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    Cannolu 勉強するつもりで放課後に寄った図書館で居眠りをしていたところを司書に起こされた。ひどくうなされていたから心配になって駆け付けたらしい。
     ブチャラティは司書に謝ったあと顔色の悪さを指摘された。大丈夫だからと言いそそくさと図書館を後にしたブチャラティは鳴り止まない心臓を抑えて帰路につく。
     未だにこんな動揺するなんて。
     脳裏にある場面がこびり付いて離れない。
     岩地に血塗れになって倒れている男。
     己の役目を全うし死んだ仲間。
     彼を呆然と見下ろすブチャラティは青年の姿をしていた。頬に吹く海風の香りがやけに生々しい。
     これはブチャラティの記憶。
     物心がつく頃から少しづつ夢に見るようになった光景。義務教育を受ける頃になると自覚した。あれは自分がかつて通って来た人生なのだと。
     命は巡るものなのか。確かに終わったはずの人生を抱えてブチャラティは生まれてきた。
     しかしブチャラティは自分の状態が輪廻転生というものに当てはまるのかどうか疑問を持っていた。
     今生きている世界はブチャラティが生きていた世界と酷似しており、言葉も地理も文化も、辿ってきた歴史も同じだった。使用している年号も同じなため、はじめは死んだ時間から数えて十数年後の未来へと生まれ変わったのだと思っていた。だが、ブチャラティがかつて持っていた生命エネルギーのヴィジョンであるスタンドはこの世界に存在しないようで、スタンドに関わった場所や人物の痕跡がどんなに調べても見つからない等、見過ごせない大きな相違があった。
     だからこそ、この世界がかつて生きていた世界とどんなに共通点が多かろうと異なる世界なのだということがわかる。
     それが判明した時ブチャラティは大きな孤独感に苛まれた。
     自分と同じように前の人生の記憶を持って生まれてきたかつての仲間がいるのではないのかという期待があったが、この世界に生まれたのが自分だけかもしれないという可能性を考えブチャラティは衝撃を受けた。
     ブチャラティの脳裏に浮かんだのはかつての仲間だったアバッキオの姿。
     記憶の中の人生でブチャラティはネアポリスという街に住んでいた。この世界ではネアポリスという都市は存在せず、地理上ネアポリスがあるはずの場所はナポリと呼ばれている。
     ネアポリスでブチャラティはギャングとして裏社会で生きていた。ここシチリア州のマフィアやカラブリア州のンドランゲタのような組織犯罪集団だ。
     ブチャラティは幼くしてギャングの世界に入り、そして若くして命を落とした。血の繋がった家族すら利益のために殺そうとする組織のボスが許せず反旗を翻したからだ。
     戦いには勝ったがその代償としてブチャラティをはじめ尊い仲間の命が失われた。その一人がアバッキオだ。
     彼の死をブチャラティは時々夢に見る。
     それは彼に対する罪悪感がそうさせるのだろうかとブチャラティは考えていた。。
     ――アバッキオは己の意思で俺について来た。彼の死を自分のせいにするなんて自惚れが過ぎる。それは彼への侮辱に他ならないが、もっと上手くやれれば、彼を死なせずに済んだのではないのかと考えることはある。
     けれどもブチャラティはやがて、アバッキオのことを夢に見る理由が他にあったのだと気が付くことになる。
     十歳の誕生日の夜。ブチャラティは唐突にある光景を思い出す。
     そこは終点のバス停がある町。
     青年の姿をしたブチャラティはバスから降りて道路を挟んだ向かい側にあるレストランへ脚を運んだ。
    「俺より先に死んでいたなんてな」
     彼とテラス席で顔を合わせるなり開口一番言われた言葉に、既に無いはずのブチャラティの心臓が軋んだ。
     二人がけのテーブル席。二つのワイングラスには彼が好きな白ワインが注がれていた。
     アバッキオはゆっくりとグラスを傾けた。ブチャラティも椅子に座ってグラスに口を付ける。記憶にあった以上に辛い味が口腔に染みる。
