーから見られているのか自覚があるのかないのか。少なくとも自分が与える影響の大小は把握しているらしい。全員をそれぞれ大事にしている。
     だが公私での線引きはしている。仕事時間外で食事を共にすることはあっても、休日にわざわざ外で会うことはない。
    「へえ、いつの間に」
     執務室のソファー席でピストルズと食後のケーキを分け合っていたミスタは、ブチャラティのそれとは異なる意味で吸い込まれそうな瞳を僅かに揺らし顔を上げた。
     分かりづらいがミスタは彼なりにブチャラティを敬愛している。ただ、感情の切り替えが早く淡白な性格で仕事以外でメンバーと関わる気は一切ないようだ。そんな彼もブチャラティが休日をアバッキオと共にしたという話には興味を抱いたらしい。
    「示し合わせていたわけじゃねえ。たまたま同じ映画館で同じ映画を見てて出る時になっていることに気がついたんだよ。そのついでに一緒に飯食っただけだ」
    「同じ映画ね。いいねぇ趣味が合って。俺も映画は好きだがコメディか恋愛ものしか見ねえんだよなぁ。抑揚のゆるい文学作品はちょっと」
     映画の話に焦点を当てているように思えるが、彼の手元に群がるピストルズが戸惑ったり怯えたりしてることからそうでないことが伺える。
    「休日に偶然とは。幸運だなぁアバッキオ」
     そう言ったきり口を噤んでアバッキオから視線を外して再びピストルズに向き合う。言いたいことは言ったのでもう気が済んだようだ。ミスタはプロ意識が高い男なので特技を活かした仕事でブチャラティに評価されることを好む。個人的にどうとかという話には興味がないと思っていたがそうでもないらしい。
    「俺も映画館行けばブチャラティと偶然会っちゃったりして」
    「ナランチャは映画見ないでしょ。というか君、一時間以上黙ってじっと座っていることなんてできるんですか?」
    「え、無理かも」
    「偶然を装うんじゃなく、素直に言うのが一番ですよ。どこかへ一緒に出かけたいって」
    「それフーゴじゃねえの? 俺をダシに使おうとしてるだろっ!」
    「違うっ!」
    「あっ、その声は嘘をついている時の声だぜ」
    「真似のつもりならやめろ。ド低脳が」
     何やら雲行きが怪しくなってきたのでアバッキオはナランチャの脇の下に手を入れて彼を持ちげミスタの隣に座らせた。
    「おいおい。こいつを隣に連れて来んじゃねえよ! 飼い主のところに戻せ!」
    「誰が飼い主だって?」
    「すげぇ! アバッキオ力持ちだなっ、今のもう一回やって!」
     まずい。余計ややしくしたかもしれない。
     今度はミスタとフーゴが喧嘩をしはじめた。それを無視して飛び付いてくるナランチャを受け止めたアバッキオは、もう考えるのをやめた。
    「うわっ、高え」
     小さな子どもにするようにナランチャを持ち上げ高い高いをするアバッキオは、背後で部屋の扉が開かれたことに気が付かなかった。
    「ずいぶんと楽しそうだな」
     その一言で場は静まり返った。
    「ブ、ブチャラティ……」
     部屋に入って来たブチャラティは一瞬、アバッキオとナランチャの様子を目にすると表情を緩めて唖然としたがすぐにきつく表情を締めた。
    「一体これはどういう状態だ?」
    「ブチャラティ! アバッキオと休日出かけたって⁉︎」
     いつもなら真っ先に謝るナランチャが予想外のことを口にしたのでブチャラティは驚いたようだ。
    「そういえばナランチャ。その話一体誰から聞いた?」
     一旦ナランチャを床に下ろしたアバッキオは彼を問い詰める。てっきりブチャラティが話したのかと思っていた。しかしナランチャの言葉がその予想を裏切る。
    「いつも寄ってるカフェの親父が、ブチャラティが少し前に入ったデカイのと楽しそうに歩いてるの見たって」
    「楽しそうに?」
     そこに引っかかったかフーゴ。
    「あんな楽しそうなブチャラティ見るのはじめてだから、良い仲間が入ったみたいでよかったなって言っててさ。俺も休日一緒に出かけたことねーのにって思ってぇ、アバッキオに詳しい話を聞いてたんだ!」
    「だから何でミスタとフーゴが喧嘩して、ナランチャがアバッキオに抱き上げられていたんだ」
     意味がわからないとブチャラティは眉間にシワを寄せる。
    「俺もよくわからん……」
    「だろうな。お前たち、今日はもう遅い。用が無いのならさっさと帰って休め」
     ブチャラティの言葉に従って帰宅準備をはじめる面々を見渡す。一日中外の仕事だったアバッキオは特に持ち物も無いのでさっさと帰ろうかと思ったが、ブチャラティが目線でそれを制した。
    「なんだよ」
     また余計なことを言われるのが嫌だったのでアバッキオは一度執務室を出て、全員が帰ったのを確認した後戻ってきた。
    「いや、何というか」
     めずらしくブチャラティが言い淀む。
    「お前ぐらいの年齢の男でもああいう戯れはするのだなと思って」
    「何を言って……。あ、ナランチャのアレか。突然フーゴと喧嘩はじめたもんだから抱き上げて引き離したんだよ。なぜかそれが気に入ったみたいで、またやってくれって飛び付いてきたんだ」
    「そうか。お前は普段からああいうことをやっているわけではないと?」
    「当たり前だろ。俺を何だと思ってんだ」
     そこでアバッキオは、ハッとした。
     以前ブチャラティに自分たちくらいの年齢の男は友人とどういう遊びをするのかと聞かれたことがあった。まさかナランチャとのアレをそうだと思ったのか? まさかとアバッキオは笑みをこぼし、ブチャラティをからかうように聞いた。
    「ブチャラティ。あんたもやって欲しいのか?」
    「……」
     なぜ黙る。
     ブチャラティは困惑顔でアバッキオをジッと見上げる。
    「そうなのかもしれない」
    「は?」
    「いやな、ナランチャが楽しそうに笑いながらお前に抱きかかえられているのを見て、少しだが、いいなと……」
    「な、おい、マジで言ってんのか?」
    「ああ。マジだ。俺にもやってくれ」
     いつの間に振り切れたのかブチャラティは真剣な顔でアバッキオに迫って来た。
    「待てって。あんたナランチャと違って俺と身長十センチしか違わねえだろ」
    「十センチも違うだろう。それにお前の方がずっと身体が分厚い。俺なんて簡単に抱えられるだろう」
    「そういう問題じゃねえよ。絵面がヤバいって話だ。流石に腕だけで持ち上げるなんて無理だから身体を密着させなきゃならねえし、そうなると、変だろ、いろいろと!」
    「シチリアとの抗争で駆り出された時負傷したミスタを横抱きにしてたじゃねえか」
    「あれは誰がどう見ても必要措置だっただろ」
    「誰かに見られるのがまずいなら、今は全く問題ないだろう? 全員帰した」
     確かに、言われてみればそうだ。
     ブチャラティに対して下心があるアバッキオにしてみれば、これは合意の元でブチャラティに触れられるチャンスだ。
    「そこまであんたが言うんだったら、いいぜ?」
    「ありがとう」
     律儀に礼を言い、アバッキオに一歩近づき腕を軽く広げるブチャラティの右脇から腕を入れたアバッキオは、彼の背中を包むように支えてかがみ、彼が腕を自分の肩に回すのを確認してからもう片方の腕を彼の膝裏に入れて持ち上げた。
     十分に厚みがあるがアバッキオに比べれば薄く優雅な曲線を持つ身体。決して軽いとは言えないし女性のように柔らかくはないが、肩を抱き半身を密着させているブチャラティの生々しい体温と感触はアバッキオの理性を試す。
    「本当に目線が高くなると愉快な気分になるな」
     はしゃいでいたナランチャの気持ちがわかったとブチャラティはつぶやく。
    「俺も昔、父親にこうされたことがある」
     ブチャラティが幼くしてこの世界に入ったことを知っているアバッキオは、おそらく彼の家族はもうこの世にいないか、会えない場所にいるのだろうと予想した。
    「俺は父親じゃねえよ」
    「わかってる。だが、ナランチャを抱き上げるお前の様子が、まるで子どもをあやす父親のように見えたのは事実だ」
    「それは、ショックだぜ……」
     ブチャラティが自分に親の心像を見出すとは。つまり、アバッキオが抱く感情が向かう先にある、そういう対象に見られることはないのだと言われているようで、こんな世界で生きている身では成就は望めないとわかってはいても傷付く。
    「すまねぇ。悪い意味で言ったんじゃ、うわっ⁉︎」
     アバッキオはブチャラティの身体を軽く上へ放り投げた。腕から数センチ身体が浮く程度に。いきなり身体を揺らされ不安定な体勢になったブチャラティは慌ててアバッキオにしがみつく。
    「ハハッ、あんたでもそんな声出すんだな」
    「お前……」
     ひたいがくっ付くほど近くでブチャラティに睨まれる。睨んでいるというより拗ねているように見えてアバッキオは激しく脈打つ心臓に反して笑いたくなった。
    「ブチャラティ。あんた結構体温高いんだな」
     見た目の印象では低いイメージだった。
    「そういうお前も雪男みたいなのに温かいぞ」
     アバッキオはカッと熱くなる顔を誤魔化すようにブチャラティを抱いたままその場でぐるりと一回転した。
    「おい危ねえだろっ、もうそろそろ下ろせっ」
    「自分から抱いてくれって言っといてそりゃねえぜ」
    「語弊がある言い方やめろっ」
    「このまま家の近くまで運んでってやろうか?」
    「馬鹿かっ!」



    「なんか楽しそうですね」
     執務室の外に三つの影があった。
     忘れ物をして引き返して来たナランチャと、彼に付いて来たフーゴとミスタだ。
    「……ガキどもが寝静まってからこっそりイチャつきはじめるフーフみてぇ」
    「ちょ、やめてくださいよミスタ!」
    「なあなあ、そしたら俺ら息子? てかアバッキオとブチャラティどっちが親父?」
    「やめろと言っているでしょう⁉︎」
    「中に入るタイミングないんじゃねぇ? 忘れ物は諦めて明日にしようぜ」
     三人は顔を付き合わせた。
     盗み見ていたことがバレたら非常に気まずい。ブチャラティは許してくれるかもしれないが、間違いなくアバッキオの鉄拳が飛んでくる。
    「それにしても、ブチャラティ……あんな顔して笑うこともあるんですね」
    「同い年ってズルい」
    「まったくだな」
     たとえ同い年に生まれてもああいう仲になれるかどうか不明であることはあえて無視した三人は、二人に気付かれないようにこっそりとその場をあとにしたのだった。
    苔もも Link Message Mute
    Nov 18, 2018 5:53:21 AM

    凪の中で君と踊る

    #アバブチャ

    チーム+アバブチャでほのぼの。
    原作軸シリーズと繋がってます。

    イタリアの学校制度は、基本的に数え年で同い年の子どもは同学年とのことです。早生まれの子(80年3月末生まれのアバ)は希望すれば、本人の能力に応じて79年生まれの子どもたちと同じ年に入学することも可能。特に希望が無ければアバッキオとブチャラティは同学年みたいです(外務省のHPより)

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