    「確実にあんたが死ぬんだってわかっていたら、俺は心を強く保てなかったかもしれない」
     サン・ジョルジョ・マジョーレ島でボスを裏切り出立するブチャラティと共にボートに乗ると決めた時、当然アバッキオはブチャラティが既に死んでおりジョルノのスタンド能力の影響で奇跡的にこの世に留まっているだけだということを知らなかった。ミスタがこっそりジョルノに耳打ちした――会話は聞こえなかったが様子から何を言ったかはわかった――ように、アバッキオも、あの段階で望みは薄いとわかってはいても、もしボスを倒せたなら……と何かしらの青写真を描いていたのでは。
     その未来には当然ブチャラティがいただろう。
     死を覚悟してブチャラティに付いて来たアバッキオだが、ブチャラティならもしかして状況を打開できるのではと思っていた。
     だが蓋を開けてみれば、勝っても負けてもブチャラティは死ぬと決まっていた。
    「例えボスを倒せても全員生き延びることができたとしても、その先の未来にあんたがいないんだって知ってたら俺は……。それがわかっていたとしても、あんたの正義に付いて行ったかもしれないが」
     言葉が濁る。例え自分が生き延びられたとしてもブチャラティは確実に失われる。その未来を受け入れてあの戦いに挑めただろうかとアバッキオは言いたいのだ。
    「今考えるとひどい詐欺だぜ」
    「すまない」
     あの時は本当に切羽詰った状況だった。余計な動揺を与えたくはなかった。しかし、自分の生死が彼らの選択に影響を及ぼすのだと冷静に分析できていたなら話すべきだったし、もし真実を知っていたならボートには乗らなかったという者がいたなら、その者にとってはアバッキオが言うようにやはり詐欺なのだとブチャラティは思った。
    「……いいさ。もう、ぜんぶ過ぎたことだ。それに、やっぱりあんたに付いて行ってよかった。自分の罪にも向き合えて受け入れられたから」
     お互いに俯いてグラスに残ったワインが反射する光がテーブルクロスの上で踊るのを見詰める。この町の空に登る太陽は本物なのか。肉体が死んだ今、ブチャラティは自分がいわゆる魂だけの状態であるということを感じていた。
     ここはその死者の魂が生者の世界からやって来てはじめに降り立つ場所。
     きっとこの場所に留まっていられるのは僅かな時間だろう。そうしたら目の前にいるこの男とも今度こそ永遠に別れなくてはならないのかもと思うとなぜだかとても苦しくて焦燥感が湧き上がる。
     もし神という者が存在するならば、きっとこれは最期にくれたプレゼントだ。二度と彼に会えなくなってしまう前に何か言わなくては。
     ブチャラティは言葉を探す。アバッキオに言わなくてはならないことがあった気がする。
     胸の奥底に自分でも無自覚なうちに押し込んでいた気持ち。その存在を今やっと思い出しかけてきた。
    「なあ、俺に悪いと思ってるなら叶えてほしいことがあるんだ」
    「何だ?」
     おぼろげな感情の断片を必死にかき集めているブチャラティは突然かけられた言葉に我に返った。
    「もしだ。もし、次があるのだとしたら……俺の側にいてくれ」
     ブチャラティは目を見開いた。燃えるような瞳をしたアバッキオはその瞳とは裏腹に泣きそうな顔をしていた。
    「ずっとだ。ずっと側にいてくれ」
    「それは、どういう……」
    「言葉通りだ」
     アバッキオは立ち上がる。
     二つのワイングラスは交差するように倒れテーブルクロスに染みを作った。
     ブチャラティの顔に影がさす。
     唇に触れた柔らかく暖かなもの。
    「ずっとあんたとこうしたかった」
     こんな場所で叶えられるなんてなとアバッキオは自嘲ぎみに笑った。
     二人は生前一度も触れ合うことがなかった。
     死に至るまでの最期の数年間、誰よりも近くにいたのに。なんとなくアバッキオから大きな感情を向けられていることには気が付いていたのに。
    「お願いだ」
     ブチャラティの頬を撫でるアバッキオの手のひらは記憶にある通り温かくブチャラティを安心させる。この手の温かさに何度救われたか。
    「約束するよ」
     息をするように自然とその言葉が溢れていた。
     どうすれば彼の願いを叶えられるのかブチャラティにもわからない。
     だが自分ならアバッキオの願いを確約することができるのだということを信じたかった。アバッキオのためでもあったしブチャラティ自身のためでもあった。アバッキオの願いはブチャラティにとっても願いであったからだ。
    「また会おうアバッキオ」
     次はブチャラティの方から口づけをした。
     唇が離れ、好きだと言おうとした瞬間、ブチャラティの記憶は途切れ二人は光に包まれた。
     
     終点のバス停がある町の記憶を観たのはその時が最期だった。
     それから見るアバッキオに関する夢は、何でも無い日常か彼の死を目にした時の記憶。
     ブチャラティはこの世界でアバッキオに会えるのだろうかと不安を抱えて毎日を過ごしてきた。
     今から約一年前。十二歳の誕生日を迎えるふた月前。何の前触れもなく彼が目の前に現れるまでは。
    「大丈夫か!?」
     ある日の朝。市場でチンピラ同士の喧嘩に巻き込まれた知り合いを助けようと無謀にも飛び込んでいったブチャラティを救った青年がいた。
     彼に抱き起こされた時のことはきっと一生忘れない。
     アバッキオ。
     彼を見間違えるはずはなかった。
     金色に紫を差した朝焼けのような瞳に射抜かれてブチャラティの心臓は激しく脈打った。
     最期に別れた時よりも若く青々しかったが、彫刻のように精悍でいて優美なパーツを持つアバッキオの容貌は記憶の通りだった。
     彼の言動を観察していて自分とは違い記憶が無いようだということがわかった時は戸惑った。
     記憶を持たずに生まれてきたアバッキオを前にしてブチャラティは迷った。今のアバッキオに対してあの約束は有効なのかと。
     迷いが生じたのは一瞬。結局ブチャラティはアバッキオに寄り添った。
     約束は約束だ。何よりブチャラティ自身がアバッキオと共にいたかったのだ。
     こんなにも早くにアバッキオと再会できたのは嬉しかった。
     唯一誤算だったのは、この世界のアバッキオがブチャラティより六つも年上だったことだ。
     
     ブチャラティが家に帰るとちょうど買い物から帰って来た母親と玄関で鉢合わせた。
    「ただいま母さん」
    「おかえりなさい。さっき近所の人に進められたお店でカンノーリを買ってきたのよ。食べない?」
     カンノーリはシチリアの方言でカンノールと呼ばれるがブチャラティの母親は田舎臭いからとそう呼ぶことはない。
     手を洗ってコーヒーが用意されたテーブルに着く。子どもなのにブラックコーヒーが好きなブチャラティの母は彼が摂取するカフェインの量に注意を払っている。
     溢れそうなほどクリームが盛られたカンノーリにかぶりつくとブチャラティの歯はある独特の触感を覚えた。
     白いクリームとチョコチップに紛れていて気が付かなかった。
     一口目を咀嚼し呑み込んだ時、ブチャラティの母が慌ててキッチンがからやって来た。
    「ごめんなさいブローノ。そのカンノーリ、ピスタチオが入っていたわ!」
    「いいよ。クリームの味に紛れてあまり気にならないから」
     慌てる母にブチャラティは微笑む。
    「そう……なら、よかったわ。次から気をつけるわね」
     ブチャラティの様子を見て安心した彼女は夕食の準備のためにキッチンへ戻って行く。
     前の人生でのブチャラティはピスタチオをはじめとする豆類が嫌いだった。
     しかし、魂が同じでも身体は違うためか、今のブチャラティは特別豆類を苦手とは感じない。なぜ豆類が苦手だということにしているのかというと、この身体が感じる味覚よりも感覚的なものが勝るからだと説明するしかない。
     それに加えて前世とは違う部分を自分の中に見つけるのがつらいのだ。
     アバッキオもそうなのかもしれない。
     魂と姿形は同じでも以前の身体ではない。ブチャラティの味覚が異なるように彼も前世とは異なる要素を持っているのだろう。
     今のアバッキオはブチャラティのことを好きにならないかもしれない。
     その可能性に気が付いていたブチャラティは自分が子どもであるという利点を活かしてアバッキオに甘えた。
     大概大人というのは素直で優しい子どもに弱い。ブチャラティは自分の容姿を自覚していたのでそれを合わせて有効活用していた。
     アバッキオも他の大人たちと同じようで、自分に懐いてくるブチャラティに悪い気はしなかったらしくとても可愛がった。ブチャラティが前世と同じような同年代の友人を相手にするような話し方でもアバッキオは嫌な顔をしなかった。むしろそれが自然であるかのように一対一で話をする時はブチャラティを対等に扱った。
     そんなアバッキオを見るたびにブチャラティは嬉しくなる。この人はやはり俺が約束を交わしたアバッキオなのだと。
     唯一問題なのは、この世界では以前と異なり二人は同い年ではないこと。
     大学生のアバッキオと中学生のブチャラティは一日の大半を離れて過ごす。
     なぜ同い年に生まれなかったのだろうか。
     ブチャラティはずっと夢を見ていた。
     かつて十二歳という幼さでギャングになったブチャラティは、街中で時々すれ違う普通の子どもたちを羨ましく思うことがあった。学校の友人と一緒に登校したり放課後寄り道したり、時には勉強をさぼって遊びに行ったり。
     生まれ変わってアバッキオと出会えたらそういった当たり前のことを彼とできるのではないのかと夢見ていたのだ。
     この広い世界でこんなにも早く巡り会えた。その幸運に恵まれ、何よりあらゆるしがらみから自由の身である今は、あの世界に比べれば天国に等しい。
     けれどもアバッキオにとって自分は子どもでしかない。
     街中で偶然、アバッキオが同じ大学の友人と思われる男子たちと笑い合いながら歩いているところを目にして嫉妬とやるせなさが湧き上がった。どうして俺たちは同い年じゃないのだろう、本来そこにいるのは自分のはずなのに。
     来月ブチャラティはやっと十三歳になる。
     ブチャラティの努力の甲斐あってか、アバッキオは最近ブチャラティを特別に意識し始めている。それは年下の友人に抱くようなものではなかった。
     早すぎる。流石にこれはブチャラティにとっても予想外なことだった。アバッキオを近くで見ていてわかっていることだが、彼はペドフェリアではないとブチャラティは分析している。
     気持ちを向けられていることは嬉しいがどうしようもない。
     例え合意の上であったとしても、成人が未成年と関係を持つことは犯罪だ。アバッキオを犯罪者にはしたくはない。きっと彼のことだ。ブチャラティが望んでいたと理解したとしても己が淫行をはたらいたという事実を悔やみ続けることだろう。
     アバッキオには二度と道を踏み外してほしくはないのだ。
     何と儘ならないのだろうか。
     たとえアバッキオが耐えられたとしても性に目覚めたばかりの若い身体を持つブチャラティの方がこの状況は耐え難いかもしれない。
     身体が子どもゆえに大人として生きた記憶があれども魂は今の身体に収まりの良い形で落ち着いているのか、ブチャラティは時々子どもらしく自分の感情が制御できなくなってしまう。
     アバッキオの前で暴走してしまわぬうちに彼と距離を置かなくてはならないかもしれない。約束を破るかたちとなってしまうだろうが彼の将来を考えると止む終えないことだ。
    苔もも Link Message Mute
    Nov 25, 2018 11:24:16 AM

    Cannolu

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    #アバブチャ  #パラレル  #おにショタ

    現代設定 / 転生 / 年上×年下
    ブチャ視点回。

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    君とドルチェ
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